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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏のご紹介】 重要なのは成長そのものではなく、どのような成長がもたらされるか(成長の質)(前半)

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第9章 上位1%による上位1%のためのマクロ経済政策と中央銀行

まとめ

ほとんどの人々にとって、賃金は最も重要な収入源だ。結果として高い失業率をもたらすマクロ経済学と通貨政策は、現在のアメリカ社会における不平等の主な源だ。過去四半世紀のあいだ、マクロ経済学と通貨政策は安定を生み出してこなかった。維持可能な成長を生み出さなかったし、最も重要なことに、アメリカ社会のほとんどの成員に恩恵をもたらす成長を生み出さなかった。

この劇的な失敗の数々を見せつけられれば、誰もが当然、マクロ経済と通貨に替わる仕組みが探し求められることを期待したくなるだろう。
しかし、銀行という利益集団は、どんなシステムも不慮の災難にそなえることはできないと言い張り、自分たちは100年に1度の大洪水の犠牲者だと言い張り、目下の大不況は、現行のシステムを変更する理由にはなりえないと言い張っている。
そうした勢力がこれまでみごとに規制に抵抗してきたのとまったく同様、マクロ経済学について誤った信念を持ち、欠陥だらけの通貨政策に携わってきたの多くは、あくまで頑迷で、悔い改めようとはしなかった。
自分たちの理論は正しく、ただ実践上のわずかな手ちがいがあっただけだと言い張った。

真相を言えば、マクロ経済学の諸モデルは、不平等と配分政策のもたらす帰結にあまりにも不注意だった。
これら欠陥のあるモデルにもとづく政策は、危機の発生を助長する一方で、危機に対処する能力を欠いていることが証明された。
たとえ経済が回復しても、それが雇用なき回復になるという絶望的な展開にも、これらの政策が寄与していたものと思われる。
本書の目的から言って最も重要なのは、マクロ経済政策はアメリカやほかの国々に高いレベルの不平等をもたらす一因だったということだ。

これらの政策を支持する者たちは、すべての人にとってこれが ”最善の” 策だと主張するかもしれないが、それは事実ではない。
唯一最善の策というものは存在しない。
本書で強調してきたように、政策は富の配分に影響を与えるから、債権者と債務者、若者と高齢者、金融部門とほかの部門などの兼ね合いが必要となる。

しかし、これも強調してきたことだが、もし実施されていたら経済全体の実績が改善されただろうと思われる政策は、別に存在するーー特に、経済実績を大多数の国民の福利という物差しで測るなら、そう言える。
ただし、それら別の選択肢を実施するためには、決定を下す方法についての制度的取り決めが変わらなくてはならない。
銀行家たちに牛耳られた思考回路を持つ人々が運営する通貨システム、実質的に最上層の利益のために運営される通貨システムを、この先も堅持て
いてはいけないのだ。


第10章 ゆがみのない世界への指針

真実を偽っても無駄だ。
アメリカ人の社会的流動性がヨーロッパ諸国よりも高いという根強い確信とは裏腹に、アメリカという国はもはや機会均等の地ではない。

これまで起こってきた事態を最も鮮明に物語るのは、今日、20代の若者たちが直面している苦境だ。
彼らの多くは、熱意と希望をいだいて生き生きと新しい生活を始めるかわりに、不安と恐怖に満ちた世界と向かい合わなくてはならない。
自己破産時にも免責されない学資ローンを背負った若者層は、将来の返済に苦労することを自覚しつつ、荒涼とした労働市場で良い働き口を探し求める。
運よく働き口が見つかっても、期待どおりの報酬は手にできず、多くの場合、あまりにも低い賃金水準のせいで、親との同居を続けざるをえなくなるだろう。

