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メトロン星人の本棚コミュのゴジラ・バラゴン・アンギラス・ラドン・バラン 大怪獣総進撃

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もうひとつの「GMK」

「ゴジラ・バラゴン・アンギラス・ラドン・バラン 大怪獣総進撃」

 
 (シナリオより抜粋) 
                                             


 おもな登場人物


 立花由里 超常現象をあつかうBSテレビ局「BS.デジタルQ」のスタッフ
 
 武田光秋 由里と行動を共にするサイエンスライター。オカルトに詳しい。

 丸尾 淳 「BSデジタルQ」のアシスタント・ディレクター。由里の協力者。

 門倉春樹 「BS.デジタルQ」の企画部長。長い髪をいつも気にしている。

 立花泰三 由里の父親、防衛海軍准将。防衛軍幹部学校で教鞭を執る。

 三雲勝将 防衛軍中将。対ゴジラ要撃司令官に任命され作戦の指揮を執る。

 江守久美 怪獣達の情報を管理する、防衛軍情報管理局責任者。階級は大佐。

 小早川  防衛軍少佐。情報管理部に所属。情報検索分析の達人。

 日垣野真人 防衛軍軍令部書記官、1954年のゴジラ襲撃時の真相を知る人物。


 伊佐山嘉利 宮内庁役人。占部一族の末裔、護国霊獣伝記の著者。

 忌部イメ  見かけは少女だが、100年以上生きている謎の超能力者。




 ○民放キー局・報道フロア
 

 プロデューサー「(内線電話を耳に、声をあげる)アメリカの原潜が事故!(スタッフ達に)番組変更、臨時ニュースの準備」
 いきなり忙しく動き回るスタッフ達。


 ×   ×   ×
 テレビカメラスタンバイ スタートする。


 アナウンサー「グアム島沖で消息を絶った米国原子力潜水艦救助のため、政府は日米平和条約に基づき、防衛海軍を現場海域に派遣することを決定しました」



 ○グアム島沖・海底
 2機の特殊潜行艇『さつま』が海底を探索。


 照明灯が海底を探り、潜水艦の残骸らしきものを捕らえる。一号機その残骸へ接近。


 ×   ×   ×
 広瀬中佐と杉野航海士(女性)が操縦。


 広瀬「一号機目標に接近中(呟く)こりゃ、爆破事故だな」


 ×   ×   ×
 海底の砂が舞い上がり、大海流が発生。


 2機の『さつま』が、それぞれ海流に翻弄される。

 ×   ×   ×
 杉野、操縦桿を取られ、慌てる。
 杉野「海流により操縦不能!」

 ×   ×   ×
 2号機が回転しながら海中の岩に激突、大破。

 ×   ×   ×
 広瀬「(それを見て)!!!」

 ×   ×   ×
 一号機の照明の中に、一瞬巨大な背びれのようなものが照らし出され、消える。

 ×   ×   ×
 無線連絡「損害を報告せよ。移動中の物体は何か!」
 広瀬「(悲鳴)自分の目が信じられません!」



 ○メインタイトル
 「ゴジラ・バラゴン・アンギラス・ラドン・バラン 大怪獣総進撃」

 5体の怪獣の肌にクレジットタイトルが重なる


 ○都内の焼肉屋
 丸尾とビールを飲み、焼き肉を食べている由里。


 由里「女に生まれたくなかったなぁ・・・」

 丸尾「えっ、どうして(小声で)こんなに魅力的なのに」

 由里「(聞こえず)世間を『あっ!』といわせるような仕事したい……女だから出来ないって事はないよねぇ、それは逃げだよなぁ(入り口を見て発見)おぉ〜い」

 丸尾「(怪訝な顔して)だれさん?」

 由里「(武田に)メール見てくれた?」

 武田「小笠原の怪獣伝説だっけ、偶然こんな本を見つけてね、きっと興味があるだろうと思って・・・」
 と鞄から出したのは『護国霊獣伝記』

 由里「コゴクレイジュウデンキ?」

 武田「ゴジラに引き続き小笠原でも目撃された怪獣の出現は、実は予言されていたってね…(ジトーと見ている丸尾に気づき)だれさん?」

 由里「ああ、彼、丸尾君、うちのスタッフ。丸尾君、こちらは武田君、フリーライターでね、こういうのに詳しいの」

 由里、慎重に和綴じの本のページをめくる。
 武田と丸尾、顔を見合わせ、よろしくと頭をさげる。

 由里「これ?なんて読むの、え〜とバラ……」

 武田「婆羅護吽(バラゴン)東門を守る青い霊獣だ。小笠原の父島に現れた怪獣は青かったって目撃談があっただろ、偶然の一致にしちゃ出来過ぎている。こいつは日本を守る四つの門『四門』の番人なんだ。いや番犬かな」

 話に割り込むように丸尾が体をのりだす。

 丸尾「その『四門』ってなんなんです?」

 武田「う〜ん。風水では、国には東西南北にそれぞれ方位を守る関所があって、それぞれに霊獣がいて門を守っているという考えがあるんだな。この四門が破られると国が亡びるといわれているそうだよ。
 ほらそこに書いてある(本をとりあげ、ページを広げる)」

 のぞき込む由里と丸尾。

 武田「東門には婆羅護吽(バラゴン)西門には阿吽巍羅州(アンギラス)北門には婆乱蛇巍(バラダギ)そして南門が羅呑(ラドン)この四霊獣が日本を守っているというわけだ」

 由里「守るって、ゴジラから?」
 武田「う〜ん、ゴジラとは書いてないな。しいていえば悪霊かな?(首をかしげる)鬼でもいいのかも知れない。
 とにかくこの四霊獣も元々は『くに』を荒らす怪獣だったんだ。古代王朝は彼らを退治した後、霊を慰めるため『護国霊獣』と呼んで神として祀り、四門の守りにつかせた。仇なす敵を神にして祀る日本独特の習慣は、この時から始まり大和朝廷にも引き継がれたんだよ」

