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国際派日本人養成講座コミュのJOG-Mag No.754 橋下徹 〜 閉塞政治の突破力

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■■ Japan On the Globe(754) ■■ 国際派日本人養成講座 ■■

Common Sence: 橋下徹 〜 閉塞政治の突破力

 その姿勢は、現代のわが国の民主主義が陥っている欠陥を正す力を持っている。

■転送歓迎■ H24.06.24 ■ 40,637 Copies ■ 3,553,396Views■
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■1.「あなたには信長になってもらいたい」

「あなたには信長になってもらいたい。信長のように、思い切った独創的な改革をやってほしい。大阪は、これからまさに『改革の決戦場』になるんだよ」

 赤ワインのグラスを手にした堺屋太一はこう橋下徹に語った。平成19年11月29日、大阪市内のイタリアン・レストランでのことだ。翌年1月27日に控えた大阪府知事選に、橋下氏を立候補させようと、自民党大阪府連の幹部たちと引き合わせたのだった。

 幹部たちは、テレビでの橋下の過激な言動を見ていたので、とうてい知事選の候補者に適任だとは思えず、会うのは時間の無駄だと考えていた。しかし、橋下は深々と頭を下げ、恭(うやうや)しく名刺交換をして、言葉遣いも丁寧だ。「ほんまに、テレビで見る橋下と同じ人物か」と思ったほどだった。

 一方の堺屋は本気だった。大阪生まれの堺屋は自ら仕掛けた万博が成功した後、長期低落傾向に入ってしまった事を心配していた。大阪は、まさに衰退しかけている日本全体の苦しみを先取りしているように思われた。そして、大阪を建て直すことが、日本全体を改めるモデルケースになると考えた。

「あなたがなれば、日本一若い知事が誕生する。大阪も元気になる」と畳みかける堺屋に、橋下は「僕みたいな若造には無理じゃないですか」とはぐらかしつつも、大阪府の財政状況を尋ねたりして、密かにやる気を窺わせた。

 この後、府知事となり、さらに大阪市長に転身して、いまや国政への進出がもっぱら噂されている。橋下の主張そのものにはさまざまな評価があるが、その「信長」ぶりについては、異論はないだろう。

 本編では、橋下の主張内容ではなく、府知事として財政再建に取り組んだ姿勢を辿ってみたい。そこから現在の閉塞感漂うわが国の政治行政の世界に、「思い切った独創的な改革」を起こしうる突破力が見えてくるからである。


■2.「皆様方は、破産会社の従業員」

 平成20(2008)年2月6日、午前9時半、大阪府庁正面玄関に横付けされた公用車から降り立った橋下は、出迎えの職員約500人の拍手で迎えられた。新聞、テレビなど、約30社100人以上も待ち構えていた。全国最年少の知事は、初登庁で少し震えていた。

 午前10時45分過ぎ、約450人の職員を前に、最初の職員訓示を行った。当初の予定では課長級以上が対象だったが、「第一線の若い職人に直接話したい」との意向で、20〜30代の若手職員も出席していた。しかし、橋下の口から出てきたのは、耳を疑うようなセリフだった。

__________
 皆様方は、破産会社の従業員であるという点だけは認識して下さい。民間会社で破産、倒産という状態なら、職員の半数や3分の2カットなんて当たり前です。お給料が半分に減るなんていうことも当たり前です。・・・

 財政危機状態を立て直すためには、今までの行政と同じようなやり方を継続していては、何も変わらないと僕は思っています。今日から、変えるべき点は変えていきますので、その覚悟だけはお持ち下さい。[1,p93]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 前知事の太田房江は、役人が用意した原稿を地味に朗読するだけだった。その前の横山ノックは、府の幹部から役人の言いなりになるだけの「使い勝手が良い知事」を評されていた。この時点では、どうせ橋下も似たような軌跡をたどるだろうと、たかをくくる職員も少なくなかった。


■3.「大うつけ」

 知事就任後、最初の記者会見で橋下は府財政の「非常事態宣言」を発令した。「財政再建が第一。大阪府が転覆してしまっては元も子もない」。

 すでに成立していた平成20(2008)年度予算を4〜7月の4ヶ月に限定した暫定予算とし、すべての出費を6月までに再度見直して、8月からの本予算を組むと明言した。

 当初の予算は、府として5兆円の借金にあえいでいたのに、20年度も1700億円の府債を発行し、さらに負債返済のための減債基金からは720億円を取り崩す算段だった。つまり新たに1700億円の借金を増やし、そのうえ返済のための積立金の中から720億円を使ってしまうという案だ。

