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東日本大震災記録コミュの334.大震災と金融問題・根こそぎ破壊された地域経済 これから増える不良債権・復興資金への対応を どのような原則でやるべきか ――西村吉正・前早稲田大学教授(元大蔵省銀行局長)に聞く

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東日本大震災は東北沿岸地域の市町村から、住宅も工場も生産設備も漁船も根こそぎ奪い去った。だが、そうした資産は消えてしまったのに、無慈悲にも負債という名の借金は厳然として残っている。こうした事態はこれからどのような問題・課題を生むのか。

思い起こせば1995年1月の阪神・淡路大震災では、8月に地元の兵庫銀行が経営破たんした。それは戦後初めての銀行の破たんであった。こうした金融機関の破たん処理にあたったのが、当時、大蔵省銀行局長であった西村吉正元早稲田大学教授である。西村氏は今回の大震災における債務者と金融機関の状況は、阪神・淡路のときよりも一段と厳しい状況にあり、それを踏まえた準備が必要だと指摘する。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

経済の地力・回復力に
阪神・淡路とは大きな差がある

――東日本大震災では、何十万という住宅や生産設備が大きな被害を受けました。住宅や設備が崩壊する一方、住宅ローンや借入金を抱えた被災者もたくさんいます。これからどういう問題が起こっていくのか。阪神・淡路の経験から言えることはありますか。

 同じ大震災ということで、阪神・淡路の経験をと、だれもが思うのでしょうが、おそらく今回と根本的に違うのは――阪神・淡路も6000人以上もの人が亡くなる大災害ではあったが――神戸という経済的な蓄積が大きい場所で起こり、周囲には大阪などの被害の少ない大経済圏が存在していたということです。

http://diamond.jp/articles/-/11840

 だから、大変大きなダメージだったが、一時的に経済活動の拠点を移したり、近隣に雇用機会を見つけることは不可能ではなかった。もちろん長田地区など貧しい人の多い地区では、大変な苦労をされた方々もいるが、全体としては再生力・回復力があった。

 これに比べると、今回とくに大きな被害を受けた場所は、岩手、宮城、福島の3県の海よりの地域で、経済的にはもともとそう強靭ではない。そういう地域が、単に建物が壊れるという以上の伝統的な生産基盤に致命的なダメージを受けた。震災がなくても過疎などの問題を、どう防ぐかで苦労していた場所だから、回復力についてはあまり多くを期待できない。そこに根本的な違いがあります。阪神・淡路より、何倍も困難な状況にある。

 金融問題もそういう前提で考えなくてはならないし、金融問題の性格も違う。そもそも不良債権とは何だといえば、実はそれは不良債務と呼んだほうがわかりやすい。現段階での日本社会の経済倫理水準から言えば、要するにいろいろな事情から返したくても返せなくなった債務ということです。

 阪神・淡路の場合は、すでにバブルの崩壊でダメージを受けていた金融機関があり、震災によって不良債権がさらに増えた。あのときの金融問題は何だったのかというと、兵庫銀行など、もともと病んでいた金融機関の不良債権が震災で返済能力がさらに低下して上積みされ、そういう金融機関の処理を急がされるという問題でした。

 しかし、今度の場合はもともと金融機関が経営に失敗し、処理不可能なレベルの不良債権を抱えていたというわけでなかった。大震災や原発事故により経済そのものが存立基盤を失ってしまって、しかも、そこから回復することに、相当な苦労を要する地域になってしまったということです。

 だから、問題は一部の金融機関の不良債権処理ということではなく、根っ子である地域経済そのものの建て直しから始めなければならない。その点で、阪神・淡路のときの金融問題よりもはるかに深刻です。いや、もはや金融問題という捉え方を超えています。

http://diamond.jp/articles/-/11840?page=2

地元経済と民間金融機関の立て直し
2段階の大きなテーマが出てくる

――そうした厳しい状況を考えたときに、民間金融機関や公的金融は、どのような役割を果たせばよいのでしょうか。

 すでに述べたように、阪神・淡路のときは、一部の民間金融機関の崩壊による連鎖反応をいかに防ぐか、あるいはいかに迅速に処理するかという問題でした。今回はまず崩壊した地域経済を、非常に困難な条件の下で、どうやって立て直すのかという問題です。

 これは民間経済ベースだけで対応できるかというと、そういう話ではない。今回の場合は、中小企業1社1社、個人ひとりひとりに対して、どうこういうレベルではなく、社会全体としてどう支援し、立て直していくかということなので、金融というよりもむしろ財政の領域になります。

 しかし、すべて財政で対応するというわけにはいかないので、民間活力を柔軟に活用するには金融という手法でも、サポートする必要があります。この場合には、民間金融機関の建て直しも大事なことだが、公的金融の活用ということも、並行して考えなければならない状況だと思います。

――地域経済および民間金融機関の立て直しに際して、まずはどのような課題が考えられるのでしょうか。

 具体的には二つの側面がある。一つは全く健全な経営をしていた地域金融機関――地元の信用金庫や信用組合などが、店舗ごと津波に流されてしまったということです。そればかりでなく、お金を借りている人も、家や設備を流されてしまった。これをどう立て直すか。返したくても返せない状況から、脱却する方策を見つけてもらうことからはじめなければならない。バブル崩壊による不良債権の処理とは事情が異なるのです。

 この問題に対処するには、どうしても公的金融が手伝う必要があります。被災者の返済能力は落ちているので、なかなか民間ベースの取引にはのらない。

http://diamond.jp/articles/-/11840?page=3

 そうした財政的な要素が濃い分野を公的金融でどう対応していくのか。昔であれば住宅金融公庫とか北海道東北開発公庫が、その役割を担うことができたかもしれませんが、今は機能が変わったり、整理統合されてしまったので、どうやってその機能を果たしていくか工夫が必要でしょうね。

