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JPN HIPHOPコミュのSEEDAとは 2

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長文注意

ときチェケ♪
http://pomeric.blogspot.com/search?q=seeda

サイコロ一家のU2Kは自身のMIX CDで、"日本語ラップ"ではない新しい概念"NIP HOP"を旗揚げし、新しい時代のラップとビートのスタイルを模索する。Remmah the Dopest Drug(=Hammer Da Hustler)等のアンバランスだけども緻密なビートと、ルーズだけども端整なラップ、そしてほとんどがヘイター攻撃と"NIP HOP"ボーストという無意味なリリックからは、SEEDAの"エモさ"の部分ではなく"スワッグ"の方に大きく影響を受けていることがわかるという意味で、「リアルな内容の作品=優れた作品」という価値観から外れた、まったく別の価値観を育む世代が現れつつあることを予感させる。

フリーのミックステープ"A DAY ON THE WAY"をドロップしたAKLOも同じような価値観を持つ。SEEDAとVerbal両者のフロウを混ぜ合わせたようなラップスタイル。Jay-ZやT.I.やRick RossやDrakeの最新曲/ヒット曲の上でラップしテーマを再解釈して自分の曲に仕立てあげてしまう姿勢。インテリっぽさを漂わせたオルタナティブ方面での経歴。あらゆる面で胡散臭さが鼻につくが、それでも、Hammer Da Hustlerのビートと、AKLO自身の「常にアップデートされる音楽にこそ未来がある」というヒップホップ観がそのイビツさを埋め合わせ、"A DAY ON THE WAY"にUSメインストリームに通じた"スワッグ"を付与する。

DJ.UWAY presents AKLO "A DAY ON THE WAY"
http://aklovision.blogspot.com/2009/11/day-on-way_07.html

AKLO - 2.0
http://aklovision.blogspot.com/2010/02/aklo-20.html

前作"A DAY ON THE WAY"からわずか3ヶ月、AKLOがドロップした新しいミックステープ"2.0"は恐ろしくエコなつくりだった。Lil Wayneのミックステープ"No Ceilings"からほとんどのビートを拝借し(しかも本人曰く原曲を聴いてすらいないのもある!)、そのまま曲タイトルをAKLOなりに解釈したラップを載せただけ。USミックステープ文化を踏襲してつくったローコストでインスタントな内容だけども、そこには日本人が直訳してしまうことで生み出されたウッカリした面白味が溢れていた。

*

微熱:SEEDAも同じで、「シーンなんか興味ない」と言う反面、“TERIYAKI BEEF”の件もそうだけど、周りの仲間を守ったりだとか、シーンを活性化させるようなアクションを率先してとる。『Concrete Green』シリーズ(以下C.C.G)で新人をフックアップしたり、自分のブログで他のアーティストのインタビュー記事をのっけたり、「レビューで誉めている暇あったら福生に行け」ってメディアやライターを批判したり。
SEEDAにしても、TWIGYにしても、それこそ般若もだけど、シーンに対して斜に構えているような人ほどシーンを守りつつ活性化させるような特別なアクションを取りたがる。そういう動きが顕著だったのが08年〜09年初頭なんですけど。

磯部:TKCはスチャダラを一番尊敬しているっていうくらいだもんね。でもさ、SEEDAもインタビューしたら「ある意味、あの時代(90年代半ば)いちばんリアルだったのはスチャ」って言っていたよ。

微熱:スチャダラの影響力はでかいな。

磯部:だから、スチャがあの時代にああいうことを歌っていたのはやっぱり正しくてさ。SEEDAが「スチャはあの時代の子供の平均的な感覚を歌っていた。今の子は軽いノリでプッシャーとかやっちゃう。だから、自分がそれを歌うのはある意味でスチャの意思を告ぐようなものだ」って言っていたのも印象的だった。

微熱:説得力ありますね、それは。

磯部:今までのスチャのフォロワーって文系であることをアイデンティティとしていたけれども、SEEDAはそうじゃなくて、言わば「スチャ的な表現」をフォローしていて、しかも、その立ち位置が90年代とは全然変わってしまっていることもちゃんと知っているんだよね。

