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東日本大震災記録コミュの537.再生可能エネルギーとスマートグリッドへシフトせよ 課題は技術ではなく、政治の決断である。

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 福島第1原発の事故を経て、日本は原子力推進路線を続けるか、もしくは方向を転換して縮小に向かうのか、の大きな分岐点に立っている。これからのエネルギーシステムは、どのような形になるのか。

 今日の経済は、ICT(情報通信技術)への依存度が極めて高い。社会の主要な情報がICTに依存すればするほど、停電の意味は重くなる。かつての停電が食卓の灯りを失うことだったのに対し、今日の停電はインフラや財産、命の喪失に直結する。電力の安定供給は今まで以上に不可欠だ。

 これまで電力を安定供給するためのインフラの常識は、原子力や火力に代表される一元的に管理しやすい大量生産・集中型であった。今回の大震災で人間による管理の限界が明らかになった今、もう一つの安定供給の方法として、小規模・分散のネットワーク型が浮上する。

 小規模・分散のネットワーク型のメリットはインターネットを考えると分かりやすい。インターネットは、回線が寸断し情報伝達が途絶える有事への対応を目的に開発された。今回の震災が起きた直後も、携帯電話も固定電話も通じない中で、ツイッターならば通信ができた。同様に電力供給でも、エネルギー源を多様化し、電源配置を分散して、相互融通できるネットワーク型システムなら、電源が壊れ送電線網が寸断した際にも我々はリスクを分散することができる。

 21世紀のエネルギーにはもう一つ求められていることがある。低炭素電源だ。しかし、CO2の排出が少ない太陽光などの再生可能エネルギーは出力が不安定で、集中生産した電力を一方的に配電するのが主目的の既存の送電線網では、再生可能エネルギー発電量の10〜20%しか利用できない。再生可能エネルギーを実用化するには、1)電力がどのように使用されているか、需要と供給をトレースし、2)供給不足が起きないよう、必要な電力を需要の多い地域に瞬時に送り、3)余剰の電力は蓄電池に充電しておくなどして調節する機能が必要だ。

 従って次世代エネルギーシステムは、高効率・低炭素の多様化した電源を分散配置し、リスク分散と相互補填が可能なBCP(事業継続計画)型ネットワークとなる。これを体現するのがエネルギーミックスとスマートグリッドだ。

再生可能エネルギーで供給不足を賄えるか?

 政府は「エネルギー基本計画」(2010年)で、 2030年に電力供給の50%を原子力、20%を再生可能エネルギー、30%を化石エネルギーで賄う構想を明らかにしている。現在日本の電力需要は年間約1兆キロワット時であり、原子力30%、再生可能エネルギー10%、化石エネルギー60%で供給している。つまり政府は、「2030年に化石燃料への依存を半減させる」という目標を、原子力の20%上積みと再生可能エネルギーの10%上積みで達成する計画だ。そのため電力各社は新たに14基以上の原子炉を増設する計画である。
 
 しかし今回の災禍で原子炉の新規増設に疑問を持つ声が高まっている。かといって今すぐに再生可能エネルギーで原子力のすべてを代替することはできない。現行の再生可能エネルギーは電力供給のわずか10%でしかない――水力8.3%、地熱0.2%、太陽光、風力、中小水力、バイオマスなどの新エネルギー1.4%。

 しかしスマートグリッドを整備し、技術革新も想定するなら話は違う。上記のエネルギー基本計画を、原子炉の新規増設なしに経年廃炉を待って、再生可能エネルギーで漸次代替しながら実現することは可能ではないだろうか。

 電力需要の増減なしと仮定して、政府試算をもとにラフな試算をしてみよう。現在の原子力の設備容量(瞬間の最大発電能力)は全国54基で約4900万キロワット。原子炉の新規増設をせずに、60年使用した原子炉を廃炉にする場合なら、2030年の設備容量は微減の4550万キロワットで済む。条件を変え、40年使用で廃炉にする場合の設備容量は1900万キロワットに激減する。

 この設備容量の稼働率を90%として(現在の稼働率は65%程度。「エネルギー基本計画」は米国・韓国並の90%まで引き上げることを想定している)2030年の原子力による年間発電量を計算すると、増設をせずに60年廃炉では3600億キロワット時、40年廃炉で1500億キロワット時となる。年間発電量は、設備容量に稼働率0.9と24時間365日をかけて算出した(単位はキロワット時)。

