孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの《２０１７年国際政治の注目点：最大焦点はトランプ政権》

（＊「前説」さすが外務省の局長出身の孫崎さん。賛否は読者諸氏によってわかれるでしょうが、その分析の視点は、「地球儀を意味ある俯瞰」をふまえています。視点の内容よりも、どのような視点が過不足なく必要かを教えてくれていますね。櫻井智志）

【孫崎享のつぶやき】《２０１７年国際政治の注目点：最大焦点はトランプ政権》

【トランプ政権の誕生は、米国白人男性を中心とした金融界を中心とした米国既成勢力に対する反発。
だが新閣僚人事では史上最大の富豪政権。早晩対立。
対ロシア政策で強硬派と穏健派間の主導権争いが勃発しよう】

2017-01-01 08:30

１：米国トランプ政権の動静、国内問題

①：トランプ政権の誕生は、米国白人男性、を中心とした金融界を中心とした米国既成勢力に対する反発。

　トランプは政権長官を次々任命しているが、米国歴史上にもない富豪政権。彼らの哲学は決して貧困・中間層の価値観と一致していない。どの時点で、貧困・中間層が強い反発をトランプ政権に示すか。

２：国際問題
対外関係では、対ロシア、中東、中国が特に注目される。

①対ロ政策では明確にトランプ路線と既存のロシアは対立している。

　いわゆるネオコン勢力は対ロシア政策を牛耳ってきた。

　数年前、ＮＡＴＯはロシアは最早ＮＡＴＯの敵でない政策を採用。これは欧州の軍事費削減、米軍基地閉鎖の動きにつながり、国務省を牛耳っていたネオコン・グループはウクライナで危機を創造、ロシアとの対決に持ち込んだ。

　一方、トランプはロシア内のホテル建設、高級マンション建設等の関係でほとんどの有力ロシア経済人と交流。当然政治家とも。ここからロシアとの協調を模索。トランプは国務長官として、米石油大手エクソンモービル会長兼最高経営責任者（CEO）のティラーソン氏（64）を起用。ティラーソンは北海石油開発、サハリン石油開発等を通じロシアと協同。ロシアに対する融和政策を主張。

　トランプ政権で最初の国内路線争いが対ロ政策になろう。

サイバー攻撃介入と米国、スパイと認定した米国駐在の露外交官ら３５人の国外退去処分。露外務省は対抗措置とるように進言するも、プーチン対応措置とらず。トランプ、　トランプ氏はツイッターで「すばらしい対応」とした上で、「私はいつも彼がとても賢いと知っていた！」と述べて、トランプ、対ロ政策で違いを表明。他方、トランプ政権で国務副長官に予定されているボルトンはＦＯＸNEWSで「ロシアの行為は米国憲法を侵すものである。オバマの措置は何らインパクトを与えるものでない。米国はロシアが痛みを感じるようにしなければならない（United States must “make the Russians feel pain.”）と述べている。　

②：中東

　マティス国防長官等多くの軍関係者が政権入り。基本的に中東への軍事介入支持者。

　イランに対する核合意に反対の姿勢。イランが核合意を順守しないとして破棄の可能性。

　シリアにおいては、ロシア、トルコ、イラン主導で、アサド政権を容認する停戦合意を樹立。米国抜き。これに米国はどう対応するか。停戦合意した７反政府勢力のうち、５グループは米国の支援を得てきた。ロシア、トルコ、イラン、シリア対米国、サウジ、イスラエルの対立構造。

③：中国は最も複雑な構図。

　これまで米国においては軍を中心とする対中強硬派と、米国市場に参入の産業界、協調せざるをえない金融界は融和策を主張し抗争。どちらかといえば協調派が優勢。

　先ず経済ではトランプは米国国内の産業の育成を中心にしており、この政策を維持していけば、米国産業の擁護の観点から、貿易戦争の再来もありうる。

軍は対中国強硬路線を継続。

これは中東での軍事介入がどうなるかと関連。二正面作戦をとることは難しく、これまでのように中東軍事介入の継続であれば、中国への策は薄れる。

④：欧州情勢

　・英国ＥＵ離脱、離脱の基本合意いまだできず。

　・ナショナリズムの強化。中東からの移民の増大を契機に、ナショナリズムが欧州全域に。仏の大統領選挙、ドイツの首相の動向など関心。

３　日本への影響

①：米国の中東への軍事介入が強まれば、自衛隊派遣への圧力が強まる。

②：中東への軍事介入がトーンダウンすれば、対中対決に本腰になり、当然日本の参加を強化することが求められる。