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東日本大震災記録コミュの547.巨額の貿易赤字をどう評価するか?

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 5月25日に発表された貿易統計によると、4月の貿易収支は4637億円の赤字となった。対前年同月比で、輸出は12.5%の減、輸入は8.9%の増となった。

 昨年4月の貿易収支は7292億円の黒字だったので、収支が1兆2000億円ほど悪化したことになる。

「貿易赤字が景気の足を引っ張る」は間違い

 この状況に対して、「貿易収支の赤字が景気の足を引っ張る」という意見が見られる。しかし、この評価は誤りである。正しくは、「生産が拡大できないから、貿易収支が赤字になる」のだ。つまり、生産制約が原因で、貿易赤字は結果である。

「貿易収支の赤字が景気の足を引っ張る」というのは、需要不足経済でのことだ。ここでは、「生産能力には余裕があるにもかかわらず、輸出という需要が十分にないので、生産能力を十分に発揮できない」という状況が生じる。

 経済危機後の日本は、典型的な需要不足経済だった。このことは、とくに自動車において顕著だった。2006年頃まで、アメリカに対する自動車輸出が増大し、生産設備が大幅に増強された。しかし、07年頃からのアメリカ金融危機の影響で、アメリカへの自動車輸出が急減した。このため、大幅な需要不足が発生した。これに対処するために、エコカー購入支援策などの需要促進策が行なわれた。

 ところが、この状況が、東日本大震災によって一変したのである。震災で工場が損壊し、自動車の生産が急減した。このため、国内でも注文に応じた納品ができない状態になっている。そして、輸出も減少しているのだ。因果関係が需要不足経済の場合とは逆になっていることに注意が必要である。このことは、貿易赤字の評価に関しても、取られるべき政策に関しても、需要不足経済の場合とは180度違った考えが必要になることを意味する。

中長期的に続く生産制約

 損壊した工場は、徐々に復旧されるだろう。したがって、生産も回復する。

 しかし、生産を無制限に拡大することはできない。なぜなら、電力制約が厳しいからである。原子力発電を始めとする発電施設が損壊した東日本地域での電力不足は、すでに顕在化している。

2011年5月26日
http://diamond.jp/articles/-/12420

 東日本以外でも、電力不足が発生している。浜岡原子力発電所の全面停止によって、中部電力管内の電力需給はきわめてタイトになった。これを受けて、トヨタ自動車は、7〜9月の工場稼働日を電力消費の少ない土日に変更し、木・金曜日へ休日をシフトすることを決定した。

 定期点検等で停止中の原子炉の運転が再開できるかどうかについては、不確実性が大きい。また、火力発電へのシフトによって電力の量的な不足が緩和されたとしても、電力コストは上昇する。

貿易赤字拡大はいいことか、悪いことか

 貿易赤字の拡大は、どう評価されるか? それは、日本経済にとっていいことなのか、それとも悪いことなのか?

「貿易赤字の拡大は、需要の減少であり、生産を縮小させる。だから、悪いことだ」というのが多くの人の考えだ。しかし、これは、需要不足経済における評価である。

 生産制約のある経済では、貿易赤字の拡大は、悪いことではない。なぜなら、クラウディングアウト(混雑による押し出し現象)を緩和させるからだ。輸入の増加は供給の増加を意味するし、輸出の増加は需要の増加を意味するからである。

 前回述べたように、今年の秋頃から復興投資が増大する。そして、それは、クラウディングアウトを引き起こす可能性が高い。つまり、金利が上昇して、復興が思うように進まない可能性がある。

 しかし、貿易赤字が拡大すれば、それが緩和されるのだ。金利上昇は抑えられる。

 復興投資が増大するとき貿易赤字が拡大すれば、復興投資による需要増加が貿易赤字に打ち消されて、復興需要が経済を回復させる効果は生じないことになる。しかし、それは悪いことでなく、望ましいことである。なぜなら、生産量は供給制約で決まっているので、復興投資が増えたところで増加しないからだ。

