ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

東日本大震災記録コミュの601、中国が独占意欲「トリウム原発」とは 米国はしたたかに“潜行”、日本の出遅れ感は大きい

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 去る1月25日、中国科学院(the Chinese Academy of Science=CAS)がショッキングな公式発表を行った。

 中国の“戦略的・先導的科学技術特別プロジェクト”としてトリウム溶融塩原子炉の開発プログラムを実施するということだ。(文新伝媒の報道による)

ウラン原子炉は燃焼効率の悪い“石炭ストーブ”

 このプロジェクトの責任者、中国科学院、上海応用物理研究所の徐洪傑がWenhui Newsの許埼敏記者に語ったことを翻訳すると次のようになる(一部要約)。

*   *   *

 化石エネルギーはいずれ枯渇する。再生可能エネルギーは柱になり得ない。中国の更なる発展のためには膨大なエネルギーが必要。一方で、温暖化ガスは減らさなければならない。これは“馬を速く走らせるが、草を食べさせない”ことと同じだ。しかし、30〜40年後の将来、エネルギーの柱をトリウム原子力発電にすればそれが可能になる。(1トンのトリウムは200トンのウランあるいは350万トンの石炭と同じエネルギーを発生させる:ノーベル物理学賞受賞者、カーロ・ルビア博士、筆者注)

 現在の原子力エネルギーシステムはウラン-235 を燃料としている。その埋蔵量は少なく、石油・石炭など化石燃料と同時期に枯渇が懸念されている。

 わが国はトリウム資源大国。1000年にわたって枯渇の心配がない。(世界のトリウム資源はウラン資源の約4倍:USGS、筆者注)

 トリウムを燃料としてどのような原子炉を作るのか。

 現在、世界で常用しているウラン原子炉は燃焼効率の悪い“石炭ストーブ”のようなものだ。わずかな最上質の燃料を燃やしただけで大量の‘石炭の燃え滓’(核廃棄物)を残す。

 それに対して中国は、トリウムを核燃料としながら、これまでの原子炉から出る核廃棄物を再利用もできる原子炉を研究・開発しようというわけだ。それには幾つかの選択肢があるが、中国は溶融塩炉という方式を選んだ。

長期連続運転が可能で、燃料の“雑食性”が強い

 この方式は、核燃料(トリウム-232)をフッ化物にして、フッ化物塩からできている溶融塩に溶解した状態で燃やす。地殻の中のマグマに少し似ていて、“ストーブ”の中で燃え続け、絶えず巨大なエネルギーを出す。液体燃料の原子炉ということがほかの原子炉と違うところだ。

 その特徴は構造が簡単で、長期連続運転が可能で、燃料の“雑食性”が強いなどの利点がある。しかも、小型かつ精巧に作ることができ、一定量の核燃料を装入すれば数十年の安定運転ができる。さらに、理論的に、核廃棄物は現在の技術による原子炉の1000分の1しか発生しない。次世代原子炉は世界で研究開発中であるが、我が国がトリウム溶融塩炉の研究を今始めれば、おそらくすべての知的所有権を獲得することになる。

 これまで人々は、“核”に言及すると顔色が変わる。広島・長崎の原爆、チェルノブイリ原発事故など悪夢のように人類の歴史に刻まれている。しかし、トリウム原子力は平和の象徴で、人類を新しい紀元へと導いてくれる。伝統的な原子炉で発生した核廃棄物の中には核兵器に使われるプルトニウム-239が多く含まれるため、核拡散のリスクにつながる。“新しいストーブ”でトリウム-232を燃やすと核燃料としてのウラン-233を出すと同時に不純物としてウラン-232 も出るが核兵器には利用できない。

