公開前の映画情報コミュの落語娘

「落語娘」
　　08年8月23日、シネスイッチ銀座ほか公開
　　日活配給　　上映時間：109分
　　監督：中原俊
　　出演：ミムラ、津川雅彦、益岡徹、伊藤かずえ、森本亮治、絵沢萌子、利重剛、なぎら健壱
　　http://www.rakugo-musume.com/

ホラー仕立ての落語小説を「櫻の園」「12人の優しい日本人」の中原俊監督が映画化したものです。原作は永田俊也。

小さな頃から噺家志望だった香須美（ミムラ）は、憧れの三松家柿紅（益岡徹）の門を叩くが、女性であることを理由に弟子入りを素気なく断られてしまう。そんな彼女を拾ったのが、落語界の異端児である三々亭平左（津川雅彦）だった。香須美は二つ目目指して修行に励む毎日だが、平左はＴＶ出演時に悪ふざけが高じて謹慎処分を受け、お座敷もほとんどかからないうえに、稽古はつけないわ、女遊びのツケを香須美にまわすわで、彼女の頭痛の種である。そんなある日、香須美は知り合いから「演者が次々と怪死して封印された、禁断の怪談噺『緋扇長屋』に平左師匠が挑む」という話を耳にする。謹慎の元を作ったＴＶ局のプロデューサー・古閑（伊藤かずえ）の仕掛けだというのだ。止めようとするが聞かない平左。気を揉む香須美を柿紅が呼び出し、「下世話な見世物を行う平左を協会から除籍するから、平左を捨てて我が門に入りなさい」と説得される－－。

楽屋の様子や小道具の仕立て、最初に出てくるソープランドの代金取立てのエピソードなど、作り手側の落語に対するこだわり、情熱などがスクリーンからひしひしと伝わってきます。だけど、私はどうにも物語にのめり込めませんでした。

＜以下、ややネタバレアリ＞

まず、ミムラ演じる香須美が、いくら拾ってくれた師匠に忠義を立てるとはいえ、そこまで平左をかばい、彼にのめり込んでいる理由がよくわからない。冒頭の場面で彼の落語家としての力量を見せ、それに香須美がホレ込んだ、というくだりが出てくればまだわかるんだけど、前半に描かれている平左は、ただの金と女にだらしないしょうもないジィさん。そのあたりがちゃんと描けていないので、彼に心酔できないのです。

その彼女が、「緋扇長屋」を演じることになった平左に破門を言い渡される場面もそう。どう見ても、平左は彼女を騒動に巻き込みたくがないために破門したとしか思えないのに、彼女はそれを全く理解していないように描かれていました。理由もなく破門を受けたと、それを間に受けて怒っている彼女が、非常に間抜けに見えます。

しかも、香須美はその後、何のきっかけになるようなシーンもなしに、平左の元に戻る決意をします。見ている方は「？？？」ってなものでしょう。その次のシーンでは、香須美はどこで着替えたか和服姿になって、「緋扇長屋」を演じている会場に全力疾走で駆けつける。汗ひとつかかず、着物の乱れも全くなく（笑）。

そういうリアリティーの薄さが、この映画の最大の欠点だと思います。

さらに、その重要な「緋扇長屋」の演目は、実際の高座で平左が演じるシーンと、その演目の場面を再現映像で見せるシーンが交互に織り交ぜられるのだけれど、これは物語の核なんだから、基本的に最初から最後まで津川雅彦に語らせなければダメだと思う。じゃないと、その演目を演じる師匠の覚悟や迫力が中途半端な形でしか伝わらないと思うのですが……。その再現シーンが、もうどーしようもないほどの学芸会レベルの演技だから、輪を掛けて臨場感が薄くなっています。この再現シーンだったら、なかった方がよかったくらい。

＜以上、ややネタバレ終了＞

そういう展開の拙い印象に加え、ミムラの演技が……。これはもうどうにも如何ともしがたい。途中から「代わりに誰がよかったんだろう……。貫地谷しほりかなぁ？　けどＮＨＫ連ドラと被るしなぁ」と考えながら見てしまったくらいです。

津川雅彦は毎度毎度の怪演。彼ぐらいなら、最低あのくらいの演技は見せてくれないと……ね。

実は、最初の20分ですっかり飽きてしまい、「見るの止めようか」と思ってしまいました。その後、少し盛り返したけど、最後まで最初に持ったネガティブな印象を覆すまでには至りませんでした。

私的採点：1.5点（5点満点）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　８月10日　サンプルＤＶＤ