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なまのやコミュのLEGEND? −宿命の讃美歌― 1

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コメントだと2000文字しか打ち込めないんで、いちいちトピックあげます。


 
 
 「はぁ、、、はぁ、、、はぁ、、、」
 薄暗い洞窟の中、一人の剣士が肩で息をしながら、力強く剣を構えている。その顔には汗、焦り、憤り、恐怖、数多の感情がにじみ出ていた。
 その剣士に相対するは魔物。魔物の中でも高位にあるとされるドラゴンだ。その体は剣士の十倍ほどもあり、大きく開かれた口は、人を丸飲みにしてしまえるほどに大きく、威圧感を放つ。地竜と呼ばれる、翼無き種族。その分からだが大きく、足などは、踏まれたら人間などひとたまりもないほどの、大きく強固なものだ。
 「ゴォォォォォォォ!」
 ドラゴンが吼える。洞窟全体が震え上がるほどの巨大な叫びは、当然剣士の体も、芯から震わせる。
 「なぜこんなところに、このクラスのドラゴンが・・・」
 そう舌打ちするも、状況は好転しない。眼前の敵と対峙するしかなく、剣士はしっかりと剣を構え直す。
 剣士からすれば間合いは遠い。しかしドラゴンには刹那のうちに詰められる間合い。大きさの全く異なる生き物の戦いは、一撃が勝敗の決め手。小さい方にとっては、巨体の一撃は生死に関わるからだ。
 人の生命力などたかがしれている。小さな虫たちから見れば、巨大な人の手。しかし、それにたたかれても生きていられるが、人間は違う。巨大なドラゴンの攻撃を受ければ、それは致命傷となる。即死、という刹那の惨劇もあり得る。
 故に気の緩められない戦い。生と死が、紙一重にちらついている戦いだ。
 ドラゴン。モンスターの中でも別格の存在であり、人を超越する数少ない生き物。書物によれば神が人間界に降り立つ時、かりそめの姿をドラゴンとする、という記述もある。
 それほどに高い位にある生き物ではあるものの、ドラゴンにも大きく分けて二種類存在する。簡単に言えば、人を襲うのとそうでないものだ。
 人を襲わないものは本当に神の化身か、仙竜と呼ばれる誇り高ドラゴンである。それらは人の世が、もとい世界が危機に瀕した時に現れ、その原因が人の手によるものならば、容赦なく人を裁く竜。いわば世界の管理者である。
 もう一つは人を襲うもの。竜族たる誇りを忘れ、魔の波長によってただのモンスター、魔物と化したものたちである。
 その二種のうち、今剣士の対峙しているのは、明らかに後者。前者のものは人の言葉を話し、むやみに人の世に干渉しない。
 と、知識的な理論を考えてはみても、所詮剣士の前にあるのは高ランクのモンスターであり、人々を悩ます種は刈らなければならない。
 なぜそう思うのか、剣士の自身も不確定ではあったが、今剣士にできることは、目の前のドラゴンを倒すことしかなかった。
 「さて、どうするか。まぁ考えても、選択肢はそう多くないけどね」
 自問自答しつつ、剣士は剣をもつ手をギュッと握り直す。
 簡単とはいえ、剣士の結論は確かだった。
ドラゴンという強大な生き物。対する若き剣士は、名うてでもないただの旅人。剣の腕にこそ自信はあったが、今までにこれといった武勇伝もなく、名をあげるチャンスとばかりに洞窟に入ったはものの、目の前の強大な敵を前に、少々の後悔がよぎる。
 「ここまで来ちまったんだ、引くわけにはいかない。やるしかない」
 張り詰める空気。勝負は一瞬だろう。連携、タイミング、視野、数多要素が存在する複数の戦いと違い、一対一の戦いにそれはない。不測の事態はなきに等しく、ただ実力のみが、忠実に結果へ反映する。
 剣士、ドラゴン共にそれは理解していた。互いはそれをわかっているからこそにらみ合い、一撃の時をうかがう。敵を怯ませ、隙を作らんとするのもそれがゆえ。
 どれだけの時が過ぎただろう。互いの緊迫は最高潮に達し、これ以上は消耗戦となる。空気の薄い洞窟の中でこれ以上戦うことは、体力に劣る剣士にとって不利以外のなにものでもなかった。
 それはドラゴンにもわかっていること。ここで剣士が仕掛けるのは必然だが、望む展開ではない。しかし、剣士に選択肢は残されていなかった。
 ここで引けば確実に勝機を失う。それは剣士の確信であった。いくしかない。そうとなれば先手必勝。待てば待つだけ戦況は不利になる。勝てる確率は減っていく。
 辺りにさらなる緊張が走る。
 タッ!!剣士が地を蹴る音がする。刹那。ドラゴンの巨体がすっぽり入ってしまうほど、大きく開いていた間合いは瞬く間に詰められ、剣士とドラゴンがあいまみえる。戦闘、と呼べたのはほんの一瞬だったかもしれない。
 ドラゴンの巨大な口から放たれたブレスアタックをすんでのところでかわし、剣士の剣はドラゴンの皮膚を捉え、引き裂いた。
 名声こそ無いものの、剣士の剣技は卓越しており、ドラゴンの体を的確に引き裂いた。蚊にさされた程度の小さな傷だが、硬い皮膚に守られた筋肉の、致命的な場所を的確に切り裂いた。ドラゴンは絶叫し、悶え苦しむ。
 骨と肉ではなく、魔力の固まりである普通の魔物と異なり、ドラゴンは骨と肉から成る生命体である。よって体には神経が通っており、それを攻撃されることは致命傷になりうる。
 悶えるドラゴンは、まさにその中枢神経を切り付けられていた。
 洞窟が崩れるのではないかというほどに悶え、苦しんだ後、その動きはしだいに衰えはじめた。痛みに思考は鈍化し、戦闘力は著しく低下する。
 勝者の確定。それを言い渡すかのように、最後の力でドラゴンは咆哮をあげた。

