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ザ・ダイワールド!!コミュの【ホ】チェーンメール

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「彼」には、友達があまりいませんでした。


 その理由としては、彼が悪戯好きだったことと、彼の住んでいる町に子供自体がほとんどいないことが上げられます。


 彼の学校では生徒の数が極端に少ないため、小学校と中学校が一緒になっていました。しかし、それでも全校生徒は20〜30人程度のものでした。

 そんな小さな学校に六年もいると、いたずら好きの彼としては退屈だったみたいです。何か事件でもおきればいい、そんなふうに思っていたそうです。

 そんなときに、あの事件が起きました。



 事件が起きたのは、隣町の学校。

 そこに通う一人の女子児童が、帰宅途中に何者かにさらわれ殺害されたというものです。しかし、なによりも驚かされたのは、殺害されたその女の子の両足が切断されていたということ。

 小さな町に起きた悲惨な猟奇的殺人事件。その事件の噂は瞬く間に広がり、やはり彼の学校でも持ち切りとなりました。



 事件のおきた翌日、彼の学校では全校集会が開かれました。小さな校庭に全校生徒が集まって、やっと普通の学校1クラス分の人数。生徒みんなの顔をよく見渡しながら、校長先生は昨日の事件について話をはじめました。

 このとき彼は、すでにニュースを見ていたから、だいたいの内容は分かっていました。

 校長の話は、月並みな言葉を並べ立てただけでした。決して一人では帰らないこと。寄り道せずまっすぐ帰ること。知らない人に話しかけられてもついて行かないこと。

 ほとんどの生徒は怯えた様子で校長先生の話を聞いておりましたが、彼だけは、内心ワクワクとしておりました。

 なぜなら、新しいイタズラを思いついていたからです。


 集会が終わって教室に戻ると、担任の先生からもまたしつこく同じ話をされました。

「ウチの学校は安全だから心配しなくていい」

 この類いの言葉は何度も聞かされていました。けれど、一人だけ思いっきり心配している生徒がいました。K子です。

 K子は素直で何でもすぐに信じ、しかも、かなりの怖がりだったため、彼の一番のからかい相手でした。

 そして、彼の唯一の親友でもありました。

 そのことを物語るように、去年買ってもらった彼の携帯のアドレス帳には、家族以外ではK子の名前しか載っていませんでした。



「本当に大丈夫なのかなぁ……」

 下校時間になって、そう呟きながら歩くK子を、彼は敢えて脅かしながら歩きます。彼はK子の怯えた表情が可愛くてならなかったのです。

 しかし、今回はK子があまりに怖がるものだから、見回りのおばちゃんに見付かって怒られてしまいました。が、なにはともあれ、それは平和な帰り道でした。



 家に帰ってから、彼は夜になるのを静かに待ちました。

 そして10時になる頃、K子宛てにメールを送ります。それは、チェーンメールと呼ばれるような内容のものでした。



・・・・・・・・・・・・・

私は許さない。
私を殺したアイツを許さない。
私の足を奪ったアイツを許さない。
邪魔するヤツも許さない。

絶対に見つけ出してやる…。

このメールを今から24時間以内に三人の人に送りなさい。そうすれば、いつか必ずアイツの携帯に辿り着く。そのとき、私はアイツを必ず呪い殺す。アイツの携帯かどうかはすぐにわかる。死んだ私の姿を笑いながら撮影したアイツの携帯を私が忘れるワケがない。もしこのメールを誰にも回さず消そうものなら、私はあんたの足をもらい、その足で犯人を捜すだろう…。

・・・・・・・・・・・・・



 はっきり言ってデタラメな内容です。しかし彼は、K子なら絶対に信じると確信していました。

 案の定、次の日の学校で彼は、真っ青な顔をしたK子を見ました。

「何!? 昨日のメール……!?」

 彼は、「隣の学校の友達から回ってきた」という嘘をつきました。


「そんな……。怖いから三人に送って、あのメールも消したんだけど、これで大丈夫だったかなあ……?」

 それを聞き、彼は「え? メール消しちゃったの?」と、驚いた顔をし、「だ……大丈夫だと……思うよ」と、目を逸らしながらに言って、さらにK子を怖がらせたりもしました。

