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メトロン星人の本棚コミュのガメラ 勾玉の秘密

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 ガメラが来た

「勾玉の秘密」 

1

地下鉄日比谷線を六本木で降りる。
首都高速と外苑通りの交差点、喫茶アマンド前。
そこが米森のいう待ち合わせ場所だった。約束の7時までまだ10分ほどある。
長峰真弓は米森良成を待っていた。
夏ももう終わりだというのに相変わらず東京は暑い。
目の前を行き過ぎる人ごみと、排気ガスにいいかげんうんざりしたころ、ふと長峰は外苑通りの先に目を向けた。
両側のビルに挟まれるようにして、東京タワーが見える。
いまだに中央から折れ曲がったまま、無残な姿をさらしている。
夕焼けに黒くシルエットになった東京タワーを見つめていると、まだギャオスがそこにいるかのような幻覚に襲われた。
あの時、ギャオスとガメラの戦場となったこの東京は、確かに死の街と化していたのだ

「やぁ」
背中をぽんと叩かれ、ぼうっとしていた長峰は思わず振り返った。
「待たせてごめん」
すっかり日に焼けた顔をほころばせて、米森良成がいた。
白いポロシャツにジーンズといったラフな格好だ。
長峰もつられて笑顔になった。
「米森さん。おひさしぶり、お元気でしたか」
だが、米森は返事もせずにじっと長峰を見つめている。
「へぇ、そのスーツいいですねぇ。似合ってますよ、とても。なんだか見違えちゃったなぁ」
長峰はすっきりしたベージュの麻のスーツを着こなしていた。
普段は野外のフィールドワークが多いため、作業着のようなジーンズや地味な服ばかりなのだ。
「そう、せっかく東京に来るんですもの、新しいスーツを買ったのよ」
長峰はうれしそうに笑った。
「行きましょう。食事まだでしょ。すぐ近くに知ってる居酒屋があるんです。
米森が先に立って歩き始めた。

その居酒屋はビルの8階にあった。
エレベーターを降りて店に入ると二人は奥の小さな個室に案内された。
そろそろ込み始める時間らしく店内は6割ほど埋まっている。六本木という土地柄のせいか外人の姿も多く、大皿の並んだカウンターの向こうでは、威勢のいい掛け声が飛び交っていた。
紺のかすりに赤いたすき掛けの女の子が注文を取りに来た。
「いらっしゃいませーー」おしぼりを広げて二人に手渡す。
「そうだな、まず生ビールの大ね。それと冷奴、唐揚げにソーセージの盛り合わせ、刺身盛りに・・・ほっけとポテトサラダ」一気に注文した。
じゃんじゃん注文する米森を長峰はあきれてみていた。
「私、そんなに食べられないわよ」
「いえ、これは俺が食べる分です。長峰さん、どうぞ」
「じゃ私も生ビールの大、それと肉じゃがに枝豆ね」自然と笑みがこぼれる。
ああ、この人なんにも変ってない。長峰は安心した。