 自らの名声のため、ドラゴンを打ち倒したことの証明を確保する。剣士はドラゴンの牙を削ぎ取った。その勝者の証を脇に抱え、剣士は地上に帰還した。
 数時間ぶりに薄暗い洞窟から脱出した剣士は、いつもは気にも止めなかった地上の明るさと、空の広さに小さな感動を覚えていた。
剣士の勝利を祝福するかのように空は晴れ渡り、眩しく輝く太陽が世界を照らしていた。
 ここは山奥にある、お世辞にも大きいとは言えない村。村の少ない収入源となっていたこの洞窟は、魔力のこもった鉱石が採れるめずらしい洞窟だった。その珍しい鉱石に魅入られて、あのドラゴンはやってきたらしい。
 普段から下級の魔物などは寄ってくるらしく、発掘の際には戦士を雇うなどしていたらしい。しかし今回は雇っていた戦士たちの範疇を超えた魔物だったため、倒してくれる人間を募集していたようだ。
 そんな時偶然この村に立ち寄ったのが、今洞窟の入り口に立つ剣士だった。
「さて、村に戻って賞金を貰うか」
 脇に抱える牙を今一度確認し、自分がドラゴンを倒したのだということを実感する。
 小さな村が用意する賞金は、大きな額ではなかったが、鉱山の中で見つけた鉱石は賞金代わりに持ち帰ってよい、と言われていた。そのために剣士の荷物は入るときより、明らかにずっしりと重かった。鉱石の入った荷物袋はゴツゴツと出っ張り、振り回せばこれだけで武器になりそうなほどにふくれていた。
「これも勝利の重みってやつだな」
 そう言って荷物の袋を軽く叩き、剣士は村への山道を歩きだした。

