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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの 【色平哲郎氏のご紹介】 中国は土地や介護ビジネスを、フランスは水を、アメリカとドイツは食を(後編)

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声をあげた官僚は異動——100年後の設計をする人の居場所がない

堤 
データ隠しや改ざんなど、もはや国家の末期症状です。例えばアメリカでは公文書管理
は非常に重要視されていて、トランプ大統領のツイッターに至るまですべてその対象、
私のような外国人でも請求できます。「消えた年金」問題の際に福田康夫元総理が「公
文書管理法」導入に尽力されましたが、実はあれは日本にとって本当に重要な法改正で
した。残念ながら罰則がないという抜け穴が塞がらないままきてしまい、今や官邸が人
事権まで握り「忖度」が常態化してしまったのが現状でしょう。

 100年後の日本を設計しようという人の居場所がなくなってしまったことは実に深刻
なことだと思います。年金と同じで長いスパンで見なければならない林業や漁業、農業
などの第一次産業や社会保障についても同様の問題が起きています。そんな法改正をす
るとこの先持たない、ダメになってしまうと声をあげた官僚がどんどん異動させられて
いる。

 人事権を握るトップが100年ではなく四半期でものを考える価値観に近いところにい
る事は、日本全体の国益を損ねていると思います。

内田 
いまの政官界には長期的なタイムスパンで国益を考えられる人がいなくなっていると思
います。人口減少も、何十年も前から人口動態については正確な予測が立っていた。に
もかかわらず、人口減対策をどうするかについて責任をもって対策を立てるセンターが
政府内にはいまも存在しません。

 人口減に限らず、自然災害でも、パンデミックでも、テロでも、国が直面する可能性
のあるリスクはさまざまなものがあります。それは別に「誰の責任だ」という話じゃな
い。でも、そういうことが「いざ起きた」というときに、国民の被害を最小化するため
にどうすればいいかについては、事前に十分なシミュレーションはしておくべきだと思
うんです。でも、「何か起きたときに、その被害を最小化するためにどうしたらいいの
か」というプラグマティックな頭の使い方をする習慣が日本の役人にはありませんね。
「プランAがダメだったときにはプランB。プランBがダメだったときはプランC……」と
いうふうに二重三重にフェイルセーフを考案するという思考習慣がない。

 どうして、国難的事態に備えて制度設計をしないのか。理由はいくつか思いつきます
けれど、一つは日本が主権国家じゃないからですね。安全保障でも、エネルギーでも、
食糧でも、教育でも、医療でも、学術でも、国家にとっての重要分野において、アメリ
カの「許諾」を得られない政策は日本国内では実現しない。だから、日本では「国益を
最大化するためにはどうすればいいのか?」という問いが優先的な問いにならないので
す。仮にある役人が「日本の国益を最大化する政策」を思いついたとしても、それがア
メリカの国益と背反するリスクがある場合は採択されない。そもそも議論の俎上にさえ
上がらない。いまの日本の官僚は「アメリカが許諾するはず」ということを第一条件に
してものを考えています。でも、そうなったら、例えば、医療制度や保険制度を国益中
心に考えることができない。アメリカの製薬会社や民間保険会社はアメリカの政策決定
に強い影響力を持っていますから、仮に日本国民にとって最良の保険制度を厚労省の現
場が思いついても、「それだとアメリカの企業が儲からない」という理由でリジェクト
される可能性がある。安全保障だってそうです。日本の安全にとってもっとも費用対効
果の高い国防政策を防衛省の誰かが起案しても、「それはアメリカの軍需産業の売り上
げを減らすリスクがある」と上の方で誰かが言い出したら、吟味の対象にさえならない


 だから、いまの日本の政策は基本的に「アメリカの国益が最大化する」ことを目標に
起案されているんです。そして、アメリカの国益を最大化する政策を立案し実施できる
役人が出世する。堤さんがお書きになっているように、規制緩和によって日本の資産が
グローバル企業に売り渡される「ハゲタカ」問題はまさにそうです。アメリカの国益を
優先的に配慮できる人たちが政・官・財で指導層を占めているから、そういうことが可
能になる。


「カネだけのグローバリストに日本は包囲されている」

堤 悲しいことに、その「アメリカの国益」に貢献した結果、アメリカ国民が幸せにな
るかというと決してそうではないのです。潤っているのは、「今だけカネだけ自分だけ
」価値観をもったグローバリストで、一つの国籍ではなく、中国も欧州も入り混じって
いる。投資家たちの利害が一致したところで、各国の政府が忖度して動いているという
構造ですね。中国は土地や介護ビジネスを、フランスは水を、アメリカとドイツは食を
、という具合に、日本は包囲されています。

