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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏のご紹介】 「世界を変えた14の密約」 第10章 企業が政府を支配する

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ジャック・ペレッティ 文藝春秋

1930年代、ヘルマン・アプスはドイツの民間銀行、
デルブリュック・シックラーの共同経営者を務めていた。
デルブリュック・シックラーには特別な口座があった。
その口座は銀行の誇りであり、銀行ではそのお得意様に特に手間をかけていた。
それはナチ党の口座だ。
ヘルマン・アプスはヒトラーの銀行の管理人で、
毎月総統に給料を支払っていた。
アプスは自伝にこう書いている。
「ベルリンの総統官邸はこの銀行最大の口座で、
この口座を通してヒトラーは総統としての給与を受け取っていた」
アプスはナチ党との個人的なつながりもあった。
官邸のマルチン・ボルマンの友達だったのだ。
1943年、ナチ党銀行委員会が設立された時、アプスは
ボルマンを助けて資本と金と株式をスイスに送る手伝いをした。
とはいえ、アプスはナチ党員ではなかった。
・・・
戦後、ナチスの協力者は投獄されたり処刑されたりしたが、
アプスはドイツ最大の銀行であるドイチェバンクの会長になった。
アプスはアデナウアー大統領に西ドイツ再建のための借款を提供した。
・・・
1958年、権力と尊敬を集めるビジネスマンとしてドイツ最大の
銀行を率いるようになっていたアプスは、大胆な提言を行った。
これが歴史を変えることになる。
戦後世界の枠組みは、権利の主張により決まってきたと彼は言った。
ナチスが行ったような残虐行為を二度と繰り返さないために、
人権宣言が生まれた。
しかし、企業の権利はどうなのか?
アプスはそう問いかけた。
戦後、政府権力の増大が叫ばれ、企業は二の次とされてきた
とアプスは感じていた。
しかし、政府ではなく企業が、自身の命運を決めるべきだ。
アプスは民間投資家のための国際的な「マグナカルタ」を提案し、
企業の統治権を政府の上に置くことを唱えた。
つまり、企業と銀行が、利益創出という企業の生得権が損なわれた
と感じた場合には、政府を訴えられるような法的な枠組みを持つべきだ
と言ったのだ。
民間投資家のための「マグナカルタ」が実現するには、
政治家の介入から資本を守るような特別な国際法廷が必要になる。
事業投資は規模が大きく重要性も高いため、
投資先の国家の司法管轄のもとではそれができない。
企業が行きたい場所に行き、やりたいことをやるのを
政府が止めるべきではない、とアプスは唱えていた。
アプスはナチ党のマシンが滑らかに動くための中心的な役割を果たし、
新しい民主国家としてのドイツの離陸を助け、その過去の痕跡を
すべて消し去ることに力を入れた。
しかし、彼の本当の功績は、戦後の西側の民主主義における
権力構造の根本的な入れ替えを提案したことだった。
彼の提案は、政府から力を奪い、台頭してきたグローバル企業へと
その力を移すものだった。
そうなればグローバル企業は政府をその足元に置くことができる。
ISDSーー小槌のもとにある、ひとつの世界
それを解決したのが、1958年にニューヨークで世界銀行によって設立された
「国家と投資家の間の紛争解決手続(ISDS)」と呼ばれる法廷だ。
アプスの夢がここにかなった。
・・・
2014年10月、エコノミスト誌は企業法廷の仕組みをこう説明した。
「政府が法案を通過させると、たとえば禁煙を促したり、環境を保護したり、
核による惨事を防止したりするような法案を成立させたときに、
それに対して外国企業は秘密の法廷でその政府を訴える特殊な権利を持っている。
高給取りの弁護士たちが働くその法廷が、国家と投資家の間の紛争解決手続、
すなわちISDSだ」
・・・
この案が可決されたのは、1964年に東京で開かれた世界銀行の
年次総会の場だった。
21か国ーーラテンアメリカ諸国とイラクとフィリピンーー
はこの動議に強く反対した。
こうした国々は「開発」という言葉を「搾取」と受け止めた。
しかしその反対は無視された。
この過程を見守っていたアメリカの法学者アンドレアス・ロウェンフェルド
は、こう言っている。
「世界銀行でこれほどの反対を受けた動議が無理やり可決されたのは、
はじめてだったと思います」
ISDSは法廷をねじ伏せるほどの力を持つ企業の手に、
すべてのカードを渡した。
企業はそれができるだけの弁護士を抱えていた。
新興世界(当時は「第三世界」と呼ばれていた)の国々は
企業と同じだけの能力を持つ法律家を集めることができず、
法廷で企業と対等に闘うことはできなかった。
2000年以来、この法廷で数百という企業が世界中の半数を超える
政府を訴え、勝ちを収めていた。
政府は国境に閉じ込められ、企業は国境を越えて世界を支配する
ボーダフォンは自分たちに税金を払わせようとしたインドを訴えた。
勝ったのはボーダフォンだ。
アメリカの巨大農業コングロマリットのカーギル・ADMは、
児童の肥満を減らすためにソフトドリンクへの砂糖税を導入した
メキシコを訴えた。
カーギルが勝った。
メキシコは大胆にも水の価格に上限を設けようとして訴えられた。
水へのアクセスは国連憲章でも決められた基本的人権だ。
しかし訴えた企業が勝ち、メキシコではボトル飲料水よりも
コカ・コーラの方が安くなった。
・・・
ヘルマン・アプスの唱えた「マグナカルタ」がいま現実になった。

「世界を変えた14の密約」 ジャック・ペレッティ 文藝春秋

コメント(2)

世界経済のグローバル化というのは、こういうことなんですね。
いまや、中ロも、大手資本の傘下ですから、やがて世界は、国境を越えた
大手資本(おもに、ユダヤ資本)の手に落ちるでしょう。
米中を競わせて・・・
>>[1]

さすが経済学の専門的見識。なるほどと同感です。

トランプの娘婿さんは、イスラエル・ユダヤの軍産複合体と親しいですしね。

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