孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの〈検察は治安維持法・ゾルゲ事件（実質冤罪事件）の戦前と戦後はつながっている。ゾルゲ事件を担当した二人の検事、井本台吉と吉河光貞は何と、砂川事件の検事、井本台吉は検事総長に。〉

【孫崎享のつぶやき】2017-04-16 07:44


【驚くことに検察は治安維持法・ゾルゲ事件（実質冤罪事件）の戦前と戦後はつながっている。『日米開戦へのスパイ』（７月発売予定）。ゾルゲ事件を担当した二人の検事、井本台吉と吉河光貞は何と、砂川事件の検事です、井本台吉は検事総長に。戦後冤罪的性格追及せず。】


Ａ：ゾルゲ事件の本質は何か。東條が近衛追い落としに利用したのです。

ゾルゲ事件の担当検事は１９５１年米国議会委員会で、「近衛内閣は、尾崎逮捕で苦境においやられ、どどのつまり総辞職いたしました」と証言しています。
『米国公文書 ゾルゲ事件資料集』（社会評論社2007年）は、１９５１年８月吉河光貞検事が米国下院非米活動委員会で行っている証言を掲載しています。 吉河光貞は「東京地方裁判所時代には思想検事としてゾルゲ事件の捜査に参加、ゾルゲを取り調べました。
戦後は1948年に設置された法務庁特別審査局(後の公安調査庁)の初代局長、1964年公安調査庁長官に就任した人物です。

「私は尾崎を目黒警察署で取調べ、彼は即日自供した。当時我々は外国人を逮捕すべしとの結論に到達した。　近衛内閣は、苦境においやられ、どどのつまり総辞職いたしました」
森正蔵氏（戦争前後の新聞記者）は１９４６年、「尾崎逮捕、近衛討閣は日米開戦に導こうとする軍国主義者達のうった手とみられないだろうか」と記述しています。

まず、森正蔵氏の論をみる前に、森正蔵氏が如何なる人物かを見ておきたいと思います。
1924年東京外国語学校を卒業し、2年後に毎日新聞社大阪本社に入社。毎日新聞ではハルピン・奉天特派員を経てソ連特派員としてモスクワに駐在。帰国後大阪本社外信部ロシア課長になり、当時の新聞界において有数のソ連通と言われた人物です。
1945終戦後に東京本社社会部長・出版局長等を歴任し、1950年取締役に就任し論説委員長となっていますから、ジャーナリストとしては高い評価を受けた人物です。ソ連の事情にも詳しい、犯罪を扱う社会部にも在籍して言います。
（尾崎が逮捕された翌日に近衛内閣が倒されたことに関して）
「日米開戦に導こうとする軍国主義者達のうった手とみられないだろうかということである。両者は単なる偶然かもしれない。
　しかし、尾崎事件―近衛内閣総辞職に軍国主義者達の大きな政治的力が働きかけたであろうことは想像に難くない。」




Ｂ：驚くことは、ゾルゲ事件の中心となった、二人の検事、井本台吉と吉河光貞は何と、砂川事件の検事です。


そしてこの時の判決が集団的自衛権の時の、政府側の根拠になったのですから、今日まで続いていると言えます。

（『自民党が集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案について、「決して憲法違反だとか立憲主義の逸脱ということはない」として正当性を訴える文書を作成し、党所属議員に配布したことが、８日分かった。』『それによると、「かつてほとんどの憲法学者は自衛隊が違憲だと言っていた」「そもそも憲法判断の最高の権威は最高裁」などとして、学者の意見をけん制。　最高裁による１９５９年の砂川事件判決で、自国の存立のために必要な自衛措置は認められるとされたことに触れ、「最高裁のいう自衛権に個別的自衛権か集団的自衛権かの区別はない」と指摘し、「日本の存立を根底から覆すような場合」は「集団的自衛権を行使することは何ら憲法に反するものではない」と強調した」ということです。　かつて弁護士の高村自民党副総裁が「砂川最高裁判決は集団的自衛権の行使を容認している」と同判決を利用しようとしたのに対して、同じく弁護士である与党公明党の山口代表、北側副代表から「個別的自衛権を認めた判決だ」とたしなめられたことがあります。

さらにゾルゲ事件に同じく検事として関与した井 本 台吉は 1967/11/2― 1970/3/31、布 施 健は1975/1/25―1977/3/20検事総長になっています。

　こんな中で、ゾルゲ事件が冤罪的性格を持って居ることはほとんど追及されないで来たのです。