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ちゃむ(coLd)コミュの【負けず嫌いのポルカ】

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「……履歴書に書いてくれてるんだけど、キミの長所を教えて下さい」

「はい、負けず嫌いな所です」

 面接での一幕。
 己を「負けず嫌い」だと評する者は決して少なくない。
 そして、それは往々にしてアピールポイントとして用いられる。



 私は負けず嫌いな人が好きだ。
「自分は負けず嫌いです」と言い切る人が好きだ。
 負けず嫌いな者は負けたくないが故に粘り強い。向上心がある。諦めない。
 負けず嫌いパワー(以下MGP)は時として、そうでない者には理解し得ない行動力と集中力、それらによってもたらされる明確なる成果を目の当たりにさせてくれる。
 MGP恐るべし。



「では、何故自分が負けず嫌いだと思いますか?」

「はい、誰かに負けるのが嫌いだからです」

 至って簡潔な自己分析だと思う。

「どうして誰かに負けるのが嫌いなの?」

「どうして、って……悔しいからです」

「どうして悔しいの?」

 この弁証法的面接展開は、応募者における自己の探究を促し、採用への適性を図るそれらを目的としたもの、というよりも、単に面接官の性格が悪いからに外ならない。

「……どうしてかは上手く言えないですけど……そういう性格です……」

「自分でもよく解らないけれど、自分は負けず嫌いだと思うんだね?」

「はい……思い、ます……」

「そう。どうもありがとう」

 単に面接官の性格が悪いだけなのである。あと、出会ってしまった応募者の運が悪かっただけなのである。



「負けず嫌い」は二つのパターンに大別されると私は考える。
 それは何を相手取ってMGP(これ使いたいだけ)を発揮するかによる。

◆対人MGP発揮型
 例えば上記タイプとトランプをしたとする。
 想像に易いが、勝つまで止めない。止めてくれない。
 プレイヤー同士に圧倒的な力の差があったとして、対人MGPer(もう言いたい放題)が劣性に回ったとしても、性格上諦める事は少ないと言える。……いや、すぐに諦める様なら自分で負けず嫌い言わないでしょ?
 上記タイプの特徴は、徐々にMGPの矛先が、テーブルの上の紙遊びよりも、目の前のプレイヤーに向かう所だ。
 ゲームの種類を変えてみたり、極端な話「かけっこで勝負しよう」などと突飛な提案を持ち掛けてきたりもする。最終的には膨れる。
 必然的に優性の者が手加減をする。……いや、仕方ないでしょ?そういう空気だもん。怖いもん。
 局面は均衡し、場合によってはMGPerが勝利する。
 はい、すげー嬉しそう。すげー嬉しそうな周りの人達(ホッとしてんだよね)。すげー。

◆対困難MGP発揮型
 例えば上記タイプとトランプをしたとする。
 想像に易いが、勝つまで止めない。止めてくれない。
 プレイヤー同士に圧倒的な力の差があったとして、対困難MGPer(すっかり馴染んだ表現)が劣性に回ったとしても、性格上諦める事は少ないと言える。……いや、すぐに諦める様なら自分で負けず嫌い言わないでしょ?ね?最初から言わないんだって。
 しかしだ、対困難MGPerが前述タイプと違う所は、MGPの矛先をあくまでもトランプに絞る様にある。
 どうすれば勝てるのかを貪欲に思考し、ともすればコツを尋ねてきたりもする。
 こういうタイプも怖い。というか、末恐ろしい。
 生来の負けず嫌い気質に探究心を兼ね備えた者は、必ず然るべき結果を手にする。
 気が付いたら、先程までの力関係をひっくり返していたりするのだ。

 以上の事柄から
◆対人MGP発揮型
 誰かに負けるのが嫌い。
◆対困難MGP発揮型
 誰かに負ける、自分が嫌い。
 この様に大別できるのである。
 前者は他人と、後者は自分と戦っているのである。



 負けず嫌いを謳う者が妥協する様はとても醜い。
 それは自己のアイデンティティを崩壊させるに留まらず、必ず周囲の落胆を招くからだ。

「なんだ、そんなもんか」

「じゃあ最初から負けず嫌いって言わなきゃいいのに」

 この性格を提示するリスクは、知らず知らずのうち周りからの期待値が上がってしまう所にこそある。

 よって、努力無く、結果の出ないMGPerは、その性格と周囲への影響故疎まれる傾向にあるともいえる。

 今は勝てなくても、何も成し得なくても、己に屈さない人間は必ずビジョンを体現する。

 だからこそ、周囲はそのMGPerを評価するし、私もその中の一人なのだ。



■結論
「負けず嫌い」は大きく二つに大別され、それはそれぞれ「他人」と「自分」に対して性格を発揮する分別である。



「……なーんて事が言えるんじゃないかな、って推察してみたんだ。話が長くなってごめんね。……じゃあ、履歴書に書いてくれてるんだけど、改めてキミの長所を教えて下さい」

「……はい、対人MGP発揮型の負けず嫌いな所です」

「そう。どうもありがとう」



 机の上の書類をささっと纏め、面接官は面接の終了を応募者に笑顔で告げる。

「お疲れ様でした」

 応募者はそれに敬礼で応え、それよりも深く頭を下げ、力無く会場を後にした。

 帰路の途中、応募者は考える。はて、今回の面接、自分に落ち度はあったかな。無かったはずだがこの落胆は何故なのか……。

 応募者に落ち度は無かった。
 応募者に悪い所は無かった。

 ただ

 単に面接官(筆者)の性格が悪いだけなのである。
 あと、出会ってしまった応募者の運が悪かっただけなのである。





coLd

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