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千曲川決壊と北陸新幹線車両が浸水したワケ まさの あつこ
役に立たなかった長野県浅川ダム

本誌2007年に「5ミリの『減災』にしかならない穴あきダムの正体」
として浅川ダムを取り上げた筆者。それから12年。
今回の台風で浅川と千曲川では何が起きていたのか。
もっとも残念な形での治水政策の失敗を検証する。

「ただちに命を守る避難行動をとってください」と長野市の公式ツイッターが繰り返し発信を始めたのは10月12日22時頃。
災害がすでに発生していることを表す「警戒レベル5」の文字が、千曲川のあちこちの堤防から「越水」が始まったことを示していた。

日付が変わり「午前1時8分頃、長沼地区穂保で、千曲川の越水が始まり、堤防決壊の恐れがある」と市長名で発信。
午前4時42分には「穂保(長沼地区)で住宅の2階まで水が来たとの情報」が続き、夜が明けると北陸新幹線の車両浸水の光景が現れた。

残念だが、これは想定内の水害である。
なぜなら、間近に立つ洪水水位標には、1847年から1911年に至るまで、人の背丈を超える大水害が何度も来たことを物語っていたからだ。
いわば立体ハザードマップだ。
その脇を北陸新幹線の高架橋が水位標よりも上を通っており、
せめてそこに車両を上げておけば被害は免れた。

地域住民なら知る浸水地帯になぜ車両基地?
それこそが12年前に筆者が浅川ダムを取材していて結果的に遭遇したことだった。

長野五輪と新幹線のため

それは、長野県が1998年開催の五輪会場への道路予算捻出のために、千曲川に注ぐ支流・浅川のダム計画を復活させたことに遡る。
ダムに沈む道路の付け替え道路をスキー会場までの道路に仕立てたのだ。

この浅川ダム予定地は1847年の善光寺地震の震央が近く、
「活断層によって切り刻まれている」と地震学者に称されるほど地盤が弱い。
ダム建設には「不適断念」の刻印を押された地だった。

しかし、新幹線の車両基地幼稚と北陸新幹線用地確保のために、県は浅川ダム計画を持ち出した。
車両基地のある赤沼や長沼は、その地名が表す通り、千曲川と支流・浅川に挟まれた土地で、二つの合流地点で内水被害が起きた時に浸水する田んぼだった。

そこに車両基地ができると、その分浸水が深くなると懸念する住民に、県は浅川ダム建設を約束した。
当時、県の土木部道路課高速交通網整備推進係が、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構から用地確保の仕事を受託、
2007年当時、そのことを認めた。

県は浅川ダムには内水氾濫を防ぐ効果がないことがわかっていた。
千曲川の水位が浅川よりも高くなると、バックウォーター現象が起きるからだ。
逆流をせき止めるために水門を閉め、ポンプで浅川の水を千曲川に排水するが、洪水時には千曲川の決壊を避けるためにポンプを止める。

根本解決のためには「千曲川の水位を下げることができればいいと思いますが、そうはならない」、そうならない理由の一つは「少し下流に狭窄部もあり、そこで水が満々と貯まる」と07年当時、長野県土木部河川課は語っていた。

今回、決壊が起きたのは千曲川左岸の(県境から)58キロ地点であり、まさにそれが起きていた。

ここは通常幅1キロほどの広大な河原が広がり、中央を川が流れている。
洪水時には、千曲川上流から押され、約10キロ先の川幅120メートルほどになる狭窄部でせきあげられる。

その結果、今回の台風19号洪水では、決壊した地点の数キロの範囲で、法面崩れ、洗掘、漏水と数々の「決壊に至る前兆」が起きていた。
川幅が広がった天然のダムで水が行き場を失った。

下流部に狭窄部がある限りは、この周辺の地名「赤沼」「長沼」などが示すように、支流・浅川が流れるこの合流地点の浸水氾濫は起きることを県は百も承知だった。
それでも、長野五輪と長野新幹線のために税金を投じて作られたのが、浅川ダムだった。

流入量と放流量が一致

・・・

河川工学者の大熊孝・新潟大学名誉教授は
「平常時より少し多めの流量が『穴』を通過しただけであり、
洪水調節は全くなされなかったと考えていい」と断言する。

実は浅川ダムは水を貯めない穴あきダムだった。
冒頭で書いたように、浅川ダムが建設された場所は地すべり地帯。
水で誘発される地すべりを避け、ダム堤体の最下部に穴があり、そのため下流の水位低減効果は1センチ程度。
浸水時間は浅川ダムがあった方が1・5時間延びてしまう
シミュレーション結果も出ていた(「公共事業の闇 長野県の負の遺産、浅川ダム」月刊『世界』12年12月号)。

悪夢は現実となった。
先述した長野市のツイッターが、「『警戒レベル5』
浅川排水機場付近で、1時頃から浅川の内水氾濫が始まりました。
ただちに命を守る避難行動をとってください」
と伝えたのは、13時午前1時19分。

・・・

気候変動時代が到来し、私たちはどうすればいいのか。

全国知事会は今年7月、「地域の災害リスクを住民に浸透させるための具体的な手法として、宅地建物取引業法を改正し、
市町村が作成したハザードマップの説明を、取引時に住宅購入者等へ説明が義務付けられる重要事項として位置付けること」を要望した。
被害軽減のために、明治時代の人々が洪水水位標を立てたがごとく、川の氾濫を前提としたまちづくりをすべく、法改正を進めることは最低限の教訓である。

まさの あつこ・ジャーナリスト

【週刊金曜日 2019・10・25】より抜粋

コメント(1)

今回の、千曲川堤防決壊の教訓を生かすべきですね。

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