磯部:だからSEEDAがいつも言うのが「嘘の無いラップをしたい」ってことで。今まではドラッグのことをうたうのはイキガリだったんだけど、SEEDAの場合はちょっと恥がある感じでしょ。「プッシャーなんてやっちゃってスミマセン」っていうような恥じらいがあるのが凄く自然だと思うんだよ。

磯部:でもそれよりビックリしたのは「ラップの上手さ」だな。今日の話のテーマとも絡むと思うんだけど。
SEEDAのラップ上手さってさ、「最近の娘って、足なげーなー!」っていうような「身体能力として全然違う!」って感じがしたんだよね。例えば、MUMMY-Dのラップが上手いっていう「上手い」という感じと、スタートラインからのレベルの差がある。努力して上手くなったっていうのと違って、生まれながらの素質が違うっていうか。

古川:でも、SEEDAは結構キャリアがあるじゃないですか。

磯部:うん。だからどこからか変わったんだよね。『GREEN』とかではそう思わなかったから。しかも、”HEAVEN”では以前の早口ラップが、格段に上手くなって戻ってきた。

古川:”花と雨”以前のラップスタイルが好きだっていう人は、今回のアルバムはかなり好きみたいだよね。

磯部:でも、以前の早口ラップは詰め込むだけでフロウがなかったじゃん。”HEAVEN”では”花と雨”のフロウを残したまま早くしている。4曲目の”Homeboy Dopeboy”なんて凄くビックリしたな。

微熱:”GREEN”の頃とか日本語の箇所でも何をラップしているのか聴いていて全然わからなかったけど、”HEAVEN”はラップは早いけど何を言っているのかすごく良くわかる。

古川:アメリカでもエモいラップが流行っているけど、”HEAVEN”はそういうエモいとこもあるよね。

磯部:でも、あんなに上手い人いないでしょ。俺はどちらかっていうとSLUGとか向こうのアンダーグラウンドにいるエモいラッパーを思い浮かべた。

古川:そうそう。だからアメリカのメジャーにいるエモいラッパーともちょっと違うと思ったんだよね。

磯部:ラップが上手いっていう部分で見ると、世界レベルでも相当上だと思うんだけどなー。

古川:磯部がここでSEEDAを指して言う「上手さ」ってどういう「上手さ」なの?

磯部:ラップに関して言うと、圧倒的に上手い人って本当に感動するんだよね。これってなんなんだろう?ってのは思うよ。この辺が核心のような気もするんだけど…。

微熱:私がSEEDAの”HEAVEN”を聴いていて意外だなと思ったところって韻をガッツリ踏んでいるところだったんですよ。”花と雨”や”街風”ってあんまり韻の印象が無かった。だからリスナーを飽きさせないっていう面でそういう韻やフロウのサイクルみたいなのって実は”HEAVEN”の中に意図されていたりするのかなぁと。

磯部:インタビューでSEEDAは意外に「韻は大事だ」というようなことを言っていたね。俺がSEEDAに会う前に決め付けていた「新人類」っていうかそれまでの日本語ラップの基準に則っていないっていうイメージよりかはすごくオーセンティックな感じな人だった。アメリカの伝統と日本の伝統の両方を踏まえてやっている人だった。スチャダラのくだりにしてもそうだけどね。

微熱:話変わりますけど、昔からいるラッパーのラップを今聴いてどう思います?

