孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの読売社説批判②　中国の抗日戦争式典の国連事務総長出席非難等。米国国務省報道官は「悲劇的戦争で亡くなった人々の甚大な犠牲を弔うのは妥当」の判断が評価の出発点であるべきだ

【孫崎享のつぶやき】
読売社説批判②　中国の抗日戦争式典の国連事務総長出席非難等。米国国務省報道官は「悲劇的戦争で亡くなった人々の甚大な犠牲を弔うのは妥当」の判断が評価の出発点であるべきだ
2015-09-04 06:523

　この問題は、単に読売社説だけでなく、日本社会全体を覆っている問題であり、我々はこうした傾向が妥当であるか、真剣に顧みる必要がある。

読売社説「抗日戦勝７０年　習氏が内外に誇示する軍事力」2015年09月04日http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150903-OYT1T50153.html?from=ytop_ylist

　いくつかの主要点を見てみたい。

・強大な軍事力の誇示は中国の軍拡路線を象徴するもので、地域の安定を脅かす。

・「抗日戦争勝利７０年」の記念行事と軍事パレードが３日、北京の天安門広場周辺で行われた。対外的な「反日宣伝」活動の一環であるのは明白だ。

・過去に過度に焦点を当て、和解や未来志向の要素を排することは日中関係の改善に逆行する。

・習氏は、「戦勝国」や「強軍」をアピールすることを通じて国民の愛国心を煽あおり、政権の求心力を維持したいのだろう。

・注目すべきは、米本土を射程に収める新型の大陸間弾道ミサイル（ＩＣＢＭ）を初公開したことだ。演説で、第２次大戦で米国が果たした役割を無視したのと合わせ、アジア秩序から米国を排除しようという意図もうかがえる。

・日中戦争当時の中国は、主として国民党の統治下にあった。中華民族全体の勝利と位置付けることにより、共産党政権の正統性を強調するつもりなのだろう。この論理は歴史の歪曲ではないか。

・問題なのは、潘基文・国連事務総長が出席したことである。ロシアの「対ドイツ戦勝７０年記念式典」にも参加した潘氏は「終戦７０年を記念する様々な行事に出席している」などと正当化している。

　これでは、東・南シナ海とウクライナで一方的な現状変更を図る中露の行動を容認するメッセージにならないか。菅官房長官が「国連は中立であるべきだ」と懸念を示したのは、当然だろう。　

・朴氏のパレード出席には、韓国の最大の貿易相手で、経済依存を強める中国を重視せざるを得ない事情があろう。

韓国は米国の同盟国でありながら出席した。同盟の原点は、中国が北朝鮮側に立った朝鮮戦争で米国が韓国と共闘したことだ。最近の南北の緊張緩和に力を貸した中国に揺さぶられ、安全保障分野でも迷走しているのではないか。

まず「抗日戦争勝利７０年」の記念行事をどのように評価するかである。

９月１日米国務省のMark C. Toner副報道官のブリーフを見てみよう。

問：大島衆議院議長が潘基文・国連事務総長と会った。日本は潘基文・国連事務総長が中国にいき、「抗日戦争勝利７０年に出席するのは、国連の中立性を侵すものであるとして批判的である。どう評価するか。

答え：明日起こる記念行事に対する我々の立場は極めて明確である。悲劇的戦争で闘い亡くなった人々の甚大な犠牲を弔うのは妥当なことであると考えている（ We think it’s appropriate to honor the tremendous sacrifices of those who fought and died in that tragic war.）

我々は欧州戦勝記念日（VE Day）にも述べたことであるが、,我々の焦点は将来と、戦後この地に平和と繁栄とある。

問:歴史的事件で国連の役割をどう評価すべきか

答え：それは国連が決めることである。国連は如何なる役割を演じたいか自ら述べることが出来る。国連は世界の重要事件を討議するため全ての国が対話を追及し集まることが出来るという事実のためにある。国連が象徴することは自らかたっていると思う（And so what the UN symbolizes I think speaks for itself.）

この応答でみるように、戦勝記念日事態に対する否定的見解は見られない。

国連事務総長はソ連の対独戦勝記念にも出席しており、その時、ドイツは厳しい批判をしたか。米国は批判をしたか。

こと、第２次大戦の扱いにおいて、一方に日本の立場がある、一方に中国の立場がある、だから中国の主張に理解を示すことは中立性を揺るがすという問題ではない。国際的に第二次大戦の評価では、日本は常に被告席の側にいることを忘れてはならない。

私は、国連事務総長の出席を非難するのはあまりに醜いと思う。確かに西側主要国は首脳クラスを送らなかった。しかし、各々の政府代表として、駐中国大使を出席させている。この出席を非難すべきものと位置付けてはいない。

今一つ、抗日戦争では中国共産党の果たした役割は大きい。かつ政権交代した政府は過去の政府の遺産を引き継ぐ。抗日戦争記念を現中国が主導することへの疑問は正しい問題提起ではない。

コメント(1)

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[1] mixiユーザー 09月07日 10:50

私も、国連事務局長の言う「国連は、中立でなく、公平、公正である」を支持します、
ロシアの対ドイツ戦勝利70周年にも出席しているし、中国の対日戦勝70周年出席も当然。
アメリカやイギリスで対日戦勝70周年パレードがあれば、国連総長は出席するでしょう。
国連の成り立ちを考えれば当然で、戦勝国が作った組織であり、日本、ドイツはいまだ敵国です。

それに、右寄りの人が、対日戦勝利は今の共産党政権でなく、国民党である、というが、国家を継承している今の政権が行うのは当然。ロシアがソ連の代わりに行うのと同じでしょう。

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