 それに対し、橋下は「収入の範囲内で予算を組む」というスローガンを打ち出し、新たな府債の発行を認めず、減債基金の取り崩しも行わない」と断言した。

「府債を発行せずに予算を組むのは不可能だ」と異論を唱える幹部もいたが、橋下は「僕は183万の府民に選んでもらった。文句を言うなら、あなたが立候補して当選したらいい!」と言い放った。

 さらにテレビカメラに向かって、大胆な予算削減案を次々にぶちあげた。「人気が低迷するイベントに予算を出す余裕はない。御堂筋パレードは打ち切る」「民間の感覚から考えると、事業の効果が見えない。上海万博への出展は白紙だ」等々。

 府幹部らは「一体、この先どうなるんやろ」と不安を口にした。府庁内では「橋下ショック」という言葉が生まれ、「コストカッター」「壊し屋」「大うつけ」と評するようになった。

 そういえば、信長も若かりし頃は「大うつけ」と呼ばれていた。「思い切った独創的な改革」をしようとする人は、当然、それまでの「常識」に囚われた人々からは、「常識」の分からない「大うつけ」と見なされるのが常である。


■4.財団職員は「むしろ邪魔」

 橋下の最初の標的は府立施設だった。312億円かけて建設した門真スポーツセンター、171億円かけた大型児童ビッグバン、若者のコンサートや演劇などの文化活動の場である青少年会館などを、橋下はまだ就任後1ヶ月も経っていないうちに、自ら視察して見て回った。

 訪問した施設の一つ、青少年会館は平成18(2006)年までは府が出資した財団で運営されていたが、それ以降は公募された民間業者に委託されていた。運営の民間委託は経費削減や利用者へのサービス向上を図るためによく使われる手段だ。

 しかし、意見交換の場で、委託後も「引き継ぎ要員」の名目で、財団職員が委託先の民間企業に派遣されていることが分かった。18年度は5人、19年度以降も2人が派遣され、1人あたり約1千万円が府から支払われていた。一方、運営する民間企業の人件費は1人あたり約300万円。

 これだけの給与差の理由として、業務の内容の違いがあるのか、と橋下知事が問い詰めると、委託されている民間業者が議論のとどめを刺した。「財団職員には、府の委託事業とスタジオの鍵開けをお願いしていますが、端的に申し上げれば、むしろ邪魔。」

 担当課長は「今後のあり方を検討していきたいと思います」と取り繕おうとしたが、橋下は、有無を言わせぬ口調で「検討というか、(職員派遣は)なしにしましょう」と引導を渡した。

 テレビは、連日のように「むしろ邪魔」という発言の映像を流し、視聴者の怒りを増幅させていった。テレビの前で役人をやっつけて、民衆の喝采を浴びる、という手法は、ある種の危うさを感じさせ、これが橋下批判を呼ぶ一因ともなっている。

 しかし、このシーンは単なる人気取り以上のメッセージを含んでいる。公共施設の運営を民間企業に委託することは、コスト低減とサービス向上のための効果的な手法であるが、委託された民間企業に府職員を派遣することは、その抜け穴を作る事である。

 これでは府の人員削減も進まず、また同じ職場で民間企業と府職員で3倍以上もの賃金差をつけるという社会的な不公正を生む。橋下知事のこのテレビシーンによって、大阪府のみならず全国の自治体で、同様のまやかしをしている部門は肝を冷やしただろうし、その結果、ごまかしが改められたり、予防されたりするケースもあったろう。


■5.「我慢の限度を超えている」

 人件費の削減については、橋下知事は就任直後から執念を燃やしていた。「府民サービスを削って、人件費を丸々残すということは府民の理解を得られない」からだ。

 プロジェクトチームが、8月からの8ヶ月間で総額352億円の人件費削減という案を作成した。都道府県で初めて退職金の5%カットに踏み切り、基本給は知事、副知事レベルの18〜30%を筆頭に、行政職、教職員、警察官の計9万1千人を対象に、4〜16%削減するとした。実施中のボーナスカットを含めると、基本給は都道府県で最低水準となる見通しだった。

 橋下知事は5月に入ってから、府労働組合連合会の新居晴幸委員長と直接面談した。新居委員長としてはこれまでも賃金削減に協力してきており、橋下知事の案は「我慢の限度を超えている」と考えていた。

 先に仕掛けたのは、橋下知事だった。

「財政が立ちゆかなくなったら、民間企業なら従業員はクビだ。にもかかわらず、親方日の丸で保証されてきた。・・・」

「民間と公共団体を同じにしてはいけない。警察や学校は黒字、利益を目的にやっているのではない。府民の生活を守るため、教育を良くするためにやっている。赤字であって当たり前だ。」