磯部:昔からいるラッパーのラップで「上手い/下手」の基準って、時代に喰らい付いていこうとしているかどうかだと思うんだよね。例えば、SEEDAの”街風”だと、KREVAはすごく上手いと思ったんだけど、BOSSは全く上手いと思わなかった。BOSSは本当にリラックスしてラップしているじゃん。アレはもう完全に出来上がっているラッパーの姿勢だったけど、KREVAは闘争心丸出しだったでしょ。

SEEDA feat. KREVA - TECHNIC


微熱:スキル比べみたいなね。

磯部:日本語ラップって上昇のベクトル―「上手さ比べ」みたいな志向がまだまだ強いし、「味わい」のあるラップというよりSEEDAみたいな「上手い」ラップが支持されている気がする。アメリカだと違うと思うけどね。アメリカは「上手さ比べ」っていうよりかはラップの個性だったり、味わいの面が評価されているからね。
SEEDAの”HEAVEN”が出たことでそういう「上手さ比べ」が更に加速するような気がしたな。だから、日本語ラップって「個性」が横のベクトルだとしたら、「上手さ」という縦のベクトルがまだまだ突き詰められていないのかもって感じがした。

微熱:私なんかはSEEDAの”HEAVEN”はラップスキルという面ではなくて、リリックの内容のほうを重視して聴いていたので、磯部さんの話で「SEEDAのラップの上手さに感動した」という意見は新鮮だったんですけど、主にどういう点が「上手い」と思ったんですか?

磯部:”HEAVEN”はSEEDAが「ラップの上手さ」を誇示したアルバムだと思うんだよね。例えば、早口ラップが戻ってきたというところや、英語のラップの分量が増えてきたところもある。日本語でリリックも書けるし、英語でリリックも書けるし、早くもラップ出来るし、遅くもラップ出来る。ラップのバリエーションが増えた上に、今まで以上に文学的なリリックも書いている。色んなタイプのラップと色んなタイプのリリックを書いてみせたことで、この人は自分が一番上手いんだということを言いたいんじゃないかなと感じた。”花と雨”のほうが逆に老成しているっていうか、とりあえずリリックを聴かせたいんだと思ったけど。

古川:ラップの音楽的な上手さが何によって拡張したり、狭まったりするかというと、ビートの種類だと思うんですよ。ビートの種類が幅広ければ広いほど、色んなラップのアプローチが出来る人は出来るし、出来ない人はそこで実力不足が露呈する。”HEVEAN”の”自由の詩”ってすごく変則的なエモいビートなんだけど、そこでSEEDAはすごい面白いのせ方をしているんだけど、A-DOGは普通のビートへののせ方をしていて…

磯部:オレ、SCARSの中でA-DOGが一番好き。

古川:「上手い」というより「味のある」ラップでしょ?K-DUB SHINEから脈々と受け継がれるような「味で勝負だ!」っていうようなラップ。

磯部:あと、”HEAVEN” におけるSEEDAのラップの特徴にコード感があると思うんだね。
チョイスされているトラックにもコード感があるけど、SEEDAもそれに呼応するようなラップをしている。R&Bっぽい曲も多いし。これもラップの上手さの一つだよね。ラッパーとしてコードがわかるかどうかってコンプレックスの一つだから。

磯部:本当に「勝ち負け」のベクトルで動いていてさ、SEEDAが”HEAVEN”で「オレは勝つんじゃなくてドロップアウトするんだ」っていうことを言っているじゃん?あれもそういうところからくる発想でしょ。「スローライフ」っていう言葉がリリックにも入っていたけど、スローライフって新自由主義の中の一つの選択肢にすぎないしね。

磯部:D.OのBOOT STREETだとか、SEEDAのディールのやり方とか見ていても思うけど、要はみんな金儲けしたいわけじゃない?金儲けするならインディーでやったほうが金が儲かるからインディーでやっているわけで、やっぱりそのタフさは肯定するべきなんだよ。

微熱:SEEDAにしろ、NORIKIYOにしろ、本当に感動するようなフレーズがバンバン出てくるじゃないですか。アレなんなんだろうなぁと思って。『恋空』みたいなケータイ小説のような文章が氾濫して、バカな文章に接する機会が増えてきている中で、あれだけ練られたリリックが書けて、しかもリスナーもしっかり付いていくシステムがよく生まれたなぁって感心しますよね。

磯部:やっぱSEEDAとか般若とかそういうストレスフルなところで活躍している人のほうがヒップホップとしては面白かったりするしね。だからヒップホップっていう音楽はそういう政治的な面を面白がるという部分も絶対にあるでしょ。

磯部:SEEDAの”HEAVEN”を聴いて思ったけど、SEEDAのラップの基となっているのはBOSSとZEEBRAなんだよね。

古川:ほほう。というと?