50代の親は、わが子を心配する一方、自分自身の将来についても心配しなければならない。
自宅を失うことになるのでは?
早期退職を迫られるのでは?
世界大不況で大きく目減りした蓄えは、老後を最後まで支えてくれるのか?
自分が苦難に直面したとき、わが子に余裕がないかもしれないことを、親は知っている。
・・・
いまとちがう世界は実現可能だ。
わたしたちはもっと根本的価値観と調和している社会をつくり上げられる。
より多くの機会と、より大きな国民所得と、より強固な民主主義と、より高い生活水準を、大多数の人々が享受できる社会をつくり上げられる。
それはたやすいことではない。
わたしたちを別の方向へ導こうとする市場の力も存在する。
それらの市場の力を形成するのは、政治と、社会によって導入されたルールおよび規制と、国家の諸機関(たとえばFRBをはじめとする規制官庁)のふるまいだ。
わたしたちがつくり出してしまった経済と社会では、レントシーキングを通じて巨大な富が蓄積されている。
公共セクターから富裕層へ直接資金が流れ込む場合もあるが、もっとよく見られるのは、独占力などの搾取形態がルールによって認められ、富裕層が残りの社会から、”レント”を回収するという手法だ。

本書は”ねたみの政治”についての本ではない。
おしなべて言うと、下位99パーセントの人々は、上位1パーセントに属する人々の一部が社会貢献を行なっても、その社会貢献に見合う報酬が支払われても、ねたみを感じたりはしないのだ。
本書は”ねたみの政治”ではなく、”効率的かつ公正な政治”についての本である。
たとえ上流層が大きな社会貢献をしているとしても、上層の所得決定の仕組みを最もうまく説明してくれるモデルは、個人の社会貢献の度合いを
基盤とはしていない。
実際のところ上層の所得の大半は、いわゆる”レント”から生じている。
レントは中下層から上層へ金を移動させ、一部の人々が有利に、残りの人々が不利になるよう市場をゆがめてきた。

より効率的な経済とより公正な社会は、市場が市場らしい働きをするようにーー競争が高まり、搾取が少なくなるようにーーすること、そして市場の行き過ぎを調整することによっても達成される。

アメリカ社会への投資を増加させ、一般市民に対する保護を手厚くすれば、経済の効率性と活力は向上するだろう。
そして、わたしたちが目指す理想に一歩近づいた経済は、より幅広い社会の層に、より多くの機会を与えるだろう。
上位1パーセントの人々でさえも、貧困層に属する多くの人々の才能が浪費されなければ、その恩恵にあずかる可能性がある。
将来的には、上位1パーセント入りを狙う人々が増えていくだろう。

ミクロ経済政策とマクロ経済政策を左右する支配的イデオロギーは、社会における平等性の向上から影響を受ける可能性が高い。
このイデオロギーが拠りどころにしているおとぎ話を、本書はいくつか暴き出してきた。
つまり、上流層による政治的支配がかたよった信念と政策を生み、このような偏向が経済的不平等と政治的支配を強化する、という悪循環からわたしたちは脱出することができるのだ。

アメリカの労働者は3分の1世紀のあいだに、自分たちの生活水準が最初は停滞し、それから徐々に低下するのを目撃してきた。
世界大恐慌のどん底で、やがて市場の力が優勢となって経済を完全雇用状態まで回復させるだろうと主張する人々に対し、ケインズはこう反論した。
長い目で見れば市場はうまく働くかもしれないが、長い目で見ているうちにわれわれは死滅するだろう、と。
しかし、労働者がこれほど長いあいだ生活水準のじりじりとした低下にさらされるとは、かのケインズでさえ考えていなかったにちがいない。

本章では、”いまとちがう世界”の創出に必要なことーーアメリカの経済と政治に必要な改革ーーを再検証していく。
残念ながら、わたしたちは”まちがった”道を進んでおり、政治的・経済的変化は状況のさらなる悪化を招く危険性がある。
本書の最後は、進路変更の必要条件についての概説ーー楽観につながる注意書きーーで締めくくりたい。