 丸尾「そうすると、そのバラゴンとかがゴジラと戦って東京を守ってくれるってことですかね?」

 武田「(困った顔をして由里を見る)さぁ〜そこまでは、専門外なもんで・・・」

 吹き出す由里、つられて丸尾も笑い出す。



 ○防衛庁・大会議室
 モニターに映る水中映像。


 断続的に乱れる画像の中、一瞬巨大な『背びれ』が通過。同時に映像は完全にノイズに包まれる。


 ×   ×   ×
 立花「広瀬中佐、これを目視したのか?」

 広瀬「はい。およそ距離50メートルでありました」

 立花「これは何であると考えるか」

 広瀬「巨大な生物の……背びれだと」

 室内がざわめく。

 その中には情報管理局の江守大佐、小早川も軍服姿で出席している。

 江守「もしゴジラなら、米原潜の核燃料を摂取しているかもしれません」

 将校「この生物は周辺海域で漁船にも目撃されている。うわさはマスコミにも広がっていると聞いた」

 三雲「仮にゴジラだとして、本土襲撃から半世紀。なぜ再び日本に被害を及ぼすと推察できるのか。インドネシアやオーストラリアなどに出現する可能性の方がずっと高いのではないか」

 立花「ゴジラがなぜ日本に来たのか、納得できる理由が分からない以上、こないと決めつけることも出来ないのではありませんか」

 将校「我が国に恨みでもあったのかな」
 笑う将校たち。


 スーツ姿の防衛官僚・軍令部書記官
 真剣な表情で立ち上がる。

 書記官「実は首相より直々に通達が来ている、ゴジラは日本に来る確率が非常に高い。太平洋沿岸地域、および首都圏に非常警戒を発令するための準備を行って欲しいといわれてきた」

 室内が凍りついたように静かになる。

 江波「どうしてそこまで。その決断の元になった情報はどこから?」

 書記官「それはわからん。首相もかなり緊張しておられた。確かな情報だと認識して欲しい」

 立花「書記官。(確認するように)それはゴジラが日本を襲う確かな理由があるということですね」

 書記官はじっと立ちつくしたまま、かすかにうなずいた。

 三雲「仮にゴジラが来たとしても、我が軍は、創立当時の50年前とは比べものにならない火力を有している」

 江守が小早川に向かって目線で指示をだす。かすかにうなずく小早川。


 
○小笠原諸島 孫の手島 夜
 満天の星空、空には月が煌々と輝いている。



 ○同・民宿『鯨見』・遊戯室
 卓球をしている浴衣姿の男達。


 傍らではビールを飲みながらテレビを見ている男女AB。テレビからは野球の中継。


 ×   ×   ×
 女B「……いよいよ最後ね、潜るの」

 男がテレビをながめながらぼそりとつぶやく。

 男A「明日は鯨じゃなくて、怪獣見にいこうぜ・・・青い怪獣が出たっていうしさ」

 女「ばか。怪獣じゃ、かわいくないの」

 男、サーブしようとラケットを構えた時。

 どーん!

 再び振動。床の上のピンポン玉が跳ね上がる。

 どーん!

 パラパラ落ちる土埃。激しく揺れる蛍光灯。

 男「(不安げに)地震じゃないぞ」
 


 ○同・裏庭
 驚いた女将と調理場で片づけをしていた板前が飛び出してくる。


 見上げるその先には、山のような黒い固まりがある。

 恐怖に引きつる男の顔よりカメラがぐーっと後退。建物全体にまで引ききったとき。

 グシャァァァン!!

 黒い巨大な足が民宿を粉々に踏みつぶした。

 どこからか半鐘の鐘の音が鳴り響いてくる。

 それにいらつくようにゴジラは、咆哮する。

 すると、別の咆哮がそれに答えた。月光に照らされ青く輝く怪獣バラゴンが出現。

 小笠原の原生林に隠れ、頭と尻尾の一部を見せながらゴジラとの間合いを計っている。


 ×   ×   ×
 孫の手島・上空
 警戒中の哨戒機。


 パイロット「おい、あれはなんだ!」

 通信士「ゴジラ!いやもう一匹いるぞ!」

 パイロット「これより高度を下げ、確認作業に入る、映像送れるか!」


 ×   ×   ×
 バラゴン頭を下げ、地を這うように素早い動きでゴジラに襲いかかる。

 だがゴジラはバラゴンより明らかに巨大。

 その大きさには3倍の開きがある。

 足にかみついたバラゴンをゴジラは振り払う。バラゴンはね飛ばされるが、すぐに起きあがり、今度はジャンプすると腕にかみついた。

 ゴジラは凄まじく咆哮し、逆にバラゴンの背中に噛みつく。

 絶叫するバラゴン。
 ×   ×   ×
 パイロット「だめだ!力が違いすぎる。やられるぞ!」

 通信士「本部に繋がります」



 ○防衛省・情報管理室
 通信兵「映像はいります!」

 大型のモニターの前に写し出される映像にあぜんとする将校達。

 小早川「やはりゴジラか!いや、もう一匹・・・」

 江守「(息を呑み)まさか……」



 ○孫の手島

 もの凄い力で無理矢理バラゴンを引き剥がしたゴジラ。

 巨体をふるわせ、尻尾を使ってバラゴンを横殴りにする。

 バラゴンの体が吹っ飛び地面に叩きつけられる。

 ゴジラの背びれが青白く発光。

 闇を切り裂き熱線がバラゴンに直撃する。

 原生林が燃え上がり、炎の中からバラゴンの叫び声が。

 と、突然。炎を突き破ってバラゴンが飛び出し、ゴジラの喉笛に食いついた。

 ゴジラは逆に太い腕を使い、バラゴンの首をギリギリと締め上げる。

 喉に食い付かれているにもかかわらず、平然と仁王立ちするゴジラ。バラゴンはぶらりと宙に浮いている。

 ついに力尽きたか、目を閉じ、だらりと手足の力が抜けるバラゴン。

 ゴジラはバラゴンを振りほどき、地面に叩きつけると、とどめの熱線を吐く!

