ソフトバンクホークスコミュの10．12から始まる道

　パリーグ、プレーオフセカンドステージ第２戦、最後にマウンドに立っていたのは、ホークスのエース、斎藤和巳だった。しかし、それは本人やファンが望んだものではなかった。そう、正確には立つこともできず、斎藤はマウンドでうずくまっていた。

　斎藤和巳。ホークスの、絶対的なエースだ。だが、プレーオフでは、どんなにいいピッチングをしても、勝つことはできなかった。打線が、報いることができなかったのだ。
　
　シーズン中の斎藤和巳は、打線の援護に恵まれていた。決して斎藤が調子の良くないときでも、打線の援護によって勝利を得たことが何度とあった。それは、斎藤がエースたる所以であった。
　
　斎藤が点を取られても、選手の心の中には、「斎藤だから、踏ん張ってくれる」という気持ちがあった。それが、打線の粘りにつながった。しかし、プレーオフに入り、その神通力にも似た好循環が失われてしまった。
　
　ファーストステージのヒーローインタビューで、松中の言った言葉が、印象的だった。「和巳を胴上げしたい」―

　斎藤は今年から選手会長にもなり、選手を引っ張り、鼓舞してきた。そして、自分に対する厳しさ、練習に取り組む姿勢は、若手の見本だった。そうした、成績に加味されない部分も含めて、松中はそう言ったのだろう。
　
　だが、無常にもその気持ちが、打線の硬さを、もたらした―

　先日、札幌の地で翼をもがれた鷹が、福岡に戻ってきた。三年連続のプレーオフセカンドステージの敗退。このドラマを、「ある大投手の悲劇」で終わらせないために、つらくともまた、グランドで汗を流すしかない。すでにもう、来シーズンへの道は始まってるのだ。
　
　そして、その道の終わりで、鷹が大空を羽ばたく姿を、わたしは今から思い描いている。