【経済改革の7つの基本方針】

経済改革の基本方針が真正なものであれば、経済効率性と公平性と機会均等性は同時に高まり、大多数の人々が恩恵にあずかるだろう。
唯一の敗者は、上位1パーセントの一部ーーたとえば所得をレントシーキングに依存している人々やそのような人々との結びつきがあまりにも強すぎる人々ーーかもしれない。
アメリカは上層、中層、下層それぞれに問題をかかえており、これから提示する改革案は、わたしたちの診断結果に即している。

単純な方策では解決は望めない。
すでに本書は、今日のアメリカがかかえる高水準の不平等と低水準の機会均等について、複数の促進要因を特定してきた。
しばしば経済学者たちは各要因の相対的重要性を論じるが、問題の解決がほぼ不可能な理由は、やはり本書で指摘してきたとおりである。
さらに言うと、アメリカにおける機会の不平等は、もはや一線を越えてしまっており、打てる手をすべて打たなければならない段階に入っている。
不平等の原因の中には、わたしたちではとうてい制御できないものもあるし、長い時間をかけて徐々に変えていくしかないものもあるが、ただちに取り組めるものもある。
改革は包括的に行なわなければならない。
以下に挙げる7つの改革が経済のゆがみに大きな変化をもたらしてくれるだろう。

(1)金融部門の抑制。

不平等拡大のかなりの部分は、金融セクターの行き過ぎと関連しているため、改革プログラムに着手する際、金融界から始めるのは自然な流れと言える。
ドッド・フランク法は第一歩だが、あくまでも第一歩にすぎない。
ここで、6つの緊急課題を述べる。

(a)
行きすぎたリスクテイクと、”大きすぎて潰せない”もしくは”相互のつながりが強すぎて潰せない”金融機関を制限する。
この2つの組み合わせは破滅的な結果を招きかねず、じっさい、過去30年間にわたって金融機関の救済が繰り返されてきた。
鍵となる対策は、レバレッジと流動性の制限。
なぜなら銀行界はどういうわけか、レバレッジという魔法で無から資源をつくり出せると信じているからだ。
そんなことができるはずはない。
現実に銀行が生み出すのは、リスクと激しい変動だ。

(b)
銀行の透明性を高める。
とりわけデリバティブの店頭取引はもっときびしく制限すべきであり、政府保証のもとにある金融機関がデリバティブを引き受けるべきではない。
高リスクの金融商品を保険とみなそうと、ギャンブルとみなそうと、ウォーレン・バフェットのように”金融の大量破壊兵器”とみなそう、と損失補填に納税者を巻き込むべきではない。

(c)
銀行業界とクレジットカード業界の競争性を高め、各企業が競争的な”行動”を取るように仕向ける。
アメリカの技術力をもってすれば、21世紀にふさわしい効率的な電子決済システムは実現が可能だ。
しかし、既存の決済システムは、クレジットカードとデビットカードの維持に固執し、消費者を搾取するだけでなく、取引ひとつごとに小売商から多額の手数料を徴収している。

(d)
高利貸し(行き過ぎた高金利での貸付)に対するきびしい制限をふくめ、銀行が略奪的貸付と濫用的クレジットカード業務に従事することを難しくする。

(e)
過度のリスクテイクと近視眼的な行動をうながす役員ボーナスを抑制する。

(f)
オフショア・バンキングの拠点(と、それに相当する国内拠点)を閉鎖する。
これらの拠点は、規制回避と脱税・節税の両面で大いに役立ってきた。
ケイマン諸島でこれほど金融業が栄えることは、合理的に説明できない。
ケイマン諸島そのものにも、ケイマン諸島の気候にも、金融をひきつける要素はなく、ひとつだけ考えられる理由は租税回避だ。

以上の課題の多くは相互に関連している。
たとえば、銀行業界の競争性を高めれば、濫用的業務が行われる可能性も、レントシーキングが成功する確率も低くなる。
銀行は規制逃れを大の得意にしているため、金融セクターを抑え込むことは難しいだろう。
銀行の規模に上限を設定ーーそれだけでも厄介な作業だーーしたとしても、銀行同士は(デリバティブのような)契約を結び、”相互のつながりが強すぎて潰せない”状態を確実につくり出すはずだ。

