孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】緊急事態宣言と、無観客での五輪開催。

結局、開催目的が放送利権を主体とした「カネ、カネ、カネ」の「ボッタクリ男爵」率いるIOCのなすがまま。コロナ抑制の最大策はワクチン接種だが６５才以下の接種は極めて低い。緊急事態宣言発出でもコロナ抑制は多分無理。

１：政府は８日夕、新型コロナウイルス感染症対策本部（本部長・菅義偉首相）の会合を開き、東京都に４回目となる緊急事態宣言の発令を決めた。期間は１２日から８月２２日まである。
　他方、政府と大会組織委員会、東京都、国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）、国際パラリンピック委員会（ＩＰＣ）の各代表による５者協議と関係自治体等連絡協議会が８日夜、オンラインを交えて行われ、東京都と神奈川、千葉、埼玉の首都圏３県で実施される五輪全競技と開閉会式を無観客で開催することが決まった。
２：上記決定は多くの国民の納得する所ではない。
　時事通信は「“五輪やるのに”渦巻く怒り　飲食店、またも酒類制限へ―緊急事態宣言」と報じた。
　朝日は「五輪を最優先、崩れた方程式　楽観論に流された菅首相」、「“無観客”五輪、迷走の末　こだわり続けた“有観客”」と報じた。
　毎日は「五輪は首都圏無観客　傍観者に徹したIOC、国民不在のゆがんだ祭典」と報じた。
　東京は「五輪は首都圏無観客　傍観者に徹したIOC、国民不在のゆがんだ祭典」と報じた。
　政府よりの報道を行う産経新聞は「首都圏は無観客　開幕控え厳しい選択」「宣言決断、ワクチン後手のツケ挽回なるか　五輪前のラストタイミング」と厳しい状況であることを示している。
　読売も又「組織委幹部“開催さえ果たせば、ＩＯＣの腹は痛まない”…巨額の放送権料確保にめど」として「ＩＯＣの２０１９年財務報告によると、２０１３～１６年の収入は５７億ドル（約６３００億円）で、その７３％を放送権料が占めた。米メディアなどによると、ＩＯＣが米テレビ局ＮＢＣと契約した米国向け放送権料は、１４年ソチ冬季五輪以降の４大会で４３億８０００万ドル（約４８００億円）、２２～３２年の冬夏６大会で７６億５０００万ドル（約８４００億円）にのぼった。コロナ禍が急速に拡大した昨春、ＩＯＣは主催者として何度も「中止はしない」と宣言し続けた。」と報じている。
３：安倍政権とコロナ対策は相互に密接な関係がある。
　昨年安倍政権はオリンピック開催するため、感染検査を抑制し、結果として抑制の有効策を真剣に模索しなかった。
　安倍首相は「（コロナを）克服した証しとして五輪を開催したい」と繰り返し発言してきた（具体例：昨年２月２３日の参院予算委員会での発言）
　菅首相も昨年１０月、国会での所信表明で「人類がウイルスに打ち勝った証しとして（五輪を）開催する決意だ」と語り、その後もこの発言を繰り返している。
４：安倍・菅政権に一貫しているのは、①五輪開催で政治的支持を拡大したい、②そのためには何が何でも五輪を開催する③五輪開催の阻害要因となるコロナ感染については、状況をできるだけ抑えるとの方針を出してきた。
　結果としてコロナの抑制が出来ずに、感染拡大を招き、緊急事態宣言の四度目の発出、五輪の無観客決定となった。
５：問題は今後である。
　国際的にみるとコロナへの対応は、①ソーシャル・ディスタンス（人々の距離を保つ政策）、②ワクチン接種。
　当初①で成功したのは韓国である。だが韓国では直近、「韓国の防疫当局はコロナの７日新規感染者が１２７５人と発表。昨年１２月末以来、約半年ぶりに１日あたり新規感染者で過去最多を更新。インド変異株「デルタ株」の流行拡大。６月後半感染の３・９％→今月３日までの１週間では全体の９・９％（産経）」の動きが出て、ソーシャル・ディスタンス政策の限界を示している。
　現在の日本を見ると、感染者の多数は６５才以下である.この接種率は極めて低い。東京都における６５才以下の接種率は４３万８千人、二回目が５万６千人である。効力は二回目以降と言われ、ワクチン接種で感染が抑えられる状況ではない。