 壮絶なバラゴンの断末魔。バラゴンの体が細かい粒子となり炎に溶けてゆく。



 ○防衛庁・情報管理室・会議室


 孫の手島の戦いからすでに丸一日が経過している。

 疲れた顔の江守と小早川、そして立花の三人がテーブルについている。

 少し離れ、場違いな感じの黒服の老人が一人、テーブルの端にぽつりと座っている。

 目の前には小さなモニター、孫の手島の映像が写し出されていた。

 それぞれのメンバーの前には『護国霊獣伝記』のコピーがおかれている。


 ×   ×   ×
 江守「見た通りです、新たに出現した怪獣はゴジラに倒されました……」

 立花「これはいったい何ですか!(手元のコピーを叩く)防衛庁はいつから、こんなものを」

 小早川「(訴えるように)立花准将、信じられないのも無理はありませんが……」

 江守「我々は真面目です。これは機密性の高い、高度に政治的な判断です!」

 立花「そういわれても、説明していただかないと、理解できません」

 かるくため息をつく江守、疲れが表情に現れている。

 江守「前回の会議の後、書記官の言葉の裏をとるため、私は各方面に探りを入れました。なぜゴジラが日本に来ると断言できたのか?まもなく私は宮内庁に呼び出されました。そしてこの本を渡されたのです」

 小早川、伊佐山老人に助けを求めるかのように振り向く。

 伊佐山「立花さん。50年前のゴジラ襲撃の時、防衛軍の攻撃は効果がありましたかな?」

 立花「……」

 伊佐山「(大きくうなずく)そうでしょう、あなたも知っておられるはずだ。ゴジラは砲弾が当たっても死なん。
 古代の生き残りの恐竜に原水爆の放射能が異常な生命力を与えたとしても、生物ならば死ぬはずだ。だが、奴は武器では殺せない。なぜなら、この世のものではないからです」

 立花「この世のものではない……?!」

 大きく息を呑む三人。

 伊佐山立って、モニターの横に回り込む。

 伊佐山「これを見なさい。青龍バラゴンの最後です。この怪獣もまた、この世のものではない。霊獣なのです。だから倒されても死骸は残らない。(呟くように)しかしこのゴジラは、予想を遙かに超える化け物になってしまった」

 伊佐山は、三人を見回す。

 伊佐山「あなた方は『古事記』をご存じか?このくにはどうやって生まれたか?」

 小早川「この国を作ったのはイザナギ・イザナミのミコトだと記憶しておりますが」
 伊佐山「そう、この国は男の神イザナギのミコト、女の神イザナミのミコトがまぐわいして造られた。
 ただ、イザナミのミコトは火の神『カグツチ』をお生みになられたとき、身を焼かれお亡くなりになられた。
 残されたイザナギのミコトは、愛する妻を追い『黄泉の国』まで追いかけてゆく。そして妻を説得し連れ戻そうとしたのだ。
 その時イザナミは「私を見ないでください」と言ったがイザナギは一片の灯をともし妻の変わり果てた姿を見てしまう。
 その姿は腐り果てた死体であった。
 驚いて逃げ帰るイザナギを、怒ったイザナミが追う。
 イギナギはついに黄泉の国の境『黄泉津平坂(よもつひらさか)』まで逃げ、巨大な『千曳の岩(ちびきのいわ)』で通路を塞いでしまった。
 この時イザナミは「愛する夫よ、あなたがそのように嫌うなら、私はあなたの国の民を一日千人ずつ絞め殺そう」と言われた。
 イザナギは答えた「愛する妻がそのように言うなら、私は一日千五百人ずつ産ませよう」と……」


 立花がいらだったように口を挟む。

 立花「伊佐山さん、私も日本人だ。その話は知ってる。それがゴジラとどう関係が!」

 伊佐山「(声を荒げて)これは神話ではない!本当にあったことだ!」

 異常な気迫に飲まれる立花。

 伊佐山「わからんか、死者の国、黄泉の国はあるのだ。この日本に!そして奴は、ゴジラはイザナミの化身。黄泉津平坂にある千曳の岩を破壊し、この国を滅ぼそうとしておる!!」


 ○同じ頃・富士の樹海
 由里・武田・丸尾の三人が歩いている。


 三人とも軽登山のスタイル、すでに観光ルートからは大きくはずれている。

 ×   ×   ×
 丸尾「こんなとこまで来て、良く取材費がでましたね」

 武田「地図によると、神社はこの先です」

 由里「『護国霊獣伝記』を書いた伊佐山って人は、その神社の宮司さん?」
 武田「いや、そうじゃない。くわしいことは分からないが、ご先祖は「中臣鎌足」らしい」

 丸尾「へぇ『大化改新』の立て役者じゃないですか」

 武田「『中臣』は『大中臣』『藤原』と続く由緒ある家系で、『高皇産霊神(タカムスビノカミ)』に繋がる古い一族だ。
 日本神話はイザナギ・イザナミから始まり、イザナギから生まれたのがアマテラス・ツクヨミ・スサノオの神々なんだけど、タカムスビの神は、それよりも古い。
 神である天皇の守護神てな立場の神様だね」

