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東日本大震災記録コミュの377.放射線量の正しい認識を持とうベクレルとシーベルト、その違いと歴史的経緯

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今回は、ニュースで目にすることの多い2つの「放射線量」の単位について、測定器の動作原理にさかのぼってお話ししたいと思います。

 4月12日付で原子力安全委員会は3月11日から4月5日までの間、大気中への一部の核種の放出総量として、

ヨウ素131が1.5×1017ベクレル
セシウム137が1.2×1016ベクレル

相当が出ている、という、測定値を基にする試算結果を発表しました(PDF)。

 実はここで「ベクレル」単位で「放射能の量」を示すことには、原理的に無理があるのですが、このあたりのことを、きちんとお話ししておきたいと思うのです。

定義に帰って:「打率」と「打点」の違い

 原発内部の状況や、各地の放射線量を表す単位として、先ほどから使っている「シーベルト」という言葉が登場します。また、水道水中の放射性物質や野菜の放射能汚染などの話では「ベクレル」という単位が使われます。

 「ベクレル」と「シーベルト」、2つが混乱して紛らわしい、という意見を聞きますが、違う単位が出てくるからには、何か理由があるはずです。

 それを、測定原理からきちんと理解しておくと、これらの値のどちらも、目安にしか過ぎないけれど、各々参考になるものだ、とお分かりいただけると思います。

 最初に乱暴に説明すれば野球の打者評価で考えて「ベクレル」は「打率」と似ており「シーベルト」は「打点」と似ています。

 野球に詳しくない方もおられると思うので、おさらいしておくと「打率」というのはバッターが打席に立った時にヒットを打つ割合で、3割バッターと言えば10回打席に立つと3回の高い確率でヒットを打つ選手ということです。

 これに対して「打点」というのは、自分が打ったヒットによって、チームにどれくらい点が入ったかということで、例えば満塁で迎えた4番打者がホームランを打てば、本人が打った球は1つですが、合計4打点が入ります。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865

 これとよく似たことが「ベクレル」と「シーベルト」にも言えます。1ベクレルというのは、1秒間に1回放射性物質の崩壊があるという「頻度」を表すもので[回/毎秒]という単位を持ちます。

 2ベクレルなら毎秒2回、10ベクレルなら毎秒10回の崩壊があるということです。そこでまず、このベクレルからお話しすることにします。

 誰もが気になる食品についてベクレルが使われる時には、さらに分量の問題を確認しなければなりません。

 例として、放射性ヨウ素131が混ざった水道水やミルクが、赤ちゃんにとって安全かどうか、を考えてみます。

 国の安全基準は、放射性ヨウ素131が1キログラム当たり100ベクレルを超える水は粉ミルクを溶くのに使わないようにと定めています。

 水を1キロ飲む赤ちゃんはいませんから、いま仮に哺乳瓶に100グラムのミルクを作るとします。

 すると1キロ当たり100ベクレルですから100グラムなら10分の1の10ベクレル、つまり哺乳瓶のミルクの中では毎秒10個ほどのヨウ素131がベータ崩壊を起こしてキセノンとなり、毎秒10個の電子が飛び出してくる、という状態になります。

温泉に含まれる放射線量とあまり変わらない

 ミルクの中から電子が飛び出す、などというと奇異に思うかもしれませんが、「健康に良いらしい」なんていって飲まれている各地の温泉のお湯には、けっこうな高濃度で放射性物質が入っているケースがあり得ます。

 この程度の分量であれば、自然界でも普通にあり得ることで特に問題はなく、これを飲んだ赤ちゃんも、あるいは大人であっても、仮に飛び出してくる電子で細胞や遺伝子が傷つけられても、十分に補修して健康を保つことができる量だ、ということになります。

 ホウレンソウなどの葉物野菜の放射線量として暫定規制値1キロ当たり2000ベクレルというのは、その野菜を1キロ持ってきたら1秒当たり2000個の電子が飛び出してくるという状態を指します。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=2

 ホウレンソウばかり1キロ食べる人も、そんなにたくさんはいないでしょうから、いま「お浸し」にして100グラム、このホウレンソウを食べたとします。

 1キロ当たり2000ベクレルですから100グラムでは200ベクレル、つまり1秒間に200個電子が飛び出してくるわけです。

 人間の大人の体がこの程度の放射線のアタックを受けても、免疫系が働いてきちんと健康を守ることができるので、健康上それほど大きな問題はないだろう、として暫定基準量に定められているのです。

