孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】コロナ対策の根本を考えよう。

（１）コロナ・ウイルス対策（医療分野）（２）ソーシアル・ディスタンス策、（３）ソーシアル・ディスタンス策よる経済停滞、一般市民の経済状況に対する救済、緊急事態宣言で（１）をどれだけしたか。検査はOECD諸国のほぼビリ。
2020-05-05 07:512
１：　５月４日現在、全世界の感染者は3,524,429、死者は247,838である。
　主要各国の動向を見てみよう。
　　国名　　　　　　　感染者数　　　　死者数
　米国　　　　　　　247,838　　　　　67,686
　　　　　　　　　　　　　　　　　内NY市18,925
　スペイン　　　　　217,466　　　　　25,264
　イタリア　　　　　210,717　　　　　28,884
　英国　　　　　　　187,842　　　　　28,446
２：世界中にとって、コロナ対策は最大の人的、政治的、経済的、社会的課題である。米国の死者数は６万人を超えたが、この数字はベトナム戦争での米軍死者数を上回っている。これだけ見ても規模の大きさが解ろう。
３：この中、世界は如何なる措置を取ってきたか。
（１）コロナ・ウイルス対策（医療分野）
コロナに特化した治療薬も、ワクチンもまだ開発されていない。従って世界中が対応策として取っているのは、①早期発見、②早期隔離・治療、③未感染者を感染者に近づけない措置（ソーシアル・ディスタンス）を取ることしかない。その中で早期発見は対応策の核である。
（２）ソーシアル・ディスタンス策
（３）ソーシアル・ディスタンス策による経済停滞、一般市民の経済状況に対する救済
４：上記対策中、最重要視すべきは（１）コロナ・ウイルス対策（医療分野）であり、なかんずく、検査である。OECDは加盟３６か国が、人口千人に対し何人の検査をしたかのランキングを発表した。
OECD全体の平均は２２件（.以下切り捨て）イスラエルが３０件、ドイツ２５件、米国１５件である。日本は何件と思われるうか。１．8件、３５位である。コロナ対策の最重と位置付けられる検査でビリから二番目である。（注、日本の下はメキシコ）しかし日本は全く動じていない。
コロナ対策の最重要基準は「命を最重視するか否か」である。日本ではこうした基準は何ら重きをなしていない。検査をしないから、実態がわからない。症状の出ない感染者は堂々と街に出る。今や人々がどうやって感染したかの追跡も出来ない。新宿区・立川市で抗体検査を行った医師は５．９％が陽性という数字を発表した。東京都民全体の６４万人に相当する。他方都内公表感染者数は４千名強である。
安倍政権は緊急事態宣言の期間を延長した。十分な検査もしない、十分な治療も行わない。コロナが終焉するはずがない。日本は何故検査がかくもひどいのか。
先ず政治的判断である。オリンピック開催の為、コロナ感染数を低くしたいという思惑が働いた。
次いで医療関係者のガイドラインが全く非合理的であったこと
（ⅰ）体温が３７．５度以上３－４日続いたら検査（今回の特徴は病状が一気に悪化）
（ⅱ）海外からの帰国者、発病者との接点がある者（今日７０％－８０％の感染源が解らない）
今一つ、深刻なのは検査を保健所などが行う体制を取ったが、保険者数、その医療関係者が不足しているために対応できなかった。
今回のコロナウイルス拡散の特徴は余りにも規模が大きく、課題は不足する医療体制を如何に拡充整備するかであったが、日本の対応にはこれが見えない。
（４）ソーシアル・ディスタンス策による経済停滞、一般市民の経済状況に対する救済は重要であるが、それもコロナウイルスの医学的対応が十分になされて初めて有効に機能する。日本は政策の優先順位を間違っている。
安倍首相が祈祷したらどうか。状況は中国、台湾、韓国と真逆である。アジア近隣諸国を見下げて留飲を下げてきた日本人は、彼らの利点を学ぶ度量もない。