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和柄デザインコミュの着物を愛する全ての人に知っていただきたいこの危機

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もしも、和装業界から私たち図案家がいなくなったらどうなるでしょうか?

現実問題として、図案家の後継者が育っていません。
このまま何もしなければ、あと15年〜20年で着物の図案家は、ほとんどいなくなってしまいます。
では、図案家が本当にいなくなったら・・どうなるでしょう。?
その時は間違いなく日本文化は大打撃を受けます。
「着物文化の終焉」は正しくないかもしれません。
正しくは「後世に伝えるべき着物文化が私達の世代で途切れてしまう」ということです。

そもそも、現在流通している呉服の柄物の9割以上が私たちの図案を元に製造したものです。
(帯、手描き友禅、織物の着物等の型染め以外の商品でも、柄物は全て元図案が必要です)
そして毎年新柄を起こすことで生産調整され、ようやく流通の活性化を計っております。

和装商品は(染、織に関わらず)形と素材が決まっているので、『色と柄が全て』と言っても過言ではありません。
女性の方なら誰でもお分かりだと思いますが、どんなに高価な着物でも、気に入らない色柄の着物は
それをただで貰っても着ないでしょう。

このように、着物や帯の柄物は、色柄で売れるか売れないか決まる事は周知の事実です。

図案家(デザイナー)がいなくなると、結果どういう事が起こるかと言うと、
当然、新柄を起こす事できなくなります。

しかし、どうしても新柄が必要なのでしかたなく素人のような人が図柄を描くか過去の作品のコラージュをしてパソコンで何とかして形にしようとします。
出来上がったものを見ると、結局過去の柄の方がはるかに良い事(売れる事)がわかるでしょう。

そこで新柄を起こすより、過去の図柄の焼き直しをする方が既にある型をそのまま使えるのでコスト的にも品質的にも良い事がわかります。そして焼き直しをし始めます。

すると、新柄の為の型制作が減少するので、まず型製作所が倒産します。
その次ぎは仕事の絶対量が減り(インクジェットが増えるから)型友禅の染工場も大手から倒産していきます。

それでも手持ちの型紙の多いところと、インクジェットプリントの染工場だけがかろうじて生き残るかもしれません。
しかし、その頃には全体としての年間生産数の激減で、ロットで仕事をこなしている行程(蒸し、水洗、地直し、整理)の工場などの多くが持ちこたえられなくなります。

現在、ぎりぎりのバランスで存続している京都の呉服生産の分業システム。
それだけに、そんなわずかな綻びで京都の和装産業は崩壊します。
元々、『分業制』は個々のリスクを少なくする為に生まれました。
だから、京都の着物産業は今日まで続いて来たのです。
しかし、今となってはその分業制が「共倒れ」という最大のリスクを背負ってしまったのです。

これは、京都以外の和装産業も例外ではありません。
例えば、丹後の「生地生産業」も着物の消費に依存している機屋は間違いなく潰れます。
連鎖的に特に『絞り』『刺繍』『金彩』等の専門的熟練を要する加工の仕事も大打撃を受け、完全に後継者がいなくなります。

地方や中国の一部でわずかですが着物製造の一環生産ラインを自社の中で構築している企業もありますが、和装業界全体が衰退するので、専門店や問屋が存続できず結局作っても売り場が無くなります。

型友禅の着物が激減すると暫くは手描き友禅や手工芸的要素が強い着物ばかりが激減した小売り市場にでるでしょう。
そうなると着物から『ファッション性』がなくなり、『希少性や芸術性』ばかりが着物にもりこまれ、市場には高価な着物ばかり出回ることになります。
ファッション性は消費者には着物を買う動機作りに欠かせない要素の一つです。
又市場を刺激する為の鮮度を盛り込める唯一の要素です。
ファッションはその時代に生きる女性のライフスタイルに即していなければなりません。

これで、ますます消費者の着物離れが加速します。
         
でも、なんとか中国などで生産するポリエステルの着物や浴衣などは残るでしょう。

20数年後、日本から呉服専門店が無くなり、着物ファンはネットで正絹の見切り品や古い在庫品、安価な合繊の着物を買う事になります。
それ以外には洋服店でポリエステルのプレタ着物が売られ、スーパーの特設売り場だけで浴衣を売っているでしょう。

正絹の着物にいたっては良いもの(既にある在庫)は貸衣装屋さんだけが扱う事になるでしょう。
そうなると正絹の着物は買う物ではなく、借りる物として定着します。

当然、仕立ても本格的な手縫いの仕立てをする職人さんは日本から消えます。
情けないことに、着物の仕立ては東南アジアに依存することになります。
もちろんあらゆる熟練を要する職人さんの後継者が育たなくなり、30年後には日本から消えます。
結果的に着物はニーズがあっても供給できないという事になります。

このように庶民の為の和装産業が衰退し、最終的には日本人の為の本物の着物が日本で作れなくなります。
現役図案家の平均年齢は70歳を超えています。
これは、戦後の高度成長期(昭和30年〜40年初頭)に呉服が凄く売れたことにより、当時の図案家は大量に弟子を抱え育てました。
それもこれも、経済的な余裕があったからです。 現存する図案家の多くがその時代に弟子となった方々です。

それにしてもなぜフリーの図案家にメーカーは最も重要な柄作りを頼るのでしょうか?
それは多くのメーカーが自社で図案家を育てる事に失敗してきた経緯があるからです。
その特殊性と専門性から図案家を育てるには膨大な時間とコストがかかります。
どんなに絵の才能があってもいきなり着物の図案は描けません。
それは、どんなに演技の才能があっても、いきなり歌舞伎の舞台に上がれないのと同じです。

現在は図案家の数は需要と供給のバランスを保っている(図案家は高齢になっても仕事を続ける人が多い)ので、和装業界の方で、最も図案家に近い存在のメーカーでさえも、図案家がいなくなる事の危機感や影響力を危惧していません。

その証拠に、和装業界の低迷と共に年間の図案の総発注数が減少している上に図案料も下げられています。60歳以上の図案家の中には、年金をもらってかろうじて食いつないでいる人もいます。
メーカーが本気で図案家の減少に歯止めをかけたいと思っているなら、こんなに冷遇しないでしょう。
このように図案家を冷遇することにより、ますます多くの図案家が後継者を育てる経済力と気力を失いました。

このことが、やがて着物産業崩壊へと繋がっていくのです。

私がそうなる前に手を打つ必要があると、ことあるごとに言っているのですが、
悲しいかな、この業界の人はあまり意に介していないようです。
以前、ある有名着物チェーン会社の役員の方にその事を言った事があります。
その方はこう言われました。
「たぶん、このままでは先生のおっしゃる通りになるでしょうな。私が定年でこの業界を去るまで持ち堪えてくれたらいいですよ、ハハハ」

着物産業で生計をたてている全ての方々が慌てる頃にはもう手遅れです。

着物を中心とする和柄文化は長い歴史と伝統を先人達が伝えてくれたものです。
それは例えば歌舞伎のように長い時代を経て構築された様式美です。
それを私たちの代で絶やしてよいのでしょうか?
この貴重な和柄文化の衰退を私は憂いているのです。

図案家の後継者がいなくなると困るのは図案家以外の着物に携わる全ての人、ひいては着物を愛する全ての日本人だという事を知っていただきたいです。

因に、図案家一人が一人前になるには、先生の下で修行して最低10年の年月がかかります。

幸いにも私にはまだ後継者を育てたいという情熱と体力が残っております。
現在、4名の弟子を育てています。

でも、私一人ができる事はたかがしれています。
まずは多くの方にこの事実を知っていただきたいと思います。

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