孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの国連に関する読売新聞社説批判。単なる上滑りだけの社説は止めて欲しい

孫崎享のつぶやき
国連に関する読売新聞社説批判。単なる上滑りだけの社説は止めて欲しい
2014-09-27 07:59



27日読売新聞は「首相国連演説　常任理事国へ戦略的に挑め」という記事を掲げた。もし、戦略的に挑めば、国連常任理事国入りがあるように書いている。物事を「戦略的に挑む」なら、まず情勢判断を正確に行わなければならない。今国連改革で、国連常任理事国入りを論ずる時、その最大の関心は、現在の国連常任理事国は、米英仏中ロと第2次大戦戦勝国中心、いわゆる「先進国中心」で、幾つかの大陸、中南米、アフリカ、中近東、ASEANやインド亜大陸等が十分な発言を得ていないことにある。今日、国連改革で日本を重視し、日本を国連常任理事国に中南米、アフリカ、中近東、ASEANやインド亜大陸より重視して国連常任理事国入りを主張している国、日本以外にあげて欲しい。多分どこもない。


そのような中で、「どう戦略的に考えたら」、日本が国連安保理入りできるというのか。国連安保理自国入りして、政治紛争処理で、今日、日本が説く政治理念は何か。「米国追随」の票を一票増やすことに、世界は何の関心も持たない。実質的意味のないキャッチフレーズで、恰も意味のあるような、「「首相国連演説　常任理事国へ戦略的に挑め」のような社説はやめて欲しい。記述の幾つかを「イスラム過激派組織“イスラム国”への空爆に乗り出したのも、安保理の対応に限界があるからだ」そうなのか。

基本的にイスラム過激派組織「イスラム国」への空爆事態、求められる国際秩序に逆らう行動であるから、国連安保理等の支持があらわれないのだ。
　先ず国連憲章は「 この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。」としている。シリアは国家として存続している。この攻撃はシリア政府から要請されているか。シリア政府の合意を取っているか。主権国家を無視する行動が国連の支持をえることはない。国連はまず、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない」、「 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と規定している。主権を尊重し武力行使を慎むのが国連の第一原則なのだ。国連安保理常任理事国入りには拒否権を持つ中国、ロシアの支持を得ることは必至だ。ではこの国の支持を得る戦略的思考とは何か。ロシアに制裁をしている。制裁をしている国がロシアから、「日本は国連安保理に入って欲しい」といわれれるはずがない。どういう戦略的アイディアがここで読売新聞にあるのか。中国は承知の通り、首脳会談も開けない状況だ。もしAPEC関連で実現しても、それは中国がホスト国として義理を果たすだけだ。

読売新聞よ。あなたの新聞はさ日本が国連安保理入りする戦略的秘策がありそうに書いているから、国連常任理事国入りに不可欠のロシア、中国の支持を得る具体的戦略を示してほしい。無いでしょう。ないのにあるようなか書き方は止めるべきだ。

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『私見』
　かつて読売は戦後直後に大規模な労働争議をおこなった。労組は民主的戦闘的な組合であった。そこに乗り出してきたのは、読売巨人軍のオーナーとして常勝巨人をつくり今も「正力賞」などを残している正力松太郎である。読売の急速な右傾化と巨人の常勝化とはほぼ一体の人物のもとに担われた。読売はさらに、日本共産党員として東大細胞（支部）の指導部にいて、除籍された渡邉恒雄が社会部長などを経て社長・会長・顧問などを歴任した頃にかなり根本的に右派系新聞へと変質した。大阪本社社会部長だった黒田清さんと東京本社社会部長だった渡邉恒雄とが争って渡邉氏が主導権をものにして、黒田氏は退社。黒田ジャーナルを組織して大谷さんなどは一番弟子だった。黒田氏はがんに斃れた。