■6.「それは役所の論理だ!」

 この発言に知事は沸騰した。「それは府民を冒涜(ぼうとく)している! 府民の税金を無理やり取るのが公なんです」

「無理やりじゃない! 道路を造り、治安を守るためにお金をいただいているのは当然の行為だ」

「それは役所の論理だ! 府民が税に見合ったサービスを感じていないとすれば、その損失の責任は誰が取るのか」

 ここでも原理原則の攻防だった。民間サービスなら、品質や価格に不満があれば、消費者は買うのをやめたり、他の企業を使う自由がある。しかし、公立校や警察は、住民に不満があっても、税金という形で無理やり徴収してしまう。これが知事の言う「府民の税金を無理やり取るのが公なんです」という意味である。

 そして住民が満足しているかどうかの声を聞いて、サービス内容や税金の額を是正するのが、選挙で選ばれた知事や議会の仕事だ。税金を集め、それでサービスを提供する役所が勝手に決めて良いことではない。これを知事は「役所の論理」として批判したのである。

 6月20日夜10時からの府と労組との最終団体交渉では、橋下知事も自ら出席して、朝5時までの議論の応酬が続いた。結局、折り合いはつかず、府労連58年間の歴史で初めての交渉決裂となった。新居はそう宣言しながらも、「7時間、誠実に対応されたことを感謝したい」と述べた。


■7.自らの原理原則も正すべき所は正していく

 しかし、橋下は自らの考えに固執するだけの原理原則居士ではない。4月26日に知的障害者施設を視察した際、利用者の生活ぶりに触れて、「実際に見るのと、話を聞いたのとでは全く違う」と言葉を詰まらせた。また、府警本部長の「ぎりぎりの状態で活動している」という声を聞いて、「治安向上には警察官の数は重要」と削減見送りの断を下した。

 結局、橋下知事は傷害者、治安、緊急医療などの3分野は「どれほど財政状況が悪化しても、堅持しなければならない」と見直しを指示した。このように現場を視察したり、人の意見を聞いて、自らの政策も正すべき所は正していく、という姿勢を示している。

 こうした修正を加えた8月以降の予算案を橋下知事は議会にかけ、18時間に及ぶマラソン審議の後、7月23日、削減目標1100億円のうち、わずか18億円の微修正で、与党自民、公明のみならず野党の民主党からも賛成を得て、予算を可決した。これが橋下の知事としての第一歩だったが、庁内では「知事の一人勝ち」とささやかれた。


■8.閉塞政治の突破力

 この後も、橋下は、精力的に教育改革、国直轄事業への負担金反対、大阪都構想などに取り組んでいく。個々の政策には多様な異論もあるが、それは自由な言論を許す社会では当然のことである。

 しかし、政治とはその多様な意見の中で、一つの決断を下し、その方向に国民・住民や行政機構を引っ張っていくことに他ならない。橋下のスタイルは、ここで見てきたように、原理原則を掲げ、マスコミを通じてアピールしつつ、さらに現場を見たり、人の意見を聞きながら、その政策を成長させていく、というもので、まさに民主主義社会の中でのリーダーシップを果たしている。

 橋下氏を「独裁的」と批判する向きもあるが、ヒトラーやスターリン、毛沢東など反対論者を文字通り「圧殺」した真の独裁者とは、本質的に異なることは容易に見て取れよう。

 かつて美濃部東京都知事は「一人でも反対者がいたら、橋をかけない」などと言ったが、これでは政治は何もできない。自民党も長期政権の果てに、同様の姿勢に堕落していった。こうした民主主義に関する誤った姿勢の積み重ねが、現代日本の政治的閉塞状況をもたらしている。

 橋下氏の突破力は、わが国の戦後民主主義が陥っていた過ちを正し、政治の閉塞状況を打破する可能性を持っている。橋下氏への高い世論の支持率と、国政参加への期待感は、一般大衆が敏感にこのことを感じとっているが故であろう。

(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(337) 岸信介 〜 千万人といえども吾往かん
 日本を真の独立国とするための構想に邁進した信念の政治家。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h16/jog337.html

b. JOG(653) バラマキ政治は国家衰亡への道
 バラマキ政治で衰退・破滅した国々から学ぶべき事。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h22/jog653.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 読売新聞大阪本社社会部『徹底検証「橋下主義(ハシモトイズム)」─自治体革命への道』、梧桐書院、H21、★★
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4340401277/japanontheg01-22/


■編集長・伊勢雅臣より

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