AKB妄想エイトコミュのあっちゃんと僕

外から救急車のカン高い音が近付いてくる。
それが通り過ぎると、部屋の中は時計の歯車が溶ける音だけで、静かになる。

あ、でも一定の間隔を置いて、鳩が出てくる。
あれにはビックリするなぁ。
どういうタイミングか解らないけど、長い針がてっぺんに来た時、鳩は出てくる。



僕がこの部屋で一番好きな場所はあっちゃんがいつも座ってるソファーだ。
フカフカしててあっちゃんの香りが微かに残っている。なんだか安心できるんだ。


あっちゃんが家を出てどれくらいだろう。
あの時計で、短い針がてっぺんに登りきる前に帰ってくる。

と、言う事はもうすぐだ。



「ただいまー」


あ！あっちゃんだ！
なんだか今日は元気のない声だな。

「チョコ、寂しかったねー！ほらおいで！」

かがんだあっちゃんに僕は走っていく。
この瞬間が一番好きだ。
外は、寒かったのかな。
あっちゃんの手は凄く冷たいなあ。

「グス......」

あれ？あっちゃんが泣いてる。

「チョコ〜〜。」
「くーんくーん。」

僕も同じ気持ち。
あっちゃんが悲しいと悲しいな。
なんで泣いてんだろう...

「私、AKB辞める事になったんだよ、チョコ〜。そしたらなんだか今までの事思い出しちゃたよぅ。」

そうだ、あっちゃんが一度テレビを消し忘れて行った時、テレビにあっちゃんが映ってた事があった。
そして、あっちゃんはそのグループのリーダーみたいな事を言ってたな。サングラスのおじさんが。


「ワン！」

元気を出してよ、あっちゃん！
あっちゃんならそのグループを辞めたって絶対成功するさ。

「チョコ〜。」
「ワンワン！」

「グスン、あ！チョコ！そう言えばご飯まだだったね。」


あっちゃんはペディグディーチャムミキサーを取りだし、お皿の中に入れてくれた。

「おいしい？ヨシヨシ、私にはチョコだけだよ...」

そんな事を言いながら、エサを食べる僕の頭を細くて、だけど力強い手で優しく撫でてくれる。

「ワン！」
「おいしかった？チョコは食いしん坊さんだね。ウフフ」

「ワンワン！」
「あはは♪あ、チョコなんか匂うね？一緒にお風呂入ろっか♪」
「ヤン！ヤン！ヤン！ヤン！ワン！」
「なんでテンション上がるの〜、チョコのエッチ！あはは」


あっちゃんに綺麗に洗ってもらった後は、あっちゃんと一緒に寝るんだ。

あっちゃんはきっといつも凄く疲れてるんだろうな。
ベットの中で僕をギュッとしていた手がすぐに緩み、僕に背を向けて寝る。


僕はその背中にくっついて寝る。
そう言う日は良く、あの日の夢を見る。
拾われた日の夢だ。


5年前、虐待を受けエサもろくに食べれず、挙げ句の果てに僕は、夜、路地裏に捨てられた。
凄く寒い冬の日の事だ。

数日、何も食べてなかった僕の体力は限界に近づきもうダメだと思った時だった。

ボヤける視界に天使が現れたんだ。

「ちょっと！ゆーこ！大変！」
「うわー、かわいそう、なんでこんなに！？」
「なんでだろう、捨てられたのかな？」
「たぶんね、虐待もされてたみたい！」
「ひどい！ちょっと、私このこ連れて帰るよ！」
「でも大丈夫？今のマンション、ペット禁止でしょ？」
「命とルール、どっちが大事！？」
「ふふっ、敦子らしいね♪その子きっと幸せになるな。」

「いざと言う時はマンションは引っ越す！」
「まぁ、私たちこれからドンドン有名になるからね！ペットOKのマンションにだって住めるようになるわよ」



そんな会話が聞こえた。

そして暖かい部屋で、あっちゃんはミルクとペディグディーチャムをくれたんだ。

「辛かったね。ほら、いっぱい食べなよ。おかわりもあるからね？そしたらお風呂に入ろうね！床、泥だらけになっちゃったし」


ペディグディーチャム、暖かいお風呂、そしてあっちゃんの香り、温もり。
本当に天使だ、
天使意外になんて言うんだろう。
あっちゃん、本当に大好き。
大好きすぎるよ...






おはよ...
おはよう！

「チョコ！おはよう！」

あれ、どうやら凄く寝てしまってたらしい。
あっちゃんはもう仕事に行く時間か。
やっぱり朝はさみしいな。

「チョコ、今日は何年かぶりのOFFだから、沢山お散歩しようね♪
「ワンワン！」

やったね！あっちゃん、マジ天使だ！