内田 
海外のヘッジファンドの出資者は、国籍関係なく、世界中の富裕層ですからね。別に彼
らは彼らの祖国の国益に配慮しているわけじゃない。自分の個人口座の残高が増えれば
どこの国がどうなろうと知ったこっちゃない。でも、彼らは日本を切り崩すときは「ア
メリカがそれを望んでいる」と言うのがマジックワードになることは知っている。「ア
メリカのため」と言えば、日本の資源は「むしり取り放題」だということは知っている
。日本の国民は「宗主国であるアメリカがこれを望んでいる」と言われると、一発で腰
砕けになるからです。アメリカを「入口」にしさえすれば、日本の国富をいくらでも貪
ることができる。

 政官財やメディアの上層部は「アメリカのために」という名目で国富を流出させてい
ます。「アメリカの国益を最大化することが日本の国益を最大化することである」とい
う倒錯的な国益観が日本国内では広く信じられているから、したい放題なんです。彼ら
の場合は、そうすることで宗主国に自分たちの属国内での高い地位を保全してもらって
いる。安倍政権が長期政権であり得るのは、まさにそれだけが理由です。

 アメリカにとって安倍首相は「歴代総理大臣の中で最もアメリカの国益を優先させて
くれた人」ですから。アメリカとしてはできることなら彼が未来永劫日本の首相であっ
て欲しいと望んでいるはずです。日本の国土を提供し、日本の市場を開放し、日本の国
富をアメリカに流し続けてくれるんですから。

 気の毒なのは一般の日本国民です。自分たちが納めた税金が見ず知らずのどこかのリ
ッチマンの個人資産に付け替えられてゆくのを指をくわえて見ている。怒りもしない。
そこまで属国民根性が骨身にしみている。


介護分野は5つ星の投資商品

堤 
どんなに少子高齢化が進んでいってもどうしても必要不可欠なもの——水道や食の安全
、医療、介護にはビジネスとして高い値札がつきます。例えば介護分野などまさに「5
つ星投資商品」です。アメリカの場合は死ぬのも自己責任なんで介護保険がない。だか
らみんな自分でなんとかしなきゃいけなくて、家を売ったりして老人ホームに入るんで
すが、月々の費用が非常に高い。入れたところで認知症を発症したりしてだいたい5年
くらいで出されてしまう。この5年の回転率って、投資商品として非常に魅力的なんで
す。

内田 
老人ホームを出されたあとはどうなるんですか?

堤 
自宅に戻ってあとは病院か民間のヘルパーさんを自分で雇ってください、と。でも民間
のヘルパーにはかなりグラデーションがあって、私が取材したひと月60〜70万円払って
来てもらう例から、時給5ドルで無資格の不法移民がすごくブラックな状態で働かされ
ている現場まで、さまざまです。たとえばメディケアで賄える月20万ぐらいの老人ホー
ムに入れたとしても、コストカットでひとりのヘルパーさんが50人見ているような状況
なので、本当に悲惨です。放置されたり、点滴のミスなどとにかく事故が多い。命の沙
汰は金次第で、訴えたところで企業弁護士がついてるので絶対勝てません。運営会社は
レイヤー構造になっていて本社は海外にあったりし、責任の所在がわからないんですよ
。勿論これが全てではないけれど、「死ぬのは自己責任」の社会は本当に両極端で、あ
れは日本人から見るとショックな光景ですね。

 事の起こりはクリントン政権で、これから高齢化社会だから老人ホームを作る補助金
は政府が出すと無担保融資をはじめてから急に乱立していった。政府公金を元に巨大な
ビジネスに成長しました。ビジネスで一番効率がいいのは、税金に支えられる事業です
。運営は企業がとことんコストカットして、利益はタックスヘイブンに本社を移して税
金逃れをするというビジネスモデルが一番効率いい。この流れは日本にもすでに来てい
ます。

 2015年に、日本で介護報酬が下げられた当時、マスコミは「不正が起きてる」と盛ん
に喧伝しました。悪質な介護施設があると大々的に流して、介護報酬が大幅に切り下げ
られた結果、国内の介護事業者が戦後最大の倒産件数を記録しました。その倒産した介
護施設の多くが外資に買われていった。介護施設は不動産投資にもなるし、介護の需要
そのものはこれから増えてゆく。確実に利益が出る投資商品です。

内田 
国内の介護事業者を潰して、外資に差し出したわけですね。


モデルは「時給20円」の刑務所ビジネス

堤 
私が行った介護分野の投資セミナーでは、「絶対に利益が出る優良投資です、人件費は
抑えてサービスもミニマム。回転率は最速で!」などという話がされていてゾッとしま
した。でもセミナーは大盛況でしたよ、何せ5年で回転、年間2回の高配当ですから。

 これね、民営化した刑務所と同じビジネスモデルなんです。『ルポ 貧困大国アメリ
カ2』の取材でびっくりしたのは、政治家が「刑務所作ります」と公約に掲げると当選
しやすいんですね。刑務所があると壁の外は静かで警備体制が拡充される上に、各自治
体も助かりますから。

 ただし、不動産に出資すると必ず店子がいるでしょう?

