A 病歴書(診療記録書)にリュ・ミョンスク(女性、めぐみさんの朝鮮名)1964年10月5日生まれ、1977年日本から朝鮮に囚われて入国し、(国家安全)保衛部の調査を受けていたそうです。最初、病院に到着したときには健康状態、精神状態も良好でした。しかし過酷な調査を受けて健康状態が悪化し、保衛部の病院で治療を受けたこともあったそうです。私に、日本の故郷の住所を示して、自分の消息を知らせてほしいと頼まれました。烽火診療所はこの女性が行けるところではありません(注:横田さんが入院していた病院はここではないという意味)
A 一緒に拉致された男性(1978年に韓国から拉致された金英男氏)と結婚し、日本から朝鮮にやってきたこと、故郷の父母の話、朝鮮幹部が「朝鮮で教育を受けたら日本に戻してやる」と約束した話をしていました。しかし夫に、約束通り両親に手紙を送ろうという話を巡って激しくけんかし、その後、夫が女性を遠ざけるようになったそうです。夜になると、両親を呼ぶ悲痛な声「オサンオサン(注:お父さん、お母さんを聞き違えたと思われる)」が聞こえました。保衛部が随時監視しており、面会も謝絶でした。海外同胞迎接部の人もときどき来ました。人民班長と周辺人物に秘密情報院を潜入させて監視しました。病院に入院したときは、特別に隔離病棟に入りました。この精神病院(平壌49号予防院)は、鉄道の駅から歩いて数時間かかる山の中にありました。たまに患者が逃げ出して付近の住民に迷惑がかかるため、遠隔地に病院を建てたそうです。
<4>横田めぐみさんにどのような薬を、いつからいつまで、どのくらい投与しましたか?
A ディアゼパム(Diazepam)0.002 1錠、1日2〜3回、1回2〜5錠、内服。患者の精神安定目的。 ハイミナル(Hyminal)0.1 1錠、1日2回、1回2〜4錠ずつ内服。強力な睡眠作用がある。5錠以上投与すると20時間の睡眠誘導効果があり、10錠以上投与すると致死量に至る。 アミナジン(Aminazin)錠剤、注射でそれぞれ処方。注射2ml〜5ml程度(筋肉注射)。精神安定および睡眠誘導のため。
A 私は1990年から95年までこの病院に勤務しました。この患者は1994年4月10日に死亡しました。数日後、4月15日に山に埋葬されました。遺体は保衛部が党組織の指示で山に直葬されました。「直葬」とは、棺もなく、穴だけを掘ってそのまま埋めることを言います。トラクターに乗せた他の遺体5体とともに、同じ場所に埋葬しました。当日、医師1人、看護師1人、看病院5人が処理作業をしました。この女性患者が死亡した当時、全身に青い斑点がありました。通常の遺体には現れない所見です。劇物や過剰な量の薬物を飲んだり注射されたりしたときにみられる所見です。