2011年5月24日(火)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110520/220059/?rt=nocnt

 再生可能エネルギーで置き換えるべき年間発電量は、14基を増設する「エネルギー基本計画」の発電量5400億キロワット時から、前段落の年間発電量をそれぞれ差し引いた1800億キロワット時、3900億キロワット時となる。つまり「原子炉の新規増設なしに経年廃炉を再生可能エネルギーで代替できるのか」とは、この電力量を再生可能エネルギーで補填できるのか、という問いである。

再生可能エネルギーで1兆ワット超が賄える

 そこで、この4月に環境省が発表した「再生可能エネルギーの導入ポテンシャル調査」の数値をもとに、再生可能エネルギーをどこまで増やすことが可能なのかを計算してみた。環境省がいくつかのシナリオ別に試算をしている中から、 1)FIT(再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度)を15年間実施し、2)技術革新で導入コストが3分の1から2分の1減少する、という実現可能性の高いシナリオを選んだ。結果は、太陽光、風力、中小水力、地熱の再生可能エネルギーは、2025年ごろまでに1兆2211億キロワット時/年を供給できる。先の3900億キロワット時を補うことができ、日本の年間電力需要1兆キロワット時もあっさりと上回る。

 期待が最も大きいのは洋上を含む風力発電の1兆56億キロワット時/年(設備容量4億1000万キロワット、稼働率28%で算出)。特に洋上風力の潜在力は陸上風力の6倍にも上る膨大なものである。補助金を出して設備を導入しさえすれば、洋上風力は上記シナリオのさらに8倍もの電力を供給できるようになる。

 次いで太陽光の1547億キロワット時/年(設備容量1億4720万キロワット。稼働率12%で算出)である。環境省の試算は住宅用設備を除いているので、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が試算した住宅用太陽光発電の導入可能量を上乗せして試算した。

 太陽光・風力ともに、普及と技術革新で発電コストが十分に低下し、原子力と競争できるようになる可能性が高い。原子力の発電コストはキロワット時当たり5.3円という数字を現在よく使うが、使用済み核燃料処理やリスク管理などのコストを入れれば10円以上になると議論されている。

 風力はすでにキロワット時当たり10円。太陽光の発電コストも2030年までに7円まで低下するとNEDOは試算している。アメリカでは、早くも2016年に風力が7.9円になり原子力9.2円を下回るとエネルギー省が2010末に発表した 。

 その他の有望な電源は、まだ開発段階にある海洋エネルギーだ。海流発電は、黒潮の豊富な潜在力から安定的で大量のエネルギーを生み出すことが期待できる。ノヴァエネルギーは、1基160万キロワット(原子炉1.5基分)規模の海流発電所を2020年の竣工を目指して実証している段階にある。エンジニアリング振興協会も2030年に向けて発電コストを経済的に現実的なラインであるキロワット時当たり10円にまで下げることを目指している.

 海面の波を使った波力発電も候補になる。波力発電研究会は、2030年までに日本で2000〜3000万キロワットの設備を導入することが可能としている(稼働率30〜50%)。波力の発電コストは現在、キロワット時当たり20〜40円であるが、開発各社は2030年に向けてキロワット時当たり10円を目指している。

 洋上風力と海洋発電とは適地となる海域が重なるので、洋上風力発電設備の下部に海流発電・波力発電・潮力発電設備を併設し、送電施設を共有すればコストが下がる。

スマートグリッドの普及を政府は支援せよ

 原子炉を増設せず、経年廃炉を待って縮小し、再生可能エネルギーとスマートグリッドで構成するエネルギーシステムを実現する。これは技術的に可能であろう。もちろんそのすべての前提として、電力供給の最適化・安定化を可能にするスマートグリッドの整備が不可欠である。電力需給に応じて時々刻々変動する電力価格をスマートメーターで提示できるようになれば、需要者が電力消費を調整することで需給が均衡し、電力需要のピークカットに貢献する。

