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メトロン星人の本棚コミュのどろろ ヤグチの巻

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「どろろ ヤグチの巻」           


 壱 

 1480年文明12年 10年の間続いた応仁の乱が終わり早や3年が経とうとしていた。
 応仁の乱は、国中の大名が東軍と西軍に別れて各地で戦い京都を焼け野原にした。
 室町幕府は無力、時の将軍足利義政は政治に背を向け、酒色と遊興にふけった。
 さらに大凶作のせいで飢饉と疫病が蔓延し、洛中(京都)の餓死者だけで八万人以上。
 賀茂川の河原には死体が山積みになり、その腐臭は洛中のどこにいても臭ったという。
 この時代の人々の心を表す和歌が残っている。
「天下は破れれば破れよ、世間は滅びれば滅びよ、人はともあれ、我が身さえ富貴ならば」(応仁記)
 まさに、人の事などはかまっておられず、盗賊・野盗は好き放題、それを取り締まる組織さえなかったのである。
 民は飢えと戦と圧政に苦しみ抜いていた。
 どろろと百鬼丸のふたりは、そんな時代を生きていたのだ。

 ここは加賀と越前の国境。
 あてのない旅を続けるふたりは、山深い街道で夜を迎えた。
「兄貴よう〜どこまで行くつもりだよぉ、もう日が暮れちまうじゃネェか、休もうぜ」
 百鬼丸はまとわりつくどろろを気にせず、暗闇に向かって歩き続ける。
 四十八の魔物に体の部分を奪われた百鬼丸に取って、夜は昼とそう変わらない世界だ。
 目や耳や鼻、さらには触覚や痛覚まで魔物に奪われた百鬼丸には、それらに代わる特殊な力が備わっていた。
 その力は成長するにしたがって、さらに研ぎすまされ、すでに常人をはるかにしのぐものとなっている。
 育ての親、寿海が与えてくれた作りものの手足、中に仕込まれた破邪の剣。
 我流だが、人の動きを越えた超絶な剣術。百鬼丸は、寿海が心血を傾けて作り上げた芸術品と言ってもいい。
 しかし、百鬼丸には大きな謎があった。
 育ての父、寿海を亡くし絶望の暗闇に落ちたとき、天から聞こえた声。

 『おまえの体を持つ魔物どもが、人をたぶらかし、浅ましき喜びを貪っている。奪われた体が泣いているぞ。
 おまえの心と失われた体が呼び合っておる。戦え、そして体を取り戻したとき、新たな縁が生まれるのだ』

 ・・・・どういうことだぁ!
 百鬼丸は声に向かって必死に問うたが、答えはなかった。
 魔物を倒して体を取り戻す、そして人間になる、それにどんな意味があるというのか?
 百鬼丸は、妖怪を求めてあてのない旅に出た。
 そして数年が経ち、どろろと出会った。
 ただの悪ガキか?それとも盗人か?
 目の見えない百鬼丸には、どろろの内面しか見えない。
 他人の目を使って見たどろろは、きたないボロをまとった痩せたガキだ。
 しかし、どろろの心の中には熱い何かが溢れていた。やりどころのない怒りに満ちた命の力。
 例えるなら真っ赤に燃えた火の玉。そんな心を持った奴に、百鬼丸は、いままで出会った事はない。
 百鬼丸は、どろろと旅をするようになった。
 いくつもの妖怪を倒し、いつしか兄貴と呼ばれ、弟とも思えるようになった。
 いや、それでも天下の大泥棒どろろ様にとって俺は、腕にお宝の刀を持つ獲物でしかないのかもしれんがな。
 百鬼丸の口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
 
「どろろ、その先に小さなほこらがある。今夜はそこで野宿だ」
「ありがてぇ、兄貴。待ってました!先に火を起こしてくんねぇ。へへへっと、ちょっと食いもんを探してくらぁ」
 そう言うとどろろは、素早く森の中に入って行った。
 どろろの持つ特技のひとつに食い物を探す力がある。
 草や木の実、虫の幼虫や鳥、獣、小魚やキノコのたぐいまで、並の人間なら吐き出しそうなゲテモノまで、躊躇する事なく口にする。またその食べ方も手馴れていた。懐に忍ばせた小袋の中には塩や味噌が入っていて、さっと炙ってぱらぱらと振りかける。
 百鬼丸もその分け前にあずかり、ずいぶんと飢えをしのいで来たものだ。
 火をおこしてしばらく待つと、どろろが戻って来た。
 キノコや虫の幼虫、バッタや木の実、それらを小枝に刺して炙って食べる。わずかだが干し米もあった。
「フウフウ・・・こりゃ熱いや、兄貴焼けたぜ」どろろが串を差し出す。
 小枝に刺した湯気の上がる虫の幼虫をほおばるふたり。
 あたりは真っ暗闇、小さな焚き火の明かりに照らされ、ふたりは無言で食べた。
 ごろりと横になり、黒い木立の上を見上げると、わずかに夜空が見えた。
 どこかで遠い雷が、ドロドロ・・・と鳴り続けている。
焚き火をじっと見つめているどろろの心が、百鬼丸に流れ込んでくる。

 弐

 ドロドロドロ・・・遠くから響く雷。
 それにかぶさるように地を揺るがす馬の蹄の音。
 オーオーオオォー!泣き叫ぶ人の声。
 血のような夕日に大地は赤く染まり、見渡す限り屍の荒野、上空には何千羽ものカラスが舞っていた。
 赤ん坊だったどろろは母の背におぶさり、母は戦で死んだ兵士の体から鎧や刀など、金になりそうなものをはぎ取っていた。
 すぐそばには親父もいた。親戚の家族もいた。
 戦のまきぞえを食って村を焼かれ、家族を殺され、土地を捨て、流れ者となって数年。
 いまではいっぱしの盗賊暮らし。
 親父は野党「火袋」と名乗って、村の一族を従え、戦場かせぎや追いはぎ、武家の荘園などを襲っていた。
 母の名は「お自夜」盗賊ぐらしのすさんだ生活の中、赤ん坊だったどろろにだけは、ありったけの愛情を注いでくれた。
 しかしその盗賊暮らしも、もともとは火袋が言い出したわけではない。
 放浪中、出会ったイタチという、うさん臭い男が誘ったのである。
 一族は加賀の山奥に小さな隠れ谷を見つけ、そこを根城に応仁の乱の最中、加賀の守護を争っていた富樫政親と赤松政則の戦いの合間をぬって戦場かせぎを続けて来たのだった。
 その富樫政親の家臣が、醍醐景允(だいごかげみつ)百鬼丸の実の父親であった。
 しかし応仁の乱の末期、赤松政則の没落によって加賀の支配は富樫政親の手に移る。
 富樫政親は醍醐景允に、領地内の野党や赤松の残党を一掃せよと命じた。
 火袋は執拗に抵抗した、なぜなら生まれた村を焼き払ったのは醍醐景允の軍勢であったからだ。
 しかしイタチの裏切りにより隠れ谷に醍醐の軍勢が現れ、一族は皆殺しになった。
 父、火袋はお自夜とどろろを逃がすため、単身醍醐の兵に立ち向かった。
 火袋は全身に矢を受けハリネズミのようになりながら、なお戦った。
 槍で突かれ、刀で切られても醍醐景允に向かってゆく。
 その姿をどろろと母は物陰から息を殺して見つめていた。
 その父を醍醐景允は馬上から冷酷に見下ろしたまま、槍で突き殺した。
 火袋は、目を剥きながら最期の力をふりしぼり、体を貫いた槍をそのまま奪い取ると、手近な雑兵を道連れに壮絶な最期を遂げた。
「あの顔を、額に傷のあるあの男を忘れるんじゃないよ。おとうちゃんの、おとうちゃんの仇だからね・・・・」
 泣きながらお自夜は言った。ぎゅっと握りしめた母の手の感触とともに、どろろは醍醐景允の顔を心に刻んだ。
 
 お自夜と、どろろ二人だけの旅が始まった。
 季節は秋から冬へと移っていった。
 どこへいくあてもない。ただ都に行けば食べ物があるとうわさだけを信じて。
 いくつもの荒れ果てた村を通り過ぎた。どろろはいつも腹を減らしていた。
 大飢饉・・・・それは人が人を喰う時代だった。
 食い物が無くなると家畜が消えた、犬や猫、カラスまでもがいなくなった。
 道ばたには干涸びた死体が無造作にころがり、真っ黒にハエがたかっている。
 廃屋には、子供を抱いたままミイラになっている母親がいた。
 親は子供を捨て、子は親を捨て、一杯のかゆのために人を殺した。
 そんな旅の中でも、お自夜は命をけずってどろろを愛し続けた。
「いいか、いつかお父ちゃんみたいな本当の男と巡り会うまでは、お前は男でいるんだ。いつか本物の男に出会って、どうしても女になりたいって思うまでは、お前は男だ。男なら泣くな、絶対に泣いちゃいけない・・・・」
 お自夜は、そういってどろろを抱きしめた。

 ある大雪の夜、お自夜はどろろに打ち明けた。
「いいかい、おとうちゃんには密かに隠した財宝があるんだ。いつか百姓が力を合わせて侍を倒すために集めたお金なんだよ。それでねぇ・・・その場所をおまえだけに教えておこうと思うの」
「いやだ。おいら聞きたくない。もしおいらに教えたら、おっかちゃんは気持ちがゆるんで死んじゃうかも知れないだろ」
「・・・・そんな、そんなことはないよ」
「いやだ、聞きたくない。おっかちゃんだけが知ってればいいんだ」
 その夜、お自夜はどろろの背中に密かに入れ墨を彫った。宝のありかを示した地図を・・・・
 それから3日後。
 お自夜は力尽きた。
 どろろを胸に抱いたまま、粗末なむしろにくるまって息を引き取ったのだ。
「おっかちゃん、死んじゃいやだ!おっかちゃん!おいら・・・もうめしなんかいらん。たべものなんかいらん!だから死なないでおくれよう、おっかちゃん!!」
 激しい吹雪がどろろの心の中を吹き荒れる。
 あの夜の事をおいらは、決して忘れない。
 生き抜いてやる。そしていつかきっと侍に、醍醐景允に復讐してやる。
 そう思って生きて来たのだ。


