東日本大震災記録コミュの140.東日本大震災、気味悪いほど温かい韓国自国経済への影響を懸念し、関心高い原発と産業復興

　日本の大地震は韓国でももちろん超特大のトップニュースだ。主要テレビ局は地震発生直後から、日本からの生々しい映像を特別番組で伝えた。翌日の土曜日には各局とも数十人規模の特派員団を送り、大々的な報道が続いている。

津波報道を食い入るように見る韓国人

　多くの韓国民は、大地震発生当日から続いた生放送の特別番組を見て、衝撃を受けた。津波で都市があっという間に流される様子に、日本人と同じような衝撃を受けた。週末に自宅にいた多くの韓国人は、テレビ画面を食い入るように見ていた。

　韓国メディアは一般的には、日本に対しては「辛口報道」が多い。しかし、さすがに今回ばかりは、地震と津波、さらに被害規模のあまりの大きさに、悪意に満ちた報道は全くと言っていいほど見られない。

　「日本の危機は韓国にとってチャンス」というような日本人から見れば不謹慎だが、ここ韓国なら出てきてもおかしくないような報道ぶりも、ほとんどと言っていいほど見られない。

　韓国での報道は、まずはテレビの生放送など、地震と津波のすさまじさをそのまま伝えることから始まった。その後、復旧作業が始まってからは「現地ルポ」が主流になったが、その多くが、大惨事に直面した日本人の対応ぶりに関心を集めている。

　「迷惑」――今回の大震災を機に、韓国ですっかり定着した日本語だ。

大惨事にも秩序を維持する日本に驚嘆

　大きな被害に遭って大変な苦労があっても、日本人は、避難所で、商店で、きちんと列を作って静かに並び、常に他人に配慮しながら行動する。

　「他人に迷惑をかけないことの重要性を、日本では幼い頃から家庭や学校で教育している。だから、あんな惨事が起きても秩序が維持され、それどころか、自分も大変な苦労をしているのに他人を助けようとまでする。日本で今起きていることは、驚嘆すべきことだ」

　韓国のメディアは連日、こうした報道を続けている。一方で、日本の政府や自治体の対応に疑問を投げかける報道もある。

　ある韓国の大手新聞社の部長は「現地に派遣した記者から、原子力発電所関連の発表があまりに少なく遅い、という不満が毎日聞こえてくる。被災地への物資輸送もどうしてこんなに時間がかかるのか、という声を聞く」と明かす。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5703

原発依存度の高い韓国は原発事故に強い関心示す

　韓国も原発依存度が高く、もちろん日本の事故に対する関心は高い。一部では、「風に乗ってソウルに放射能が届いている」といった類のデマが流れて、韓国メディアにも多くの問い合わせが届いているという。

　「きちんと反証したいが、日本からの情報があまりに少ない」。別の放送局の局長はこう嘆いてみせた。

　また、「日本の対応は遅い」という点については、「やはりマニュアル社会の日本では、こういう突発事故への対応が遅くなるのではないか」という指摘も、メディアや政府関係者から何度も聞かされる。

　驚かされたのは、地震発生翌日から、慈善団体はもちろん、学校、職場、教会などで次々と募金など支援運動が始まったことだ。いま、韓国でテレビをつけると、多くのチャンネルで「日本支援の募金はここに連絡を」という電話番号が出る。

　街頭でも、大学でも、募金箱が置かれ、多くの人がこれに応じている。

様変わりのインターネット論調

　インターネットの世界も様変わりした。誹謗中傷が多いことで知られるサイトでも、日本の地震に対する書き込みが圧倒的な量を占める。しかし、日本を中傷するような書き込みは全く見られない。

　ソウルで知人や仕事の関係で会食をしても、ほとんどの話題は日本の地震だ。筆者が日本人だからだろうが、日本人がいない会食でも、まずは地震の話で会食は始まるという。

　地震から2週間近くが経過したが、では韓国の経済界の反応はどうだろうか。

　あるサムスングループの有力企業の役員はこう話す。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5703?page=2

　「数日前の幹部会で、今回の日本の地震の影響についての分析報告があった。日本企業が不利になることは競合する韓国企業にとってプラスかと言えば、そんなことは全くない」

日本の部品がないと製品が作れない

　「スマートフォンひとつとっても、韓国製よりもずっと多くの日本製部品や材料が使われている。どれもすぐには代替ができない高付加価値製品ばかりで、とにかく一刻も早く日本の工場が正常稼働してほしいという結論になった」

