バトンでボケましょう。コミュのアホ空高校野球部　～さゆたんレギュラー奪取の巻～

試合は、さゆたんのまさかのサヨナラホームランという、劇的な幕切れだった。

監督は、サヨナラゲームの祝福の輪に加わり、どさくさに紛れてさゆたんに
抱きつこうとしたところを、部員に取り押さえられた。

『オレはさわったる！！　いつかさわったるからな！！』
と叫びながら、トニーにょに後ろから抱きかかえられるように引きずられて
いって、その後、トイレでボコられていた。

それにしても、さゆたんが場外ホームランとは。。。

うそだ。

そんなはずはない。

マネージャに代打ということを、アンパイアが黙認したのも少し気がかり
だったが、さゆたんのホームランのインパクトは絶大だった。

オレは意を決して、さゆたんに尋ねてみた。

『今のホームラン、見事だったよ。それにしてもなぜ？飛距離150Mはあったぜ。』

さゆたんは、不敵な笑みを浮かべながらこう答えてくれた。

『私ね。。。　手術を受けたの。』

『手術！？』

さゆたんは淡々と続けた。
『この前道を歩いてたらね、急に人がどーーんとぶつかってきて。
　白髪で顔の丸い、かわいいおじさんだったんだけど。
　ダイジョーブダイジョーブっていうからつい、騙されたつもりで
　能力UPをお願いしたの。　
　～中略～
　手術か終わって、気が付いたら、全裸だった。
　しまった！！　やられた！！　と思ってたわ。
　
　でもね。その後に自分のステータスを確認してみたら。
　パワーAになってたのよ。』

意味がわからない。
すごくどこかで聞いた話な気がする。
っていうか、こういうテレビゲーム、やったことある気もする。
っていうか「パワーA」って、完全にゲームじゃないか！！

僕は混乱していた。

さゆたんはまだ続けた。
「パワーだけじゃなかったわ。守備、走力、ミート、肩もすべてAになってた。
　私は確信したわ。今すぐメジャー行けるって。
　だって、オリックス時代のイチローでも、パワーだけはBだったのよ。」

さゆたんは真顔だ。完全に現実とゲームを混同している。

このアホな野球部と付き合っているうちにとうとう、さゆたんまで頭が
逝ってしまったのか？？

まだ半信半疑だった僕は、さゆたんの能力をチェックすべく、外野練習に
参加させた。

矢のような送球、広い守備範囲、球際の強さ。
どれをとっても申し分なかった。

今年のドラフトは競合になるな、と思った。

高野連のルールに「改造でオールAになった選手の出場は認めない」という条文
はない。

これで決定だ。

この瞬間、「４番・中堅・さゆたん」が誕生した。