「じゃ再会に乾杯ってことで」米森がジョッキを上げる。
「そうね、乾杯」
「相変わらず、よく食べるわね」
「ええ、これが俺のとりえですから」
「浅黄ちゃんたちは元気かしら」
「ええ、草薙さんは相変わらず仕事で家を留守にすることが多いですけど、その分俺が行って面倒見てますから」
「何言ってんの、どうせ食事が目当てなんでしょ。そうねきっと焼肉でも食べに行ってるんでしょ」
「はっはっは・・・ばれたか」
米森は大げさに頭をぼりぼりかきながら笑った。
「そういえば、あの勾玉。俺気になってあの後いろいろ調べてみたんです」
米森はジョッキを置いて、持ってきたバックからメモや写真、ノートを取り出した。
「あの浅黄ちゃんが持っていた勾玉、あの形の勾玉は日本独特の形だそうです。日本以外では朝鮮半島の南でしか発掘された例がないんです。
 主として祭祀の道具として使われていて、材質は碧玉、めのう、ヒスイ、水晶など透き通ったり、光を反射したりする輝石が中心となってます」
「ふーん」長峰も勾玉の写真を見ている。
「でも不思議なんです。時代をさかのぼるほど、黒い金属のような材質の石になっていくんです。あの勾玉は浅黄ちゃんの手の中で光っていたでしょう。あれはもしかしたらすべての勾玉の原型なのかもしれない。
 黒いけどガメラの心に反応して光っていた、あれをもとに他のすべての勾玉がレプリカとして作られたのだとしたら、後に光を表現する材質に変化していったとは考えられないでしょうか」
「あの勾玉は、未知の金属でできていたって、草薙さんが・・・・」
「そう、仮にオリハルコンという金属があるとすれば、こんな金属かもしれないと・・・」
長峰も米森の話に引き込まれてゆく。
「オリハルコンは伝説の大陸『アトランティス』にあったとされる金属です。俺が見つけ出した『神祀古史古伝』という書物には、こう記されてました。
勾玉は古代にはこう呼ばれていたそうです『瑠璃玻璃光ノ奇玉』(ルリハリコウノクシミタマ)。光る不思議な玉と言う意味です。ルリハリコウが、オリハルコンと言葉の形を変えて伝わっていったとしたら」
「でも勾玉が仮にオリハルコンだとしても、あの金属板の文字はヨーロッパの古代文字『ルーン文字』だったんでしょう。なぜヨーロッパの古代文字が勾玉といっしょに出てきたのかしら・・・」
 長峰が問う。
「いや草薙さんは正確には『ルーン文字』の亜種と言ってました。それにあの文字にそっくりな文字なら、この日本にだってあります」米森は一枚の紙を広げた。
 そこにはまさしく、ガメラの背中から発見された古代の金属板に刻まれていた文字と、そっくりな文字が描かれていたのだ。
「これは・・・どこでこれを」
 長峰の視線が釘付けになった。
「この文字は熱田神宮にあった碑文を写したものです」写真も取り出した。
 草深い神社の奥の宮の片隅にある古代の大石に刻まれていたんです。。
「これは『神代文字』と呼ばれている文字です。この神代文字は神代の昔に起源を発する、日本固有の文字だと言われています」
 米森は続ける。
「従来の学説では、漢字が伝来する以前は日本に固有の文字はなく、知識や物語は語り部が口伝えで伝えてきたとされてます。でも神代文字は残っている。しかも古代の日本と密接に結び付いた出雲大社、熱田神宮、静岡の浅間神社など、由緒正しい神社の神爾や碑文、洞窟やご神体の岩に刻まれて残っているんですよ。
 言い伝えではこの文字は神様が使っていた文字とされ、きわめて神聖なものとして扱われてきた。
 普通の人間は使ってはいけない文字だったんです。残念なことに学会では偽作、偽物として無視されて本格的な研究も解読もされてはいない。俺もこの金属板の文字を見ていなければ、とても信じられなかったろうな」
「そうね。でもそうすると古代の日本とガメラとは、どういう関係があるの。神代文字に勾玉、日本神話のどこを探してみても、ガメラみたいな怪獣は出てこないわよ」
 長峰は首をかしげた。