　この役員は、「そのうえで、寄付など儀礼的な支援以上の、より実効性のある支援で何ができるか、取引先企業と接触させている」と話す。

　韓国経済は、日本以上に輸出比率が高い。サムスン電子やLG電子など一部の有力企業が輸出によって巨額の利益を稼ぎ、これら一握りの企業が経済全体の牽引役になっている。

　韓国企業の大手企業はグローバル化では日本企業より一歩も二歩も進んでいると言われるが、その構造を一皮めくってみると、付加価値の高い部品や素材の多くを日本から輸入していることが分かる。

　毎年、巨額の対日貿易赤字を計上しているが、この大半が、こうした部品や素材、工作機械などで占められている。日本の製造業が打撃を受ければ、韓国経済にとっても大きな打撃なのだ。

明洞や南大門市場も打撃

　分野別ではIT業界が最も大きな影響を受けるという。もう1つ打撃を受けるのは、もちろん観光業だ。

　21日までの3連休は、例年なら大量の日本人観光客がソウルの中心部にある明洞（ミョンドン）や南大門市場に押し寄せる。だが、いつもはごったがえしている南大門のみやげ屋に3月20日に寄ってみたが、がらがら。

　商店主は、「あれだけの地震直後だから仕方がない。韓国名産の海苔やニンジンなどを送ろうとしても航空便も受け付けていないし、ここ数日は全く売り上げが上がらない。問題はこういう状態がいつまで続くかだ」と、逆に筆者が質問攻めに遭ってしまった。

　電子分野と並ぶ主力輸出産業である自動車はどうか。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5703?page=3

　現代自動車グループの幹部は、「以前は、日本から大量の基幹部品を輸入していたので、こんな事態になると壊滅的な影響があったかもしれない。だが、数年前から基幹部品の国産化が急速に進んでおり、幸い、大きな影響はない」と言う。

好調な韓国自動車産業にも暗い影

　あるエコノミストは、「トヨタ自動車やホンダなど日本勢の生産に長期的に影響が出るならば、現代自動車にはプラスになる可能性があるが、今はまだなんとも言えない」と話す。

　だが、自動車業界全体が日本の地震で「プラス効果」があるかといえば、決してそうではない。韓国GM（旧GM大宇）やルノーサムスンなどは多くの部品を日本から輸入しており、一部車種の生産にすでに影響が出始めているという。

　地震発生から2週間近くたって、韓国で最も関心が高いのは、もちろん原発事故だ。

　経済界やメディア、日本専門家の間で次に高い関心が、「日本は復活できるのか」という点だ。もちろん、「復活できず、このまま衰退する」という意見は少数だが、問題はどんなペースでどういう復興を進められるか、その点に韓国人は関心を寄せている。

　楽観的な意見は、「韓国は1990年代末のIMF（国際通貨基金）危機という国難を克服して、さらに強い経済をつくった。日本も未曾有の国難を乗り越えて、改革も一気に進むのではないか」という意見だ。

今回の惨事で日本はブレークスルーするか

　中には、「原発事故を機に、省エネルギーやロボット技術などが急速に発展し、この分野で世界のリーダーの座を固める」という早まった意見もある。

　ここまで楽観的ではなくとも、大勢は「日本は危機を克服して、生まれ変わる」と見ている。

　一方で、「財政赤字は深刻で、復興が遅々として進まないだろう。何よりも日本人全体が元気を喪失し、内向きの国家になる恐れもある」という悲観論も一部にはある。

　もう一つ、韓国で見逃せないのは、「日韓関係がさらに密接になる重要な契機になる」という意見が多いことだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5703?page=4

　先に触れたように、韓国は空前とも言える「義援金ブーム」が起きている。韓流スターやプロスポーツ選手から企業、一般国民まで、「日本を助けよう」一色なのである。

震災が結ぶ日韓の友情の輪

　物的支援も多く、韓国メディアによれば、「韓国が日本を物資面で支援するのは初めてのケース」という。

　人間関係でも国と国との関係でも、困った時に助け、助けられた方はこれに感謝するというのは、関係を好転させる大きな契機になる。

　これまでは何かあると一方的に日本が支援してきた日韓関係が、「韓国が日本を支援する」というこれまでにない経験をすることで、新たな関係に入る可能性はある。

　「冷戦時代の国際関係は、隣国の災難はプラスだった。今は相互依存の時代で、隣国の災難はそのまま跳ね返ってくる。日本の災難を自分のこととして受け止めよう」

　ある韓国有力紙は、先週、こんなコラムを1面に掲載した。少なくとも、地震から2週間近くたった現時点では、韓国の雰囲気はこれを素直に受け止めているようだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5703?page=5