磯部:BOSSのラップの面白さと、ZEEBRAのラップの面白さが共存しているんだよ。
BOSS THE MCのラップの面白さってわかりやすいから、野田(努)さんみたいなヒップホップ外の人たちが評価したのもすごくわかるんだけど、腑に落ちなかったのは彼らがZEEBRAのラップ――ヒップホップがアメリカからの輸入文化で日本語ラップはそれのモノマネだっていうところを全部自分で背負っているZEEBRAのラップ――を嫌うからなんだよ。SEEDAはそのZEEBRAのラップすらも受けとめていて、BOSSの要素だけではなく、ZEEBRAの要素まで持ち合わせているからオレはSEEDAが好きなんだと思ったね。
 BOSS THE MCやSHING02は両手離しで好きとはいえなかったけど、SEEDAは今までのラッパーの中で一番好きかもって思ったもんね。

Nujabes ft. Shing02 - Luv[SIC] Part 2


磯部:西洋のサブカルチャーが好きな人って「日本ってやっぱダメだよね」っていう結論に落ち着く人が多いんだけど、そんなこと言っていてもしょうがないでしょ。でも、その対極としてオタク的な人は「日本の良さ」みたいなことを言い過ぎるじゃん。東浩紀が「おまえら洋楽聴きすぎ」とか言うのってコンプレックスでしかない。そういうのどっちもイヤなんだけど、SEEDAはその両者から否定されてしまうものを両面持っている。

微熱:さっき話していた「韻至上主義」じゃないけど、「日本語でラップしないと意味が無いだろ」というような思想と、「そうはいってもアメリカからの輸入文化なんだから影響受けないわけないだろ」というような思想の両方をうまく内在できているのがSEEDAだ、ということですよね。

古川:日本語ラップにスリルが発生する一つの要素として、「アメリカとの距離をどのようにはかるか?」という部分がずっとあると思っている。やっぱりこれは日本でヒップホップをやる上で絶対に意識をしなければいけないところなんだよね。

磯部:00年代に入って、政治的に世界をリードしてきたのはブッシュだけど、音楽的にはヒップホップだよね。かつてのメッセージ性は拝金主義の権化みたいな形に変貌を遂げたけど、音楽的には文句のつけようがない。音楽が好きな人なら本気でも皮肉でも「面白い」としか言えない。SEEDAはそういった全てを受けとめていると思うけどな。

磯部:だから、”HEAVEN”の最後の曲が全部英語のリリックだというのが、「いまだにアメリカが上位に立っている」ということを象徴しているような気もするけど…どうなんだろうね?サブプライムローンの話じゃないけど、アメリカの力が弱まっていく中で、僕達が愛するバタ臭い日本語ラップ、USヒップホップの舎弟としての日本語ラップもあれで最後なのかもしれないって感じはする。究極の形なのかもね、アレが。

古川:日本経済の中でも本当のトップ集団は結局外国に行っちゃうわけじゃないですか。

磯部:SEEDAもそういうことを示唆しているよね。「オレは競争からも抜け出す」って。

古川:でも、向かう先はアメリカ。アメリカが持っている利便性というのもそういうところなのかもね。未だに勝ち上がりゲームの行き着く先はアメリカだったりするし…。競争から逃げてもアメリカっていう。

磯部:TOKONA-XやSEEDAは日本語ラップを知らない人もわかる良さを持っていると思うんだけど、本人が拒絶している感じもあるし、シーンが拒絶している感じもあるし…

磯部:サイプレス上野には「不自由さ」を感じるけど、SEEDAには「自由さ」を感じるかな。サイプレス上野は「自由さ」に立脚してルールに縛られているけど、SEEDAはルールに立脚して「自由な表現」をしている感じがする。