 参

「そういうわけだったのかい、お前も苦労したんだなぁ」
 寝っ転がって目を閉じていた百鬼丸がつぶやいた。
 どろろが顔をあげた。
「何いってんだ、おいらなんにも言っちゃいねぇよ」
「隠さなくてもいい、お前の考えてることは、すっかりわかっちまった。俺の頭は普通じゃないからな・・・」
「へん!大きなお世話だぃ!こんなこたぁ、兄貴の知ったことじゃねぇよ」
「だが、お前はまだ幸せだ、本当の親に育てられたんだからなぁ」
 百鬼丸は起き上がり、どろろを見つめた。
「・・・おいらはゆるさねぇ、親父を殺した醍醐景允、かあちゃんや仲間を殺した戦、そしてこんな世の中をつくった侍を」
「復讐か・・・それがおまえの望みなら、親父の残してくれた財宝とやらを使うといい」
「へん!財宝なんか、いらねぇよ」
「こいつのせいで、おっかちゃんは死んだんだ!そんなもの使わなくったって金ぐらい稼いでやる」
「ふふふ・・・天下の大泥棒どろろ様か。そうだったな」
 
 ふいに百鬼丸の顔色が変わった。
 ざくりと草を踏み、近づく足音がある。
「どうやら客のようだ」
 百鬼丸が立ち上がった。
 どろろは、飛び上がり社の影に隠れた。
「だれだ!コン畜生、出てきやがれ!」
 暗闇の中から、槍や刀を構えた数人の男達がのっそりと現れた。いずれも一癖ありそうなつらがまえ、一目で盗賊だとわかる。
「こいつは懐かしいなぁ、どろろ、おめえが生きてたとはなぁ・・・」にやにや笑いながら近づく男。
 その顔に、どろろは見覚えがあった。
「そうさ、イタチだよ。火袋の親父にはずいぶん世話になった・・・」
「この野郎!お前のせいでとうちゃんは殺されたんだぞ!」
 怒りにまかせ飛びかかろうとするどろろを、百鬼丸が押さえ込んだ。
「どうやら顔見知りらしいな・・・俺たちに何の用だ」
「へへへっ、このあたりはなぁ、俺たちの縄張りだ。灯りが見えるってんでやって来たらどろろじゃねぇか。話は聞いたぜ。親父のお宝の話は、俺も聞いた事がある、まさか本当だったとはな」
 イタチは、火の前にどっかと座り込んだ。そのまわりを手下が油断なく囲む。
「俺もなぁ醍醐の奴にだまされたんだぜ。あんときは百姓に戻れば命は助けてやるって言われてよ。谷の場所を教えちまった。でも醍醐の奴、俺まで殺そうとしやがった。それで逃げて、今じゃ赤松の家臣様よ。これでも侍だぜぇ」
「赤松だと、赤松政則は加賀を捨てて西国に戻ったと聞いた。なぜこんなところにいる」
「へへへっ、大きな声じゃ言えねぇが赤松の姫君がいるんだよ。そいつを立てて巻き返そうって腹よ。
なぁどろろよ。おめえのその財宝とやらを貸しちゃくれねぇかい。金で侍を集めりゃ憎い醍醐に復讐が出来るぜ」
 どろろの顔が怒りで真っ赤になった。
「このホゲタラめぇ!!そんなクダラネェ戦のために使えるかぁ!復讐なら、今やってやる!」
 どろろは隠し持っていた小刀を抜き放つとイタチに飛びかかろうとした。
 囲んでいた手下が、ずらりと刀を抜き、どろろに向けた。
「まて!どろろ」
 百鬼丸が双方の間に割って入る。
「その姫君とやら、本物だろうな?会って話せるか・・・」
「おう、こいつの方がものわかりがいいぜ。おめぇはなんだ、見たところ侍のようだが・・・どろろの身内か?」
 百鬼丸はどろろに頭の中で話しかけた。
(安心しろどろろ、俺も財宝を渡す気はない。ただ気になるのはこいつらの体から、かすかな妖気を感じる。俺にまかせろ)
「どろろ。その姫に会おうじゃないか、醍醐の敵は俺たちの味方だ。無駄な事じゃない」
「ちぇっ!わかったよ、兄貴」
 驚くほど素直に、どろろは刀をしまった。
「へへっ、どろろ。ずいぶん物わかりがよくなったじゃネェか。ついて来な」