ガイガー計数管が動く仕組み

 水道水や野菜の中から検出されるヨウ素131の害は、1986年以前にはあまり知られていませんでした。

 これがチェルノブイリ原発事故で周囲に撒き散らされ、特に子供が食べ物などを通じて摂取し、喉の甲状腺に蓄積されて「甲状腺ガン」を多く引き起こしたことから、健康への深刻な影響が知られるようになったものです。

 先にも触れたように、ヨウ素131はベータ(β)崩壊して電子を飛び出させます。

          β崩壊
ヨウ素131    →    電子(β線) + キセノン131 + 崩壊熱

 1回の崩壊で1個、電子が飛び出してきます。私たちはこれを目で見ることができませんが、適切な装置があれば、それを測ることができます。

 そこで「ベクレル」という単位のデータを測る道具の1つ、よく知られた「ガイガーカウンター(ガイガー=ミュラー計数管、GM管)」の仕組みをご説明しておきましょう。

 まず「ガイガー計数管」というくらいですから、この道具は「数を数える機械」だということを覚えておいてください。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=3

 ガイガー計数管は細長い管、つまり筒の真ん中に針金の芯が1本通してあるような形をしています。針金と筒の間には高電圧がかけてあり、途中の空間にはヘリウムなどのガスが詰めてあります。

 この高電圧の管に、ホウレンソウや水道水の中のヨウ素131から出てくるベータ線(その正体は電子)のような、電気を帯びた粒子が飛び込んでくると、ガイガー計数管内のガスとぶつかってガスが電離します。

 このため筒と芯との間にパルス状の電気シグナルが流れます。このシグナルで「カチッ」とか「ピー」とか音が出るようにすることができますし、1個、2個とシグナルの数を数える装置を作ることもできます。

 何秒間に何個のシグナルがあったか数えれば、1秒当たりの個数が分かりますね。

 こんな具合にして、核分裂で飛び出してきた粒子の個数を測ることで得られるデータが「ベクレル」ですが、もう1つ重要なことを付け加えておかなければなりません。

 ベクレル単位でデータが出てきたら、必ず何という放射性元素の何崩壊の個数を数えているか、確認しなければ、意味がないのです。

 いま世の中で食品についてあれこれ言っている大半はヨウ素131のベータ崩壊で出てくる電子が、食品1キロ当たり、毎秒何個放出されるかを報道しているもので、もし物質が違ったら、話は全く別のことになります。

 例えばセシウム134のベータ崩壊で出てくる電子の数を数えた時の「何ベクレル」という数値は、ヨウ素の時と全く別の健康安全基準で考えなければなりません。

個別の「ベクレル」と平均の「シーベルト」

 ベクレルという単位がヨウ素131などの物質(核種)と崩壊様式が決まらないと意味を持たない、ただの「崩壊回数の頻度」(何回崩壊/毎秒)でしかないのに対して、シーベルトという量はもっと複雑な、統計的な操作を加えた人間のための目安です。

 言ってみれば、ベクレルが「個別的」に物質から放射される線量の目安であるのに対して、シーベルトはある種の「平均値」を示しているのです。その最大のポイントは「人間の健康に及ぼすインパクト」を示しているという点です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=4

 ニュースで「1号炉内の放射線量が100ミリシーベルト」とか「福島市内の線量計の値が10マイクロシーベルト」などという時、いちいち「ヨウ素」とか「セシウム」といった物質の名前が出てきませんね?

 線量計の示す「シーベルト」単位の放射線量は、2つの意味で複合的なものなのです。

 実はシーベルト(Sv)という単位の量は、あとでお話しするグレイ(Gy)という単位の量から計算で得ることができます。

 ここでは簡単に、ヨウ素131のβ崩壊から出てくる電子線による健康被害も、ほかのガンマ(γ)線による健康被害も、どれもこれも合わせてこれぐらい、平均値として体に悪そうな影響がある、という目安として、お医者さんの現場で便利なようにシーベルトという量が提案され、工夫されてきたと思って下さい。

 例えばいま、原子炉の中で作業をするとします。炉内では「γ線だけ」とか「β線は抜きで」とか、人間の勝手が通用しません。様々な核種の様々な放射線が一挙に人間に降り注いできます。