SEEDA - HELL'S KITCHEN feat. サイプレス上野



微熱:根本的な問いになりますけど、ここでいう「自由」ってどういう状態を指すんでしょうね? SEEDAが自由ってことや、J-RAPを聴いて育ってきたの下の世代がその日本語ラップの枠組みから自由な表現を出来るっていうのはなんとなくわかるんですけど、それこそさんピン世代やさんピンのリスナーだった世代が「自由」だという状態がどういうものなのか想像できない。…ECDが自由だっていうのはわかるな(笑)

磯部:だから、別に自由なのがいいとは言ってないよ。不自由な面白さもあるし。
あともうひとつ、「日本語ラップの歴史」を重視しているか、「アメリカのヒップホップの歴史」を重視しているかって別け方は出来るかもね。サイプレス上野はどちらかといえば日本語ラップの歴史を重視しているし、SEEDAはアメリカのヒップホップの歴史を重視している。

磯部:”HEAVEN”の中に入っている”MARY MARY”って曲聴いてビックリしたんだけど、さっきまで付き合っていて喧嘩して別れた彼女をビッチ呼ばわりしているんだよね。J-POPしか聴いてこなかった人がこれを理解できるかっていったら理解しづらい曲だと思う。あれはアメリカのヒップホップの文脈を押さえていないと出来ない表現だよね。日本の歌謡曲の文脈からは全く外れている。

微熱:日本語ラップにもないかもしれないですね。

磯部:ないでしょ。アレを聴いて、「この人は本当にアメリカのヒップホップばかり聴いてきた人なんだな」って思った。倫理的には理解できないけど、情緒的には理解できるっていうか。そして、あの曲はすげえ個人主義的な曲なんだよね。彼女がどうこういうよりも、「オレ自身が悲しい。でもオレはオレだし、頑張るよ。」っていうような。バイリン云々以前に、ここまで日本的な価値観から断絶してこういうリリックを書いていることにビックリした。

古川:でも、あの人に日本的情緒が欠けているかっていったらそういうわけでもないじゃん。”街風”とか”花と雨”というタイトル自体が日本的情緒を漂わせているよね。

微熱:あのお姉さんに宛てた曲も死には直接触れずに、情景だけでそれを匂わせていて、その手法自体がとても日本的な情緒に則ったものだと思いましたけどね。

磯部:例えば、ロックンロールが日本に持ち込まれたときに、「それまでの日本的な情緒」に加えて、「ロックンロールによって開放された情緒」というものが若者にもたらされたはずでさ。SEEDAを聴いていると、「ヒップホップによって開放された情緒」というものがあるんだなって思うのね。
社会主義のはずの中国がどんどん資本主義に近くなってきているけど、それを「開かれていくベクトル」として感じるのか、「落ちていくベクトル」として感じるのかは人それぞれだけど、オレはやっぱり否定できないな。アメリカによって開放される側面があるということを。

微熱:SCARSというか、SEEDAに関しては「この2組の後」って感じが凄いするんですよね。それこそストリートでの生活における「ドキュメンタリー」という側面ではMSCの影響を受けている印象を受けるし、過去の体験を「私小説」みたいにリリックに落とし込む側面ではTHA BLUE HERBの表現が過去にあったからこそ出来ている。でも、「この2組の影響を受けた」と一口に言ってしまえば簡単に聞こえるかもしれないけれど、このレベルの作品を作るのは非常に難しいじゃないかなと思うんですよね。もうリスナーは当然このレベルのものを求めていると思うんですけど。

古川:あぁ、それは面白い指摘ですね。というのも、10月に出るSEEDAのアルバムやリミックス曲にBOSSや漢がフィーチャリングされているんですよ。だから本当に繋がっている。もっと言うとKREVAもフィーチャリングされているから、それこそ日本語ラップの「集大成的」なものになると思う。

