ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

東日本大震災記録コミュの504.被災せずとも、サプライチェーン危機に巻き込まれる

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 経済産業省は大型連休直前の4月26日、東日本大震災により寸断された企業のサプライチェーンの緊急調査結果を発表した。対象は東北や北関東に拠点を持つ80社(製造業55社、小売・サービス業25社)で、製造業では被災地の生産拠点の64%が既に操業を再開、26%が3カ月以内に再開する見通しだと回答した。

 この調査結果をどう受け止めるか、見方が分かれるだろう。地震と津波がもたらした甚大な被害や、福島第一原発の放射能漏れ事故の影響を考えれば、製造業の復旧は予想を超えるペースで進んでいる。これは各企業の現場が不眠不休の努力を続けている表れであり、日本の製造業の底力を示すものだ。

 だが、経産省の調査では3%の企業が復旧時期について「半年〜1年以内」、7%が「わからない」と回答した。つまり10%の生産拠点で、操業の早期再開のめどが立っていないのである。

 被災地の製造業の9割が3カ月以内に復旧しても、日本の製造業全体の9割が正常化するとは限らない。残り1割の中に特定分野の製品の製造に欠かせない中核部品や素材が含まれていれば、影響はサプライチェーン川下の全企業に及ぶからだ。自動車用マイコンで4割の世界シェアを持つルネサスエレクトロニクスの那珂工場が被災し、世界中の自動車メーカーが減産に追い込まれているのはその典型だ。

 さらに、経産省の調査やサプライチェーンに関するメディアの報道には意外な盲点がある。サプライチェーンを部品供給網(または部品調達網)ととらえ、震災の影響を部品工場の被災やその調達先の被災による問題、要するに“川上”の問題と見ていることだ。

 もちろん、サプライチェーンの“川上”が寸断されれば、“川下”が支障を来すのは自明の理だ。とはいえ、現実のサプライチェーンはそんなに単純なものではない。部品というモノだけでなく、取引にともなうカネや、市場が何を求めているかといった情報も双方向で流れている。

 震災をきっかけに“川下”に変化が起きれば、その影響が“川上”に及ぶ可能性が十分ある。それは早くも現実になりつつある。

川下が止まれば川上も止まる

 筆者は4月上旬、「世界の工場」と呼ばれる中国広東省の珠江デルタ地区を駆け足で取材した。日系企業向けの緊急支援措置を打ち出した東莞市の江凌副市長をインタビューするためだが、同時にいくつかの日系企業を訪ねて話を聞くことができた。そこで実感したのが、川上だけでなく川下からも“逆流”してくる震災の影響のすさまじさだ。

 「5月に1週間の集中社員研修をお願いしたい」――。珠江デルタ地区で製造業の生産管理を指導しているコンサルタントの林徹彦氏は、震災の数週間後に指導先の自動車部品メーカーから唐突に依頼を受けた。このメーカーは広州市の日系完成車メーカー向けに部品を供給している。日本の部材調達先に被災はなく、林氏は「地震の影響はない」と聞いていた。にもかかわらず5月から減産を余儀なくされ、生産調整のため工場を1週間止めて研修に回すことにしたのだという。

 理由は単純だ。一部の日本製部品の供給不足で完成車メーカーの工場が減産に追い込まれたため、供給に問題のない部品の発注も大幅に減ってしまったのである。この部品メーカーから見れば、完成車メーカーは“川下”にあたる。「在庫を極力持たないジャスト・イン・タイム生産では、川下の組み立て工場が止まれば、川上の下請け工場も同時に止まる。最終製品の減産が長引けば、影響はサプライチェーン全体に及ぶ」(林氏)。

 今後懸念されるのが部品メーカーの資金繰り悪化だ。完成車メーカーは日系の1次〜2次下請けまでは支援する可能性が高いが、その先は不透明だ。「3次〜4次下請けは資金に余裕のない地場メーカーが多い。彼らの資金繰りが行き詰まれば、地震に関係ない部品の生産にも支障を来し、サプライチェーンの混乱がさらに広がる可能性がある」と、東莞市外貿局の幹部は警戒する。

