孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの助言-若い世代へ⑤高山辰雄氏「自分の道を歩く以外何も出来ない。ゴーギャンの“金が欲しいのに金のとれない行動をする”その生き方に感動する」

【孫崎享のつぶやき】
助言-若い世代へ⑤高山辰雄氏「自分の道を歩く以外何も出来ない。ゴーギャンの“金が欲しいのに金のとれない行動をする”その生き方に感動する」

2016-02-15 09:334

高山辰雄氏は独自の幻想的な画風の日本画家であった。私は日展で死亡を示す黒いリボンのついた作品を見た気がするが、別人かもしれない。

　彼の画集『存在追憶　限りなき時の中に』を見ていた。引用してみたいと思います。

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・終戦後、日本画滅亡論ということがしきりに言われるようになりました。

　世の中全体がそうした風潮だったのですが、当時は欧米の文化が最高で、日本の伝統的なものはもういらない、といった意見が声高にいわれるようになっていたのです。（省略）日本画なんて時代にそぐわない、もう古い、というのです。

　体制などというものは、実に簡単にひっくり返るものだと思いました。

　先輩たちｋらも「君、どうしたらいい」と訊かれたりしたこともありました。

　しかし私は、終わりだろうと始まりだろうと、自分の絵をやっていればいいと思っていました。それで私の絵が倒れるなら倒れればいい、そんな考えでした。

　だから私の場合、日本画滅亡論に怒りを覚えたり、心を悩ませたりということは全然ありませんでした、自分が決めたことをやって、最後まで自分の旗をあげていれば良い。最終的に日本画が滅びるのだとしても、それは自分が決めることではない。ともかく、これまでやってきたことをやり通そうと思っていただけです。

・『子供と牛』は昭和二十一年の三月に開催された第一階の日展美術展覧会に出品しましたが、落選してしまいました。落選と言うのは、絵描きにとってはかなりショックな出来事なのです。

　そのころ、ちょうどゴーギャンの伝記に出会ったのです。

　先輩の山本丘人に、「あれをよんでみるといいよ」と勧められたのです。

ゴーギャンという人は、口が悪くて、仲間からも嫌われていて、奥さんを捨てて、国から出て行ってしまったという悪評の高い絵描きでした（省略）

ゴーギャンは自分のやりたいことをやるわけですが、今度は売れる絵を描こうと思って筆を持った途端に、やっぱり売れない方の絵になってしまう。いつも金が欲しいくせに、筆を持った途端に、やっぱり売れない方の絵になってしまう。いつも金が欲しいくせに、金のとれる絵は描かないというところが素晴らしい。（略）

誰だって金が欲しいのは決まっています。だが、やることといったら金のとれないことしかできないゴーギャン。

伝記を読んだことから、その絵にも惹かれ、創作上の影響もうけました。

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「私は、終わりだろうと始まりだろうと、自分の絵をやっていればいい」というものを持てるかどうか、そこが重要だと思います。実は「自分の絵をやっていればいい」に達するのは、容易なことではないと思います。そこにその人の価値があります。