 2

「すみませーーん。生おかわり」米森が女の子を呼ぶ。
「あっ、私も」長峰もおかわりを頼んだ。
 気が付くと店内は満員。あっちこっちで宴席が盛り上がっている。
 東京に人が戻ってきたという感じがして、長峰はうれしくなった。
 運ばれてきたビールをぐいっとあおると、米森は一冊の本を取り出した。
「この間、神田の古本屋で見つけたんです。「三種の神器の真実」堀内直樹著 考古学博士。
 この本にガメラの秘密へのヒントが隠されていると思います」
 長峰は少々古ぼけた本を手に取り、パラパラとページをめくった。
「ねぇ長峰さん。三種の神器って知ってますか」
「えっ、そうねぇ。たしか『草薙の剣』と、なんとかの勾玉、そしてたしか鏡だったと思うけど」
「そうです。正しくは『アメノムラクモノ剣』『ヤサカニノ勾玉』そして『ヤタノ鏡』です。本にもある通り『三種の神器』というのは、神代の時代から天皇の皇位の継承と共に代々伝えられてきた、まさに日本最高の秘宝ともいうべき謎の宝なんです」
 なにしろ、天皇のシンボル。この神器の継承なしには天皇の即位は認められないんですからね」
「へぇーーそれはすごいわね。正倉院にでも置いてあるのかしら。この本に写真とかは載ってないの」
 長峰はページをめくる。
「とんでもない。長峰さん、三種の神器は天皇でさえ見ることは許されてないんですよ」
「ええっ、じゃあ本当にあるかどうかなんてわからないじゃない」
「そう、三種の神器のうち熱田神宮にあるアメノムラクモノ剣、通称『草薙の剣』と伊勢神宮に納められている『ヤタノ鏡』のふたつは本物の形代、つまりレプリカだと言われています」
「じゃあ本物は・・・」
「平家と源氏の合戦の時、幼い天皇と一緒に壇ノ浦で失われてしまったということです。唯一残されている本物は、宮中『皇居』にある勾玉だけだと書いてありました」
 この本によれば、三種の神器はどうも大和朝廷が成立する以前からあったらしいですね。
 もとは天皇家のものではなく、それ以前の古代の王権のシンボルであったと」
「そんな昔から伝わってきたなんて、よほど大切にされてきたのね」
「でも長峰さん。不思議だと思いませんか。
 なぜ鏡と勾玉、そして剣なんでしょう。いちばんわかりやすいのは『剣』です。
 日本に限らず剣は力の象徴とされてきました。武力の象徴ですからね。
 剣を持つもの、すなわち宝を守る者ということです。
 現に三種の神器のうち,剣だけはヤマトタケルノミコトに授けられ、東征の際に持ち出されている。
 その折に焼津で火攻めに会い、剣で草を薙ぎ払って難を逃れた。それからこの剣を『草薙の剣』と呼ぶようになったというのは有名な話です。
 だけど三種の神器の格付けで最上級に上げられるのは『ヤタノ鏡』です。
 次が『ヤサカニノ勾玉』そして『草薙の剣』なんです。
 そもそも三種の神器とは、アマテラスオオミカミがニニギノミコト(天皇家の祖)に与え、この世が続く限りこれをもってこの国を支配せよ、と命じられた宝物なんです。
 つまり最上級の鏡こそアマテラスオオミカミの分身、アマテラスは太陽神であり、鏡は文字通り『太陽神の象徴』『太陽』『天にある丸い光』『神聖な火の玉』の象徴として崇められてきたんです。
神社の祭壇正面にも丸い鏡がありますよね。あれがそうです。
ちなみに『ヤタノ鏡』の『タ』(あた)というのは古代の尺度のことです。約18センチと言われていますから、ヤタ8×18センチで144センチです。直径か円周、が少なくとも144センチはある大きな鏡だったんでしょうね。
ここで疑問が生まれます。古代の鏡はみんな小さいのにヤタノ鏡は大きい。
ヤタノカラスという神武天皇の東征を導いた三本足のカラスがいますが、この場合のヤタは、大きいという意味に取られています。つまりヤタは大きいという意味にも通じるんです。
もしかすると『ヤタノ鏡は』もっと大きなものだったかもしれない。
なんで大きくないとダメだったのか。
そして勾玉はアマテラスにつかえる巫女の象徴です。
巫女は勾玉によって神と一体になり、神の言葉を伝えその信託に従い世を治めることができる」
米森は興奮して語り続けた。
「すみません。ちょっと整理しましょう。
 鏡が太陽神。それに使える巫女が勾玉。そして守る力の象徴である剣。
 だけど鏡を単純に太陽神アマテラスとするには、疑問があるんです。
 確かに弥生時代に農耕が始まると、太陽は作物の収穫に大きな役割を果たします。
 エジプトなども麦の収穫と太陽神とは、密接に結びついていました。
 でもこの鏡や勾玉が崇められていたのは、縄文時代の初期、約1万年から8千年前の時代です。
まだ日本では農耕など始まってはいなかった。
武力ではなく、太陽を祀り崇めるだけで、狩猟民族の荒ぶる縄文の民を支配できたというのは、無理があると思いませんか。
鏡は、アマテラスは、本当に太陽だったのでしょうか。
この本の作者は、鏡の正体は実はUFOだったと言ってます。でも俺は違うと思う」

『天にある丸い光』『神聖な火の玉』『神の化身』・・・・・

 突然、長峰の頭の中に、あるイメージがくっきりと浮かび上がった。
「ガメラだわ。回転しながら飛ぶガメラが、鏡の正体ね」
「そう。俺もそう思います」
 興奮した米森が、テーブルをドンと叩いた。

 3

 込み合っていた店内も、客が半分ほどに減っていた。
 すでに米森と長峰は冷の日本酒になっている。
「勾玉はガメラと意志を通わせるための一種の通信装置なのね・・・」
 長峰が米森の盃に冷酒を注ぐ。
「ああ、ガメラを造りだした超古代の支配者は、あの力で世界を治めていたんだろうね。ガメラは彼らの神だったのかもしれない。だがそれゆえに対抗する勢力は、危険を侵してまでギャオスという悪魔を作り出してしまった」
 今度は米森が長峰の盃に酒を注ぐ。
「そして・・・滅びてしまった。その生き残りが日本人の祖先になったとしたら・・・ギャオスが最初に日本に現れたのは偶然じゃなかったのね」
 長峰はため息をついた。
「ねぇ、米森さん。私ギャオスは人間を滅ぼすために地球が造りだした、人間の天敵じゃないかと思っていたの。あれだけ完璧な遺伝子を持つ生物を人間が作れるとは思えない。人間はいつか地球に滅ぼされるんじゃないかしら」
 酔いが回っているのか、長峰の目が心なしか潤んでいるように見える。
「いや俺はそう思いません。人間もまた自然の一部なんです。ガメラはそれがわかっているから人間を助けてくれたんだと思いたい。人間の中にも、いいやつはいっぱいいますよ」
 とっくにグラスは空になっていた。
「さあ、そろそろ帰りましょう。送っていきますよ」
「ええ、そうね。今日は楽しかった。大丈夫、泊まってるホテルは、すぐそこだから」

「ありがとうございましたーーー」
 店員の声を背に店を出たふたりは8階のエレベーターホールで、エレベーターが来るのを待っていた。
「なんだか俺ばっかり話してたみたいで悪かったかな」
「ううん、いいのよ。私が言いたかったのはひとことだけだから」
 長峰はかるく頭をさげた。
「ありがとう、米森さん」
「えっ、何の事」
「もう忘れたの。木曾で私がギャオスに襲われたとき、助けに来てくれたでしょ」
「ああ、あれ。あの時は俺なんにも考えてなくて、気が付いたら飛び出してたんだ、助けようと思って。バカだな俺は、ガメラが来てくれなかったら、ふたりともとっくにギャオスに食われちまってたな」
 エレベーターが来た。
 ふたりは乗り込みドアが閉まる。二人だけの空間。
 米森良成は長峰真弓を見つめていた。
 二人の視線がからみあい、突然、長峰は米森の肩に手をかけて伸びあがり。
 そして口づけをした。
 米森にとってそれは永遠の長さに感じられた。
 でも一瞬の出来事だった。
 エレベーターが一階に止まり、ドアが開く。
「じゃあ、また。今度電話するわね」
 ひらりと体をひるがえして長峰がかけてゆく。
 あっけにとられて立ち尽くす米森の前で、再びエレベーターのドアがゆっくりと閉まっていった。
「うっおっしゃーーああああ」
 全身に喜びをたぎらせ思わずガッツポーズをとる米森。
 その時、エレベーターのドアが開いた。
 そこには、米森のあまりに気合の入ったガッツポーズに後ずさりする。
 団体客のおびえた視線があった。

 おわり

コメント(3)

 あとがき
 この作品は、1995年に発行された同人誌「ガメラが来た」に書いた私の最初の小説です。
 当時公開された「ガメラ 大怪獣空中決戦」は、まさに待ち望んでいた正統派の怪獣映画でした。
 夢中になり、友人たちと熱く語り合い、なんとか応援したいと同人誌を作ることになりました。
 そこでなんか書くことになり、いきなり困りました。
 実はそれまでまともに小説など、いや人に読んでもらうことを前提にした文章など、まともに書いたことがなかったのです。
 そりゃ学級文庫の読書感想文や、宿題の作文はありましたよ。でも面白いものを書く。
 しかも大好きなガメラの話を・・・・いや、どうしようかと思いました正直。
 ネタはありました。
 何度も何度も映画は見ましたし、セリフもシーンもほぼ暗記してました。
 好きな日本史、伝奇小説、そしてSF、小松左京、半村良・・・
 約一か月、悩んで悩んで書き上げたのが、この作品です。
 本になってコミケで売れて、そしてなんと金子監督や樋口監督、脚本の伊藤和典さんにまで、本が届いてる。
 あーーー私の作品が読まれているーーーーこの身もだえするような焦燥感。
 でも、けっこうウケましたこの話。
 それから現在まで、なんとか毎回原稿を仕上げて「ガメラが来た」から「特撮が来た」になり、なんと18年も、同人小説を続けてくることが出来ました。
 ほめられると、調子に乗る奴なんです私 (笑)
 バカだなぁと思いつつ、ほめてくれた友人たち。〆切守れと脅してくれた親友。
 そしてなにより、読んでいただいた皆様に感謝。

  ありがとうございます。

 今回前のデータが残っていないので、当時の同人誌から再度打ち込み直しました。
 ところどころ文章を手直ししてます。でもほぼ当時のまま。
 18年たっても、そんなに進歩してないです。私。
18年も前から、小説を書かれていたのですね。

凄いですねえ。

これ、日本史や神道を相当研究していないと書けない作品ですね。

改めて、文章力の強さに敬服致します。
>>[2]

ほんとうにこれ、最初に書いた作品なので、お恥ずかしい限りです。
でも日本神話、そうとう捻じ曲げて使ってますね。
今読むと(笑)
だってアマテラス=ガメラですから。
でも、それだけトンデモだと、うそのつきがいがあります。
どうやって、それらしく見せるか。
必死に説明してるところが、逆に怪しいなぁ(笑)

このあと、ガメラの短編、長編をたくさん書いてます。
そのおかげで、いろいろ役得なことが・・・・・それはまた今度(笑)

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