孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】随想⑫　藤原真理 2020-08-24 08:092

いろんな機会が人を新しい道に導く。新しいものを生み出していく。
今私は、藤原真理の「愛のコトバ／トロイメライ」をCDで聴いている。聴こうと思ったのは全くの偶然だ。
今年７月に、私は『朝鮮戦争の正体』を出した。『週刊金曜日８/21』が秋山晴康氏とのインタビュー記事を掲載してくれた。その表紙が「チェリスト・藤原真理さん“音楽というものは自分の文化を背景にして出てくるものなのです」とあった。藤原真理氏は第六回チャイコフスキー国際コンクール」第２位を受賞している。ODだって、シューマン作「トロイメライ」等外国の作曲家の曲である。そうした曲の演奏をしながら、“音楽というものは自分の文化を背景にして出てくるものなのです」との考えを持っている。何なんだろうと思った。
彼女が何を語っているか。「マスタークラスに東欧からも生徒が来るのですが、彼らはビブラートが強烈です。ソ連のある時期、自分が亡命したら親族がどのような影響を受けるかわからない状況が長く続きました。それでもチャンスを求めていたのです。東欧のサバイバル的な生命力の強さ、渇望があり、スタートラインから日本人とは違うと思いました」
このインタビューの聞き手は崔善愛である。
―斎藤（英雄）先生の思い出を語った文章で真理さんは、中国の諺「人が月を指すとき、おろか者は指先をみる」を引用し、その指の先からはるかに遠い音に向かって歩くことについて書かれていますが、先にあるものが見えてきたのはどういう時ですかー
人が指す月を十分理解したわけではありませんが、楽譜に記された作曲家の思いに想像をめぐらせていると、日常起こる感覚と密接につながっていると、歳を重ねるごとに感じるようになりました。
指し示す指が音楽を表現する技術とすると、月は音楽を含む大きな生命体に見えます。しかし、とらわれすぎはよくありません。
聞き手の崔善愛は次を述べている。
―林光さんと真理さんのCD[セロ弾きのゴーシュ]のライナーノーツで「竜チャーナタの夢」について林さんがこう記しています。
　幽閉された竜の歌を詩人が競技で披露し、誉を得るのですが、歌を盗んだことに竜にお詫びに行きます。すると竜が“お前が聴いてよろこび、影響されてお前の歌をうたったならば、それはもうお前の歌でもあるのだ。創造とはそういうものだ”と。林さん自身がこの話に励まされたという印象を受けました」
この話題に藤原真理さんは次を述べています。「（藤原真理さんが坂本龍一氏の曲を弾いたことについて）坂本さんは、演奏家という存在が加わることで曲が深まったり、別の味わいが出たりして、その作品の魅力や特徴が音になるのを見聞きし、驚いたと言って下さいました」
人のつながりが、新たな発展、展開を生み出していく。人は一人で完成する必要はない。