 男達はたいまつを取り出し火をつけると、百鬼丸とどろろを取り囲むようにして山道を歩き出した。
 慣れた道なのか、男達の足取りは早かった。細い脇道を1時間ほど進むとやがて開けた谷間に出た。
 山を下り、渓流沿いに上流に進む。すると大きな滝のある崖に行き当たった。
 闇の中、ごうごうと激しく流れ落ちる滝。まわりは木立が生い茂った崖になっている。
 イタチは滝を迂回し、滝壺の裏側にある洞窟に入ってゆく。鉱山のようなきれいな洞窟だった。
 すこし進むと、突然あたりが開けた。洞窟を抜けたところに大きな谷間があったのだ。
 そこはまるですり鉢の底。高い塀に囲まれた砦のようで、中央には神社のような屋敷があった。
「ここが雪姫様のお屋敷だ」
 屋敷の周りには、急ごしらえの長屋があり、そこから武装した男達がわらわらと集まって来た。
 百鬼丸とどろろを待たせたまま、イタチが男達と小声で相談をしている。
 やがて、背の高い侍が現れた。あきらかに野党とは違う身分のある侍のなりをしている。
「姫様の御前に案内いたす。ついてまいれ」
 ふたりは、謁見の間に通された。そこは板敷きの広間で正面には数枚の畳、脇には燭台、数名の家臣が脇に控えている。
 やがて、戸が開くと、灯りを持った侍女と共に、白い打ち掛けをまとった美しい姫が現れた。
 切れ長の目、長い黒髪、優雅な身のこなしは高貴な公家の姫を思わせる。
「雪姫様、こやつらが軍資金のありかを知るものどもでございます。頭が高い、姫の御前であるぞ!」
 黒髭の太った侍が百鬼丸に向かって怒鳴りつけた。
「よい、これ百鬼丸とやら。話は聞いた。私の父は従三位赤松政則である。将軍様より加賀の守護に任ぜられたが、謀(はかりごと)によって富樫政親に奪われた。わずかに残された忠臣と共にこの地に隠れ住んでおるが、播磨の本家と力を合わせ、いずれこの地を取り戻すつもりじゃ。お前とその娘が知る財宝を我らに託してはくれぬか。この地の守護回復の暁には、おぬしも家臣に取り立てようぞ」
 横から髭侍が口をはさむ。
「なんと身に余るお申し出じゃ、謹んでおうけせよ」
 どろろが怒りで今にも爆発しそうだ。百鬼丸はどろろを制しながら静かに答えた。
「姫様、ありがたいお言葉だが、実は俺たちもまだ、宝のありかは知らねぇんだ。こいつの背中にある文字の意味も分からねえし、教えろと言われても無理な話だな」
「おのれ!隠し立てするとためにならんぞ!」髭侍が立ち上がり一喝する。
「浦上、そんな大声を出すものではない。百鬼丸とやら、ならばしばらくこの館にとどまりその隠し場所を吟味するが良い。意味が分からぬなら知恵も貸そう、ゆるりと思い出すがよい」
 姫はそう言うと、さっと立ち上がり侍女を連れて奥へと消えていった。
 百鬼丸とどろろは、離れへと案内され粗末な食事を与えられた。

「なんでぇ、あの言い草は!兄貴が止めなきゃおいら飛びかかって殴りつけてやったのによぉ」
 薄いふとんの上に寝っころがってどろろが文句を言う。
「声が高いぞ、部屋の外には見張りがいることを忘れるな」
 百鬼丸がどろろの耳元でささやく。
「あの姫様は、妖怪に取り憑かれている。それもハンパな奴じゃない。年季の入った大物だ。この屋敷に何人の侍がいるかわからないが、それが分からないうちは簡単には動けない。なんとか屋敷の様子がわかればいいんだが・・・・」
「へっ、そんなことならどろろ様にまかせな。おいらがちょちょいと、かぎ回って調べてやるよ」
「ばか!今度はそんな簡単なわけにいくか。侍が大勢いるんだぞ。それに地図を持ってるお前が、出歩いてどうする。ここじゃ、俺がお前を守らなきゃならないんだ」
「おいらを守るって!へへへ・・・なんか、てれくせぇな」
 その時、どこからか琵琶の音が聞こえて来た。
 聞き覚えのある哀愁に満ちた旋律、どろろと百鬼丸には馴染みの音色だ。
「兄貴、あの琵琶・・・・」
「ああ、あの琵琶法師に違いない、なぜここに・・・?」
 闇の中、物悲しげな琵琶の音は、静かに鳴り続けた。

コメント(7)

  四

 翌朝、二人はあの髭侍に呼びつけられ、再び財宝の隠し場所を教えるように説得された。
 侍はどろろの背中にある宝の隠し場所を記すという文字を見たがったが、どろろは絶対いやだとはねつけた。
 姫から何か含まされたのだろう、今度は髭侍も無理はせず、案外素直に引き下がった。
 しかし見張りだけはしっかりつけられていた。体のいい軟禁状態である。
「ところで、昨晩琵琶の音が聞こえたが、あれは誰が弾いているんだ?」
 髭侍が去ったあと、見張りの侍に百鬼丸がたずねた。
「ああ、あれは旅の琵琶法師だ。街道を歩いているところを捕まえてきたのさ、姫様のなぐさめにでもなればと思ってな」
「なるほど、俺も昔、都にいた事がある、昨夜は久々に懐かしい音色を楽しませてもらった。どうだ、会わせてはくれぬか」
 見張りは、こんな乞食侍が琵琶を?という顔をしたが、上に許しをもらいに行った。