(2)競争法とその取り締まりの強化。

法体系と規制体系はあらゆる側面において、効率性と平等性に影響を与えているが、競争と企業統治(コーポレート・ガバナンス)と破産にかんする法律はとりわけ影響が大きい。

独占と不完全な競争市場は、レントの主要供給源だ。
本来より競争性が低いセクターは、金融界だけではない。
アメリカ経済を見渡してみると、驚くべきことに、2社、3社、4社に牛耳られている部門が非常に多い。
それでよいと考えられていたときもあった。
技術進歩にもとづく活発な競争が、支配的企業の交代を実現させるはずだ、と。
これは市場内の競争ではなく、市場参加をめぐる競争と言ったほうがいいが、わたしたちは今日、その考え方が不充分であることを知っている。
支配的企業は競争抑圧のためのツールを持っており、多くの場合、イノベーションの抑圧さえ可能だ。
彼らが設定する高い価格は、経済をゆがめるだけでなく、税金のようなふるまいをする。
しかし、集められたこの”税金”は、公共の目的に振り向けられず、独占者たちの金庫の中に貯め込まれる。

(3)企業統治の改善
ーー特に制限すべきなのは、CEOが莫大な社内資源を私的に流用する能力。
・・・
(4)破産法の包括的改革
ーーデリバティブの扱いから、担保割れの住宅、学資ローンまで。

ゲームの基本ルールが市場の機能を決定づけ、最終的に効率性と所得分配が大きく左右される、という実例は破産法にも見られる。
ほかの多くの分野と同様に、破産法が上層を利する度合いはどんどん高まっている。

すべてのローンは、自発的な貸し手と自発的な借り手との契約だが、一方の市場に対する理解は、もう一方よりはるかに深いと考えられている。
要するに、情報と交渉力の面でとてつもない非対称性が存在するわけだ。
それゆえに、あやまちの結果をもっぱら引き受けるべきは、貸し手であって借り手ではない。

債務者が有利になるよう破産法を改正すれば、銀行にはもっと注意深く貸付を行なうインセンティブが与えられるだろう。
信用バブルの発生頻度も、多額の負債をかかえる人々も少なくなるはずだ。
前にも述べたとおり、最もたちの悪い融資のひとつは、学資ローン制度である。
学資ローンの場合、悪質な貸付を助長してきたのは、個人破産をしても債務が免除されないという法律だった。

つまり、バランスを欠く破産法によって、金融セクターの膨張や、経済の不安的化や、貧しい人々と金融知識に乏しい人々の搾取や、経済上の不平等が促進されてきたわけだ。

(5)政府の無償供与の打ち切り
ーー公共資産の譲渡においても物資の調達においても。

先述した4つの改革の焦点は、金融関係者をふくむ上層の人々が ”私的” 取引において、消費者や借り手や株主などを搾取できないようにすることだ。
しかし、レントシーキングの多くは、納税者の搾取という形で行なわれる。
搾取はさまざまな装いを身にまとっており、たんに無償供与と説明するのがふさわしいものもあれば、企業助成の項目にあてはまるものもある。

2章で説明したとおり、企業に対する政府の無償供与は莫大な額にのぼる。

・・・
(6)企業助成の打ち切りーー隠れた補助金をふくむ。

これまで説明してきたとおり、政府はほとんどの場合、援助が必要な人々に手を差しのべず、貴重な資金を企業助成に振りむけている。
補助金の多くは税法の中に埋もれている。
すべての抜け穴と例外と免除と優遇は、累進性を低下させてインセンティブをゆがめるが、この傾向は企業助成の領域でとりわけ強くなる。

・・・

コメント(1)

全く、日本の現状にも、当てはまります。

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