 内心は、笑いを堪えるのに必死だったと言います。



 さすがは全校生徒20人ちょっとの学校で、そのメールは一日で学校中に広まりました。しかし、それがいけませんでした。


 メールを回して二日目。学校に行くとまた小さな全校集会が開かれました。

 校長は怒った調子で、「最近悪いイタズラが流行っている」と言います。もちろん彼の流したチェーンメールのことです。

 校長は、「デタラメだから真に受けず、二度とこのようなことがないようにしなさい」などと言ました。そして、犯人探しは行おうとはせずに集会は終わりました。

 彼はほっとしました。でももうおしまいかと思うと、つまらなくもありました。


 しかし、校長の言葉だけでは、生徒の恐怖を拭い去ることはできなかったようです。


 集会が終わってすぐ、一人の女の子が泣き崩れました。

 彼は面白がってその子に近寄ります。その子は同級生の女子の妹で、小学二年生でした。

 泣いている理由を聞いたところ、メールを三人に回せなくて泣いているらしいです。

 携帯電話は、あの事件以降物騒だからと親が買い与えてくれたらしいが、如何せんまだ買い立てで友達のアドレスがないから、仕方なくお父さんとお母さんに回したのだといいます。お母さんは真に受けて他の人にも回してしまいましたが、流石にお父さんが気づいて校長にちくったということでした


(ちっ、こいつのせいかよ)と彼は思い、

「あーあ! もうお前、殺される!」と意地悪を言ってやりました。すると、その子がさらに泣き出したので、彼は急いで逃げました。泣いているその子にはお姉ちゃんが駆け寄り、なだめていました。

「ごめんね。お姉ちゃんが間違ってあんたにまで回しちゃって。でも大丈夫だからね」

 姉は自らに責任を感じているらしく、妹を泣かした彼には何も触れませんでした。

 でも彼はそんな姉妹の姿を見て心の中で笑っていました。

(バカじゃねぇの? あんなイタズラ真に受けて)

 自分の考えた悪戯に苦しむ姉妹を見ると、とても可笑しく、優越感に浸ることができたのです。


 しかし、その次の日でした。

 その女の子の遺体が、両足を切断された状態で発見されたのは。 



 彼は酷いショックを受けました。まさか本当に幽霊が……?


 全校集会で、死んだ女の子に黙祷を捧げている時もずっと心の中で(僕のせいじゃない……)と何度も自分に言い聞かせていました。

 それから、生徒の心のケアのための特別授業とかいうので、キライな算数の時間が潰れたけど、いつもの自分のようには喜べませんでした。

 下校も集団下校になり下校時の自由も無くなりました。が、もうどうでもよかったです。



 警察はこの件について、隣町の学校で起きた事件と殺害の方法が酷似していたことから、同一犯による連続殺人として捜査するとのことでした。しかし、今回の事件が前回の事件と違っている唯一の部分に、このときはまだ誰も着目していませんでした。

