石原莞爾平和思想研究会コミュの第一次世界大戦後から満州国への思い

第一次世界大戦が終了した時、急激に大国として浮上したのは米国と日本でした。米国はハワイ併合してから、フィリピン・アメリカ戦争によりフィリピンの領土を奪い、それ以後は、中国市場進出を狙っていたのです。一方、日本では、日露戦争に勝利し、東アジアの新興帝国主義となり、第一次世界大戦中の21か条要求で、山東省や満蒙の利権を獲得していました。日露戦争は、日本歴史の大きなターニングポイントとなったのでした。日露戦争での勝利は日本国民を有頂天にしました。実は、日露戦争では中国人が日本を助けてくれたからこそ、あれだけの戦果をあげることが出来たのです。

日露戦争の勝利がその後の日本外交路線を大きく変え領土拡張主義として欧米帝国主義を不変のものとしてしまいました。日露戦争自体、中国国民の力、日英同盟なしで考えられなかったのであるが、想像しなかった日本の勝利は米英国の日本の領土拡張主義への不安を大きくしたのです。石原莞爾の満州での構想は、南下するロシアの勢力を、ソ連の国境線で食い止めねばアジアの安全は保障されず、その防衛は中国では不可能と判断したからです。石原莞爾の心中深く秘められた対策は世界の平和であって、その前提としてアジアの平和があり、その第一路線はソ連の国境線にあったのです。アジア人をこよなく愛していたので、戦争で中国人の恨みを買うことは極力避けたのです。

リットン報告案を審議中の国際連盟は、昭和8年2月24日、日支問題最終の総会を開きました。票決結果、タイ国代表が棄権し、日本が反対投票をした以外に、41カ国が賛成投票をしました。ここで日本と他の国際連盟諸国とは、極東平和を確保する方針について、全く意見を異にする事実が判明したので、松岡洋右代表は国際連盟脱退を宣言し、随員と共に、会場を立ち退いた。この随員の中に、石原莞爾がメンバーにいたのだが、ジュネーブにおける石原莞爾の行動は、全く影の人で、世界注目の的となったわけではない。

帰朝後、歩兵第四連隊長に補せられたが、夢の中でも、忘れる事の出来なかった満州、王道楽土の道義的国家を建設しようとして、努力を捧げて、やっと完成はさせたが、その後は、どうなっているのか、成長ぶりが気になるのでした。昭和11年の秋、出張を命ぜられ、躍る胸を抑えて、満州に赴いた石原莞爾は、唖然とし、憤然としました。石原莞爾の抱いていた王道楽土の夢は、跡形も無く消え去り、全満州の政治は、関東軍参謀長東条英機の手に、引きずりまわされていたのです。軍の機密費は、将校婦人会長東条勝子の手にわたって、まるで湯水のように消費され、満人は王道楽土の呼声に応じて、満州の立直しに奮い立ったが、実際に生活を悦楽しているのは、日本の軍人に日本から渡ってきた多くの利権屋だけでした。

日満両国の童児が喧嘩しているのを見ると、日本人の子供は、「俺は、日本人だぞ」と、高飛車に出て、満蒙人の子供は、自分の方に理屈があっても、それを聞くと、唇を噛んで黙ってしまう、そういう優越感を持って、満州に望むことは、石原莞爾が最も警戒したところだったのだが、日本人根性の悪の一面は、少しばかり、タガが緩むと、自省の念を失って、直ぐに弱いものいじめる態度に出るのです。軍人が政治に関係する事を、明治天皇は禁じられたが、一度関係すると、病みつきになって、軍人政治家となりました。石原莞爾は、これが「軍閥」というものの本体だと云っています。

「満州国は独立国である。関東軍が、この国の政治に手を出すのは、独立を侵害するものだ。関東軍第四課は、即時廃止し、内面指導などというものはやめて、満人の政治的意思を尊重しなくてはいかぬ。」この主張を意見書にまとめて、軍司令官に提出しました。東条軍閥は勿論、これを踏みにじったが、満人たちは、石原莞爾の姿を見ると、感激しました。「この人こそ、我々の見方だ。この人さえ、もう一度、立ち直しに来てくれたら、満州はよみがえる」どん底に沈んでいた人々が、非常な喜びをもって迎えました。石原莞爾は、同胞には嫌われたが、こうして異国民には慕われて、多くの力弱き人々の群が、石原莞爾の身辺にまとわりつくのを見出しました。私の父もこの石原莞爾の行動に心引かれ身の回りの世話をするようになったのでしょう。石原莞爾は、このままでは、満州国が崩壊してしまうと、しみじみ感じたのではないかと思うのです。