被災者の債務を免除したら
その負担はだれが負うのか

――地場経済が崩壊したということは、個別に見れば、資産がなくなってしまったのに借金だけが残っている状況が存在しているということですね。これにはどう対応したらよいのでしょうか。

 すでに存在していた債権・債務関係の根拠が、津波で流されてなくなってしまった。債務を返せなくなったという意味では、確かに不良債権です。ただ、普通は不良債権と言えば、貸した側、借りた側双方に責任があるが、今回の場合は天災によるものだから、何らかの社会的な手当てが必要になっている。具体的に言えば、金融機関への支援と債務者への負担軽減措置ということになるわけです。

 しかしそれらの措置により生じる損失は、結局だれかが負担しなくてはいけない。そこで問題はその負担をだれが負うかです。

 通常の金融の論理からすれば、負担するのはおカネを貸した民間金融機関ということになるが、その地元の金融機関もダメージを受けているし、融資の姿勢が悪くてそうなったわけではないから、ある程度公的サポートをしてあげないといけないということになるでしょう。

 公的サポートとは突き詰めれば税金だから、被災した人や企業の債務をどれくらい税金で穴埋めしてあげるのかという問題になります。今回はバブルの後始末に公的資金を使ったこととは性格が違う。あの時は「金融システムの安定のために」といわれても、納税者は釈然としなかった。責任の追及が前提という気持ちが強かったのも無理はありません。

 その点はいまは多くの人が被災者に同情的な局面なので、税金で穴埋めすることに抵抗感はありません。しかし次第に時間がたって冷静になってきたときに、それがものすごい巨額になるということがわかってくると、「無条件で全部穴埋めしますよ」ということには、なかなかならないでしょう。自助努力とかいろいろな議論が出てきます。

http://diamond.jp/articles/-/11840?page=4

 こうした事態に比較しうるのは、阪神・淡路ではなく戦後のケースかもしれません。戦後、政府の戦時債務について、GHQ(占領軍司令部)は補償する必要はないという立場をとった。戦時債務というのは、軍需産業を中心とする政府の民間に対する債務です。経済全体に対する大きな損害という意味では、敗戦に伴う戦時債務の補償打ち切りに似たところもある。

 預金者には預金の払い戻しができるように、一部税金はつぎ込んだものの、あの時には戦時債務の補償打ち切りによって発生する損失、戦争による被害は民間金融機関がかぶりなさい、ということになった。戦争を始めた責任の問題とか、確かに天災とは問題の性格が違いますね。

 だからもちろん今回は、そういうことにはならないと思うけれども、一つにはこのように、過去の債務で払えなくなったものをどうするかという問題を、社会的にどう処理するのか、きちんと考えておかなければなりません。

「情」と「知」のジレンマに
どう対処するか

――事業を再開する場合には、既存の債務に加えて新規の借り入れが必要になります。事業のための施設や設備がダメージを受けていたりする場合、新規の貸し出しを行うかどうかも、非常に難しい問題になりますね。

 それは将来に向けて事業を立て直すための金融の円滑化を、どう図るかということですが、これも判断は大変に難しい。過去の債務も返済する能力がないのに、新たに借金を上積みしても、なお支払い能力があるという判断は、金融機関としてはできない。

 その場合はどうするか。一つには社会政策的視点から、例えば住宅ローンについては必要な金額の半分は政府が面倒を見ましょうと。これは補助金ということになり、金融というよりも財政の領域で、このように金融債務の負担を軽減するために、財政措置を講じるというやり方が一つあります。

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 もう一つは中小企業で返済能力が十分でない場合に、政府が債務保証をするということがあり得る。しかし、結局は、債務保証をした債務の大部分は返ってこないかもしれないから、国民の負担としては後払いの補助金と同じことになります。

 実は、最初から貸したおカネが戻ってこずに、国が肩代わりしなくてはいけないと思われるようなものに債務保証をするのは、事業や産業を立て直すという点では、あまり意味がない。その点で、どう対応するかについては、「情」と「知」のジレンマに陥ることになります。

――これまでお話しいただいたような、今後出てくると予想される問題は、大変に判断が難しい。だれが責任を持って対応を考えていけばよいのでしょうか。

 それは政府がやるしかない。政府が今回の事態を総合的に判断して、当事者の負担をこのくらい軽減する、そして軽減した分は国民全員で、こうして負担するという提案を、パッケージで行うしかありません。

 今は財政再建と税制改革との関係で、みなが神経質になっているときですからね。おりしも社会保障と税負担の関係を、長期にわたって明確にするという作業をやろうとしていたわけだから、これに大震災による負担が加わったと考えることができるでしょう。

 だから政府は、だれが、どのような形で、どのくらいの期間で負担するのかを明確に示さないと、物事は先には進みません。その点では、政治が大連立を組むかどうかは別として、与野党は「ここまで合意したのでこうしたい」と、国民に問いかけていかなければいけないのではないでしょうか。

 社会保障というと抽象的な話のように感じますが、震災が起こったことによって、現実に、多くの人たちの生活が破壊され、その再建がかかっている。その問題も含めて、震災からの復旧・復興を考えるということは、この国のかたちを考えていくことにもなる。大震災は大変に不幸な出来事であったけれども、そうなれば日本の将来に関するコンセンサスを得るチャンスになるかもしれません。

2011年4月12日 ダイヤモンド社
http://diamond.jp/articles/-/11840?page=6

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