「どちらさんかな?わしの琵琶をご所望なのは・・・・」
 懐かしいはげ頭が現れた。あいかわらずの汚い姿だが、百鬼丸とどろろには嬉しい再会である。
「これは珍しいところで会うたものじゃ。百鬼丸にどろろかい」
 目は見えずとも気配でわかる。
「おぬしがおると言う事は、妖気に誘われたと見える」
「そうだ。あの姫はただ者じゃねぇ。この屋敷の中も妖気がぷんぷんするぜ。坊さんは、いつからここにいる?」
「かれこれひと月というところかな。おかげで飯には困らんわい」
「へっ、のんきな坊主だぜ、妖怪に喰われちまうかも知れねぇってのによ」
どろろがあきれている。
「俺たちは昨夜来たばかりだ。やっかいなことにどろろの背中の入れ墨の事が知られている。妖怪退治だけというわけにはいかないようだ」
 琵琶法師は、おもむろに琵琶を弾き始めた。声が外に漏れるのを防ぐためだろう。
「ふうむ、この屋敷におる侍はざっと四、五人、野党まがいの足軽を加えても二十人ぐらいじゃな。それに姫の身の回りを世話する侍女がひとり。侍で腕の立つのはひとり、背の高い侍ぐらいじゃのう」
「俺たちを案内した、あの侍か・・・・」
「なんだ、たいしたことないぜ。兄貴の腕ならおつりがくらぁ」
「あわてるでない。あの姫から発する妖気は、そこらの妖怪とは格が違う。わしが土地の者に聞いた話では、神代の昔からこの地には越の八口(こしのやぐち)という恐ろしい妖怪がおったそうじゃ。民は生け贄として毎年女子を差し出しておった。ところがあるとき通りかかった男神が、八口に酒を呑ませ酔ったところを退治したと言う。その亡骸を祀ったのがこの場所じゃというておった。並の妖怪じゃないぞぇ。
地元の民は恐ろしがって、ここには絶対近寄らん」
「なんでぇ、なんでぇ、そいつが化けもんの正体かよ!」
 どろろの大口は止まらない。
「さっさと退治して、こんな辛気クセぇところ出ちまおうぜ」
「いや、あいつらの狙いはおまえの背中に隠された財宝じゃ。逃げても財宝を狙って、どこまでも追って来るぞ。どろろ、お前だって金がほしいじゃろう。だが、金を手にしてどうする。何に使う?」
 琵琶法師に問われて、どろろが顔をしかめた。
「おれか?おれは、財宝なんかいらねぇ!」
「ふふ、財宝のいらない大泥棒か、おかしな話じゃないかぇ。おまえは恐いんだ。財宝を見つけたら、親父やおっかさんから受け継いだ遺志を継がねばならぬ。戦で泣いてる百姓や家のない子らのために、立ち上がって戦わねばならぬ。おまえさんには、その勇気がないんじゃよ」
「うるせぇ、よけいなお世話だ!」
「いや、坊さんの言う通りだ」
 百鬼丸が言った。
「俺もずっと考えてた。なんで俺が妖怪と戦っているかをな。体を取り戻し真っ当な人間になるか。でもそれだけじゃない。俺の倒した妖怪どもは、みんな弱い人間を食い物にしていた。そいつらを倒せば助かる人達がいる。死ななくてもいい命があるんだ。
こんな腐った世の中を操っているのは、侍じゃなくて実は妖怪どもじゃないのか?
俺は昔、不思議な声を聞いた、そいつは妖怪を倒せば新たな縁が生まれると言っていた。
どろろ、もしかしたらそれはお前の事なのかもな」
「・・・・へへへ・・・へへへのへっ」
 どろろは笑っていた。
「馬鹿野郎だ!兄貴はよぉ。おいらがそんなタマに見えるかってんだよぉ・・・・」
 どろろの顔が、少しだけ女の顔になっていた。