金融緩和・円安政策を行なってはならない

 貿易赤字が拡大すると、「輸出を増大させるため円安にする必要がある」という意見が出てくる可能性が高い。しかし、その考えは誤りである。

 なぜなら、仮に為替レートが円安になったとしても、輸出は増えないからだ。上述のように、輸出量は、生産制約で規定されているのである。

 円安の効果は、円ベースでの輸入金額を増大させることである。これは、ほぼ確実に生じる問題である。国内での火力シフトのため、LNG(液化天然ガス)の輸入量は増大する。ところが、LNGの価格はドル建てで決まっている。したがって、円安になれば円表示の輸入額が増える。したがって、貿易収支の赤字が拡大する。現在のような状態では、円安が貿易収支赤字を拡大することになるのだ(注)。

 金融緩和政策を取れば、円安になる。したがって、貿易赤字が拡大する。貿易収支赤字を縮小させるためには、円高にならなければならない。

 ところで、これは、先ほど述べたクラウディングアウトとはどのような関係があるか? クラウディングアウトの議論は、実質量に関わるものである。ところで、いま論じたのは、名目の貿易収支に関わるものであり、実質の貿易収支は、仮定により一定としている。したがって、この場合には、為替レートが変化しても、クラウディングアウトには影響しない。

(注)輸出と輸入の価格弾力性の和が1よりも大きい場合には、通貨安によって貿易収支が改善する(価格弾力性とは、価格が1%上がったときに輸出・輸入量が何%変化するかを表す指標)。その理由は、つぎのとおりだ。

 輸出をX、輸入をM、輸出の価格弾力性の絶対値をεx、輸入の価格弾力性の絶対値 をεMとすると、

   貿易収支の変化額=X(1+εx)−M(1−εM)
              =X+M(εx+εM−1)+εx(X−M)

 したがって、収支差(X−M)が(正、あるいは負であっても)輸出Xに比べて十分小さいと仮定すれば、εx+εM−1が正であれば、通貨安(輸出価格、輸入価格の上昇)によって貿易収支は改善する。これは、「マーシャル=ラーナー条件」として知られている。そうでない場合は、通貨安によって貿易収支が悪化することもある。

 本文で考えたケースでは、輸入・輸出が量的に固定されている(εx=εM=0)と仮定しているため、

   貿易収支の変化額=X−M

となる。したがって、貿易収支が赤字なら、通貨安によって貿易収支は悪化する。

 この結果は直感的にも明らかであろう。輸出量、輸入量が一定で、輸出価格、輸入価格がドル建てで固定されているので、円安になると円表示の輸入額も輸出額も増大する。しかし、貿易収支が赤字であれば、輸入額の増大のほうが輸出額の増大より大きく、したがって貿易収支は悪化するのである。

 このことは、経済学で「Jカーブ効果」(の最初の局面)として知られている現象である。

石油ショック時の経験に学ぶ必要がある

 なお、以上で述べたことは、机上の空論でなく、1970年代の石油ショック時に実際に生じたことである。石油ショック後に、日本は金融引き締めを行ない、公定歩合が9%にまで引き上げられた。このため、為替レートは円高になり、石油価格上昇の影響が日本では緩和された。石油ショックに日本が上手く対応できた大きな理由はここにある。

 現時点で必要なのは、このときのような政策だ。しかし、逆のことを主張している人が多い。

 イギリスの場合には、日本と逆のことが起こった。ポンドが減価し、これによってイギリス国内では、石油価格の上昇がきわめて深刻な問題となったのである。しかも、ポンド安がイギリスの貿易収支を悪化させた。このため、イギリスは、インフレの中で失業率が上昇するという「スタグフレーション」に陥った。イギリス経済はそれによって疲弊し、20年間そこから脱却することができなかった。

 日本はこの当時のイギリスの経験を繰り返してはならない。

http://diamond.jp/articles/-/12420?page=4

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