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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの《書評丸谷才一「笹まくら」を再読:戦後20年ですでに、徴兵忌避者を社会が排除する空気を描く。》

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【孫崎享のつぶやき】
《書評丸谷才一「笹まくら」を再読:戦後20年ですでに、徴兵忌避者を社会が排除する空気を描く。》
2015-06-18 05:163



丸谷才一『笹まくら』を再読してみた。

A:筋は『終戦の日に読む一冊「笹まくら」丸谷才一』(http://www.shirotruffe.com/blog/books/sasamakura.php)に詳しいのでそれを引用したい。

「大学職員として、若く美しい妻との静かな生活を送る浜田。ある日、「阿喜子」の死を知らせる電報が届く。そこから物語が展開し始める。現在は現在として未来に進むのだが、過去の場面は過去からさらに昔の過去へと遡るように進んでいく。

浜田の生きる現在は戦後20年が経過した時代。彼の身の回りに色々な変化が起きるようになる。ある日課長へ出世する機会を得るのだが、それがなぜか頓挫する。その理由が浜田の過去の徴兵忌避に基づくものだったのだ。

徴兵忌避で戦時中に各地を逃げている間は、砂絵師「杉浦」として過ごし、器用な杉浦は同時にラジオの修理をしたりして生計をたてる。憲兵と何度も接触しながらも、機転がきく杉浦は捕まることはない。そしてやたらモテる。杉浦はある日質屋の娘「阿喜子」と知り合い、彼女と一緒に各地を転々とすることになる。

逃亡する緊張感の中で繰り広げられる阿喜子との愛の日々の描写は美しく、はなかい。そして(かなりエロい)。凄惨な戦争の脅威が直接描かれているわけでもないのに、その脅威の影がつねに追いかけてくるために、そのはかなさが際立つ。やがて二人は別れる。砂絵師に扮しているとはいえ、インテリでモーツァルトを愛する医者の息子浜田が、田舎の娘と合うはずがないからだ。やがて阿喜子は結婚し、二人は異なる道をそれぞれ進むことになる。

さて、時が経ち現在。課長になりそこねた浜田の身に次々に面白くない出来事が起こるが、戦時中でないのに徴兵忌避という事実から逃れられない。かつての無二の親友に協力を仰ぐが、どこかうまくいかない。そしてついに若い妻との関係も微妙になる。浜田に対して露骨な敵意を持ち陥れようとする人は存在しないのだが、過去の出来事が原因で今翻弄される様が恐ろしい。」

B:

 主人公は戦争忌避者である。

 戦争忌避というのは、人生の一つの選択であろうが、それを実現することは至難のことである。

 とりあえず、主人公は貫徹した。

 戦後直


 丸谷才一自身次のように記述した。最初の単行本の帯には「作者のことば」として次の言葉が付されている。

「徴兵令が布かれてから敗戦の日までの長い歳月のあいだ、日本の青年たちの夢みるもっともロマンチックな英雄は、徴兵忌避者であった。彼らはみな、この孤独な英雄の、叛逆と自由と遁走に憧れながら、しかし、じつに従順に、あの、黄いろい制服を着たのである。そう、ぼく自身もまた。……」

 一時は徴兵忌避者はロマンチックな英雄であった

 しかし、戦後20年、つまり1965年にはこれはもう社会的に非難の対象になってきたのである。

 そして、その世論がじわじわと形成され、大学の事務職の人間が課長に栄転する可能性が出てきた時にこれを締め上げていく。

 これまで彼を庇護してきた理事の豹変、

 昇進をねたむ同僚、工作を企む

 擁護に躊躇する進歩的学者

 利用する右翼の物書き

 これらが各々の分野で、一見まともな理由で締め上げていく。

 まさに現代ではないか。

 しかし、日本が平和国家と思っていた1965年にその空気を察知していた丸谷才一とは凄い人だ。

 1965年は私が外務省に入るころだ。

 「反ベトナム戦争」「反自民党」が大学でまだ、謳歌していた頃だ。

 今、丸谷才一の書いた世界が大手を振って日本社会となっている。

コメント(2)

私も、1964年(東京オリンピックの年)に大学を卒業して、就職をしました。
ここに書かれている、年とダブります。
思い起こせば、高度成長のさなか、もう戦後ではない、と言われました。
丸谷才一の小説は、読んだことないですが・・・・機会あれば読みたいですね。
>>[1]

私も父からもらった評論集は読みましたが、丸谷才一の小説は読む気持ちがわかず未読です。

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