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THE 半ば面白い話(仮)コミュのキツ姉とアダ名一話(絶望)

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※次の話ニ話 http://mixi.jp/view_bbs.pl?guid=ON&id=70031315&comm_id=5743141


※狐憑きにあった方はお気をつけ下さい。


「これから行くお家は母さんの友達の家だけど、お行儀良くするのよ?」

「うん…」

仕事の都合上、家を空けることが多かった両親。

小学校に上がりそれほど年季もない私は親戚の家に預けられることが多かった。
しかし親戚にも都合上、毎度私を預かれる余裕もない。

そこで私は近所に住む母の友人宅へ預けられることになった。

母は化粧を厚めに、年に数回袖を通す着物姿。

私もあまり着ない物に袖を通すこととなる。

母と私は目的地である友人、稲荷神家(仮名)の門前に着くと。

母子揃って、ごめんください!と叫んだ。

私はつい言ってしまった言葉が、母と重なり恥ずかしかった。

母も、ちょっと恥ずかしいわねと顔を真っ赤にしていた。

「はーい、あらあら来たわね?さぁ遠慮せずに上がってちょうだい」

気さくな声が響き、旅館の女将さんみたいな人が飛び出した。

髪を纏められ、細かい細工がほどこされた櫛と控えめながら上品な着物を召した姿は母とは天と地の差があり、この話を実母に話せば血の雨が降ることは必至だった。

おばさんを見ていると抱擁されてしまうような暖かいオーラが漂っていた。

私と母は靴を揃えて、端に起き。

玄関を上がった。

「『お菊』(仮名)、久しぶり!電話で話した通りウチの子を二晩預かってほしいのよ」

「お安い御用よ!私達、女学校時代の仲じゃない?それにウチは娘とお手伝いさんとで、男っ気がないから…おばさん、マダオ(仮名)くんが来てくれてとても嬉しいのよ?」

私と母は客間に通され、改めてあいさつを交わした。
六畳ほどの客間の真ん中には大きな柱がそびえ。

私は苦手な正座をしながらギュッと拳を作った。

客間に風が吹く度に、長い黒髪が柱の影から覗くのだ。

私は、霊がいるんだと思った。

私はチラッと母を見た。

母は足が痺れたのか密かに足を揉んでいた。

「マダオくん、顔色が悪いけど大丈夫?もしかして足痺れちゃった?」

「ぇ、ぁ、はい…」

「崩していいのよ?マダオくん、無理しないで」

「お菊、ごめんなさいね、ウチの子…まだまだ礼儀しらずだから」

母はボスボスっと足を崩した私の頭を叩いた。

お菊と呼ばれたおばさんは母とは女学校時代の親友らしく、父との結婚に一役買っていたらしい。

母にその話を聞くと、リンゴのように赤くなり口を聞いてくれなくなるので当時としてはタブーだった。

おばさんは私を見ると本当に嬉しそうにニンマリと笑って頭を撫でてくれた。

「あ、そうそうウチの娘をまだ紹介してなかったわね?葉子(仮名)!そんな所で何をしてるの!?ほら、挨拶なさい!失礼でしょ!?」

おばさんは思い出したように叫ぶと、柱の影にひょいっと手を伸ばした。

すると、柱の影から長い黒髪がフワリと舞い姿を現す。

ひぃ、と私は悲鳴をあげそうになり口を抑えた。

「ごめんなさいね、ウチの娘ったら人見知りなんだから!」

おばさんが捕捉説明するとともに柱の影では無言の抵抗とおぼしき、手をペチペチと叩く音が聞こえた。

そのためか、おばさんの娘はなかなか姿を見せようとはしない。

おばさんは少しひきつった笑顔で、ちょっとごめんなさいねと言い。

柱の影に消えると、ドタンバタンと激しい音が鳴り響き。

私は母に、大丈夫?と耳打ちしました。

母は笑顔で、いつものことだからと返しました。

音は静かになり。

おばさんは葉子の首根っこを掴んで現れました。

葉子は黒髪を揺らしながらおばさんの手と抵抗していましたが、私や母と視線が合うと借りてきた猫のように大人しくなりました。

「葉子、挨拶なさい」

「…稲荷神 葉子(いなりがみ ようこ)です。おば様お久しぶりです」

葉子は床に両手を添えて、頭を垂れる。

白魚のように白いうなじが覗き、私は何故かドキッとしてしまった。

畳みに広がった黒髪が葉子が顔をあげれば綺麗にまとまってしまう。

そんな異性の所作。

視ていると恥ずかしくて。
私は視線を逸らす。

「あら葉子ちゃん久しぶり!もう高校生だっけ?お母さんに似て美人になったわね〜」

「おば様も変わらずお綺麗ですよ」

「まぁ葉子ちゃんったら!」
笑い声が気になり。

チラリと私は葉子を視る。
少し影がある葉子の笑み。
気がかりだった。

でも、端正な顔と狐目の独特な顔。

葉子は正直に美しいと思った。

「それにしても久しぶりよねぇお菊、何年ぶりかしら?」

「もう、そんな時間ばかり言ったら私たち老けちゃうわ」

アハハハ!と笑う母とおばさん。

取り残される私と葉子。

私は長話が展開される予兆を感じ取った。

私は、トイレを貸して下さいと言い。

その場の離脱を目指した。
母に肘で小突かれた。

失礼だから自粛しろと。

でも、おばさんは「あ、ごめんなさいね」と笑い。