「しっ!」琵琶法師が気配を察した。
「来るぞ!」百鬼丸が身構える。
 突然、四方の板戸を開け放ち、武器を構えた侍達がずらりと三人を取り囲んだ。
 イタチがいる。
「たっぷり聞かせてもらったぜ。へへへ・・この部屋には仕掛けがあってな、おめえ達の話は筒抜けよ。三人とも仲間だったとは俺も気がつかなかったぜ。
姫様が言われた、娘の背中の皮を剥いでもってこいとな。もうおめえ達の命はいらねぇ。死んでもらうぜ!」
 ざっと二十人はいる。部屋の中、得物は槍や刀、弓矢はない。
 それだけを見て取ると百鬼丸は、いきなり飛び出した。
 剣も抜かず向かって来る百鬼丸に、侍達が斬りかかる。
 瞬間、百鬼丸の両手が引き抜かれ白刃がきらめいた。体を低く落とし相手の足下に滑り込みながら足を断ち切る。
 ぎゃあ!!瞬く間に数人が倒れ、襲いかかろうとした男達の足もとに転がる。
 百鬼丸はゴロゴロと床を転がりつつ、さらに数人の足を断ち切った。
 と、今度は反転、飛び上がると壁を蹴り、野党の後ろに飛び降りると、槍を持った男達を切り伏せた。
 たちまち板敷きの床は血の海と化す。その中を血まみれの男達が叫びながら、もがき苦しむ。
 あわてた足軽達は、むやみに武器を振り回し、床や天井、柱に斬り掛かり、果ては同士討ちまでする始末。
 その中、どろろと琵琶法師を捕まえようと数人の足軽が向かって来た。
「どいてな・・・・」
琵琶法師はどろろを下がらせると、琵琶の弦を断ち切って鶴首を引き抜いた。
 琵琶の中には仕込み刀が隠されていたのだ。
 まさか反撃されるとは思わなかった男達が二人、血しぶきをあげて倒れた。
 さらにそれを見て逆上した男達が、罵声をあげて襲いかかるのを、めくらの琵琶法師はあっと言う間に倒してしまった。
「すげぇ・・・・」
 小刀を抜いて立ち向かおうとしていたどろろは、やることがなかった。
「すげぇ、すげぇ、すげぇ!!」
 今や鬼神と化した二人は、十倍の敵をものともせずに、斬って斬って斬りまくった。
 こうなると数が多いだけの足軽は腰が引ける。
 不利と見るや次々と逃げ出した。残ったのは家臣の侍達だけ。すでにイタチの姿もない。
 しかし彼らも百鬼丸の相手ではなかった。二人同時に斬り掛かった侍も剣を交える事もなく倒される。
 腕の立つ背の高い侍が庭に降りた。
「百鬼丸とやら見事じゃ。こい!拙者が相手をいたす。浦上どの。姫を安全なところへ・・・」
 髭侍は、うなずくと奥に向かって走っていった。
 百鬼丸と背の高い侍が庭で向き合った。侍は正眼の構え、百鬼丸は両腕の剣を真横に広げてかまえた。
 じりじりとにらみ合いが続く。
 先に斬り掛かったのは侍だった。激しい気合いとともに双方がぶつかった。
 肉と骨を断ち切る音がして、侍の首から血が噴き出しゆっくりと倒れた。
 どろろと琵琶法師が駆け寄って来る。
「百鬼丸よ、感じるか!」琵琶法師が言った。
「ああ、凄まじい妖気だ、いよいよ本体のお出ましか!」
 そのとき、地鳴りと共に屋敷の屋根が崩れ始めた。
 今まで戦っていた部屋の床が落ち込み、柱が折れ、茅葺きの屋根を突き破って巨大な蛇の頭が現れたのだ。
 巨大な蛇神、越の八口は正体を現した。
  伍

 越の八口(こしのやぐち)は、八岐大蛇の原型と言われている古代の妖怪である。
「出雲風土記」にはこうある。
「母理(もり)の郷、天の下、造らしし大神、大穴持命(おおなむちのみこと)越の八口を平らげ賜ひて、置りましし時・・」
 オオムナチ(オオクニヌシ)が「越の八口」を平定したという記述がある。八つの口、これは八岐大蛇の事ではないか。
 それに「越」とは「高志(こし)」とも書き、共に北陸地方の加賀をさしている。
 北陸には縄文時代から続く蛇神信仰があった。ちなみに加賀のカガとは蛇の古名「カカ」から来ているとも言われる。