 由里「(丸尾を見て)それよりも、肝心の伊佐山さんには連絡取れたの?」

 丸尾「いえ、全然だめっす。なにしろ電話はない。近くに民家もない。どうやって暮らしてるんですかね」

 武田「由里さんは『君が代』知ってるでしょ?」

 由里「えっ?知ってるわよ『君が代は千代に八千代にさざれ石の巌(いわお)となりて苔のむすまで』(歌う)でしょ」

 武田「この歌は古今集の『藤原朝臣石位左衛門』が詠んだ歌がもとになってるんだけど、意味分かります?」

 丸尾「あっ、俺知ってますよ。天皇の世が長く続くようにって意味でしょ。でも俺ずっと『巌となりて』って岩音だと思ってたんだよね(笑う)」

 武田「そう巌というのは巨大な岩のことです。さざれ石という小さな石があって、それが寄り集まって大きな岩になるという意味なんですが、現実に『さざれ石』は存在します。
 溶解した石灰岩の凝結作用により長い年月の間に大小の小石が大きな岩になるんです。
 でもこの場合のさざれ石は天皇の民、言い換えればこの『くに』の人々のことをさしているんでしょうね。心をひとつにして国が長くつづくようにって」

 由里「そういえば、神社のご神体って石や岩が多いわね」

 武田「うん。日本の源イメージって『太陽』と『石』だからね。僕の持論だけど、2000年以上昔。日本が日本じゃなかった頃、このくには石と太陽の神聖文明をもっていたんじゃないかって思っているんだ。
 さっきのタカムスビの神を祀る神社のご神体は赤飯の原形になった『赤米(古代米)』を丸く餅にしたものだし、ご神体に多い『鏡』は太陽を表している。
 日の丸も太陽だろ。光と恵みを与えてくれる太陽を神としていたんだね」

 由里「じゃ、石は?」

 武田「石は神の降りてくる場所「磐座(いわくら)」という意味もあるが、僕は邪気を払う『魔除け』として使われたんだと思う。
 沖縄には『石敢当(いしがんとう)』というお守りがあるし、村の入り口に置いて邪を払う『道祖神』や『塞の神(さえのかみ)』もある。
 太陽と対極にある闇、あるいは魔、鬼を防ぐための防壁だったんだろうね。
 そうそう、東北の蝦夷(えぞ)を征伐に行った『坂上田村麻呂』は鬼(蝦夷)の侵略を防ぐために大石を置き、それを「千曳大明神」として祀ったとある。
 石には呪術的な力があると考えられていた証拠だよ」

 ×   ×   ×
 三人の目の前に古びた神社が現れた。

 森は深く、空気は清浄で、鳥の声さえない。

 あまりにも静かで、耳が痛いほどだ。


 由里「ここ……?」

 雰囲気に飲まれ、呆然と立ちつくす三人。

 やっと口を開いた由里の目の前に丸太を組み合わせた白木の鳥居と神明造りとよばれる古い形式の社殿があった。

 丸尾「なんか、普通の神社と違いますね。ほら賽銭箱もないし」

 武田「(まわりを見渡して)観光客とも、参拝客とも無縁って感じだな」


 ×   ×   ×
 由里達の目の前で社殿の扉がゆっくりと開いた。

 中から巫女の姿をした10才くらいの少女が現れた。

 少女は神秘的な笑みをたたえたまま、三人に近づいてきた。

 由里「(腰をかがめ近寄る)こんにちは。ねぇ、伊佐山さんはいませんか?」

 少女「(笑顔のままで)待っておった。おぬし達に頼みがある」

 丸尾「えっ……?何いってんの、この子。だれか大人の人はいないの?」

 そう言いつつ社殿の方に歩き出す丸尾。

 突然、見えない壁にぶつかったようにひっくり返る。

 丸尾「いてて、何にぶつかったんだ!」

 少女「そこより先には行けぬ。結界があるからな」

 武田「(何かに気付き腕時計を見る)止まっている!」

 少女「そう、ここは時の流れが現世とは違う」

 瞬間、三人の足元がぽっかりと消え失せ、巨大な穴が出現。三人は飲み込まれた。


 ×   ×   ×
 目の前に視界からはみ出すほどの巨大な空間がある。

 すべては漆黒の闇なのだが、なぜか全体が見渡せる。

 頭上には圧倒的な質量を持つ富士山があり、足元には山のように巨大な磐(いわ)がある。

 良く目を凝らしてみると、その磐のまわりには豆粒のように小さな人骨がうずたかく無数に散らばっていた。

 三人はその空間の中で宙に浮いたまま、この不思議な世界を見つめていた。

 頭の中に声がする。

 少女「ここは富士の地の底『黄泉津平坂(よもつひらさか)』じゃ。あの大磐が『千曳岩(ちびきいわ)』そして磐の下は『黄泉の国』じゃ」

 武田「(目がくらむほどの驚きに必死で耐えている)あ、あなたは……」

 少女「わしは忌部(いんべ)の一族。この『くに』を守ってきた古い一族の末裔である」

 由里「なに〜!?私たちはどうなったの!!」

 少女「怯える必要はない。このイメージは、わしがおまえ達の頭の中に直接送っているものだ。おぬし達の体はあの神社の前にある。
 マスコミのはしくれなら中継映像ぐらい理解できるだろう。映像とは目で見るものではない脳で見るものと心得よ」

 丸尾「あわわわ、分かってるけど、そんな〜〜!」

 少女「よいか、残された時間は少ない。ゴジラはいずれここにやってくる。この『千曳岩』を破壊し、イザナミの怨念を復活させるためにな。
 それを防ぐには残った三体の霊獣たちをここに集めねばならん。しかし、三匹集めても勝てるかどうか……その時のために、おぬし達を呼んだのじゃ」