 そしてその全体が、私たちの健康に影響を及ぼします。そもそも放射線医学が、広島・長崎の原爆被災地での医療活動から発達してきた経緯を思い出してください。

 こういう全体を考えるうえでは「ヨウ素131が1個崩壊した」というようなベクレル単位よりも、もっと現実に役立つシーベルトがあった方が、医療の対策などが取りやすかったわけです。

シンチレーション検出器と光電子増倍管

 そこで、各地の「放射線量」がどのように測られているか、一例としてシンチレーション検出器と光電子増倍管という測定装置の仕組みをご紹介したいと思います。

 先ほどお話ししたガイガー=ミュラー計数管は、高電圧をかけた測定管に電気を帯びた粒子が飛び込んでくると、カチ、カチと数を数えることができる装置でした。

 しかし、アルファ(α)線(ヘリウム原子核)やβ線(電子)は比較的近距離にしか到達せず、遠くまで届くのはガンマ線(光線)です。

 このγ線は正体が光ですから、電気など帯びていません。ではどうしたら、このガンマ線を測ることができるか? という時、力を発揮するのがシンチレーション検出器なのです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=5

 シンチレーションというのは「ヒラメキ」という意味で、アンリ・ベクレルが放射能を発見したきっかけの「ウラン塩」のような蛍光物質にγ線が当たると、ガンマ線よりよほど取り扱いしやすい蛍光が放射されるという現象を利用したものです。

 適切な蛍光物質を使ってシンチレーション検出器を作ったとしましょう。そこにβ線(電子)やγ線(光線)が飛び込んでくると、シンチレーション検出器はそのエネルギーを取り込んで、蛍光を発します。

 この蛍光を集めて光電子増倍管という別の装置に送り込むことで、それまでは光線だった放射能の影響を電気的なシグナルに変えられます。

 この量を測ってコンピューターで処理することで、どれくらいの放射線がシンチレーターにやって来たかを見積もることができるのです。

 ちなみにこの「光電子増倍管」の中には「光電効果素子」と呼ばれる、光が入ってくると電子が飛び出す仕かけが組み込まれています。この光電効果の理論によってアルベルト・アインシュタインは1921年のノーベル物理学賞を授与されますが、この知らせは日本に向かう船旅の途上に受け取ったのだそうです。

 日本各地には様々な「線量計」が設置されており、その一つひとつがどういうものかは分かりませんが、放射線を計測する根本的な原理は、飛び込んできた電子や光線を測定可能な何らかのシグナルに変えるというもので、それ以外にはありません。

 アンリ・ベクレルやアーネスト・ラザフォード、もっと言えば大もとのヴィルヘルム・レントゲンなど原子物理草創期の人々は写真のフィルム(乾板)が感光するというシグナルで放射能の存在を知りました。

 ガイガー=ミュラー管を作ったハンス・ガイガーはラザフォードの元学生、ガイガーよりさらに1世代下の物理学者でガイガーの学生だったヴァルター・ミュラーは、もっと正確に放射能の量を計測する装置を工夫しました。

 そして1個1個の崩壊をシグナルとして検出する装置を作ったわけです。このおかげで1秒当たり何個の崩壊という「ベクレル」という単位が意味を持つようになります。

 第2次世界大戦が始まると、各国で核兵器の研究開発が始まります。原爆や水爆を正確に設計するには、放射能の量を正確に測らなければなりません。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=6

 人類で初めて原子核分裂を発見したのはドイツの物理学者オットー・ハーンと、ユダヤ系のためスウェーデンに亡命していた物理学者リーゼ・マイトナーの業績でした。

 これは1938年、まさに戦争の最中であったため、米国に亡命した科学者たちは科学技術に優れるナチス・ドイツが原爆を先に完成させる、と思い込んで米国政府を動かしました。

 同じ1938年のノーベル物理学賞を受賞したイタリアの物理学者エンリコ・フェルミは、ノーベル賞の授賞式に参加した足でファシスト党のイタリアから米国に亡命します。

 1942年にシカゴ大学のアメリカンフットボール場に作った実験原子炉「シカゴ・パイル1号」で原子核分裂の連鎖反応制御に初めて成功します。通常の原子炉技術の基礎は、この時に確立されました。

 フェルミはこの「シカゴ・パイル1号」で兵器にも使えるプルトニウムを生産し、原子爆弾製造の「マンハッタン計画」を中心となって指導、製造されたウラン型原子爆弾は広島に、プルトニウム型原子爆弾は長崎にそれぞれ投下されました。