 見る間に屋敷が崩れてゆく。
 蛇神は頭だけでも水車小屋ほどの大きさがあった。口を開けば人どころか牛や馬もひとのみに出来る。
 胴体は大人3人が手を広げて囲むほど、ぐっと鎌首を持ち上げると、その高さは屋根よりも遥か上にあった。
 頭や胴体は白く、その目は赤く濁っている。
 百鬼丸、どろろ、琵琶法師の三人は落ちて来る残骸をよけながら長屋の方に駈けた。
「なんて大きさだ!兄貴、あんなのどうやってやっつけんだよ!」
「このくぼ地は、まるごとあいつの巣だったんだ」
 晴れていた空が一転、かき曇り暗雲が立ちこめた。
 シャーッ、シャシャーッ!!
 蛇神が長い舌を出し、天に向かって吼えるとゴロゴロと雷までもが鳴り始めた。
 全壊した屋敷から、あの髭侍や足軽達が必死ではい出して来る。
 蛇神は、それに気がつくと恐るべき早さで襲いかかり、あっと言う間に飲み込んでしまった。
 気がつくと蛇の頭に白い打ち掛けをまとった姫の姿がある。
「おのれ、百鬼丸。よくもわらわの志を邪魔したな。赤松の再興のためと、この身まで妖怪に捧げしものを・・・」
 琵琶法師が言った。
「なるほど、大蛇は赤松の残党を使って旅人や村人をさらっていたんだ。自分の餌にするためにな」
「姫さんよぉ、あんたはだまされたんだぁ!」どろろが叫ぶ。
「言うな!こうなれば、生かしてはおかぬ!」
 巨大な蛇の胴体がずるずると屋敷の残骸から抜け出してくる。屋敷の地下には巨大な空洞があり、その中に蛇神の本体が眠っていたのだ。空洞の底には長年生け贄にされた人々の人骨が山のように積み重なっていた。
「こっちだ」
 琵琶法師が百鬼丸とどろろの先に立って長屋に駆け込んだ。
「なんでぇ、こんな場所に逃げ込んだって潰されちまうぜ!」どろろが、百鬼丸の義手を抱えたまま駆け込んできた。
「火をかけるんだよ」琵琶法師が言った。
 小屋の中には油の入った壷がいくつも置いてあった。琵琶法師は匂いで長屋に油がある事を知っていたのだ。
「そうか、どろろ。こいつに火をつけろ、盛大に燃やして煙で、あいつをいぶしてやるんだ」
「ガッテンだい!」どろろは火打石で火をかけた。
 たちまち燃え上がる藁や木っ端、白い煙が派手に上がる。
 そのとき、蛇神が戸を破って突っ込んで来た。
 琵琶法師が刀を振るって裏口を作り、間一髪三人は抜け出した。
 壷が倒れ、火勢が一気に強まった。炎にあぶられ蛇神は苦しみ暴れる。
 その隙に百鬼丸達は、洞窟に走り込んだ。走りながら百鬼丸が叫ぶ。
「坊さん、どろろ!洞窟を抜けたら滝の上流に走って、竹を切れ、ありったけ切って川に流すんだ!」
 説明してる間はない。百鬼丸はどろろの頭の中に、作戦の段取りを送り込んだ。
「わかったぜ!兄貴」
 突然、後ろからどん!という風圧が来た。
 巨大な蛇の頭が赤い目をらんらんと光らせて後ろから追って来る。
ここは蛇神の通り道でもあったのだ。
「兄貴ぃ!もう来ちまったよぉ!」
 すぐ先に洞窟の出口が見える。
「走れ!どろろ!」
 洞窟を抜けると、どろろと琵琶法師は滝の上流に向かって走った。
百鬼丸は川に飛び込んだ。
百鬼丸は滝壺を抜けると滝を目の前にして、正面にある岩の上に立った。
ごうごうと流れ落ちる滝の音。
 深い緑の木々が滝壺を囲むように生い茂っていた。
 突然、滝を割って巨大な鎌首が現れた。続いて太く長い胴体が現れ、岩の上に立つ百鬼丸をとり巻きつくように囲んだ。
巨大な白い蛇が滝壺を埋め尽くす。
「もう逃げられはせぬ」蛇神の頭に腰まで埋まり意識と一体化した姫が告げた。
「お前を喰えば、奪い返された部分もわたしのものになる。さらに強い力を得る事が出来よう」
「そうか、お前も四十八体の魔物のひとつだな!」
 真上から巨大な口が迫る。
百鬼丸は飛び上がり蛇神の頭に飛び乗った。渾身の力を込めて両手の刀を思い切り突き刺す。
 しかし固い皮膚は刃を通さず、わずかに食い込むだけだ。
「くそっ!」
 蛇神は激しく頭を振ると百鬼丸を振り落とし、落ちて来るところをひと呑みにしようと狙った。
 間一髪、百鬼丸は牙をかわしたが、そのまま水面に落下した。
 水中には、蛇神の本体が蠢いていた。激しい水しぶきを上げ百鬼丸を押しつぶそうと迫る。
 苦しくなって水面に出れば、今度こそ一撃で喰われる。
 百鬼丸は川底を這いずり回って逃げた。巨大な胴体のわずかな隙間を見つけ、なんとか滝壺の裏に浮き上がった。
 しかし、それもほんのわずかの間。すぐに鎌首が追って来た。
 目を狙っての必殺の一撃を繰り出したが、これもわずかにそれた。
 逆に百鬼丸は両腕の刀をくわえられて、空中高く持ち上げられた。
「どろろぉ〜〜〜!!」
 もはやこれまでか、百鬼丸が必死に叫んだとき答えが返って来た。
「兄貴ぃ〜〜!」
 川の上流から琵琶法師が切った何十本もの竹槍が滝の上から降り注いで来た。
 あたりどころが悪く跳ね返される槍もあったが、竹槍の後ろには葉や枝がそのままついており、流れの勢いに押され厚い蛇神の皮を貫き通す竹槍も多かった。
「こん畜生ぉぉぉぉぉ!!」
どろろが乗った竹槍が上から降ってきた。
 槍は見事に蛇神の頭で唯一やわらかい場所、姫の体を貫き、蛇神の頭に突き刺さった。
 衝撃で飛ばされたどろろと百鬼丸は、滝壺に落ちた。
 頭を貫かれ、体中に刺さった竹槍の痛みでもだえる苦しむ蛇神。
 百鬼丸は岩に飛び乗ると蛇神の本当の急所、柔らかい腹を切り裂いた。
激しく吹き出す血が川を真っ赤に染める。
 蛇神、越の八口の断末魔であった。
 やがて百鬼丸、どろろ、琵琶法師の見つめる前でさしもの蛇神もついに息絶えた。

「うっ!」百鬼丸が顔を押さえた。激しい痛みが目の奥に生じたのだ。
「あにき、目が、目が落ちた!」
どろろの目の前で、百鬼丸の顔から義眼がぽとりと落ちた。
 百鬼丸にもう片方の目が戻って来たのだ。