 由里「(ほとんど叫び声に近い)私達になにが出来るというの!」

 少女「知れたこと。おぬし達が見たことを、この国の民に知らせるがよい。ありのままにな」

 武田「信じられない!こんな、こんな事が……」

 少女「いまやこの『くに』の民の心はすさんでおる。人を思いやる心が薄れ、知性なく、勇気なく、へつらい、無関心、卑怯卑劣、ことなかれ主義が世に満ち満ちておる。
 あの『千曳岩』を見るがよい。あれは人の魂が集まって出来た大磐なのだ。自らすすんで『くに』のために身を捧げた、勇者達の魂で出来ておる。
 人がくにを思い、家族を思い、愛するものを守りたいと思いながら死んでゆけば、その魂は千曳岩とひとつになり、イザナミの怨念からこの『くに』を守ることができるのだ」


 ×   ×   ×
 千曳岩、かすかに発光しながら、どくんどくんと脈打つように動く。

 それと同時に岩の下から不気味な音が漏れ出す。

 丸尾「あっ、あの岩、動いている!」

 少女「黄泉の力が増している。この国の民は自分が祖先に守られていることを忘れておる。
 なんのためにこの『くに』が存在するのか、自らが何者なのか、民がそれを忘れた国は必ず亡びる。
 これまでは四門の霊獣たちが守ってくれたが、すでに東門はなく、力膨れ上がったゴジラ、あの大荒神にはなすすべがない。
 一刻も早く、民の心を目覚めさせねばならぬのだ」

 ×   ×   ×
 視界急速にブラックアウト。

 三人の意識は、上空に吸い込まれるように消えてゆき、そこに少女の声が重なる。

 少女「よいか、このことゆめゆめ疑う事なかれ!」


 ×   ×   ×
 気がつくと三人、ぼーっと突っ立ったまま、古びた神社の前に立ちすくんでいた。

 あたりは静まり返り、日は傾こうとしている。
 武田「俺達、何を見ていたんだろう……」

 丸尾「夢……じゃ、ないですよね」

 由里「大変だわ、これは特大のスクープよ!」

 武田「でも、証拠は」

 丸尾「(持っていたデジタルカメラを確認する)うわっ!!映っている!」

 小さなモニターをのぞき込む三人。

 そこにはどうやって撮ったのか、地下の大空洞の光景がありありと写し出されていた。

 武田「どうやって……」

 由里「これ、特撮じゃないよね」


コメント(7)

○静岡県・焼津市(字幕タイトル)
 駿河湾に面した静かな港町。曇り空の下、沖より漁船が寄港する。
 
○焼津港
 防波堤の釣り人達が唖然と・・・

 釣り人A「み、見ろあれ……!」

 海坊主状に海面が膨れ上がり、巻き込まれた漁船が木の葉のように落下。

 やがて水塊を覆う海水が一気に崩れ落ち。漆黒の皮膚があらわとなる。

 釣り人B「(慄然)ゴジラだ!」

 海上に屹立するゴジラ。
 グオオオオオオオオオオンン!!
 圧倒的な咆哮が大気を震撼させる。

 ×   ×   ×
 漁協の窓ガラスが一気に破裂する。

 ×   ×   ×
 ゴジラの巨体が海から上陸。


 ○防衛省・大会議室
 
 小早川「(電話連絡をうけて)焼津港にゴジラ出現!」

 立花「……」

 三雲「どうしてもっと早く発見できなかったんだ!」

 立花「住民の避難が最優先!攻撃して、いたずらにゴジラを刺激するな!」

 
 ○焼津港〜清水市
 鳴り響く役所のサイレン。

 逃げまどう人々の悲鳴とパトカー、消防車のサイレンが交錯。

 市街地を蹂躙しながら清水市方面に向かうゴジラ。


 ×   ×   ×
 清水市内・スーパー・食品売場・交差点
 買い物客にハンドマイクで呼びかける店員

 店員「ゴジラがこちらに向かっています!係員の誘導に従って避難してください!」

 ざわめく買い物客、パニックになり我先に逃げ出すお客。

 その中で、買い物かごにあたりかまわず商品を詰め込み、かかえて逃げ出すおばさんもいる。


 ×   ×   ×
 車を停車させている若者。交差点の渋滞にいらつき、やたらとクラクションを鳴らす。

 ガンガン鳴らしているカーステレオのため交通整理のアナウンス聞こえず。

 交差点ビルの向こう側からぬっとゴジラが出現。

 若者「うわぁ〜〜!!」

 車のクラクションハデに鳴り響き、まわりの車の乗客は我先に逃げ出す。

 じろりと睨むゴジラ、背びれがピカピカッと光り、カッと熱線を放射する。


 ○清水市・小学校
 授業中、ピカッと閃光が教室を襲い、続いて大きな地鳴り、振動。

 生徒の鉛筆が床に落ち、教室の窓ガラス衝撃を受けビリビリと振動する。

 先生、子供達、窓に近づき、外を見る。
 遠くに白いキノコ雲が舞い上がっている。

 先生「え?……原爆!!(ぞっとする)」


 ○防衛省・情報管理室


 立花「(入室し)ゴジラの進行方向は!」

 江守「現在、清水市から北上中、やはり富士に向かっています」

 三雲「急げば富士川を防衛ラインとして火力を配置出来る」

 小早川「でも、攻撃は自粛せよと……」

 三雲「なにもせずしてこの国は守れん、なんのための火力だ!」

 立花「富士市・富士宮市・甲府市に緊急避難命令。偵察機の数の増援を要請せよ」


 ○富士山北西部・上九一色村付近
 何台もの中継車があわただしくやってきては、機材のセッティングを始めている。

 その中の一台に『BSデジタルQ』のロゴ、門倉、丸尾、武田、由里全員の姿が見える。

 陣頭指揮を執る門倉。


 門倉「(髪を気にしながら)いいか、一世一代の大仕事だぞ!責任は全部俺が取る!いそげ!」

 由里、メーキャップをしながらピンマイクをセット。横には武田。

 武田「お父さんには話が付いたのかい」

 由里「(手を止めずに)ええ、あんまり素直に信じてくれたんで、こっちが拍子抜けしたわよ。中継するって言ったら警備の手配までしてくれたの。いったいどうゆう事?」

 武田「なんだか、こっちの知らないところで大きな力が動いてるって気がするね。例の『護国霊獣伝記』の霊獣たちは本当に現れるんだろうか?」

 由里「そんなこと!とにかく私は信じたの。これはチャンスよ!」

 中継車の上でカメラのセッティングをしていた丸尾が叫ぶ。

 丸尾「由里ちゃーん!!来た、来た、来た〜〜っ!!」

 ×   ×   ×
 広大な富士のすそ野をバックに、大きな光の柱が立ち上る。

 一本、また一本と、その数は三本になり、その根本には霊獣たちの姿がぼんやりと現れてきた。

 ×   ×   ×
 角倉中継を始める、スタンバイ、キューの指示を出す。
 由里、カメラに向かって深呼吸する。
 由里「ここ富士のすそ野『富士ケ嶺』では伝説の霊獣達がゴジラを迎え撃とうと結集を始めております。一番最初に現れるのは果たしてどの怪獣でしょうか?
 あっ、現れました!白く輝く光の中から現れたのは『阿吽巍羅州(アンギラス)』です。背中に沢山のトゲを背負った怪獣。手元の資料によりますと西の霊獣。対馬の守り神だと言われています」

 ×   ×   ×
 光りの柱が消え、中からバランが現れる。

 由里「今度は朝霧高原の方向に一体現れました。これは『婆乱蛇巍(バラダキ)』です。東北は十和田湖の守り神。地元では荒神様として祀られています。黒い精悍な顔つき、見るからに強そうです」

 ×   ×   ×
 最後に残った光りの柱が消えるとその中からラドンが現れ、空中に舞い上がる。

 由里「朝霧カントリークラブ付近からは赤い翼を持つ霊獣が出現しました。これは『羅呑(ラドン)』です。南門、九州は阿蘇山の守り神。あっ!いま飛び立ちました!もの凄い土煙、そのまま上空で旋回を始めています。


 ×   ×   ×
 ○同・防衛省・情報管理局
 報告を聞いた幹部達。

 小早川「あらたな怪獣が、富士ケ嶺に出現!」

 江守「ゴジラと戦おうとしている?」

 三雲「民放で中継をしているぞ!」

 とどっと、テレビの前に集まる一同。立花、じっとTVを見ている。



 ○同・清水市内・病院
 怪我人が続々と運び込まれている。

 医師や看護婦に混じって、軍服姿の兵士が駆け回り、野戦病院のようになっている。

 ロビーに置かれたテレビでは、由里の中継する「特別報道番組」が流れ、黒山の人だかり。

 頭に包帯を巻いた少年が、手を握りしめてTVを見つめている。

 男の子「がんばれ!怪獣。ゴジラをやっつけろ!」


 ×   ×   ×
 日本各地の様子、フラッシュのように流れる。

 国民のほとんどがTVにくぎ付けになり、ゴジラと怪獣達の様子を見守っている。



 ○情報管理室


 日垣野(防衛軍司令部書記官)三雲に通達書を手渡しながら、

 日垣野「三雲中将、ただ今より要撃司令官に任命する」

 三雲「つつしんでお受けいたします」複雑な思いで見ている立花。

 日垣野「(一同に)今からここが臨時の戦闘指揮所になる!」

 三雲「(通信兵に)厚木航空隊に出撃命令!」
 通信兵「了解!」

 三雲「わけのわからん怪獣どもに先を越されるな、3分でけりをつけてやる」



 ○富士山北西部・上九一色村、中継所
 バラン・アンギラス・ラドンはゴジラを待ちかまえている。

 他局の中継車も増え、上空には報道関係のヘリも集まってきた。


 ×   ×   ×
 門倉「由里ちゃん、ドンピシャ!!おい、視聴率は!」

 ディレクター「現在、40%!紅白に追いつきました!」

 門倉「まだまだ、決戦はこれからよ!(興奮で声が裏返っている)」


 ×   ×   ×
 頭上を戦闘機の編隊が爆音をあげて飛行。

 全員が頭を上げ、飛行機雲を見つめる。

 ○山岳地帯
 ゴジラ富士川に沿って北上中。

 上空からF4Jの編隊。見上げるゴジラ。爆撃開始。
 ゴジラ激しい爆炎に包まれ見えなくなる。

 ×   ×   ×
 情報管理室
 簡易司令所に座っている三雲、背後に立花。

 管制官A「誘導弾、命中するも効果ありません!いぜん北上中」

 三雲「対爆コンクリ並か?……着弾角度を深く取り第二波攻撃を続行!」


 ×   ×   ×
 山岳地帯
 ゴジラ上空の爆撃機。

 爆炎の切れ目から無傷のゴジラが出現。上空に向かって熱線を放射。
 異常に長い射程、空を切り裂くように戦闘機の進行方向と重なる。


 ×   ×   ×
 コックピット閃光に包まれる。

 パイロット「うわぁぁぁっ!!」


 ×   ×   ×
 F4J爆発し、破片が民家に墜落。

 さらにもう一機。こちらは空中で爆散する。


○情報管理室

 部屋の隅で日垣野に詰め寄っている立花。

 立花「50年前、我が軍はゴジラを撃退できた。だが、現在のこの有様はどうだ!いったい、どうやってゴジラを倒したんだ」

 日垣野「……」


 ×   ×   ×
 前進するゴジラ。アンギラス・バラン・ラドンも動き出す。

 ×   ×   ×
 日垣野「50年前、東京に上陸したゴジラは、未知の兵器によって葬られた。
 『桃』と呼ばれた丸いカプセルだ。それがなんだったかは最早だれにも分からない。通常兵器は利かなかった、ということだ」