2011年3月3日(木)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110225/218599/

 そのほか、操作は簡単で安全である。在来の原子炉のように高圧に耐える圧力容器が必要ない。原子炉内部の温度が予定値を上回ったとき、底部に設置した栓が自動的に溶けて、核燃料を包含した溶融塩はすべて応急タンクに流れ込むため、核反応は即座に停止する。燃料を抱きかかえている冷却材がフッ化物塩であるため、冷却後は固体の塩になる。核燃料は漏れにくくなり、地下水に流れ出して生態系破壊を起こすこともない。したがって、トリウム原子炉の設置場所の選定が自由になる。 数十メートルの地下に設置すれば放射線を完全に遮断できるし、敵の攻撃も防げる。

 もちろん、科学者たちは、まだ数多くの課題をクリアしなければならない。在来型の原子力発電の場合、世界で第1号の実証試験炉の成功後、商業的な発電所の建設、普及までには20年近くかかり、さらに現在の主流原子力発電技術の成熟までには20年余りが経過した。次世代のトリウム原子炉が現実に普及するまでには恐らく20〜30年かかるだろう」

*   *   *

 少々長くなったが、トリウム原子炉の特徴とその有利性を分かりやすく説明している。なお、このプロジェクトの総責任者は江沢民前国家主席の子息である。

研究・開発推進という風が静かに吹き始めた

 さて、筆者は、2009年8月31日にこのコラムで『「友愛」は通用しない資源外交――“核ルネッサンス”に乗り遅れるな』と題し、トリウム原子炉に関する記事を書いた。

 それを書く動機となったのは、以下列挙するように、米国はじめ世界各国において、トリウム原子力研究・開発推進という風が静かに吹き始めたのを感じたからである。単なる状況証拠的なこともあるが。

【1】まず米国では、2009年4月5日、オバマ大統領がチェコ共和国のプラハでEU首脳との会談に先立って、“核廃絶宣言”といえる演説を行い、その中で、4年以内に兵器用核物質の拡散を防ぐ体制を構築する方針を表明した。

【2】オバマ大統領は、ブッシュ政権下、原子力回帰政策に伴って計画された、ネバタ州のユッカ・マウンテン(Yucca Mountain)に全米から集めた核廃棄物の最終処分場建設の中止を決定した。

【3】ネバタ州とユタ州選出のハリー・リードならびにオーリン・リッチ両上院議員がトリウム原子力の研究・開発を促進するための法案(Thorium Energy Independence and Security Act of 2009)を提出した。

【4】2010年度、米国海軍国防予算の中に、トリウム原子炉の研究を進めるための費用が10億ドル織り込まれた。

全米のエネルギー需要を数世紀まかなう

【5】米国のウラン資源保有量は世界第4位となっているが、コスト競争力のある資源は非常に少ない。しかし、トリウム資源は豊富で、高品質トリウムの大鉱床がアイダホ州とモンタナ州で見つかった。

 2008年までの確認埋蔵鉱量は16万トンだったが、米国地質調査所(USGS)の最新のトリウム鉱物年報(Thorium Minerals Yearbook)によると、それが92万5000トンまで跳ね上がり、オーストラリアの30万トンを抜いて世界第1位に躍り出た。この資源量は、トリウム原子炉で、全米のエネルギー需要を数世紀の間まかなうのに十分な量であるという(REUTERS 2009/3/17の報道による)。

 このトリウムによって、米国のエネルギー独立を果せる。すなわち、ロシアの解体核兵器のウランを輸入しなくても済む。

【6】米国にはライトブリッジ(Lightbridge Corp. =2009年に社名をThorium Power ltd.から変更、NASDAQ上場)という核燃料企業があり。世界で広く使用されている軽水炉原子炉でのトリウム利用研究を行っている。同社は、2009年7月、世界最大の原子力エネルギー会社、仏アレバ社とウランを燃料とする軽水炉にトリウム燃料サイクルを利用する研究について協力協定を締結した。

【7】インド、中国、ノルウエー、カナダ、チェコ、ロシア、フランスなど世界各国では、溶融塩炉だけでなく様々なタイプの原子炉でトリウムを使えるようにする研究開発が行われている。