「葉子、案内してあげなさい」

「はい」

私は葉子に付き添われてトイレに行くこととなった。
母とおばさんの楽しげな世間話が反響するかのようによく聞こえた。

長い廊下を私と葉子は歩く。

奥は薄暗くてよく見えない。

葉子は私の手を繋いでいた。

はぐれるのを防ぐように。
当時、私は野山を駆け巡るようなわんぱくだったけれど。

絶対はぐれたくないと思った。

途中、壁に鬼や狐の面が並んでいた。

私はビクビクと震えてしまった。

私は声を発することができない。

呼吸が乱れ、心臓が内側から叩くように痛い。

葉子と握った手が汗でびしょびしょに濡れて滑り、離れる。

面には赤い飛沫がこびりついていた。

何度、眼を擦っても赤い飛沫は消えてくれない。

葉子に、大丈夫?と聞かれ。

はっとした。

私はトイレ前は震えるの!とごまかした。

葉子は、怖いお面だけど人を食べたりはしないわと笑った。

私は深く追求せず葉子の言葉を鵜呑みにすることにした。

トイレに着くと、葉子は「一人できる?」と聞いてきた。

嘘とはいえ、一人でトイレができないなんて恥ずかしい。

そんな恥じらいが私から面の恐怖を取り覗いてくれる。

「実は嘘。長話しになりそうだったから」

私はネタをばらした。

私は極度に人見知りする葉子は、気が合うんじゃないかと思っていた。

「はぁ…猫かぶりなのね」

葉子は呆れたようにため息をついて、指摘した。

そう話す葉子の姿は自然体だった。

葉子もまた猫かぶりだ。

「お姉さんも猫かぶりだね?」

「猫というより私は…狐かしら」

「狐被り?そんな言葉ってあったの?」

私は葉子から溢れた言葉に首を傾げた。

葉子は狐みたいな笑顔を作って掌を舐めた。

私の汗で濡れていた手を。
私は顔が赤くなった。

葉子は私の反応を視てか手をペロペロ舐め続けた。

私は眼を閉じて、背を向けた。

すると声が耳元で響いた。
「私、女狐なの…昔そう言った連中がいたわ…的を得ているけど」

カッと私は眼を見開く。

横に葉子の顔があった。

私の顔を覗き込んで、両手が伸びて胴を締め付ける。
「一つだけ忠告しておくわ、私が女狐だってことを…君のお母さんに喋ったら…」

胴に絡み付く両手が蛇のように強く締め付けた。

私は外そうとするけれど、高校生と小学生の腕力だ。
体格差がありすぎた。

冷たい感触が頬を伝った。
葉子の舌だった。

「君を食べるわ…嘘だと思うかもしれないけれど、君が視た面に付いていたモノ…なんだかわかるでしょ?ここに来た男は皆、食われたのよ」

「うあぁ…きつ…ね…きつ」
私は怖くなり悲鳴が溢れた。

女狐と罵ろうとしたが、きつねと発音してしまった。
だが、長くは続かなかった。

口を手で押さえられ声が出せなかったのだ。

私はこのまま食べられてしまうんだと思った。

母やおばさんの他愛ない世間話や正座の痺れくらい我慢していればと後悔した。
視界が涙で歪み。

手足がガクガクと笑う。

「なーんてね!」

明るい声が響いた。

私は瞳に涙を溜めながら葉子を視た。

私は理解できず放心。

「嘘よ嘘…君の反応が面白いから…ついね!お面の血も私が自分の血をつけたものだし」

葉子は笑顔で説明をしてくれ、手を離してくれる。

けれどそれがいけなかった。

幼かった心に付いた恐怖はなかなか拭えない。

まるで貯水量が越え、ダムが決壊するかのように。

私はワーワー泣き叫んだ。
声を聞き付けた母とおばさん、お手伝いさんが飛んできた。

私はただただ泣き。

葉子は必死に弁明に明け暮れるのだった。

後。

私と葉子は格子を隔てて出会った。

私は罰が悪くて俯いた。

葉子は私に悪さしたとして、家にある地下牢に入れられたのだ。

私や母もさすがに、とおばさんに抗議したが。

おばさんは、葉子は箱入り娘なのでしっかりしつけないと!と聞かなかった。

私はおばさんの家に泊まった夜。

こっそり抜け出して葉子に会いに来た。

「つい嬉しくて意地悪しちゃったゴメンね?私、箱入り娘だから他人とはあまり関わりを持てなかったからはしゃいでしまったわ」

格子から手が伸びて私の頬を撫でる。

ずきん、と胸が痛む。

「いや、僕の方こそ…ごめんなさい」

「悪いと思うなら笑って」

「……え?」

僕は罪悪感から笑えなかった。

だから無理な注文だ。

葉子は、私の花頭に指先を押し当てて言った。

「そんなに優しいと苦労するよマー君」

「ぇ…マー君?」

「私、親しい相手にはアダ名をつけ合うのだから君は今からマー君…ほら次はマー君の番だよ?」

「ぼ、僕の…」

私は考えるまでなく葉子のアダ名が浮かんでいた。

「キツ姉か狐お姉ちゃん…!」

「きつねえ?」

「カタカタでキツ、ねえはお姉さんの姉…」

「ふぅん…」

葉子は私から視線を外し、小さく何度も。

アダ名を口走った。

私は気に入られないのかな、と思った。

でも、そんなことはなかった。

「狐とかけてるわけかぁ、言いやすしいしとても良いと思う。気に入ったわ…今までさんざん色んなアダ名をつけられたけどそれが一番好き」

キツ姉はそう言ってニンマリと笑った。



おわり

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