ヨガをする者としては、完全菜食主義が特殊な意味を持つ。アシュタンガヨガを志す者の教典のような、I・S・アイエンガーのLight on Yogaという本によると、ヨガにはどう生きるべきかという、探求的・哲学的な面があって、ヤマ(Yama)とよばれる5つの節制がある。その一番最初がアヒムサ(Ahimsa)という観念で、「他を傷つけない」ことである。その点での葛藤もないのが嬉しい。もちろん、完全菜食主義者だからといって罪深さから完璧に切り離れるわけではない。良質の植物性プロテイン源にキヌアという穀物があって、これが先進国の菜食主義者からの需要が高いので値段があがり、もともと主食にしていたアンデス山脈の農民が困っているらしい。これについては何の解決策もなく、ただ、なんとなくキヌアを買うことを避けるようになった。
完全菜食主義が極端であるのは間違いない。でも、1977年にアメリカ政府が発表したランドマーク的なスタディである“Dietary Goals for the United States”はアメリカ人に肉・乳製品・卵を減らして果物・野菜・穀物など植物性の食べ物を増やすよう提言したものだった。また、信頼されているところで、ハーバード大学メディカルスクールのウォルター・ウィレットの「健康な食事のピラミッド」やコーネル大学のT・コリン・キャンベルが行った「チャイナスタディ」なども早いところ、動物性より植物性メインの食生活を、という見解だ。フロリダにあるヒポクラテス・インスティチュートのように、植物性食事療法のみでステージ4の癌患者を含めた沢山の患者達の健康を回復させているので有名な施設もある。