バトンでボケましょう。コミュのアホ空高校野球部　～トニーにょ流出？　2　～

イバータに　

「試合を止めてくれ！！」

頼んだが、そもそも６万人は観客が入る試合を、本当に止められるのだろうか？

イバータは不敵な笑みを浮かべながら、　

「ワカリマシタ」
と短く一言で答えた。

この男ならできる。　
こりん星からやってきたと自称する、異星の香りがプンプンとする、この男なら。

トレタカップ前日深夜。

川崎が誇る、６万人収容の近代的なスタジアムは、一瞬にしてガレキの山に変わった。
大きな音も、爆発もなかった。

当然、トレタカップは中止となり、バカ・ジュニアーズと相手チームは緊急帰国した。

ニュースは、このスタジアム突然の崩壊を、大々的に報道している。

日本政府は、スタジアム崩壊の原因調査を、NASAに依頼した。

NASAは、
『音も無く莫大なエネルギーを発する物質は、この地球上に存在しない』
という声明を発表し、異性人の侵略の可能性を、暗に示した。

ちなみに、このスタジアム崩壊による経済損失は、20億円だという。

「ヤッテキマシタ」

イバータは短く報告してくれた。
オレは、一瞬、背中に寒気が走った。

オレの目の前に居る、身長160ｃｍにも満たないヒョロヒョロの青年が、
一夜にして、６万人のスタジアムをガレキに変えた。

こいつは一体何者なんだろう？
そもそも、なんで野球しているんだろう？

これ以上考えると、頭が錯乱してきそうなので、とりあえずその事については、
考えないようにした。

当のトニーにょは、ただの紙切れと化したトレタカップのチケットを握り締め、
天を仰いで号泣していた。

『オゥウウウ　ノゥゥオオオオオ！！！』

いつも小刻みに跳ねて、喜びを表現するトニーニョが、初めて見せた男泣き。
久しぶりに、『日本式サッカー』ではない、本場のサッカーの試合を見たかったのだろう。

大きな背中を小刻みに揺らして、大地が揺れんばかりの大声を発している。

その姿は、やはり絵的には、あまりにもイタかった。。。

ともかく、トニーニョは夏の大会までは、チームに残留することになった。

NASAが調査を始めようが、20億の経済損失が出ようが、オレたちアホ空高校野球部は、
また一歩、甲子園に近づいたのだ。

～たぶん続く～