 ちなみにフェルミは原爆投下後の威力と放射能の健康被害にショックを受け、水素爆弾の開発には倫理的な立場から反対しています。

安価な放射線量見積もり法としての「ベクレル」単位

 さて、今まで見たように、実はベクレルという単位は安価な比例計数管などで数えることができる「核分裂の回数」であって、そのままでは放射能の量など、実は原理的に測ることができません。

 そうであるのに、なぜ原子力安全委員会ともあろうものが、そのようなデータを出すかと言うと、実は大規模災害について、過去のデータと参照する上では、ベクレル単位の曖昧な測定でしか比較ができない、という現実を指摘しておかねばならないと思います。

 ここについては、かなり多くの方、しかも一定の範囲で職業的にこの問題に関係している人が、確信犯で誤っています。

 ツイッター上で数人、懇切に定義から説明して理解させるようにしましたが、もうこれ以上は勘弁していただきたいので、ここに記して終わりにしたいと思います。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=7

 重要なことは「光電子倍増管」などの測定器は高価で進んだ技術だ、ということで、そんなにあちこちには置けないのです。

 日本ではJCO事故以降、東海村にたくさんの高度な線量計が備え付けられましたが、例えば旧ソ連などでは、そんな高度な放射能計測をする機材も予算もなかったと思います。

 手元にあるD・ボタンスキーの標準的な核エネルギーのテキスト(第2版、2004年、シュプリンガー;英文)などを見ても、過去の大型原子炉事故の被害状況は、ベクレル単位で放射性物質量を代表させる形を取っているように見えます。が、これは痛し痒しのところがあるものです。

 誰でもどこでも、そんなに高価な線量計で、核種まで特定して、きちんと放射線量が測れるわけではありません。仕方なく安価なカウンターで原子核崩壊の回数を数えて(ベクレル単位)その度数をもって放射性物質の量を見積もる参考値にしよう、としているのが、その実のところと思います。

 と言うのも、実際に飛び散った放射性物質とか、あるいは使用済み核燃料などを取り扱う際には、それによる残留放射線量の強さや、どれくらいの期間残るのか、あるいは発熱がいつまで続くのか、といった対策を取ることが重要なのであって、その目安にベクレル単位が生きればよいということになるからです。

 世の中の実測値は、安価な計数管でのベクレル値が大半です。例えば各地でホウレンソウや水の線量を一律に測ろうとする時には、安価な計数管を活用することになります。

 逆に、原子力安全委員会が行うのはシミュレーションですから、ヨウ素131とかセシウム137とか、物質ごとに量を見積もることができます。

 いま出ている数字は3月15〜16日頃にかけて、どばっと排出された放射性物質が大半を占めています。

 ここでヨウ素131が1.5×1017ベクレルある、ということが何を意味するか、もっと言えばどれくらいで消えるかを最後にお話ししましょう。

 半減期だけ時間が経つと放射性物質は2分の1になります。半減期の10倍経つと1024分の1、つまり約1000分の1になりますので3桁、量が下がります。ヨウ素131の半減期は約8日、その10倍は80日になります。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=8

 もし、これ以降新たに大規模な噴出がなければ1.5×1017ベクレルのヨウ素131は

約80日後に 〜1014ベクレル 放射能を発する程度の分量
約160日後に 〜1011ベクレル 放射能を発する程度の分量
約240日後に 〜108ベクレル 放射能を発する程度の分量
約320日後に 〜105ベクレル 放射能を発する程度の分量
約400日後に 〜102ベクレル 放射能を発する程度の分量
約480日後に 〜10ー1ベクレル 放射能を発する程度の分量

 までに崩壊して、無害なキセノン131に変化します。

 と言うことは、2011年3月15日頃に大量噴出したヨウ素131は、60半減期相当が経過した2012年の夏、7月半ば頃には、ほとんど存在しなくなる、と見積もることができるでしょう。

 一方、セシウム137は1.2×1016ベクレルあるとされますが、半減期が30年とヨウ素の1300倍以上長いので、同じ程度減少するには1800年もの時間がかかることが分かります。

 以上はあくまで今後大規模な噴出がなかった場合、としての大まかな計算ですが、こうした確認の仕方で、随時、発表されるデータを検証していくことが大切な姿勢だと思います。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5865?page=9

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