孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】『朝鮮戦争の正体』⑦

朝鮮戦争開始後すぐにレッドパージで、朝日等報道機関は自社社員を大量に解雇。朝日七二、毎日四九、読売三四、日経二〇、放送協会九九共同三三等。「朝日新聞社社員として何の落度もない人達が放り出さた。戦争反対、対米批判の動きを抑圧の意図」
2020-06-29 06:597
報道の自由の崩壊―朝鮮戦争とレッドパージ　①日経新聞「報道界の赤色分子解雇」と報道。報道関係者一〇四人も解雇されているのです。
朝鮮戦争の勃発とともに、警察予備隊が作られ、これは国会審議を経ての法律でなく、内閣が自分で出せる政令で決めました。日本国憲法の根幹、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」が侵されました。
そして、「民主主義」「自由主義」の要、報道の自由も侵されます。具体的な条文を見ます。第一九条【思想及び良心の自由】思想及び良心の自由は、これを侵してはならない、第二一条【集会・結社・表現の自由、通信の秘密】１　集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。。
朝鮮戦争が始まったのは１９５０年６月２５日。そして７月２９日日経新聞三面は次の出しで報道します。
「報道界の赤色分子解雇」この中で、各報道機関の解雇者数を次のように報じます。朝日七二、毎日四九、読売三四、日経二〇、東京九、放送協会九九、時事一六、共同三三．驚く数字です。
日経新聞の見出しの「赤色分子」という表現も凄い表現です。
レッドパージの状況を、本『一九五〇年七月二八日　朝日新聞社のレッドパージ証言録』（晩声社、1981）で見てみたいと思います、この本を執筆している段階で、Amazonを見ますと、「この本は現在お取り扱いできません」と出てきます。まず「はしがき」を見ます。
・占領下のレッドパージから三十年余の星霜が流れた。真夏の悪夢のように、私達の同僚一〇四人の境遇に一片の退社辞令で一変させたあのレッド・パージとは一体何だったのだろうか。それは一九五〇年七月末、「共産党員およびその同調者を排除せよ」とのマッカーサー元帥の書簡に端を発する大きな暗黒事件だった。パージを強行したとき、会社が、だだ一つの拠り所としたのはこのマ書簡であった。そして朝日新聞社の社員として何の落度もない人達が,　昂進するインフレの路頭に放り出されていった。
この異例の弾圧事件は、東西の冷戦下、次第に反動化しつつあった対日占領政策が朝鮮戦争の勃発を契機として一挙に本格化し、戦争反対、対米批判の動きをいっさい抑圧しようとした緊急措置であったということが出来る。
それがいかにGHQの命令であったとしても、この違法な措置を、何の抵抗もなく受け入れた当時の経営陣と大半の労働組合の態度、とくにマ司令部の要求にすすんで便乗解雇を行ったとさえみられる一連の事実は、省みて看過することの出来ない問題であった。
本来なら日本では、いかなる場合でも憲法と労働組合法、各組合の規約・労働協約などによって、労組員はその思想、信条、信仰の自由は保障されているはずであった。占領下の歪みがそのすべてを御破算にしてしまった。しかし、新聞が真の報道の自由、言論抑圧に対する闘いの姿勢を失ったら、日本の民主化の道は遠のくばかりである。このことがレッドパージ後の情勢が如実に示している。レッドパージという一つの歴史的事実を、我々は今一度、冷静に見直し、噛みしめてみる必要があるのではないだろうか。
・戦争を防ぐことと、言論の自由を守ることは一体であり、切り離せない。
　この本の中で、新井直之教授は「レッドパージの今日的意味」を掲載していますが、特に注目される論点に次のものがあります。p12
・《レッドパージ》の問題点の第一は、それが犯した行為に対する処罰としての解雇ではなく、犯すかもしれないという惧れに基づく解雇であって、いわば予防拘禁的性格を持つことであった。
・問題点の第二は、朝鮮戦争に対する報道が完全に一元化し、多様な視点による報道・多元的な情報による報道がおこなわれなくなったことである。