 それには、各国それぞれの事情がある。

インドが狙う一挙両得

【インド】ウラン資源は乏しいがトリウム資源は豊富にある。モナズ石という砂状の放射性鉱物の中に含まれる。このモナズ石は、いま中国による寡占支配で問題になっているレアアースを多く含む鉱物である。現在は、レアアース資源として採掘すると、厄介な放射性鉱物トリウムを除去しなければならないが、トリウムが原子燃料として利用できれば一挙両得だ。ウランをオーストラリアなどに依存しなくて済む。インド原子エネルギー局(the Indian Atomic Energy Authority)は、既存の原子炉1基をモナズ石から抽出したトリウムによる燃料転換することに決めた。

【中国】トリウム資源は、内モンゴル自治区にある世界最大のレアアース鉱山で発生する廃棄物の中に含まれているものである。インドのトリウム資源とは成因が違うが、レアアース抽出時に、放射性鉱物という厄介な副産物として発生するという点では同じだ。中国は2009年9月にトリウム利用に関する国際会議を内モンゴル自治区の包頭で開催した。

【ノルウェー】世界第3位のトリウム資源埋蔵量を持ち、2006年にはトリウム・イニシアチブを発足させた。2008年にはエネルギーに関する国全体の大きな議論を行った。そして、トール・エナジー社(Thor Energy)が設立され、同社は軽水炉でのトリウム燃料利用に向けた共同技術開発のための国際コンソーシアムを確立すべく2010年6月にパリで、「軽水炉用トリウム・プルトニウム混合燃料に関する技術会合」を開催した。

【カナダ】2009年7月、中国企業連合とトリウム燃料協定調印。自主開発の重水炉(CANDU)でのトリウム利用技術を開発し、2010年上海の原子力発電所のカナダ製重水炉でトリウム実装試験を実施した。

【チェコ】トリウム溶融塩炉の技術開発で世界をリードしている国の1つと言われる。軽水炉の使用済み燃料をトリウム溶融塩炉用燃料に変換する装置を世界で唯一所有する。ところが、2008年、溶融塩炉メーカーであるスコダ社(SKODA)がロシアのガスプロムに買収された。

【ロシア】1990年代から、クルチャトフ研究所で、米トリウムパワー社(現ライトブリッジ社)と軽水炉向けトリウム燃料の開発実験を実施。

【フランス】2009年7月、米ライトブリッジ社と仏アレバ社が軽水炉向けトリウム燃料協定締結したことはすでに述べた。また、トリウム溶融塩炉の研究開発も推進中である。

日本の原発ビジネスには“雑音”?

 以上のように、世界各国がトリウム原子力研究開発で動き出している。そして、世界各地で国際会議が開催されている。

 ここ数年でも、2009年9月、中国内モンゴル自治区包頭。2009年10月、米ワシントンDC。2010 年3月、米カリフォルニア(Google 本社)。2010年6月、パリ。2010年10月、ロンドンといった具合である。

 ところが、これらの会議に、日本の大学、研究機関、企業、関係省庁からの参加者が皆無に近い。これが気になることである。

 それは、日本国としてすでに既定の路線を進んでいる原子力政策と海外での原子力発電所建設ビジネス活動に影響を与える余計な雑音としてとらえられているからではなかろうか。今、世界で目白押しの原子炉新増設計画に対して絶好のビジネスチャンス。しのぎを削って受注合戦をしているのに、トリウムどころではないというのが偽らざるところであろう。

 トリウム原子力発電推進の大きな動機付けとして、昨年からにわかに顕在化してきたレアアース問題がある。

 特に、インドやオーストラリアに漂砂鉱床として豊富に賦存するモナズ石の中にはレアアース酸化物が59%も含まれる(トリウム酸化物が6〜9%)。中国はじめ、世界のほとんどのレアアース鉱床には除去すべき厄介者としてのトリウムが含まれているのである。