 六

「これからどうするんだい?」
 峠の上で琵琶法師とどろろ達は、別れる事になった。
「わしは、これから吉崎御坊へ行くつもりじゃ。あそこは一向宗の本拠地、沢山の信者が集まって自由に市を開いておる」
「ああ、聞いた事がある吉崎は大変な賑わいだそうだな」
 百鬼丸もその事は知っていた。
「わしはなぁ、蓮如様からの御文を預かっておるのじゃ。河内におわす蓮如様と吉崎御坊をつなぐのがわしの本当の役目じゃ」
「なんだい、坊さんは乞食坊主じゃなかったのかよ」
 どろろの言葉に琵琶法師は笑った。
「いやいや、乞食坊主でけっこう。わしはな、どろろに一向宗の仲間になって欲しいのじゃ。今、一向宗は百姓の力を集めて富樫政親や醍醐景允と戦っておる。この戦に勝てば、ひょっとして百姓の国が出来るかもしれん」
「侍のいない国が出来るってのかよ!」
「ああ、この世を救うのはただひとつ阿弥陀如来様だけじゃ。侍だろうが貴族だろうが、天子様とて阿弥陀仏の前では、ただの凡夫。
その証に人の命はひとつしかない。そのひとつは誰がくれた?
阿弥陀仏を信じる者達が集まって国をつくれば、それこそ今よりましな国ができるじゃろうて・・・」
「へへへっ・・・そんなバカな事があるわけねぇよ・・・なぁ兄貴」
 百鬼丸はずっと黙って聞いていたが。
「どろろ、俺は決めた。おれの生きがいは、おまえの財宝を見つけてやる事だ。そしてもし見つかったらお前が親の心を継いで立ち上がる時の手助けをしてやろうと思う」
「兄貴まで、いったいどうしたってんだよ」
「どろろ、お前には他人にない何かがある。自分の命をかけても人を助ける事ができる、何かがな」
「・・・・・・・・」
「俺は、それを信じたくなったのさ」
「・・・・・兄貴」
 どろろは一瞬泣きそうな顔になった。
 しかし、次の瞬間はじけた。
「バカ言ってんじゃねぇや!財宝なんていらねぇって言ってんだろ。俺は天下の大泥棒どろろ様だい!」
 
「百姓の国だって、そのうちおいらが侍から盗み取ってやらぁ!!」
 

 これより8年後。1488年 加賀の国一向一揆。
 加賀の一向衆は富樫政親を滅ぼした。以後100年。
 1580年、織田信長に破れるまで、加賀は戦国の世の中で唯一「百姓の持ちたる国」と呼ばれる。
 この戦いの中に、どろろと呼ばれた少女と体を取り戻した百鬼丸がいたのか?
 それは史実には記録されていない。

 了


 あとがき

 私の手元には昭和47年3月発行の「どろろ」の単行本があります。
 子供の頃から何度も何度も読み返した大好きな作品で、なんとこれが実写で映画化されると聞いた時の驚き。
 しかもどろろを演じるのが柴崎コウ?!百鬼丸が妻夫木聡?!
 でも監督が「黄泉がえり」の塩田監督だったので、期待していました。
 見ましたよ、もちろん。DVDも買いました。
 でもね。なんか違うんだよなぁ。
 自分の「どろろ」は、こんなじゃない。
 オープニングで「ホゲタラぁポン!」と歌ってくれない「どろろ」は「どろろ」じゃない!
 そう思ってる奴なんです。わたし。
 で・・・書いてしまいました。
 自分のどろろ。
 手塚先生のコミックス+NAKA雅MURAさんのノベライズ+歴史的史実を、ごたごたと混ぜ合わせて。
 原作を読んでいらっしゃる方も、そうでない映画だけ見た方も、昔のアニメを見た方も、ぜひ読んでみてください。こんな「どろろ」もあってもいいかなって。
 そう思っていただければ幸いです。
いやいや、流石に「どろろと百鬼丸」が下敷きになっていると、読みやすいですね。

勿論、今までアップされた作品は、全部読んでいます。
しかし、余りにもリアル過ぎて、頭の中でビジュアル化してしまうものですから、
何ともコメントのしようが無いのです。
申し訳ない。

この「どろろと百鬼丸」の話は、もう記憶の彼方へ行ってしまいました。
どろろって、女の子だったのですか?
>>[6]
お久しぶりです。どーしたかなぁ、なんて思ってました(笑)
でも、読んでいただいてて感謝です。

ちょっとだけ作品の解説を・・・
天狗伝説、どろろは、地元金沢と加賀の地元ネタです。
天狗は、ほんとにうちの近所、そしてどろろは石川県と福井県の県境あたりの話になります。
どろろの話には、場所を特定する話がほとんどありません。
ただ応仁の乱と、醍醐景允という武将が出てくるだけです。
ただ百鬼丸の育ての親は、そうとうな名医ですし、京都のちかくであろうということは想像できました。
あとは、こちらの想像の世界。

加賀の一向一揆、その前の富樫政親の謀反、そして加賀に伝わる妖怪の伝説。
これらをひとまとめにして、どろろと百鬼丸の行く末を描いてみました。
いかがでしたでしょうか。
それらしく見えればいいのですが。

あと、どろろが女の子だというのはマンガで明らかになってます。
将来、百鬼丸と一緒になれるといいのですが(笑)

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