微熱:勿論SEEDAはラップはとても上手だし、トラックもキャッチーだし、ヒップホップとして聴き易い作品ではあるんだけど、リリックに関してはTHA BLUE HERBやMSCとはもうワンランク違った「凄さ」があると思っています。リスナーが非常に聴き易い形にリリックが落とし込まれているというか…。それこそ「啓蒙的」なリリックであったり、リスナーに訴えかけるようなラップというのをTHA BLUE HERBやMSCは持っているんだけど、SEEDAはそこまでリスナーに押し付けるようなリリックは書かない。リスナーや仲間と肩組むような感じじゃない一歩ひいた視点に新しさと頭の良さを感じます。

微熱:その聴き方は、ある意味歪んでますからね。

古川:SEEDAの"花と雨"を聴いて思ったのは、「2.自己憐憫型」の色が非常に強い作品だということだよね。特にアルバム後半は完全に「泣き」の曲でしょ。お姉さんが亡くなった話とかね。日本であまり無かった「自己憐憫型」のギャングスタ・ラップを日本人が受け入れやすい「私小説的」な形に落とし込めたんだろうな。

微熱:あとこの辺の流れを聞いていて思ったのは、「自己肯定」と「自己否定」の面でも別けることが出来るということですね。MOSADやTHA BLUE HERBなんかは凄く「自己肯定色」が強くて、SCARSの中でもSEEDAやBESは特に「自己否定色」が強い。MSCが丁度中間くらいかな?「俺イズム」が横たわっていた日本語ラップの中で、SEEDAやBESの「今の俺の生活はロクでもねぇ」というような自己否定的な表現はやっぱり新しいと思うな。

●ラッパーの視点に見る「時間の流れ」について

古川:前にBLASTの別冊か何かにSEEDAの"花と雨"のレビューを書いていて、微熱君のSWANKY SWIPEのレビューに対する個人的な返答でもあったんだけど、このときに彼等の「時間の流れ」ってどうなっているんだ?ということについて書いたんだよね。特に僕はMSCとSCARSの対比について書いたんだけど、例えばさっき言ったようにMSC…特に漢は教育的な方向に行っていて、若者に向けたメッセージを発信していて、それが彼らのアーティストとしての生命を延ばしていることにもなっているんだけど、この視点って言い換えると「未来に希望を託している」ということで、彼等は「未来」に意識を持っていることがわかる。それに対して、SCARS周辺の子たちの視点に「未来」に対する言及が殆ど出てこない。SEEDAに関しては近過去から現在までの視点が主だし、BESのリリックも「未来」に言及している印象を全く残さない。今度リリースされるNORIKIYOのアルバムもそうなんだけど、この人たちは「未来」に対する希望が全く無いんじゃないかなと思えてくる。現在の「ストリート」ってそんなに暗いものなのか、というイメージを強く残すんだよね。

微熱:いまの日本語ラップを聴くと、大体皆言っているキーワードが「金」なんですよ。いま日本でラップをやっている子たちは「日本語ラップをやりつづけて、将来どうなるのよ?」という意識を少なからず持っていると思う。一昔前に「日本語ラップバブル」があった結果の現在な訳だから、「限界」が非常に明確になってしまっている。ポップな方面でRIP SLYMEやKREVAもいれば、ハードコアな方面でZEEBRAやOZROSAURUS、NITROがいて、ある程度の「到達点」が見えてしまっているんです。

微熱:そういった意味でも、日本語ラップをやり続ける「希望」が見えないで、「限界」の方に目が行ってしまっている印象は確かに受ける。実際にSEEDAのリリックでも『マイク握ればBig timerでも普段のバイトは吉野家』っていう揶揄があるし、「ラッパーとしてのカッコよさを求める」ということよりも、「ラッパーとして金を稼がなきゃ意味がない」という意識が強く出ている。正にANARCHYなんてそのラッパーとしての「理想」と「現実」のジレンマにがんじがらめになっているのが”ROB THE WORLD”を聴けばよくわかる。

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