 このレアアースを、日本は世界の57%を消費し、中国からの輸入に依存している。2010年9月に起きた尖閣諸島海域の中国漁船衝突事件をきっかけとしてレアアース輸出制限問題でパニック状態となった。今も解決したわけではない。レアアースは、日本の競争優位の先端技術産業、再生可能エネルギー関連産業そしてハイテク兵器製造には欠かせない資源である。18%を消費している米国も戦略物資として自国資源開発を急いでいる。

 このように、トリウムと同じ鉱物の中に入っているレアアースを利用しない手はないわけだ。

推進の世論形成を図った?米国

 以上のような、トリウム原子力をめぐる世界事情の中、2011年1月18日、中国胡錦濤国家主席が訪米し、オバマ大統領と会談した。そして、胡主席帰国直後の1月25日、冒頭に紹介した、中国科学院によるトリウム原子力研究開発推進発表である。

 首脳会談の中で、隠された議題(hidden agenda)として話し合われ、中国に先に発表させることによって、米国内にトリウム原子力を中国に遅れることなく推進させる世論形成を図ったのではないかと考えるのは筆者だけの妄想か。

 憶測の域を出ないが、トリウム原子力推進が、共和党のエネルギー政策との関係、あるいは産業界など抵抗勢力によるプレッシャーから、核廃絶宣言を行ってノーベル平和賞も受賞したオバマ大統領の思惑通りには進まないので、国内の世論形成のための外交戦略ではなかろうか。

 中国科学院の発表に対する米国内の反応で興味深いものを拾ってみよう。

「中国の公式発表は核エネルギー開発の偉大なる飛躍であり、これから世界中で同様の発表がなされるであろう」(CLIMATE SPECTATOR)。
「中国はクリーン・原子力エネルギーでリードを奪う」(WIRED SCIENCE)。
「中国はトリウム原子力技術研究開発で攻勢に出る」(CLIMATE ACTION: UNEP)。
「このたびの中国の発表は旧ソ連によるスプートニク打ち上げと同じだ。米国は先を越された」(WUWT)。

 スプートニク云々については、トリウム原子力で先に越されたことを、冷戦時代、ソ連のスプートニク打ち上げによって宇宙開発競争で米国が遅れをとって、慌ててアポロ宇宙計画を打ち出した歴史的事実のアナロジーである。

国家戦略プロジェクトとすべき

 面白いのは、1月25日に行われた2011年度オバマ大統領一般教書演説にある次のような言葉である。「われわれは、米国の科学者、技術者たちが、クリーン・エネルギー開発のために、それぞれの分野でもっとも厳しい難問に結束して立ち向かい、ベストを尽くしてくれるなら、われわれの時代のアポロ計画に予算をつけよう。ある人たちは、風力、太陽光を、また、ほかの人たちは原子力、クリーン・コールそして天然ガスを望むだろう。ゴールを目指すためには、それらすべてが必要なのだ。」

 先の‘スプートニク’のアナロジーは、大統領の演説の内容とは多少異なるが、トリウム原子力版‘スプートニク’というわけだ。

 わが国としても、溶融塩炉方式のトリウム利用技術については世界的な水準の研究者もいるが、残念ながら、これまでわが国原子力政策と原子力産業界あるいは学界の主流派から封印され続け、あまりにマイナーな存在となっている。今こそ世界に吹き始めた風を読み、国家戦略プロジェクトとして取り上げる時期がきたのではなかろうか。

 そして、何よりも唯一の被爆国として核廃絶と地球温暖化防止に世界でイニシアチブをとれる戦略的技術である。そればかりではない。新成長産業の創出、エネルギー政策、レアアース確保戦略上きわめて有望な分野である。世界の潮流に乗り遅れてはならない。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110225/218599/?P=4

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

東日本大震災記録 更新情報

東日本大震災記録のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング