THE　半ば面白い話（仮）コミュの【ＳＤ３】電車に乗っていたんよ　(明)

面白そうなので、飛び入り参加させていただきます。面白い話ではございません。

目が覚めたら、わたし電車に乗っていたんよ。それが今はもう見られないような木の床の古めかしい電車だったんでした。

『わたしどうして乗っているの、それにここは何処なの』

改めて周りを見回したんです。誰かが居たらその人に聞けば何かを教えてくれるかも知れないから。けど誰もいなかったのでした。。

途方にくれて足下に見たら、一輪の赤い花が落ちてたんでした。拾ってみたらそれは曼珠沙華の花でした。
その赤い赤い火のような花弁を眺めてたら、なんだか気味が悪くなってしょうがなかったのでした。

「曼珠沙華は不吉な花や、摘むことはもちろん、あんまり見るもんではない」

そんな言葉が頭のなかを駆け巡ってきたのでした。これはそう、はじめて女のしるしがあった日に、おばあさまがわたしに言ったことでした。

秋の彼岸から幾日か過ぎたあの日、なんだかお腹が痛くて痛くて、学校の先生に言って早退けさせてもらったんでした。
だけど、ようやく家に帰りつくという時に初めてのしるしがあらわれたんでした。

びっくりして、泣きながら家に入ったわたしに、おばあさまは優しく慰めて色々教えてくれたんでした。

おばあさんに教えてもらいながら処置をすませて、血が付いた下着やスカートを着替えたら、何だかくたびれてしまいまして、ぼんやりと座り込んで窓から見れる隣の家の庭を眺めたのでした。

庭先には何輪もの曼珠沙華が赤々として風にそよいでいたんでした。わたしその美しくも、何だかそら恐ろしい光景に目を奪われて、曼珠沙華の花から目を離せないでいました。

その時、私の様子を見にきたおばあさまが言ったのが今しがた頭の中を巡った言葉でした。

曼珠沙華の花って、子捨て花、幽霊花
死人花なんて別名があり、私の生まれた地域では不吉な花とされていました

わたし、何だか不気味に思えてきたんです。わたしの体が女になっているというしるしが表れた日に、無数の曼珠沙華を見たってことが、まるで私が女になっていくことで忌まわしい行く末が待っているようで

そんな遠い昔を思い返していると、手に持っていた筈の曼珠沙華の花は、なくなっていました。

そんなわたし一人を乗せて、電車は関進んで行くのでした。此処は何処なんでしょうか、わたしは何処に行こうとしているのでしょうか。