 同様の懸念は日本国内の下請けメーカーや、自動車以外のエレクトロニクス産業などにも当てはまることは言うまでもない。

2011年5月9日(月)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110428/219692/?P=1

 サプライチェーンの最も川下は、製品のユーザーである企業や消費者だ。その変化が、川上に影響を与えるケースも出ている。

 香港の光学機器メーカー、オプティロムの石井次郎会長は、珠江デルタ地区で30年近い工場経営の経験を持ち、本業の傍ら日本の中小企業の工場進出を支援してきた。そんな石井会長の下には、震災後の数週間で4件の進出相談が持ち込まれた。

 このうち1社は大阪の医療機器メーカーで、日本の生産拠点は被災しておらず、中国進出を急ぐ理由は見当たらない。石井会長が理由を聞くと、原因は“川下”だった。このメーカーの最大の販売先である欧米企業から、生産拠点の一部を海外に移転しリスク分散を図るよう強く迫られたのだ。

 川上の供給不足が長引けば長引くほど、こうした川下から川上への圧力が強まる可能性が高い。特に震災の当事者ではない欧米企業やアジア企業は、日本企業の被災には同情するが、それを理由に顧客に不便を強いるのは避けたいのが本音。今後は日本以外からの代替品の調達を進めるとともに、日本でしか作っていない製品に関しても生産体制の分散をメーカーに求めるのが確実だ。

 これを日本企業の立場で見れば、これまで国内に留めてきた門外不出の技術やノウハウも、一部をあえて海外に出さなければ顧客の注文を失いかねないということだ。とはいえ、海外進出は技術流出や人材不足のリスクを伴う。日本企業は難しい選択を迫られるが、迷っている時間はあまりない。

サプライチェーンは元の姿に戻らない

 特に中小企業の場合、現実には自社の都合より顧客(=川下)の求めを優先せざるを得ないケースがほとんどだろう。

 家電製品や自動車に組み込まれる温度センサーを製造する大泉製作所は、震災前から計画していた中国の東莞工場の増強を急遽前倒しにすることを決めた。青森県十和田市にある工場は既に復旧したが、余震や計画停電で安定操業できないリスクがある。そこで顧客の供給不安を払拭するため、8月をめどに東莞工場の増強を急ぎ、日本の稼働率が落ちても中国からの輸出でカバーできる体制を作る。

 「顧客への供給責任を果たすため、増産用の設備を一刻も早く立ち上げたい」と、東莞工場の久下幸雄・管理グループ次長と浅野賢・営業部長は話す。同社が東莞市政府に相談すると、市政府は審査に通常1カ月近くかかる設備輸入の申請手続を1日で通した。はからずも、これが東莞市の日系企業緊急支援措置の適用第1号になった。

 大泉製作所の中国シフトは、顧客の圧力でいやいや進めているのではない。むしろ顧客の信頼に応えようと主体的に動いた結果だ。同様のリスク分散の流れは、日本の製造業全体で今後のトレンドの1つになるかもしれない。

 地震と津波で壊滅的被害を受けた東日本沿岸の町や村では、津波再来のリスク、地場産業の衰退、人口の高齢化などを考慮すると、地域を地震前と同じ姿に戻したくても戻せないという冷酷な現実に直面している。震災で寸断されたサプライチェーンについても、それと似たことが言える。

 仮に1年後、川上の生産体制が完全に回復したとしても、サプライチェーンは元と同じ姿には決して戻らない。川下の需要家が調達リスクの分散に走る中、新たな生産体制をどう構築するのか。日本の製造業にとって、震災復旧の先にさらなる難題が待ちかまえている。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110428/219692/?P=2

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

東日本大震災記録 更新情報

東日本大震災記録のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング