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名言事変コミュの「我々が死んだら電源を入れて 君の再生装置で蘇らせてくれ さらばだ! 椎名林檎」

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こんにちワンダーフォーゲル!

最近ね、かつての幼なじみの親友がね、宗教団体の教祖になってるのをネット上で偶然ハケ〜ンしちゃったのよ。

で、、読んでみたらさ………これがぁ……

…ポジティブがどうとかでポジポジネガネガ言っちゃったりしててね、、それはそれはいやらしくてさぁ、、

…も〜、ほんッとやんなっちゃうハート

その宗教がね、これがさぁ、思いの外、信者を集めてるらしいのよ。どうすんのよ? 福管理人ちゃん! しっかりしてよねハート

私達も負けてらんないわよ!


林檎ちゃん事変が解散よ。解ってるわよね?福管理人ちゃん!

おダンスよ、おダンス!


イッツショウタイムよーーーハートハート

コメント(32)

はい、コンニチわんこそば!!

宗教か……そいつぁ恐ェな……

ポジティブなんてものぁ

今の俺には関係ねぇな。

引っ掛かるヤツもいりゃあ

勿論引っ掛からねぇヤツもいるぅ

そんなものは世の常だろ?

ジタバタすんじゃねぇよ。


まぁ間違いないことは、

管理人よ……あんたの声は、

俺の再生装置で、

確実に不二子ちゃんの声、

つまり

増山江威子の声で

脳内再生された……

ってことぐらいか。
そうなの? 不二子ちゃんなの? もう〜やだ〜ハート

福管理人ちゃんたら。


しかし、ポジティブ教ってどんなかしら?解らないモノとやかく言うつもりはないからしっかりお勉強しなくちゃね。

『福管理人ちゃん!』

『ピクッ』(←福管理人の尻)

「久々に現場に行っちゃう?? ん?? 逝っちゃう? 行っちゃうんだ〜?」


じゃあ現場からルポ宜しくね〜手(パー)

後からあたいも向かうからね〜

イ……イ……イクーー!!



………というわけで、久し振りに、現場です。

管理人、これまで私は現場主義を貫いてきました。売らずの福ちゃんを貫いてきたように。

しかしこれはどうしたことでしょう。

現場から離れていたという事実は、

こんなにも顕著に表れるものでしょうか。

今回の現場、少しばかり勝手が違うようです。

まず、現地語が全く理解出来ません。

『ネガネガポジポジネガポジポジ』

ワタクシ、カロヤンアポジカしか存じ上げておりません。

まるで、宇宙虫が耳から入り、脳における発声中枢を乗っ取られてしまったかのように、皆、

『ネガネガポジポジネガポジポジ』

言うてます。


管理人、あんたは来ちゃダメだ。

ここは、なんかヤバポジ。

大丈ぽ、私はポジかあったらいつでもネガれます。

以上、福ポジが、ポジポジネガポジポジネガネガ………

ポジポ人………
『これはい、一体、ど、どういう事かしら…』

現場に着いた私を待ち受けていたのは完全に暴徒化した幾千のポジティブ集団の前向きな行進でした。

そしてその先頭、まさかの魔さかでした。

『ちょっとやだ…アレって………
…なんなのよ?』

福管理人ちゃんが整列した集団を率いて、いつかのいや、それ以上の恍惚の表情を浮かべ、先頭を前進しております。

そしてその前向きな塊は道行くヒトヒトを順番に呑み込み、肥大化を続けながらゆっくりとした速度で前進し続けております。

『福管理人ちゃん…ハート


「1・2・1・2…」

幾百の楽隊の掛け声が奏でるハーモニーは未来への飽くなき探究心か絶望へのカウントダウンか。

『百鬼夜行よ!あれは百鬼夜行よーーッ!!!』



気がつけば私は叫んでいました。


『かっこ、、…いいハート
 …でもダメだよ…。。
 
 そっちは、、ダメーー ーッ!!!』




私は夢を見ていました。

『へっへっへっ、そっちはダメだぁ?

そんなこと言いながら

こんなにしやがって……

ホントは誘ってんじゃねぇのか?

ホレ!ここか?CoCoがえぇのんかぁ?』


えへへ えへ えへ……


……………………………

……………………

……………

……ハッ!

私は何を……

あれは……管理人!?

バカな……あれほど来ちゃダメだと……

え…?…うしろうしろ?

私のうしろに何が………


って えぇぇぇぇぇええーーー!!!!!!!

なにこのポジティブ軍団www

オィッチニ、オィッチニ、てwww

サンシッ、サンシッ、てずっと言うてるやつおるwww

桂かwww

森脇健児かwww

しかも俺先頭www

まるで俺隊長www

俺が右曲がれば皆右曲がるwww

コイツら前向きなフリして

実は誰かに操られてるだけwww

踊らされてるだけwww


同じ踊るなら、自分から踊ってやりましょうや!

ねぇ、管理人?

って管理人!!!!!!


うしろ!!!!うしろーーーーー!!!!!!
『ほんッッとお調子者なんだから。やんなっちゃう。』

ようやく少し我に返った様子の福管理人ちゃんを尻目に核心部分に分け入って行こうとした私に、福氏は未だ後方に隊員を引き連れたままで、何やらジェスチャーを送り始めております。よく見ると、指で私を突っついているよう。

私はゆっくりと進みながら突っつき返してやりました。なんだったら両の親指と人差し指でハートマークを作って返してやりました。

私が近付いてもIKKOOに突っつきジェスチャーを止めない彼にイライラを覚え始めたその刹那、私は不意に恐ろしい考えに行き当たり、背筋に寒いモノを感じました。

『あれ?これ、違う。』

彼は、、突っついてたのではなく指差して教えようとしていたのではないか?
丁度、私の向こう側の存在を。


私は、戸惑いながらゆっくりと自分の後方を振り返りました。



『ファット、ア、メニー、ポジティブ、ピープル!!』

(和訳)なんなのよ!この前向き集団は!ほんっとやんなっちゃう!


私の後ろにもまた楽隊がズラーーーリ!やはーーーり!!!

状況が飲み込めない。怒りだけが雪崩式にやって参りました。

前向き行進集団に結果的にとは言え唯一後ろ向きに対峙してしまった形の私。

何か後塵を踏んじゃった心持ちよ。私は今ここで問いたいのよ。


『ホントの前向きってどっちだわさーーーッ?』





確かに私達は前を向いていました。

二人の距離はグングン近付き、

あと数秒もすれば、

私と管理人の唇はドッキンコ。

それだけは避けなければならない。

折しもその時、管理人と私は、大宮通りを、

管理人は北から、私は南から、

百鬼を連れて歩いていたのでした。

そして、今まさにドッキンコしようとしている場所……

それは、かつて栄華を極め、盛者必衰の理に倣(なら)い、衰退していった、四条大宮の交差点だったのです。

管理人と私は、互いの目をしっかりと見詰め、

そして、ずっしりと頷き合いました。


管理人と私の唇の距離は、

残り数センチ。

ギリギリでお互い、管理人は左折し、私は右折し、二人で西に向かうはずでした。

しかしこの時、嫌な予感がして、管理人の目をよく見たところ……

はい、完全にハート型です。


『コイツ……やる気だ……』

そう思うのと、私の右手が出るのは、

ほぼ同時でした。

『アホーーーーー!!!!』

私の右の掌は、管理人の左の頬を的確に捉え、しかもそれはクリティカルヒットし、36回ヒットしました。

間一髪、間に合いました。

間に合わないのは、もうこりごりです。


そして自然と、張られた管理人は右を向き、張った私は左を向き、二人並んで西に向かうことになったのです。

管理人の後ろに百鬼、私の後ろに百鬼、二人の後ろには、
二百匹もの前向きな鬼が列をなし、また歩く先々で人々を飲み込みながら、前進していきます。

管理人と私は、このコミューンができてからの あウンタラカンタラを喋りながら、久し振りにゆっくりとした散歩を楽しみました。

『いーつのー ことーだかー おーもーいーだーしーてーごーらんー あんなーこーとー こんなーこーとー あーったーでショー』

私は、管理人の左の頬を張った右手が、やけに熱いのを気にしながら、ノスタルジックとサンチマンタリスムに浸っておりました。

そうしてしばらくして、あの交差点が見えてきたのです。

西大路四条、つまり、西院の交差点が………
南北に別れ向かい合う形でその距離を猛スピードで縮め続ける二組の暴走機関車。


私には考えがありました。

このまま操られた振りをしながら集団を率いてスピードを上げ先頭を走り続ける。

衝突するギリギリのタイミングで二人だけが集団から抜け出す。

司令塔を失った事すら気付かぬまま前向き集団は衝突。

後、衝撃で見事に後ろ向きに倒れる。

今度は二人で幸せに暮らす。

勿論、事前の打ち合わせはゼロです。

彼も同じ考えをしてるとは限らない。でもなんて言うか、、





『賭けてみたいの。。』






行進を続けながら念を送りました。強く。強く。こんなに真剣に何かを願ったのは子供の時以来かしら。

やがて遠くで福ちゃんが首を小さく縦に振った気がしました。

『え? 伝わってる…の?』

そしてもう一度。今度は確かに振りました。

通常、人と人っていうのはそんな簡単に分かり合えたりしません。「以心伝心」や「阿吽の呼吸」なんてのはごく一部の人達だけに与えられた極みでしょう。

私も相手が福管理人ちゃんでなければもっと早くに諦めていたでしょう。

私達には四年の歳月があります。
そして、何よりも数々の現場で共に戦ってきた絆があります。

これはナニモノにも変え難い。
「信頼に足る」ってヤツです。

今度はこちらからゆっくりと頷きました。


『ありがとう、、福ちゃん…』


後、数センチ。


私は確信を持ち最後の合図を送りました。


『今よ!福管理人ちゃん!!』


次の瞬間、鈍い音と共に顔面に強い衝撃が走り、私は天高くぶっ飛んでいました。

正確にはぶっ飛ばされていたのです。

福管理人から放たれたまさかの強烈なカウンターの右ストレートの残像を空中で肩越しに見ながら、私は空に舞い上がっておりました。

『…ほ…んッ…ともう、やんな…っちゃう…。』

随分と長い間、宙を舞っていた気がしました。

その後、裏切りと軽蔑のスクランブル交差点に見事に叩きつけられた私は、自らの意思に関係なく即座に立ち上がり、壊れかけの眼鏡を拾いあげ、何事もなかったかの様に西に向かい走り出しました。

勿論、前向きの縦長集団を後ろに引き連れたまま。

気がつけば行列はゆうに大宮から堀川くらいまで達しております。

混沌(カオス)と化した私情(シジョウ)通りを並走する二列の暴走楽隊に未来はあるのか?

二つの先頭に再び絆は、、戻るのか?

次回ーぃ!福管理ニィン、、



『僕も、貴女を、 前向きに考えているぅ!』





管理人と私は、もうすぐ西院の交差点に差し掛かろうとしていました。

しかし、先程から何か引っ掛かるのです。

いえ、直腸にではありません。

言うなれば、胸の奥底の方……しっかりと意識しなければ分からないくらいの引っ掛かりです。

思い出話の合間に見せる、管理人の寂しそうな表情(かお)……

本日二度目の

『あれ?これ、違う……』

何かやらかしたか、俺?

今日も賑やかな四条通りの騒音に重なり、先程の、四条大宮の交差点での事がフラッシュバックします。

魔の交差点、四条大宮……

管理人のあの時の瞳……

確かにハート型だった……

あのハートは、本当に、色と欲に駆られた瞳だったのか……?

管理人は、そんなに底の浅い人間だったか……?

いや、違う、断じて。

あの瞳は、信頼からの、


……………………………愛だったのだ。




私は、管理人の信頼を、右の、それこそ真っ直ぐなストレートで、粉々に砕いてしまったのだ。

私は、なんてことを……

これじゃあまるで、大宮事変だ。


もはや、許されることではないとわかっていながら、私は無意識のうちに土下座をしていました。いや、むしろ土下寝。

つまり、『下』向きです。

管理人は黙っています。

私は、『もう、煮るなり焼くなり、貴女の好きにしてください。』という心持ちで、仰向けに、大の字に寝そべりました。

つまり、『上』向きです。

管理人はまだ黙っています。

私はもう一度土下座をし(『下』)、

さらに仰向けに寝そべりました(『上』)。

管理人は、黙って私を見下ろすだけです。


『もう、無理なのか……?』

私が諦めかけたその時、不意に、西大路を北の方から下ってくる、ロードワーク中であろうボクサー風の男が、西院の交差点に差し掛かりました。

その男の出で立ちは、とても印象的でした。

羽織っているウィンドブレイカーは計算し尽くされた黒と赤の配色で、まるで太陽と黒点の体を表しているかのようでした。

その、フォルムがまたとても綺麗で、肩から背中、尻にフクラハギに至るまで、武骨さと繊細さ、愚直さと軽薄さすら兼ね備えたdesignでした。

その男は、交差点の真ん中で、

ピタッ

と立ち止まり、シャドウを始めましたが、放った打撃は4発だけでした。

左ジャブ(コントローラボタンで言うと『Y』)、

右ストレート(『B』)、

左ローキック(『X』)、

右ハイキック(『A』)。

その 流れるような動きをもっと見ていたかったのですが、その(キック)ボクサーは、4発だけ、空を叩いたあと、また南に向かって西院の交差点を抜けていきました。

私はその男の去っていく背中を見ました。

この世の全てを受け入れる潔さ、また、潔く受け入れた上で、自分の道を歩き通す諦めの悪さが滲み出ていました。


『諦めたら、アカン』

この時既に、奇跡は起きかけていたのです。

『下』→『上』→『下』→『上』
『Y』→『B』→『X』→『A』


私は『ここだ』と信じ、天を仰いだまま、あらんかぎりの声で叫びました。

『僕も!貴女を!前向きに!考えているぅ!!』

最後のコマンドは、

『前』。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

突然地面が揺れたかと思うと、西院の交差点が、綺麗に正方形に地割れし、二百匹の前向きな鬼共を置き去りにし、空に向かって隆起していきます。

管理人も私も、何が起きているのか理解出来ませんでしたが、何やら『面白いコト』が起こっているのでしょう。

ならば、楽しみましょう。

管理人が、久し振りに口を開きました。

『…………………ファンタジー。』

私は、

『…………………シンパシィ。』

と続けます。

管理人が、少し驚いたような顔をして、こちらを向き、問い掛けます。

『…………伝わってるって?』

私は勿論こう答えます。

『…………すっぱらしい。』

涙で歪む景色のせいか、管理人が、少し微笑んだように見えました。

いや、きっと……





管理人はすぐに私に背を向けてしまいましたが、いつものあの台詞を吐いてくれました。


『ほんッッッと、……やんなッちャうッ』



少し絆を取り戻した二人。

隆起し続ける西院。

私達はどうなってしまうのか?

そして、ポジティブ教の実態とは?

次回、乞う御期待。
『な、なんなのよ一体…』

突然浮つきだした足元に私は不安を覚えました。

止まらない隆起。訳のわからぬまま、地面に押し上げられる形で上昇を続ける私と福管理人。

西院が揺れている。

一段下の西院で舵と行き場を失った前向き集団が、救いを乞う瞳で突き上げる様に私達を見上げているのが見えます。

私と福管理人ちゃんはそれを蓮下に見下ろしながら揺れる足元に注意しつつ、向かい合い、お互いの肩に両の手を置き、正面から見ると神社の鳥居の様なフォルムでバランスをとりあっておりました。

「初めての合体」と誰かが呼べば私達は遮るモノ一つない台地の上で二人、伝説の赤面体となっていた事でしょう。

気が付けば 西院は独立した台地の様な出で立ちで周囲から高く隔離された天空の城。

その上に立つ一対の建造物はさしずめ人類最期の希望の浮見堂か。


彼の肩に手をおいたままで私は伏せていた顔をあげました。待っていたかの様に福ちゃんは恍惚の表情で私の顔を見つめ返しております。私は覚悟を決め口づけの 準備 の為に自らの瞼を ゆっくりとスローモーションで閉じて行きました。

視界が縦に少しずつ段幕が下りる様に狭まって行きます。

ほぼ、視界がゼロになる刹那、私は 近づく恍惚の顔面の右背後、更に遥か西の空の下に 大きく 浮かび上がるもう一つの隆起物を発見しました。

『ストップ!、ドント、ムーブ、コウコツキ!

ルーーック!!』


そう言いながら私は目の前の福の髪の毛を掴みあげ頭部をぐいっと後ろ側に思い切り向けてやりました。

ここより数百メートル先くらいに西院の台地と 同じ高さくらいの隆起した台地が浮かび上がっておりました。

そのもう一つの天空の城の上に広がる空には明らかな暗雲が立ち込めており、それは、言わずもがな、最終決戦の様相を呈しておりました。

『ハーリ、アップ、ユー!
ウィズ、ミー!、レッツファイナルダンス!!』


そう言うや否や、私は彼を引っ張り空を飛びながら 決戦の地へと旅立ちました。

拗ねた様な顔で後ろを行く福管理人ちゃんを振り返らずに、私は誰にも聞こえないくらい小さな声で言いました。


『帰ってきたら、続きをしましょうね。。』

と。


次回ィ!、 福管理ニィン!

『涙の最終決戦、現れた最強の導士』

そうれ、ソレソレ、ソレ、相手にとって不足なしだわさーーーッ!!


『ちっ、邪魔が入ったな。』

更に西に向かって空を飛んでいる時、私の頭はこればかり考えていました。

『大人のキスも、まだしてもらってないのに』

ふと西を見やれば、暗雲立ち込める台地。

これまで私は、何事も覚悟してきたつもりでした。

しかし、今になって、恐い。でも……


『逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ………』自分に言い聞かせました。

すると、今まで前を向き、私に対しては本意ではないにしろ後ろ向きに対峙していた管理人が、一度だけ振り向き、真っ直ぐに私を見詰めて言いました。

『逃げちゃ、ダメだこりゃ。』

そしてまた西を向き、空を飛び始めました。

『それでは いかりやシンジ でしょうが。』

きっと、前向きな管理人には聞こえないような小さな声で突っ込みをいれた私の恐怖心はキレイサッパリ無くなっていました。

人のために死ぬってことは、おおよそこういうことなのかな、なんてことを考えているうちに、暗雲立ち込める台地がすぐ目の前に迫ってきました。

管理人と私が先程までいた西院の台地よりも少し高めに設定された暗雲立ち込める台地に、少しだけ、嫉妬から来る苛立ちを覚えつつ、また少しだけ、進行方向を上方に修正し、いよいよ覚悟を決めました。


見えました。

大勢の信者を回りに侍らしているだろうという予想に反して、最強の導士は一人で立っていました。

『なるほど。やっこさんも覚悟を決めている、と言うことか。望むところです。』

さて、ついに現れた最強の導士。

覚悟を決めた二人の管理者。

次回、乞う御期待。
目の前に一人の男が立っていました。

ベージュのパンツにグレーのパーカーと言った出で立ち。フードを少し深めに被りながら。

導士と言うのは名ばかりでそこに居たのはただの若者の様にも見えました。

しかし悲しいかな、そこには紛れもないホンモノの悪魔がおりました。

フードの間から微かに覗くその瞳にはやはりと言うべきか圧倒的な力が宿っておりました。

その瞳は、数々の善悪を飲み込み、何かを打破し続けた者だけに与えらる様な不思議な濁った光り方をしておりました。

私が今までに見たどの眼球よりも冷たく、そして深い。

彼がゆっくりとフードを脱いでその顔を出しました。


『僕の事で何かご迷惑をおかけしているなら、僕は貴方達にまず、謝らなければならないかもしれません。そこからでなければ何も始まらないのではないでしょうか?』

若者は目上の人に敬意を払う様な言い方で話し出しました。

私はその物腰と話し方、話す時の目の動きをじっと見つめながら本意、不本意に関わらず思わずうっとりとしてしまいました。



『こいつは本当にやっかいな相手を敵に回してしまったのかもね…』


隣で明らかに恍惚鬼が餅を妬いています。

『自動餅焼恍惚機・二百円。』

何よりもまず彼は色男でした。彼の話し方には人を惹きつける何かがあり、そこには数々の人々を実際に束ね上げてきた裏打ちがあります。

ライオンは群の中で自分よりも強いライオンと相対した時に、実際に戦わずとも、その優劣を自分でつけると聞いた事があります。身の程をわきまえると言うヤツです。

彼は指導者としてもライオンの群の中においても共に少数派になるべき才能を持っています。少し話しただけですがこれは認めざるを得ない。

では、負けるのか??、それは違います。


『負けません。負けれま西院、勝つまでは。…さ…、西院ッ!!』

空にこだます西院の雄叫び。

ライオンが答えます。

『そうです。貴方の後ろには確かに西院があります。

ただ、、ここに来た以上、もうあそこには還って頂く事はできません。
あそこに還る事は後ろ向きに進む事になります。それは最も悪しき事です。
貴方は貴方の大切な西院を捨ててここにいらっしゃったのですよ。』

『捨ててない。』

私は少し苛立っていたのかもしれません。

『いいえ、貴方は捨てました。

もうすぐあの山は崩れます。貴方の野暮な希望と…一緒に。』

彼が私の心の一番柔らかい部分を一差しにする様に、言い放ちました。彼は文字通り私の心を折ろうとしていました。

『この世には前向きなモノしか必要ないのです。そうですよね?皆さん?』

地の底の方から地鳴りの様な歓声が鳴り響きました。

気がつくと台地の下にはウヨウヨと上向きの目の信者達が私達を囲むように集まって来ております。

そして幾人かが隆起した山肌ををウジ虫の様にゾロゾロと攀じ登って参ります。その数は五百をゆうに越えている。

『前、前、前、mae、あんた確かに男前ッ!!でもあんたのやろうとしてる事はただの支配よ!……ホンットそんなんじゃ、やんなっちゃうわよーーーッ!!!!』

私は私の携わったモノや人に対しては出来るだけ実直に、そして真っ直ぐに諦めずに向かい合って生きて来たつもりです。

時にそれは彼の言う前向きであったのかも知れません。

あるいは私達は負けるかもしれない。そん時は後ろ向きに倒れればよいさ。曲がりくねった道を行く〜。

私がかつて、通信教育で習得した酔拳の講師、ミスターカドヤシキはオフ会で私の渡したシュークリームを頬張りながらこう言っておりました。


『勝つか負けるかじゃないんだよ、ベイビー。

自分が自分の最期を迎える、いよいよって時に、ベッドの上で笑えるかどうかだよ。

一生懸命やるってのはそういう事さ。』


私の口の中にあの日のカスタードクリームの味がゆっくりと広がりました。

『…笑えるかどうか…か。。』

私はニヤリとした後、続けました。

『…一歩も引く気は、、ないわよ。』

しばしの沈黙の後、彼は答えました。

『やれやれ、どうしても塵と消えたい様ですね。仕方ありません。。ではお望み通りに…』

若い導士はゆっくりと腕をぐるりと回し、またつまらぬモノを受け入れて飲み込むしかないのかと言う様に深く静かに構えました。





次回ィ福管理にぃぃ〜ん!、


『響かない酔拳。

死ぬな!福ちゃん、届け!愛の魔ッ封波。』





私は管理人の隣で餅を妬いていました。

件の男と管理人は、一触即発ながら、言葉以上のナニかをヤリトリしている模様。

そりゃあ福ちゃんとしては面白くありません。

その内に、件の男と管理人の話は終わり、件の男が静かに構えに入りました。

まるで私の事など、ハナから眼中にない模様。

『馬鹿にしてやがる。』

私は、件の男と管理人のホットラインに無理矢理割り込みました。

私『お前がこの世で一番嫌いであろう感情を味わわせてやるぅ!後悔ってやつをよォォォ!』

管理人『ダメよ福ちゃん!あなたが敵う相手じゃないわ!』

管理人の制止を振り切り、私は件の男に飛び掛かりました。

私は件の男に凸ピンで吹っ飛ばされました。

『フフフ…食らう瞬間、自ら後ろに飛び、ダメージを軽減しましたか。はい、なかなかおやりになるようですね。』

件の男はそう言い、

『いやいやそれほどでもないですよ、このポジティブ野郎。』

私はそう返しました。

私は極力冷静を装っていましたが、内心では、この力の差に愕然としていました。

『コイツァ…管理人が万全の状態でもヤベェ…ましてや俺では……』

後ろに控える管理人の為に、件の男の体力を少しでも削ること。これが私に出来る精一杯だと判断しました。

『ヘヘッ チマチマやってちゃラチが明かねぇ。ここは俺の最高の技で勝負させてもらうェェェェエエエエエ!』

そう叫びながら件の男にまっしぐら。

『うォォォぉおおおお!!』

私は天高く舞い上がり、その頂点から件の男に尻を向け、一直線にattack。そう……

『夢!想!転!生ェェェエエエエ!』

先の闘いで身に付けた、今の私の最高の技です。


しかし。

標的となる筈の件の男が消えました。

『バ、バカナ…!一体どこに…!?』

さらに、その、遥か上空でした。

件の男のグレーのパーカーは、上空に渦巻く雷鳴轟く暗雲に重なり、件の男を更に大きく見せ、私に畏怖の念すら抱かせました。

~真・夢想転生~

ブゥワッバァァァァアアアア!!

その技をまともに食らった私は後ろ向きにブッ飛びました。

その私の視界の端に映ったもの……それは、真・夢想転生の余波を受け、台地を転がり堕ちていく一層目の蛆虫と、その一層目に巻き込まれて転がり堕ちていく、二層目三層目のポジティブな団子でした。

件の男にとって、信者はその程度のものだったのです。

私は気絶しそうな意識と闘いながら、こんなことを思っていました。

『ウチの管理人が教祖なら、信者をこんな風に扱うなんてことはしねぇ。

なんせ、ウチの管理人には、…………愛があるからなァァァァアアア!!!!』

しかし、今のままでは管理人は件の男には勝てない……

ここはひとつ、福ちゃんとして、責任を果たすか……



私は、ユラリ と立ち上がりました。

件の男『ほう、まだ立ちますか……生憎私は、向かってくる者には手加減出来ませんよ。』

私『ブッ倒す……』

件の男『ほう、威勢が良いのは結構ですが、貴方にそれができますか?』

私『俺じゃねぇ……ウチの管理人がヤル。』

管理人『福ちゃん………』

私『管理人……私はこれでも福管理人です。貴女を………………お守り志摩スペイン村!そぅれぇッ! 魔ッ封波ッ!!』

ギュンギュンギュンギュン………

私の念波の渦は、文字通り渦巻きながら、管理人に向かって行きます。

管理人『えっ!?わ、私なのっ!?』

管理人は、不意をつかれた為、しっかりと魔封波に掛かってくれました。

『ホンッット、やんなっちゃうわさー!!』

そう言いながら、すんなりとスムーズに電子ジャーに吸い込まれていきました。

それを確認するやいなや、私は電子ジャーの蓋を閉め、御札で封をし、

『おらぁぁァァァァアアア!!!!』

ポーーーーーーーーイッ

と桂川に投げ捨てました。

電子ジャーは、

ドンブラコ、ドンブラコ、

と大阪方面へ流れ始めました。

そうです。

西院と対になり隆起していた台地は、四条罧原堤の交差点。

すぐそばに桂川が流れていたのです。

私『ヘヘッ、これでお前は管理人に手出しは出来ねぇ。管理人は今よりもっと強くなってお前の前に現れる。首洗って待ってろよ。』

件の男は流れていく電子ジャーを暫く見ていましたが、

クルッ

と振り返り、

『なら、貴方はどうするのです?』

と問い掛けます。

私『俺に選択権はねぇよ。魔封波を使った反動で、気が急速に減り始めてやがる。煮るなり焼くなり好きにしな。放っておいても死ぬだろうがな。』

件の男『……私は無益な殺生は好みませんが、ここで貴方を殺すことが、私にとって無益とは思いません。念のため、トドメを刺させて頂きますよ。』

件の男はそう言い、ゆっくりと近づいてきました。

私は既に指一本動かすのも難儀するくらいでした。とうとう年貢の納め時がきたのです。

ザッザッザッザッ……

ジャリッ

件の男は私の目の前で立ち止まり、右手を振りかぶり、言いました。

『私が死んでも会うことはないでしょう。私は天国に逝きますから。では、御機嫌よう。』

ザシュッ





件の男『バカな……!代わり身の術…?あの男にそんな力は残っていなかった筈だ……では、一体誰が……?』

そこには、福管理人の服が着せられた丸太が一本残り、福管理人の姿は全く消えていました。

件の男『逃がしましたか……まあよいでしょう。あの男がこの先、我々の脅威になるとは考えられません。気になるのはあのドンブラコ……大阪には、あの娘が……百合アがいます。何事もなければ良いのですが………』

件の男はそう言い残し、霞のように姿を消しました。



さあ、ドンブラコと川を下る管理人!

福管理人を助けた謎の人物とは?

そして、大阪の女、百合アとは?

次回ィッ 管理人ッ

『悪女?はたまた聖母?私……大阪に生まれた女やさかぃぃぃ!! 百合ア、登場!!のまっきっ』
…止めど流るぅ〜 清か水よぉ〜 

消せど燃ゆるぅ〜 魔性の火よぉ〜

あんなにぃ〜 好・き、な〜 女性にぃ 出会うぅ〜 夏はぁ〜 二度とぉなぁい〜

人はだ〜れも〜 愛もと〜めてぇ 闇に彷〜徨うぉ運〜命ぇ〜

そ、し、てぇ 風まぁかせぇ〜 「Oh〜 My densijyah〜」 

だれぇが〜 電子ジャーやぁねぇ〜ん〜〜

『って誰が電子ジャーやねん!!』

ブワッと悪夢を振り払う様に私は目を覚ませました。

と言ってもここは薄暗いジャーの中です。目を覚ましたのか、今が夢で先程が現実だったのかもサダカじゃあない。

悪夢は二重螺旋構造になっており輪廻の如く続いていく模様。

同じ構造で出来ているらしい私の46本の染色体もひどく疲弊しておりました。

私は自分の置かれている状況を努めて冷静に整理しながらジャーの内部に一つだけある小窓から外の景色を眺めておりました。

どうやら私は川をドンブラコと流れて行っている模様です。


『ここは一体どこなのよ…

しかし福ちゃんがあんな大胆な行動をとるなんて、思いも寄らなかったわ…それに、魔ッ封波…』


彼に『魔ッ封波』を教えたのは私でありました。
そしてそれをその四年後に私が、恩返し宜しく見事に喰らいました。

「魔ッ封波」は自爆の呪文。

威力は凄まじいですが使用したモノは必ずその代償を支払わされます。

彼も勿論、それを納得の上で発動させている。

それを使った後の彼には、もはや指一本動かせるくらいの体力しか残って居なかった事でしょう。


体力のなくなった彼に導士は容赦なくトドメを刺した…

残念ながらこれは、ほぼ揺るがない事実です。


自分が何も出来ずに流されていくだけの電子ジャーであるという事実が重く、のしかかります。

とりあえず、私がまずすべき事は、このジャーからの脱出。

それには誰かの手が必要となります。誰かにお札を剥いで貰い、ジャーの蓋を開けて貰う。

どれくらい流されたでしょうか…

辺りは既に見た事のない景色が続いておりました。

大阪府と書いた看板が見え、県境を知らせておりました。

川の流れが緩やかになり中洲が見え、岸際に舗装されたコンクリート護岸が続く景色が現れました。


護岸に沿うように私を乗せたジャーがゆっくりプカプカと流れて行きます。

私は流れに身を任せつつ、進行方向にあたる下流の方向をボンヤリと窓から眺めていました。

自分の死角となっている上流方向からでしょうか、何やら足音が聞こえてきました。

その音は段々とこちらに近付いてきます。

『カッ、カッ、カッ、カッ…』

コンクリート護岸をゆっくりと一定の速度で下流に向かい踏み進む甲高い音。靴の種類が普通ではない様な音。

これは恐らく下駄か何かの音ではないか?と思った瞬間、私《ジャー》は何かの力により上向きに持ち上がり護岸沿いに打ち上げられました。

そしてまばゆい光が天井から差し込んだ瞬間に、私はささやかな小爆発を経て、赤子の様に勢いよく浮世に生み落とされました。








小さな輪廻転生。


『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーッ!!

訳あって、某(それがし)、再び、世に生を受けつかまつり候ッ!!』

私は、自分にみなぎっている訳のわからないパワーと男性ホルモンを感じながら、すぐ前に座っていた下駄を履いたショートカットの女の子を見ました。

『お嬢ちゃんが、拙者を助けてくれたのかな?』

女の子は、最近流行りのミニマム系女子でした。

前触れなく突如ジャーの中から現れた大人に、一片も臆する事なく、少女、は自らの手を差し出しながら言いました。

『ニヒャッック円指でOK


私は福ちゃんが支払ったであろう大きな代償の代わりに少女に二百円を支払いました。

少女はニコッと微笑み続けました。


『おじさん、私、素敵なお嫁さんになれるかな?』

私は地面に手をつくくらい姿勢を低くして、お嬢ちゃんと目線を合わせる様に頭を深く撫でてあげました。

『…なれるさ。拙者には未来が見えるんだ。』


私がそういうと急に少女は悲しい顔をしました。私が

『どうしたんだい?』

と聞くと少女が答えます。


『私にも未来が、見えるの。おじちゃん…』


少女の瞳は恐ろしいくらいに透き通っており、少女の話そうとした事は恐らく間違いではなかったでしょう。
私はそれを遮る様に言いました。

『いいんだよ、お嬢ちゃん。おじさんは、未来を変えに来たんだから。

…これは大人のガチンコってヤツさ。』

私はそう言うとクルリと振り返り、情を捨てる様にしてそこから西の方へ歩き出しました。

私がゆっくりと歩いていると後ろから声がしました。




『おじちゃん!!』




私は立ち止まりました。


その後、少女が私に言ったセリフを私は一生忘れないでしょう。




『ガチンコを待ってない女の子なんて、、この世には居ないんだよ。』





私は、少女を振り返らずにそのまま静かにもう一度、ゆっくりと夕日に向かって歩き出しました。





次回ィィ! 福管理人ィンッ!!!

『これがこうで、あれがこう…
エェイ!よくわからんくなってきたザンスよ〜〜ッ!!!』




私はまたもや夢を見ていました。

ひどく心地よい夢で、しかし思い出せません。

脳が目覚めて行くにつれ、私は徐々に状況を把握していきます。

真・夢想転生………

魔ッ封波………

それから………

そうだ、私は確かに殺された筈だ。

なぜ生きている?

あの時既に管理人は電子ジャーの中。

私は指一本動かせない。

なぜ生きている?

誰かが私を助けた?

何のために?

自問自答はいい加減やめなさい、と言わんばかりに、後方で、

『ヒック………』

と、聞こえた。

まるで浴びるように酒を呑んだオッサンが漏らす吐息の様だった。

ふと、後方を振り返ると、浴びるように酒を呑んだであろう、両の頬を適度に紅く染めた男が一人。

ただ、よくよく見ると、オッサンでは…………ない。


………………………ダンディ。

きっとあのダンディが助けてくれたのだ!
感動と興奮とで、

『ホワット ア クール ユーアー ダンディ!!サンキューサンキュー!!ベリベリ!』

と、訳のわからない英単語を並べ立て、感謝の意を身体全体で表現しました。

勢い余って抱きつこうとした刹那、

スルリ

とダンディな身体は私の腕をすり抜けました。

あれ、おかしいな?確かに捉えたハズ……

試しにもう一丁、スルリ。

あもう一丁、スルリ。

あ出前一丁、スルリ、ポン。


………?ポン?

気が付くと私の頭の上に瓢箪が乗っています。
この瓢箪は先程から件のダンディが酒を入れて持ち歩いているであろうものでした。

さすがに私もバカにされているのでは、と少しムッとし、意地でも捕まえてやると息巻いて、全盛期のライガーよろしく掴み掛かり、勢い余ってライガーボムでも御見舞いしてやろうかと思いましたが、一向に捕まる気配はありません。むしろ、瓢箪の中の酒を呑めば呑むほど動きのキレが増し、手がつけられません。

私が諦めようとした、まさにその瞬間、ダンディは言いました。

『諦めたら、そこで試合終了だぜ、ベイビー』

私は

『…………はあ………』

と返しました。

ん?……ベイビー……?

私の欠陥品の頭に、警鐘がひとつ、軽やかに鳴りました。

いくら捕まえようとしても掴めないあの流水の如き動き……

そしてあの酒……瓢箪……

呑めば呑むほど強くなる……

まさか……

『まさか貴方は!

ミスターカドヤシキでは…!?』



はい、ここで黙って酒をクィッと呑むダンディの後ろ姿を、おいカメラ! アップで捉えてそのあとグーンと引いて。そうそう、もっと引いて、引いてもっともっと!上空1,500mまで引いて、そう!で二人の傍らにマザーレイクビワコどーん!

となったところで

次回ィッ!管理人ッ!

『こっちはこうなった!そっちは………どうですかい?』
私は川伝いに上流に向かって歩いていました。

先の下駄の女の子の言葉がズシリと胸に響いております。

『とにかく、あの男が心配だ。』

私は男には何の興味もないのですが 彼も仲間です。それに彼はいつだって私を、私の事を、、身を以って守ってくれ…

うん?

何かが引っ掛かりました。それは魚の小骨の様なモノで、ともすればやり過ごしてしまう程の引っ掛かりです。しかしそれは私の中に、、確かに引っ掛かっています。

『つ、痛っ…』

突然、私のコメカミ辺りに堪え難い様な激痛が走りました。

最初それは、私の内部に対して働いている痛みなのかどうかも解らない、どんよりとした重みの様な負荷でした。

そして、何か、大切な記憶を忘れてしまってる様な漠然とした感覚が後からやって来ました。

ただ、その記憶の扉には鍵が掛かっていて固く鎖されています。

私がそれをこじ開けようとすると私に更に強い激痛がもたらされました。

私は地面にうずくまり暫し立ち上がる事ができない。

その時、遥か上流の方で『どーんッ!!』と言うとてつもない音が聞こえ地面がにわかに揺れました。気付くと私の頭痛は嘘の様に消え去っておりました。

私は何も見えない上流を遠く眺め、言いました。


『何か大変な事が起こっている。
大切なモノを、捨てていたとしても、今は進まねばならない。

これが私の… いや、拙者の生きる道。』


国道を歩き出した私の前方に県境の看板。私は流された大阪から再び京都にまで戻って来た様です。

私は逸る気持ちを抑え、歩みを続けました。

しかしどうした事でしょうか。

看板が見えた辺りからもう随分と歩いた筈です。

歩めども歩めども、県境の看板が近付いて来ない。景色も進んでいない気がします。

私は走りました。

私が追いかければ看板は逃げます。私が、歩みを止めれば看板も留まります。

私と看板の距離はこの上なく一定。

遠くもなく近くもない。
つかず、離れず。

『それはまるで、…まるで…誰かと誰かの…関係のようで… …って痛てててててッ!!』

今、何かが触りました。チクリと。


試しに鬼は後ろに下がりました。

私は我が目を疑いました。
…あろう事か看板も下がってきやがります。

『ば、バカな…』

迷い込んだかパラレルワールド。
終わりなき悲しき鬼ごっこ。
イッツ、、ショウタイムグローリー!


『さてはお主、ただの看板ではないな? …姿、、見せぃッ!!』


やがて看板は看板を捨てました。

蛹(さなぎ)が自らの殻を自らの意思で捨てる様に。

現れたのは女(パピヨン)

『…なるほど、、

てんで捕まらない訳だ。。』


ここで キャメラマ〜ン、ま〜さ〜かの〜自らの〜キャメラを道端に投げ捨ててぇぇぇ〜の〜、

はい、ピース!!

ピース!ピース!ピース!ピース!…ピース!!


そして更にぃぃぃ  …ポーズ!!…


だっ、そこさぁ、もっと腰に力入れてぇ、、いや、だかぁらぁ、腰だっつーの、いや、ポーズは腰でしょ…、

いやいや、それは、ダンスでしょ。 

ポーズだから腰に… だから腰だっ…こ…



……………………………………………あれッ?これ、違う。


次回ィッ〜、福管理ニィ〜〜〜ん!

『し、師匠! ぼ、僕もぉ、す、酔拳がぁ、し、したかでぇす!!』




琵琶湖畔には、二月の風が吹いておりました。

その風は確かに冷たかったのですが、寒いものは寒い、と覚悟を決めればどってこたぁない冷たさでした。

『俺を知っているのかい?ベイビー』

ミスターカドヤシキとおぼしきダンディがそう問い掛けます。

『知っているも何も!貴方のことは、きむらーめん(管理人の本名)から嫌と言うほど聞かされています!何故あの場所にいたのですか!?何故私を助けてくれたのですか?何故管理人を……』

と言いかけたところで、

ポィッ

パクッ

口の中に何かが入ってきました。

『管理人』の『管』の『か』と『ん』を発声しようとした瞬間だったので、私はその異物をスムーズに噛み砕いてしまいました。

途端に口の中に拡がる、香ばしく、甘い香りと味わい……間違いない……

これは甘栗。

ミスターカドヤシキとおぼしきダンディを見やれば、胸のポッケに甘栗が、それこそ

パンッパン

に入っておりました。

その甘栗たちは、まるで自分達のサンクチュアリの様に当然に、しかも幸せそうにポッケに居座っておりました。

『まあ落ち着けよベイビー。そういやきむらーめんもせっかちなヤツだった。何やら生き急いでるような雰囲気すら醸していたぜベイビー。急いては事を 仕損じるっつう諺くらい知ってんだろベイビー?』

『………はあ………
そんなことよりもミスターカドヤシキ!貴方はダンディであると同時に、酔拳の達人だと聞いてます!ぜひ私にも酔拳を!酔拳を教えて下さいマシィィィィイイイ!』

『……oh baby…… そう焦んなって言ってんだろベイビー?急いては事を 仕損じるっつう諺くらい知ってんだろベイビー?』

『………はあ………』

『酔拳を知るには、まず酒を知れってな。まずは一杯ヤろうぜベイビー、そこに座んな。』

『そんな悠長なことを言ってる場合じゃないんです!早く酔拳を教えて下さい!こんなことをしている間にも、管理人に危険が迫っているかも知れないんだ!貴方には……管理人に対する……きむらーめんに対する愛が無いからそんなことが言え………』

そこから先の台詞は言えませんでした。

何故ならば私の喉元には、ミスターカドヤシキの瓢箪が突き付けられ、ミスターカドヤシキは、尋常ではない殺気を放っていたからです。

その殺気は、私が今までに感じたどの殺気よりも鋭く、また、廻った酔いの様に足元にまとわりつく類いの、ともすればこのまま殺されるのもアリかもね、と思ってしまう、ある意味では心地よさすら感じる殺気でした。

『お前はまだ何も解っちゃいねぇんだな。そんなことじゃあ俺の酔拳は教えられねぇし、きむらーめんも……救えねぇよ。』

ミスターカドヤシキはそう言い、

クルリ

と踵を返し、湖畔の方へ歩き始めました。そして思い出したかの様に、

『………baby………』

とツイットしました。

私はミスターカドヤシキを怒らせてしまいました。

気が付くと私は、湖畔とは反対の方に歩き出していました。

さて次回ィッ!管理人ッ!

『旅は道連れ世は情け、汚れっちまった哀しみに!』
目の前に現れたのは、透き通る様に肌の白い女でした。

額の真ん中から流れる様に両サイドに伸びる髪は黒く長い。

おでこの中央を横切るヘッドアクセサリーが彼女の表情を少し柔らかくする役を買っておりました。

間違いなく美人と呼ばれる部類に位置する女でしょう。

そうだ。イイ女は簡単には捕まらない。そして捕まえられたとしても、それはそれでややこしい。これは鉄則です。

『これがホントの看板娘ってか…、、っておい!!』

私は得体の知れない鬼ごっこを続けていた自分自身に怒りをぶつけるかの様に言い放つと同時に、手刀で空を切る様な動きをしました。

美女は何もなかったかの様に私を無視しました。

『貴女方がペペロンティーニ様の邪魔をしようとしているのは知っています。第18ポジアンから私はそれを見ておりました。

しかし、残念ながら、貴方の行進はここで終わりです。貴女には私は跨げない。


…跨げないのです。』



私は、怒りで自分の肩が震えているのを感じました。

女が畳み掛ける様に続けます。

『怒りを抱くということは、誰かにそれを投げるつもりで熱い石炭を持っているのと同じ事です。やけどをするのはあなたです。 』

私は前向きに返しました。

『なるほど、仏陀のコピーか…。

拙者、火傷しているとするなら、貴女に。』

奇をてらった私の渾身の切り返しに対し、彼女は堂々とし、一片の動揺も油断もない構えで平然と私と対峙しております。

火傷をしたのは確かに私の方でした。


女は、こちらを、憐れなキリギリスを見るような目つきで見つめ返してきました。

「引き寄せの法則って知ってますか?」

使いふるされた常套句。

アンダースタン?

私ははっきりと言ってやりました。

「知りません。」

私は、急にどうでもよくなりました。コイツを殺してやろうとさへ思いました。

女は私が跨げなかった境界線を軽く跨いでいます。

というか女が今、正に私の境界線なのでしょう。

『越えていけそれを。』

アンダースタン。

私はポケットからウィスキーの小瓶を取り出しググッと一気に飲み干しました。

トリスと書いたロゴが見えました。

『酒は強く 王はもっと強く 女はそれよりさらに強い。

けれども…

……真理はもっと、、

…強い。

受けてみよ、カドヤシキ流酔拳!』


私はゆっくりと体をくねらせました。




次回ィ!福管理にぃぃぃん!



『アーーーーー ーーーーーッンダスタン!!!』




嵐山には2月の冷たい風が吹いていました。

川の上から吹き荒れる風は、肌を刺すような厳しい寒さの中にも”故郷”を思わすような何か懐かしさを感じることができました。

それは、おそらく西に20キロ以上離れているであろうこの場所からも、はっきりとミスターカドヤシキの声が聞こえたからです。

カドヤシキの声とともに懐かしい記憶が断片的に思い出されました。

『苦しいかもしれないが、ゲームをクリアするように楽しんでみろ』

当時の私は、その意味を全く理解することはできませんでした。
おそらく横にいた√たちにも、彼の本当の気持ちは伝わっていなかったのではないのでしょうか。

しかし今なら少し理解できます。
今でも良く「こんな時カドヤシキならどうするだろう?」などと自問し、その力を使って大胆な行動ができるときがあるほどです。

他にも色々と思いだされました・・・

もし、もう一度だけ副管理人と一緒に難波に行くことが許されるならば・・・
私は必ず彼を押し込むでしょう。

そしてメガネをかけはじめた動機と、耳の横の部分の太さは多少気になりますが、
それが契約本数の増加につながるならば「ザッツオーライ!」と私は言うでしょう。

そして私は彼にハッキリと言いました。

『コミュニティ批判かね?それとも自分に対しての批判かね?』

私は敢えて続けました。

『ドーン、ウォーリー、ビー、ハッピー!」


次回、副管理人っっっ、「髪の長いバージョンの君を見た人がいるよ!!!」
ご期待あれ!!
ミスターカドヤシキを怒らせてしまった私が向かった先は?

御名答、ケーキ屋さんです。

ちょっくらケーキで御機嫌取りを、なぁんて浅はかな考え通り、私の足は、ケーキ屋さんに向かいます。

やがて見えてきたのは一軒の可愛らしいケーキ屋さん。

おおよそ、ダンディなミスターカドヤシキは、通いたくても通えない程の可愛らしいケーキ屋さん。

名前を見やれば、『petit lapin』

看板には『ここのケーキは、絶品ですよ、絶対。』

と謳い文句が描かれてあります。その文体に、いささか違和感を感じながらも……

私は、『ケーキ』その道に、暗い方ではありません。むしろ明るい方です。直感で決めました。

気付けば私は、そのケーキ屋さんの扉を

『ギィ』

と開けていました。

同時に

『カラコロン』

と、私が来店したことを告げる扉鈴が鳴りました。

私はその扉鈴の音を聞き、かの在原業平の詩を思い出しましたが、それはすぐにまた私の記憶から消えていきました。

『いらっしゃいませ。』

私は耳を疑いました。

『招かれざる客』なんてものは、恐らくこの世界の何処にでも存在します。

しかし、この

『いらっしゃいませ。』

は、招く招く。

世界に点在する招かれざる客の最後のオアシスが如く、招く招く。

その、海よりも深く、空よりも広く響き渡る(使い古された表現で申し訳無いが、本当にそうなのだ)声は、ミスターカドヤシキに怒られて落ち込んでいる私を癒すには充分過ぎ、逆に申し訳なさすら感じさせる代物でした。

恐らく私は数秒の間、いつかの、いや、それ以上の恍惚の表情を浮かべていました。

私は我に返り、宝石箱の様なショーケースを見ようとしましたが、そうはいきませんでした。

何故なら、私はその店員に眼を奪われてしまったからです。

その店員は、その声に負けないほどの容姿的外観を兼ね備えておりました。

髪型はボブ、髪色はなんとも言えない黒身がかった緑色で、おでこも適度な広さを持ち、眉は、端正な鼻の端と大きな瞳の目尻を結んだ延長線上までに綺麗に整えられ、薄い唇の中には、均整のとれた顔立ちとは裏腹な八重歯が顔を覗かせておりました。

また、その制服がエロ……いや、私の本能を刺激する造りになっておりました。

とはいっても、あからさまに胸を強調したり、スカートが短かったり、という類いのエロチックではありません。確かに胸は豊かに実っていて、それは素晴らしい脚線美を誇っておりましたが、

なんというか、その、

まあ、貴方達なら解るでしょう?

というわけで、私は更に数秒の恍惚鬼を経て、やっとの思いでその店員に話しかけたのです。

『あの……私は、私の友人でありながら、師匠とも呼べる人の、そのまた更にお師匠、つまり、超・お師匠を怒らせてしまいました。その、超・お師匠の曲がった臍をストレートに治すには、どんなケーキが……』

と言いかけたところ、

『モンブランですよ、絶対。』

その店員は断言します。

その言葉には、我の強さと、それに負けない信念とが滲み出ていました。

私は『なるほど、いい女ってのは、なかなか捕まえられない。そして、捕まえたら捕まえたでややこしい、ってのはそういう意味か』なぁんて事を思いながら反論します。

私『なるほどモンブランですか……いやしかし、モンブランは好き嫌い別れますから……』

店員『モンブランですよ、絶対。』

完全に被せてきます。

私『いやいや、でも……モンブランは………』

店員『モンブランですよ、絶対。』

このやりとりを暫く続けた後、私は少し冷静になって考えました。

モンブラン……栗……甘栗……かわむき甘栗………ミスターカドヤシキ………

!!!!!!

繋がったァァァァアアア!!

私『じゃあそのモンブランを………!』

と言いかけたところで、またもや私の頭の中の警鐘が鳴りました。

なにか引っ掛かります。

はい、はい、はい、はい、なるほど。

私『店員さん、シュークリームを5つ下さいな。』

その店員は、少し驚いた後、私に微笑みかけました。

店員『かしこまりました。
ミスターカドヤシキは、いいお弟子さんをおもちですね。』

私『いや、それほどでもないですよ。』

次回ィッ!管理人ッ!

『酒には強いが女に弱い、ならば私とホットメンタコ!』
私は、収縮したバネが自らの力を利用し元に戻る様に、体をくねらせては伸ばす動きをコマ送りとスローモーションの速さで不定期に繰り返しながら、ジクザグに目標に向かって擦り足で突進しておりました。

女は突然現れた突進体に緊張と混乱のせいか頬を赤らめております。

ゴクリと固唾を呑んだ雰囲気がありました。

私は構わずに突き進みます。

不定期に動く千鳥足の行進が相手の洞察力を破壊し、油断を誘う。次の動きが読めないから敵は後手に回る。行き先なく流れる雲の心持ち。それが酔拳。

『酔えば酔う程強くなる。…ヒックッ。』

私は最後の一滴を飲み干し、トリスの瓶を足元に投げ捨てました。

スルリ、スルリ。

私は瓢箪を頭の上で転がす心持ちで彼女に迫り、いよいよ彼女を間合いに捕らえました。

かつて私は大切な女を目の前にしていよいよって時に、どうしても押せなかった経験があります。

私はその時、『チキン野郎』と呼ばれました。

「って誰がチキン野郎やねん!」

『ベイビー、今度は押すよ。…ヒックッ。』

私はより深く、体をくねらせました。そして反動を利用し拳を一気に目標に振りかざしました。
私の拳は確実に彼女の顎を捕らえる筈でした。

しかしその時、私の繰り出した拳は彼女の頬の数センチ横をかすめ、私は今世紀最大の空振りを詰っしました。

『ストライク、バッターアウトッ!!』

勢い余り一回転し、やむなく元の体制に戻ってしまおうとした私の眼球が捕らえたモノは、彼女がバネの様に体をくねらせて私の拳をいなしていた姿でした。

私は天を仰ぎました。

最悪のシナリオでした。

一度収縮したバネはどうなるか?

私には勿論、分かっていました。

『ドスッ』

私のミゾオチ辺りに静かな重みがありました。


屈みながら私の懐に手刀を刺し込んだ彼女が頬を赤らめながら私を見上げました。

『ドーン、ウォーリー、ビー、ハッピー、…ヒックッ』

ミゾオチの痛みのせいなのか女の声は、男の声と合わさって二重に重なって聞こえた気がしました。

混乱の中、私に一つだけ確実な情報がありました。

『…てめぇも、酔っていたのかよ、ベィビー……、、ヒックッ。』


次回〜ィィ!、ペペロン、チ〜ノぉぉッ!!


『私はもう、カドヤシキを越えている。』




さて、シュークリームを5つ携えて琵琶湖畔に戻ってきた私をまっていたのは、先程と変わらないミスターカドヤシキの背中でした。

ただ、頭のゆらり具合から見て、相当呑んでいる模様。

と、いうことは、今、ミスターカドヤシキは、相当強い、ということ。

私は背後から忍び寄り、おもむろに、立て続けに、シュークリームを3つ、ミスターカドヤシキの背中に向けて投げつけました。

パクッ

パクッ

バシィッッ

ミスターカドヤシキは2つ、難なく口でキャッチし、3つ目は左手でキャッチしました。

そして、そのシュークリームを二つに割り、小さい方を私に差し出してきました。

『あの時の味と、全く変わらねぇ、大したもんだぜベイビー。』

『やはり、管理人はあそこでシュークリームを……』

私は言いながら差し出されたシュークリームを受け取りました。

途端にバニラの香りが鼻腔をくすぐります。

カスタードクリームもさることながら、驚くべきはそのシュー生地でした。最近は何やらサクサクとしたシュー生地が流行っておるようですが、これは昔ながらのホワホワ。

昔ながらの、とは言うものの、私がこれまでに食してきたシュー生地とは比べ物にならない柔らかさ。

まるで産まれて数ヶ月の赤ん坊の肌のようにきめ細かく、成熟した女性の太股のような妖艶さをも兼ね備えておりました。

私は我慢できなくなり、決して大きくないその甘美な塊を口一杯にほうばりました。

いや、ほうばったつもりでした。

しかし。

シュークリームどこへやら。

ほうばったハズのシュークリームが口の中に存在しません。

はて。

ミスターカドヤシキを見やれば、私のかわりに口を動かしています。

迷いこんだか四次元世界。

謎は簡単に解けました。私がシュークリームをほうばろうと気を緩めた刹那、ミスターカドヤシキに、してやられたのです。

鮮やかすぎて声も出ませんでしたが、残った2つのシュークリームは、キッチリ頂きました。

とても美味しかったです。

次回ィッ!管理人ッ!