 殺された二年生の携帯電話が、まだ見つかっていないということには……。


・・・・・・・・・・・・・


 事件からしばらくたったある日の夕方。

 死んだはずの妹から、姉の元にメールが届きました。

 まだ妹の死を完全には受け入れられていなかったお姉ちゃんは、妹が生きていてメールをくれたのだと一瞬思ってしまったそうです。

『あなたの妹の携帯を拾ったので渡したいです。今から学校の校門に来てください』

 お姉ちゃんは、誰にも知らせずに行ったらしい……。



 校門に着くと、その人がいました。優しい女の人で携帯もちゃんと返してもらえました。


 ただ一つおかしいことがあったとすれば、その人がお姉ちゃんの携帯を見て、

「可愛い携帯だね。ちょっと見せてもらってもいいかな?」と言ってきたことぐらい。

 お姉ちゃんは妹の携帯を見つけてくれた人だし……と思って快く渡してあげました。

 女の人は受け取るなり携帯を開けて、中を見始めました。それには驚いたが、我慢しました。しばらく中を見ていたようだが、何を見ているのかまではわからなかったそうです。


やがて「ありがとう」と言って返してくれたので、受け取ってからすぐ家に帰りました。



・・・・・・・・・・・・・

 学校でその子から話を聞いたK子は、

「妹からのメールじゃなくて残念だったね……」と慰めていました。

 K子は彼とは違って優しいから、クラスのみんなと友達でした。だからこそK子がこのお姉さんにメールを回せてしまったのですが……。

 彼は、そんなK子とは集団下校になった今でも一緒に帰っています。今日もいつもと同じように二人横に並んで帰っていました。

 しかし、この日、K子が学校から出てしばらくしたところで突然、「忘れ物をした」と言い出しました。取りに行ってくるから待っていてと言います。


 先頭を歩く先生には何も言わず、K子は勝手に取りに戻ってしまいました。



 彼はしばらく待ちました。が、K子はなかなか戻ってきません。

(まさかな……)などと思っていると、やっとK子の姿が見えました。

 何やら逃げるように走ってきます。

「どうしたんだ?」と、彼は聞きました。

「校門のところで女の人に、何もしないから携帯を見せてって言われたの! 断れなくて渡したんだけど、だんだん怖くなって女の人が携帯を見ている間に逃げ出したの……」と言います。

「それってあいつの言ってた人と一緒じゃん。何もされなかったんだろ? ただの不審者じゃん」と彼は言いました。殺人犯の潜んでいる町では、携帯を見てくる程度ではただの不審者になり下がるのです。


 しかし、K子は様子がおかしかったと言って聞きませんでした。

 あれはきっと、殺されたメールの女の子の幽霊が、大人の姿をして犯人の携帯を捜しているのだ……と。

 彼は違うと言いました。違うと思いたかったのです……。もし本当にそうだとしたら、そいつは勝手にあんなメールを書いた自分のことを許してはおかないはずだから。

「幽霊なんている訳ないだろ。女の子を殺したのは同一犯だよ。警察も言ってるじゃんか。すぐに犯人は逮捕されるよ」

 いつもならK子を怖がらせるはずの彼が、今回は安心させるように言いました。しかし、それはK子にというより、自らに言い聞かせていたのかもしれません。


 しかし、案の定、彼が言うように犯人はすぐに捕まりました。

 その日の夕方のニュースで、アナウンサーは確かに言ったのです。これまでに二人の少女を殺害した容疑者がやっと捕まったと。これで平和が戻ったと。


(やっぱり連続殺人だったんだ。そうだよな。幽霊なワケがないよ)

 彼は安堵し、K子の携帯に電話をかけます。


「もしもし……?」

 聞こえてきたのは大人の女の声でした。

 その声を聞いて、初めてK子の携帯が盗られたままだったことを思い出しました。

「K子ちゃんのお友達?」女の声が言いました。

「あ、はい。知ってますよ。K子が渡したまま逃げちゃったんでしょ? あいつに取りに行かせるように言うんで、場所を言ってください」


 彼は安心しきっていました。そのために聞いていませんでした。ニュースの最後に、アナウンサーが言った言葉を。



「……しかし、容疑者の供述によると、一人目の殺害は認めるが、二人目は身に覚えがないと言い、容疑の一部を否認している模様です……」

 このあと彼は、K子の自宅に電話をしました。話を聞いたK子は言われた通りに女の待つ場所へと向かいました。


 翌朝になって、そのニュースはありました。

 緊張した様子で、アナウンサーは原稿を読み上げます。



「この事件に新らたな動きがありました。昨日の夕方、真犯人と名乗る女性が警察に出頭しました。その女性はなんと一人目の被害者の母親です。警察の調べによりますと、母親は子供が殺された数日後に、流されたチェーンメールを見て犯行を決意。母親友達から『あなたの子に関する嫌な内容のメールが回っている』との噂を聞き、そのメールの存在を知った。人伝えにそのメールを回したのが○×小学校の生徒ということを聞き、その生徒を探し出し、自分の娘と同じ目に合わせて殺害。しかし、その子の携帯を見てメールを流し始めた子が他にいることに気づき、また探し出し、ついに三人目の被害者を出し、昨日の午後六時頃、警察に出頭しました。容疑者は、警察の『どうやって流しはじめた子を判断したのか』という問いに対し……」



 彼は放心状態となり、すぐには状況が飲み込めませんでした。



 え?

 メールを流し始めた子を殺害?

 僕はここにいる。

 どうして? じゃあ三人目は?



 彼の抱いたその疑問には、アナウンサーが答えました。容疑者の言葉を、容疑者の口調のまま、アナウンサーが答えました。



「チェーンメールの受信先を見て、最初の出所を探った。流し始めた者の携帯には、受信ボックスにそのメールがないはずだから」

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