 スマートグリッドの整備と普及政策のために、政府が決断しバックアップする必要があるのは言うまでもない。一般会計・特別会計合わせて毎年約5000億円に上る原子力関連の財政資金を、北海道から沖縄まで縦横無尽に電力を融通できるスマートグリッド整備に投下してはどうか。断熱材や二重窓など単なる節電を越えた本格的な省エネ設備の導入を、法律を作って義務化するなどして大幅な電力需要の削減を誘導することもできる。国家の方針が定まれば、電源や蓄電池、省エネなど、民間による関連技術の開発にも弾みがつく。1970年代のエネルギー危機の時と同様、日本経済の再建と技術向上に寄与するだろう。
 
 従って当面は、日本経済の競争力を維持しつつ地球温暖化ガスを削減するために、現存する原子炉に耐震対策と老朽化対策を施して使用する一方、化石燃料と再生可能エネルギーとのエネルギーミックスでしのぐ。同時に超長期的には、原子力と化石燃料への依存度を下げ、技術開発を加速しつつ、再生可能エネルギーへのシフトをさらに進めていくのが、現実的なソフトランディング・シナリオである。

課題は技術ではなく政治

 このシナリオにおいて直面する課題の多くは技術的なものに見えるが、実は政治的なものである。普及するまでの期間、FITやスマートグリッド整備のために高くなる電力料金を国民は受け入れられるのか? インフラの再整備のために政府が財政出動に乗り出す政治的な合意を形成できるのか? 

 電力会社の地域独占から派生する問題も多い。日本では50/60Hzの2規格が併存するとともに、10電力会社がそれぞれの地域を管轄しているため、電力の融通が利かない。スマートグリッドは本来、全国網とすべきだ。現状のままスマートグリッドを造れば、最大で10個に分割されたスマートグリッドが出来上がり、北海道・東北の風力発電で起こした電力を東京に送ることができないといった問題が残る。

 こういった課題のため、このシナリオの実現は容易とは言わない。だが不可能ではない。要は我々の意思次第である。

再生可エネルギーとスマートグリッドへの移行は国際貢献につながる

 日本が、巨大なGDPを支える再生可能エネルギーとスマートグリッドのエネルギーシステムを近い将来に構築できれば、それは中国やインドを含む地球全体への貢献ともなる。原子力の再評価は原子力ルネサンスとも呼ばれ、世界では現在75基の原子炉が建設中である。中国が30基、インドが8基を建設しており、両国だけで合計38基と約半数を占める。両国ともに、石炭火力によるCO2排出に関する国際的な非難を避けつつ10%近い経済成長を支えるため、原子力発電を推進する路線を取らざるを得ない。日本にすらできなかった原発の安全管理への危惧が、両国の国内外から起こっている。

 さらに問題なのは、使用済み核燃料の最終処分場の建設が、世界のどの国でも難航していることである。世界でフィンランドとスウェーデンで見通しが立つのみである。放射性物質を大量に含む使用済み核燃料を捨てる場所は、地球上では容易には見つけられない。もし新興国も原子力に頼り続けた場合、堆積し続ける使用済み核燃料をどうするのか。将来世代への禍根を残しかねない。

 米アリゾナ州にネイティブ・アメリカンのホピ族がいる。ホピとは「平和の民」を意味する。ホピ族伝統派は、「母なる大地に埋まっているものを掘り出してはいけない。なぜならそれは母の内臓だからだ。母なる大地を傷つけることなく、宇宙の摂理とともに生きよ、そうしなければ自然界のバランスが崩れ、多くの困難が人類に降りかかるだろう」という教えを体現しようと苦闘し、世界に発信し続けてきた。

 今回の日本の原発事故に対しても、祈りを添えて公式メッセージを伝えた。「今、地球が直面している変化は祖先から聞いていた。この変化の時を抜けていく唯一の細い道はある。地球を敬い、そこに生きるすべての命を敬い、母なる大地の上を優しく歩くことだ」と。消費文明に浸り、自然界に反応する感覚が麻痺した我々に、ホピの言葉はうつろに響くか。しかし、ホピの断固たる静かな叫びは、地球の声である。

 既得権益を離れた曇りない目で、日本の現状と将来を見据えた最善のエネルギーシステムを選択することが、我々の喫緊の課題である。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110520/220059/?P=3

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