 立花「やはり!『桃』か。イザナギが黄泉から脱出するときに使った鬼を払うというアイテムだ!」

 日垣野「ゴジラと共に沈んだ科学者も実は神官だったという噂がある」

 立花「生贄と桃を使って鬼を払ったというわけか。私は伊佐山という老人から聞きました。ゴジラはこの世のものではないと。
 しかしなぜ、この事実が50年もの間、隠されて続けてきたのか、(小声で)原発のためですね」

 日垣野「……(さらに小声で)そうだ。核は『黄泉の力』。放射能は目に見えない『闇の光』ともいえる。
 プルトニウムはギリシャ神話の冥界の王『プルトーン』から命名された。なんとも妙な偶然じやないか。
 だが、それがどんなに恐ろしい力だとしても原子力は我が国の発展には必要不可欠だった。たとえ宮内庁から反対があろうとも・・・」


 立花「 生者の国と黄泉の国。光と闇。日本に原発を造れば、そのバランスが崩れる。ゴジラは放射能をエネルギーとして活動する黄泉の生物なのですね」

 いつのまにか2人を遠巻きにして幹部達が集まってきている。

 立花の元に江守が駆け寄る。
 江守「ゴジラが、怪獣達と交戦状態に入ります!」

 由里のレポートが聞こえてくる。


 ×   ×   ×
 由里「みなさん、信じてはもらえないでしょうが、この『くに』を守るため四門の怪獣達が、ゴジラに立ち向かおうとしています。防衛軍はこの怪獣を攻撃しないでください。彼らは敵ではありません!」
 立花、つかつかと三雲に近づき。

 立花「司令官、私を現場に行かせてください」



 ○富士山麓・朝霧高原
 富士に向かって突き進むゴジラ。

 前方に敵の気配を感じたか、牙をむきだし咆哮する。

 突如、上空にキーンという衝撃音、ラドン襲来。

 上空からゴジラめがけて急降下、凄まじい衝撃波と突風が襲いかかる。
 ゴジラたまらず横転。突風で周辺の民家の屋根や車が木の葉のごとく飛ぶ。

 二度三度と襲い来るラドン。ゴジラ反撃しようと空に向かってでたらめに熱線を放射する。

 その中の一撃がラドンを直撃。バランスを失ったラドン、失速し浅間神社の森に墜落。

 続いてアンギラス・バランが襲来。バラゴンと同じくゴジラと比べると半分ほどの大きさ。

 倒れもがくゴジラに左右から組み付き、食い付く。
 ゴジラもがきながら尻尾を振り回し逃れようとする。

 獲物を狙う猟犬のように、素早い動きで尻尾をよけながら食い付くアンギラス。

 延髄を狙い背後から襲いかかるバラン。三つどもえの激しい戦いが繰り広げられる。


 ×   ×   ×
 『BSデジタルQ』中継車
 望遠で捕らえた映像に興奮した由里の声が重なる。

 由里「まさに史上最大の戦いです。四門の霊獣達がゴジラを圧倒しています。この凄まじい戦いをご覧ください!」


 ×   ×   ×
 武田「すげえ!!」

 丸尾「押してますね、勝てるんじゃないですか」

 門倉「いけぇーー!!」


 ×   ×   ×
 ゴジラの尻尾がバランに巻き付く。

 と、尻尾だけの力でバランを引き剥がし、大地に叩きつけると何度も尻尾で打ち据える。

 ゴジラ、アンギラスの隙を見て起きあがり、土ぼこりを上げながら立ち上がる。

 睨み合うゴジラ・アンギラス・バラン。ラドンも起きあがり、再び翼を広げ始めた。

 ゴジラ怒りの形相凄まじく、咆哮をあげながらアンギラスに突進。
 アンギラス素早い動きで避けるが、ゴジラはそれを予期していたかのようにバランに襲いかかる。

 バラン、ゴジラの体当たりをまともに受け吹っ飛ぶ。

 背後から襲いかかるアンギラス、しかしゴジラ、振り向きざま熱線を発射。

 アンギラスに直撃、アンギラスの背中のトゲがごっそりとえぐり取られる。

 アンギラスの悲痛な叫びが朝霧高原にこだまする。

 地を這うように飛んできたラドン、羽ばたきながらゴジラの目を狙ってくちばしで攻撃する。

 ゴジラの背びれが発光、凄まじい熱線がラドンの翼を貫通!大穴を開けた。


 
 ×   ×   ×
 丸尾「だめだ!!強すぎる。勝てねぇよ」

 門倉「ダメだ。ダメだ。まだ負けちゃいか〜ん!!(絶叫)」
 武田「なんて奴だ、三対一でも圧倒している……(絶句)」

 由里「ああっ!なんというゴジラの強さ。このまま霊獣たちが負けたら日本は終わりよ。がんばって!がんばって!!(祈るように)」

 カメラ、中継している由里に向けられ、モニターには由里のアップが写し出される。


 ×   ×   ×
 清水市の病院
 包帯を巻いた少年が必死に応援する。

 少年「ガンバレー!!ガンバレー!」
 いつしかまわりを巻き込んで大合唱になる。

 清水市内・東京・札幌・大阪・京都・広島・福岡・・・・・
 スーパーで万引きしたおばさん、ボロボロ泣きながら応援。

 日本各地で応援の声が、津波のように広がってゆく。

 街角では、いつしか全員が手をつなぎ、肩を組み、心をひとつにして霊獣を応援していた。


 ×   ×   ×
 富士樹海の神社
 社殿の中、忌部の一族が集まり、祝詞を唱えながら祈りを捧げている。

 少女のようなイメ、伊佐山も揃い、全国の民に祈りのイメージを送り続けている。

 伊佐山「イメ様、そのように無理をなさってはお命が……」

 イメ「命など惜しゅうはない。それよりも、あれは……渡したか」

 伊佐山、だまってうなずく。


 ×   ×   ×
 まわりにもがき倒れている霊獣達を睨み付けるゴジラ。

 アンギラスに向かって進み出す。

 と、背後から突然、一群のミサイルが飛来し、次々と命中する。



 ○本栖湖畔付近、防衛軍集結地帯
 防衛軍陸上部隊主力の援護射撃。ヘリで駆けつけた立花准将が指揮を執っている。

 立花「いいか、ゴジラに確実に当てろ、そうでなくては効果がない!」

 兵士「あのミサイルに炸薬は入っていません。何を入れたんです!」

 立花「わしも知らん。桃とか蔦とか櫛とか……ええぃ!国家機密だ!」

 兵士、あっけにとられ呆然とする。



 ○富士山麓・朝霧高原
 急にゴジラが苦しみ出す。体のあちこちにヒビが入り、白煙が漏れ始めている。

 その時、すぐそばに新たな光の柱が立ち上る。

 中から現れたのは、小笠原で散ったはずのバラゴン。

 瞬間、バラゴンの体から金色の光が走り、倒れている霊獣たちに稲妻のように吸い込まれる。

 ボロボロになったアンギラス・バラン・ラドンがよろよろと立ち上がり、バラゴンを先頭にゴジラに挑みかかる。


 ×   ×   ×
 『BSデジタルQ』中継車
 由里「なんということでしょう。バラゴンが、バラゴンが甦りました(涙声)」

 ×   ×   ×
 武田「あのミサイルはなんなんだ!!」

 丸尾「バラゴーン!いけぇーー!」

 門倉「怪獣いけぇーー!いけえーー!」
 
  


 ×   ×   ×
 ゴジラ、挑みかかる霊獣たちに必死の熱線を発射。

 しかし、怪獣達から発する金色の光に乱反射し、むなしく周辺に散る。

 
最後の肉弾戦。

 ゴジラはバラゴン、ラドン、アンギラス、バランに組みつかれ動きが取れない。

 体表のひび割れは益々大きくなり、白煙はいまや噴煙となってゴジラから立ち上っている。

 霊獣たちゴジラの体に食いつき、牙で引き裂こうとしている。

 グァアアアアアアーーーーン!
 ゴジラの断末魔。

 ついに白煙と共に大爆発を起こすゴジラ。

 バラバラと周辺に破片が飛び散り、やがてかき消すようになくなってゆく。

 金色の光も徐々に薄れ、四門の霊獣たちも次々に消え去ってゆく。


 ×   ×   ×
 『BSデジタルQ』中継車
 由里「やった!勝ったわ!!」

 飛び上がり、狂喜乱舞する丸尾、武田、門倉と抱き合い、喜び合う。


 ×   ×   ×
 全国の観客達
 こちらも各地で大喜び、誰彼かまわず抱き合い、祝福する。

 ×   ×   ×
 本栖湖畔付近、防衛軍集結地帯
 立花、無線でゴジラが爆散したことを知り、ほっとため息をつく。

 すぐそばにいた兵士と握手。

 まわりを囲む兵士達、立花に向かって敬礼する。


 ×   ×   ×
 富士山、神々しいまでにそびえ立ち。

 太陽の日を受けキラキラと光り輝いている。



 エンドクレジット

 
 
 あとがき

 もうひとつの「GMK」いかがでした?

 この作品を書くに当たっては本来の「GMK」の脚本を下敷きにさせていただきました。

 本編の映画のシーンも、ふんだんに盛り込んで、途中から路線変更。

 自分なりのこだわりを思いっきり盛り込んだら、大暴走してしまいました(笑)

 でもGMKに登場できなかったバラン・アンギラスに活躍させたい夢はかないました。

 ゴジラにも戦争の英霊というより、もっと大きな宿命を背負わせたかったし。

 なによりバラゴン好きの私は、GMKのバラゴンがいとおしくって。

 勝手に復活させるわ、やりたい放題。

 金子監督、長谷川さん、横谷さん、申し訳ありません。

 「GMK」は最高に楽しめる作品でした。ありがとうございます。
一気に読みました。

ゴジラって、イザナミの命の怨念の化身だったのですね。
これは知りませんでした。
日本書記の記述はうろ覚えですが。

全部、リンクしているんですね。
>>[6]
いつもありがとうございます。

この作品は 2002年 8月発行 同人誌「特撮が来た4 GMK特集」に収録したものです。
偶然、本来の「GMK」の脚本が手に入りまして、それに自分の解釈と妄想を加えて、書き直したものです。

本来のGMKは、戦争中に南方で亡くなった戦死者の魂が・・・・という設定になっていましたが
私は好きな日本神話から題材をとってきました。

ところが、なんと偶然にも尊敬する漫画家の星野之宣さんの作品で「血引きの岩」という作品が
ほぼ同じようなネタの作品でした。そっちはホラーで怪獣は出てきません。
それも2002年の3月 ネムキという雑誌に発表されているのです。
先日、本屋で単行本を購入して、ほぼ10年ぶりに気が付きました。
いやーーーこんなことってあるもんですね。
これは、シンクロしているみたいで、ちょっとうれしかった。

でも、この作品は怪獣映画というよりは、ファンタジーに近いですね。
では、また。


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