内田 
囚人を切らしちゃいけないわけだ(笑)。

堤 
その通りです。そこで政治家はどうすると思います? 厳罰化するんです。例えば「ス
リーストライク法」といって、3回警察に捕まると3回目がたとえ駐車の違反切符でもス
リーストライクアウトで終身刑になるという恐ろしい法律があります。そうすると店子
は永住してくれる。実際、稼働率が200パーセント超えてますという信じられない場所
もあって、取材に行ったら4段ベッドにぎゅうぎゅう詰めでした。囚人ひとりあたりに
州から補助金が出ますから、店子を詰め込めば詰め込むほど、不動産としても利回りが
高くなる仕組みです。

 そして、店子がそんなにいっぱいいるのに遊ばせておくのはもったいない——。かつ
て自国のアメリカ人を使っていた企業は次に人件費削減で派遣社員を使うようになりま
した。でも派遣社員でもまだ高い、じゃあ移民を使おうとなり、いまはその先に来てい
て、時給20円くらいで囚人を使います。

 一般国民なら労基法で守られるけど、囚人はその圏外。だから、たとえばパソコンの
HDの最終段階の廃棄作業ってけっこう危ないし、危険な薬品の破棄なども、通常なら自
治体の環境規制に引っかかるところが、刑務所内だと法の外なんです。だから経営者に
とって刑務所は最高のビジネスツールですね。

 その同じビジネスモデルが、病院、介護施設に入って来ている。実際、3年ぐらい前
に日本にも病院の不動産リートというのが商品として入ってきました。

内田 
どういうふうに?

堤 
いま日本の自治体病院ってほとんど赤字じゃないですか。その不動産に出資してもらい
なさい、そうすれば黒字になります、と。当然、医師会はすごく反対しました。日本は
医師法で営利目的の運営が禁止されているし、医療法人のトップは原則医師または歯科
医師と医療法で決められています。そしたら直接出資はできないがホールディングとい
う間接的な形で導入してしまった。株式会社運営の病院が入ってきやすくなる素地は着
々と進んでいます。その次が介護施設です。介護と移民はセットになっている。グロー
バリズムのなかで、高齢者も囚人も病人もみんな商品になっているわけです。

 でもこうした世界的な流れはわずかここ数十年のことなんですよね。80年代にアメリ
カで新自由主義が出てきて、長い歴史のなかで見るとたった数十年しかないひとつのイ
デオロギーにこんなにも世界が食い荒らされてる。若い世代の人たちは一択しか選択肢
がないように思い込まされているけど、右肩上がりに経済成長を続けなければダメだと
いう作られた幻想から脱却し、日本のもつ有形無形の資産をいかに守るか、考えるべき
ときが来ているのではないでしょうか。


※(2)教育現場編・(3)医療編は順次公開予定です。

内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京生れ。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、凱風館館長。東京
大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフラ
ンス現代思想、武道論、教育論など。『ためらいの倫理学』『レヴィナスと愛の現象学
』『ローカリズム宣言』『人口減少社会の未来学』など著書編著多数。『私家版・ユダ
ヤ文化論』で第6回小林秀雄賞、『日本辺境論』で第3回新書大賞受賞、2011年に第3回
伊丹十三賞を受賞。近著に『街場の天皇論』『そのうちなんとかなるだろう』ほか。

堤未果(つつみ・みか)
国際ジャーナリスト。東京生まれ。NY州立大学卒業。NY市立大学大学院国際関係論修士
号取得。国連、米国野村證券などを経て現職。米国を中心とした政治、経済、医療、教
育、農政、エネルギー、公共政策など幅広い調査報道で活躍中。多数の著書は海外でも
翻訳されている。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で日本ジャーナリスト会
議黒田清賞受賞。『ルポ
貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞・中央公論新書大賞を共に受賞。近
著に『日本が売られる』『支配の構造』(共著)等。

コメント(1)

堤さんのみているアメリカは、ほとんど、そのとおりだと思います。
私も、たった3年の駐在期間でしたが、同じ印象、そして、同じ事例を体験、痛感しました。

日本は、アメリカの真似でなく、北欧の方式をとるべきでしょう。

新自由主義や経済優先の金融独占資本主義では、格差が広がるばかりで、やがて、
国が滅びる気がします。

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