孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】 G7、対中が主要課題。米国は厳しい対応を求め、欧州は対立色を薄めることを意図

結果は多くの分野で中国への厳しい表現を採択。米の意図実現。ただし目玉として描いた「一帯一路」に対抗する巨額インフラ投資計画は具体案出ず。題目一緒に唱える程度で終わる、
2021-06-15 07:075

・G7サミットは共同宣言を採択し、13日閉幕した。
・G7サミットは発足以来、時々の主要外交課題を網羅し、見解を発出する、今回も、コロナ対応、経済回復及び雇用、貿易、先端技術、気候変動・環境、等を協議している。
　だが今回のG７サミットの主要議題は、米国が厳しい中国批判を共同宣言に盛り込もうとし、欧州諸国は非難のトーンを弱めたいとし、その攻防にあった。
　ワシントン・ポスト紙は「G7は米国の要請で中国に対しより強硬な立場を取る（G-7 takes stronger stand against China, at U.S. urging）」と報じている。
　共同宣言を見ると、① 台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す、②東シナ海及び南シナ海における状況を引き続き深刻に懸念し、現状を変更し、緊張を高めるあらゆる一方的な試みにも強く反対する、⓷特に新疆や香港との関係で人権や基本的自由を尊重するよう中国に求めることを含め、G7の価値を推進していく、➃国家により行われるものを含むあらゆる形態の強制労働について懸念する等が盛り込まれ、米国の意図は達成された様相を示している。
　問題はこうした宣言に基づいて、G7として、具体的に如何なる具体的な対応措置を取れるかにある。
・今回の会議での目玉は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する巨額インフラ投資計画を打ち出すことにあった。３５年までに途上国で必要とされるインフラ投資額は約４０兆ドル（約４４００兆円）に上るとの分析結果もあるとサミット前に報じられた。ただ、Ｇ７がどれだけの金額を用意できるかは定かではなく、投資競争で中国を制することができるかは不透明なままだ。
　共同声明では「発展途上国のインフラのニーズを満たし、より良い回復を図るため、具体的な方策を検討するため、タスクフォースを設立し、今秋に報告を求める」とある。つまり具体案の合意はない。
・日本のメディアはG7の成功を謳っているが、ニューヨーク・タイムズ紙は「首脳会議終わりにあたり、共通戦線を提供するも、裂け目は明確」の標題を掲げ、「西側指導者達は中国の海外投資事業、一帯一路に対抗するため、数千億ドルの提供を約束させようとしたが、合意しえなかった」と報じている。
　つまり、欧州諸国は米国が称える対中非難のお題目には反対しないが、資金の提供を伴う措置等具体案になれば、一緒には行動しないとしたのである。
・日本では「菅首菅義偉首相が、先進７カ国首脳会議（Ｇ７サミット）を終え、１４日付でツイッターやインスタグラムに投稿。Ｇ７の成果を強調し、“東京オリンピック・パラリンピックについて、感染対策を徹底し、安全安心の大会を実現することを説明し、全ての首脳から大変力強い支持をいただきました”」と記した」と報じられた（デイリースポーツ）。
　共同声明を見てみよう。
　和訳「また、新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で２０２０年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催することに対する我々の支持を改めて表明する。」
原文「reiterate our support for the holding of the Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020 in a safe　and secure manner as a symbol of global unity in overcoming COVID-19.」
　つまり、セーフで安全な形」での五輪を支持しているのであり、全面的な支持ではない。
　今次サミットは、トランプ大統領時代、米欧に亀裂が入ったのを修復することを重視しており、各国との協調を大きな課題としたのであり、リップサービスを得たに過ぎない。東スポは「東京五輪：開催支持のバイデン大統領が菅首相に厳しい注文」との標題で「「超大国のトップは無条件に開催を後押ししたわけではない。アイルランドメディア「インデペンデント」などによると「バイデン大統領は菅首相との会談で、関係者の安全を確保するための公衆衛生措置を課す必要性を強調した」と報道。あくまでも万全の感染対策を施したうえでの〝条件付き〟の開催支持なのだ。」と報じている。
　米中関係悪化の最大要因は中国経済が量・質で米国を凌駕するのが現実化しつつあることにある。その阻止に外交を使用しようとし、その一つがG7だった。欧州諸国はお題目は一緒に唱えるが、具体的行動となると留保すると、巧妙に体をかわしたと言えよう。