 山道を囲む森の中、生い茂る木々の中で蠢く二つの影。
「兄貴、パンパンに膨れた袋をを持って歩いてくるヤツがいますぜ」
 木に登った小さい影が、根元にいるもう一つの影にむかって声をかけた。声をかけられた影は上を見上げ、小さいほうの影が見る方向を見やる。
 見れば小さい影の言うとおり、荷物袋を膨らませた剣士がこちらへ歩いてくる。
「ほぅ、あいつどうやらドラゴンを倒したらしい。たいしたやつだ」
 二つの影は剣士が洞窟に入るのを見ていた。そして、今洞窟から出てきた剣士の、手に抱えるものを見てそれを察知する。
「無理だと思っていたが、以外にやるようだ。袋の中身はおそらく 鉱石だろう。あの牙も高く売れるはずだ」
影、最近この辺りで出没している山賊二人組。兄貴と呼ばれた山賊は、剣士を見て軽く見立てを立てた。
「でも兄貴、ドラゴンを倒すほどの剣士ですぜ?分が悪いんじゃ・・・」
 小さい山賊はスルスルと木を降りて、兄貴と呼ぶ山賊の横へ着地する。
「だからおまえはいつまでも小物なんだ。あいつはドラゴンを倒してきたんだぞ?しかも洞窟内で。体力を消耗しているに決まっている。だから今を狙うんだ」
「なるほど!」
 と、小さい山賊は納得し、兄貴と呼んだ山賊を見上げる。腕組みをしたまま少し考えた兄貴山賊は、納得したようにうなずき、自分を見上げている小さい山賊に指示を出した。
 「よし、手はずはいつも通りだ。抜かるなよ」
 「へいっ」
 二人は大きくうなずき、各々所定の場所に散っていった。



 ここ最近、この近隣の村では洞窟に出現したドラゴンとともに、旅人を襲う山賊にも手をやいていた。その被害は旅人だけにとどまらず、麓の街まで出稼ぎに出ていた村人にもおよびはじめていた。
 その中に、山賊に父を殺された少年がいた。少年の父親は村で民芸品の職人をしており、自分の作った作品を街に売りに行くところを、山賊に襲われたのだ。少年は父親と二人暮らしで、たった一人の肉親を失った悲しみは、他人には計り知れなかった。
 「お父さん・・・」
 村の中にある墓地の一角。村からさほど遠くない場所で発見された少年の父親は、少年を生んですぐに亡くなった母親の、横に埋葬された。墓には両親が、そろって愛用していた民芸品作り用のナイフが置かれている。少年は毎日欠かすことなく、この場所に墓参りに来る。父と母がそろって好物だった、甘いリンゴを持って。
 そんな少年を見て、近所の主婦たちが会話を始めた。
 「かわいそうにねぇ、あの年で」
 これもいつものことだった。自分を哀れむ声。しかし哀れむだけで何もしてくれはしない。皆少なからず山賊の被害にはあっている。それが間接的であれ、ほとんどの人は自分の生活で精一杯なのだ。小さな村だ、そんなことはわかっていた。だから少年は誰かに助けを求めたりはしなかったし、絶望することもなかった。物心がついた時には母親がいなかったため、少年は日々働く父親に少しでも楽をしてもらおうと、家事のたぐいはすべてこなし、父親が仕事に専念出来る環境を作ってきた。今の不安は父親の残した少しばかりのお金が尽きたとき、むしろ尽きる前に何か自分で働くすべを見つけることくらいだった。
 ‐今日も同じことの繰り返し。。。そろそろ僕も働き口を見つけないと‐
 まだ十歳の少年にはあり得ないほど、しっかりとした考えを持つ少年だったが、それでもまだ心は十歳である。次の瞬間耳に入ってきた言葉に、少年の理性は吹っ飛んだ。
 「噂の山賊、ついさっきすぐそこの街道で見た人がいるみたいよ。村の中にまでは入ってこないだろうけど、怖いわね。早く家に帰りましょ」
 近くで話していた主婦たちがその台詞を言った直後、少年がいた墓の方から、小さな物音が聞こえた。その音に気づき、振り返った主婦だったが、そこに少年はいなかった。
 「あら?」
 少年の親の墓からは、供えられていたナイフが、消えていた。

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