『負けるなきむらーめん、泪のキムライス!』
『この女が酔拳…』

私は膝をつき、そしてゆっくりとコンクリートにキスをしました。

やがて女は、千鳥脚でこちらに近づいて来ると、うずくまる私のすぐ隣に、ゆっくりと赤ら顔で寝転びました。

私は、次の一撃の覚悟を決め、腹に力を入れました。

しかし、次に訪れたのは樹海の様に深いただの静寂でした。

待てども待てども、何もやってこない。私はうずくまったまま、流されました。

やがて何かが漏れている様な音が隣から聞こえてきました。

吐息が熱い。呼吸が乱れている。私は背後の微かな変化を敏感に感じました。

吐く息が寝返りを打てば届く距離。

底無しに蒼い海。

狼。


ベルが鳴りました。

お迎えでやんす。

『酔えば酔う程、拙者、強く↑なるザンスよ〜〜!ゆ丶り丶あちゃ〜んハート

何かに導かれるように、私は、すぐ隣の目標物に対しておもいきり飛び掛かりました。

ハイ、めちゃくちゃにしてやるつもりでした。

しかし、




〜パピヨン〜





私はカウンターの掌底を顎とミゾオチに見事にくらい海老(ゾウ)の様に反り返りながら再び宙に舞いました。



〜アンダルシアの青い空、グラナダの歌が聞こえた〜



『ベイビー、女が酔拳を覚えたら、何よりも厄介なもんさ、』


一人の女の軽蔑と侮蔑の眼差しを宙空で独り占めした僕はある意味では、酔いが醒める心持ちで、

彼女が掌底で打ち砕いたモノは、もはや 逆転の可能性事態であったのではなかろうかと思ったりしながらも、僕はそのまま本日二回目となるキスをコンクリートに結果的にした訳でした。

次回服管理人。

久々だからって、ヒットなんかじゃ、絶対、許さ ないから!!



「ガッ」

「ビッ」

「ドスッ」

「ズンッ」


琵琶湖のほとりにこだまするのは、哀しき師弟が絆を確かめ合う音か、はたまたこの世界の終わりへのカウントダウンか。

「ドサッ」

「……まだやるかい?ベイビー」

「ぐぬぅ…まだまだァッ‼」

「ポクッ」

…………



…………ふと気が付くと、私は正に大の字になり、見知らぬ空を見上げていました。

空はすっかり赤く染まり、夕闇の訪れを私に知らせておりました。

何時の間にか気を失っていたようで、重い痛みが残る頭を(この痛みがMr.カドヤシキの酔拳のダメージによるものか、二日酔いによるものかは定かではないが)抱え、湖畔の方へフラフラと歩いていきました。
Mr.カドヤシキは、湖で洗濯をしていました。

その背中を、私は忘れることは無いでしょう。

まるで、武士が自分のフンドシを洗うかのような滑稽さ、質素さ、謙虚さが滲み出ているにも関わらず、営業マンが自分のワイシャツをコインランドリーで洗うかのような傲慢さ、潔さが表れていました。

Mr.カドヤシキのその向こう、沈みゆく夕陽を眺めながら、この二つの事象の美しさに、私はただただ見惚れるだけの存在でしかありませんでした。

私は呟きました。

「見ていてくださいお師匠×2、明日は必ずホームランを打ったるさかい。」

さて次回管理人、

「男性ホルモン女性ホルモン、同じホルモンなら食べなきゃ損損♬」
再び地に叩きつけられた私。

傍らに美人。

ん?

狼。

ん?

飛び掛かる私。

掌底。

顎、ミゾオチ。

キス。

んん?

傍ら。

美人。

狼。

掌底。

キス。

美人。

狼。

掌底。

キス…

繰り返される喜劇。どうやら、私はここにきてくぐってしまった様だ。修羅の門を。

最初、私は物語其ノ者であった。

やがて私は物語から剥離される。剥離された私は遠巻きに私自身を見ている。

『嗚呼、負けた。やっぱり…。まただ。。…、』

私は呆然としながら段々と無気力になっていく。

私が剥離した後の私の抜け殻が私の目の前で何度となく痛めつけられて行く。永遠なるルーザー。目が霞む。何をしているんだ私は。

私が負けるのはいい。問題は私が負け続けている事だ。

女がこっちを見て笑っている。まるで狐につままれている様だ。


ん?私は目を疑う。女の顔が歪み、いつしか狐になっている。なむさん。ついに私も気が振れたのかも知れない。

私は狐に発情し、その度に狐が私をブッている。不潔だ。私は急に腹わたが煮え繰り返ってきた。

私は、ギリギリの均衡を保ちながら正気を維持しつつこだませた。

『おやめなさい、おやめな西院、コンコン、コココン、コココ、コ西院〜ッ!!』


狐が言う。

『そうそう、、貴方は貴方の大切な西院を捨ててここに来…』

『捨ててない。』

遮る様に私。

そうだ。相手が狐である以上、これは夢かうつつだ。

私は目を閉じる。

ユメナラバコワクナイ。


捨てるのはこりごりだ。



私は拳にギュッと力を込めながら笑った。


次回服管理人。


なんならてめぇも修羅シュシュシュ〜



修行は続く。

酔拳というものは、ともすれば自由な拳と思われがちだが、なかなかどうして、きっちりと形骸化されている。

一の形に始まり、二の形、三の形、終に八の形まで。

これを順に網羅していき、今現在私が体得しようとしている「神威(かむい)の形」が最終の形となる。

修行も最終段階。

「きな、ベイビー。」

「はいいいぃぃぃぃいいいッッ」

ペスッ バギッ ズンッ スポッ ユラッ スカッ

「ふん、やるようになったな、ベイビー。」

「まだまだミスターには敵いませんがね、ベイビー。」

「……福ちゃんよ、実はな……」

「何です?ミスター。」

「実は、神威が最終の形では無いんだぜベイビー。」

「っexclamation & question

「神威には、裏の顔がある。それが最終奥義、魔酔の形、ベイビー。」

「麻酔の形……」

「いや、魔酔な、魔酔。ベイビー。この形は、きむらーめんにも教えていない、強力な、しかし危険な形だベイビー。」

「危険な……」

「そう、この形を放つ時は、こちらも相当な覚悟が必要になる。背水の陣、カド番の覚悟だぜベイビー。」

「いやだれがカド番やねん。」

「命名、カドヤシキ番長、略してカド番な、ベイビー。」

「だまらっしゃい、だれがカド番やねん。」

次回、管理人、

「カド主、カド番を脱する。のまっきっ。」



かどばん [角番]

1、囲碁・将棋の三番・五番・七番勝負などで,あと一敗すれば負けが決まるという対局。

2、大相撲で,負け越せばその地位を失う場所や取組。


生きてる内が華って言う意味じゃあ所詮、皆様、輪廻のかど番廻し。


あいつが死んだら、あいつが補充される。

役割ってなんなのさ。


良き時代はいつも不意に終わる。


『命短し恋せよ乙女だわさーーーーッ!!?』

私は崩れゆくホルモンバランスを感じました。


私の身体はユリアに向かい走り出しました。

「セイヤー!ビシッ!」

壱の型でユリアが返す。

「ズビシッ!」

私の応戦は勿論弐の型。

「ズガシッ!!」


ユリアがそれをいなしながら流れる様に交わし掌を太陽に翳しながら両の腕を回している。


「この動き夢想転生…ズリビシッ!!!」

参の型。


クラッシュした反動を利用したバネによる私の反撃は死の型。


「リキイシッ!!!!」

私のアッパーカットがユリアの顎にクリティカルヒット!


「よしっ。」

後ずさるユリア。こだまするコスモ。

「キィィィーーッ!」

ユリアが叫びながら来る。

「フミヨシ!!!!!」

伍の型だ。

グフッ。こめかみをかすめるユリアの渾身の右ストレート。

「ボグシッ!!!!!!」

「ズブルリシッ!!!!!!!」

クロスカウンターでの双方のラッシュ。禄の型、菜々の型。

お互いに決め手を欠いたまま、交差する二人の拳。

最後に私の攻撃。


私は交差した腕が齎した副作用でがら空きになったユリアの鳩尾にボディブローをスローモーションで打ち込む。


『勝った…喰らえ蜂の型ーーーッ!!!!!!!!』


次回、複管理人。


そろそろあんたの出番だぜ。

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