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怖い話で眠れなくする!!コミュの困った人達シリーズ 廃アパートと歌と困った人達

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私は心霊スポットと呼ばれる

各地で幽霊が出ると言われている場所を

休日などを利用して訪ねて廻ることを趣味としています。

半年前に

ネットで知り合ったA君に

心霊スポット探検を数人の仲間とやってるから一緒にどう?

と誘われたのがきっかけです。

それから現在までに二十箇数所ほど探検に同行して

いくつかの怪異と遭遇し

恐怖に心臓を鷲掴みされ、

すくみ上がって満足に身体が動かない状態で

闇の中を半泣きになって逃げ回り

這々の体で車に辿り着いたこと数度…

遊園地などのアトラクションでは味わうことができない

保障も保険も安全装置もまるでない

全ては自己責任でギリギリのスリルを楽しむ

心霊スポット探検…

私は完全にはまってしまいました。



その夜は屋内メイン…廃工場と廃レストランをこなし

本日、探検する最後の心霊スポット、

某県某市にあります

巨大分譲住宅地からわずかに離れた木立の中に

威容を見せる

廃アパートへとやってきました。

ここは部屋で首を吊り自殺を遂げた方が霊となって現れるそうで

次に部屋の入居者となった方や、その隣室に住む方が

夜な夜な恐ろしい体験をし、

恐怖に耐え切れなくなって部屋を出て行く…

次の入居者も、またその次の入居者も

霊を目撃し、恐ろしい体験をして出て行く…

その体験は噂となって広まり

アパートから次々と人が去って

新たな入居者もなく

潰れたのだと聞いています。

「アパートは狭いし、全員で行けば10分ほどで終わってしまうので

 今回は一人ずつ出発していき十分間隔で次の人間を送り出す

 『肝試し』ルールを適用する」


今回の参加者は5人なので一時間弱で探索が終わる計算です。

リーダー格のA君が最後になり

トップバッターはB君、

その次が私で、C君、D君の順番でアパートを廻ることになりました。

私が参加した心霊スポット探検で

この『肝試しルール』が採用されたのは初めてのこと

最近、スポット探検に慣れてきたところなので

このレギュレーションは内心ドキドキでした。

一人…ホラーや怪談が子供の頃から大好きだった私ですが

A君達と知り合う前は一人で心霊スポットへ行くことなど考えもしなかったのですから

「大丈夫だ。Bが先に行って安全をある程度見極めてくれるし

 お前のあとに三人も控えている

 もしも、帰還が遅くなるようなら

 全員で救助に向かうから

 いつも通りにやればいいよ」

一生懸命隠していた緊張をA君に気取られてしまったみたいです。

完全な子供扱いで私の頭を軽くぽんぽんと叩き

夜闇に慣れてきた視界の中で

A君はにっこり笑みを浮かべました。

「あ、はい♪お願いしますね」

他の皆も私を安心させるように声をかけてくれます。

「俺達は道理の通らぬ世の中に敢えて挑戦する

 頼りになる神出鬼没の特攻野郎Aチーム!

 助けを借りたいときは、いつでも言ってくれ」

いや、それ違うから…

道理…たしかに幽霊って道理が通りませんけど…

件の廃アパートから100m程離れた位置にあります

公園の駐車場に車を停め

そこから一人ずつによる心霊スポット探検が開始されました。

「一番槍の役目 見事果たして御覧にいれましょう」

一番手のB君は私達に向かって敬礼した後

ベースボールキャップのつばを後ろに回してかぶりなおし

懐中電灯を片手に飄々と向かって行きました。

全然、怖いって様子見せませんね。

B君がアパートへと向かってから

A君達は探索前に用意しておいた飲み物を口にしながら

談笑していましたが

私は…刻々と近づいてくる一人で心霊スポットに入る自分の順番に

恐怖を拭い去ることが出来ず

緊張がどんどん高まって…何かを口にするなどできません

残り三分を切るともう

「あ、Bが戻ってきたな、そろそろ10分か

 がんばってな」

こっちへ懐中電灯片手に戻ってくるB君の姿が見えました。

行くときと同じ飄々と…

「なんにも出なかった」

残念そうに皆へ伝えましたが

私にとっては、

カーネギー名言集に加えたいくらいの素敵な言葉ですよ!!

「行ってきます!」

一歩踏み出す勇気が湧いてきました!

右手に持った自分の懐中電灯を点灯させて

とことことことこ…

10mほど皆から離れたら…やっぱり怖くなりました。

後ろを振り返り

「誰か一緒に来ませんか?」

尋ねてみれば

「魅力的なお誘いなんだけど…一人で行ってらっしゃい」

全員がシッシと野良犬でも追い払うように手を振るじゃないですか!?

私に向けて…

孤立…無援…

また諦めてトボトボと歩き出します

さらに怖さが募ります

また10m進んで振り返ると

赤紙が届いて出征していく兵隊さんを見送るみたいに

四人が万歳三唱してるじゃないですか!?

あの人達ってアホですか?

頼れるのは自分だけ…って事ですよね?

怖いなら…怖さを紛らわす為に…そうだ!

なんか歌っちゃお♪

立ち止まって選曲開始…歩きながらじゃないのが流石です私…

じゃあ、あれにしよっと

杏里の『CAT'SEYE』♪

「でんでけででででん でんでけでんでんでん

 街はきらめくぱっしょんふるーつ♪

 ウインクしてるえぶりなは〜い♪

 グラスの中の…グラスの中の…ぐ…」

歌詞が…

歌詞に詰まりましたよ

歌詞が分からないと、私は

もう一歩も前に進めないじゃないですか!?

記憶を辿りましたが

やっぱり分からず

仕方ないなぁ…でも大事なことだし…

皆の方に振り返り

「グラスの中の…なんだっけ!?」

って尋ねると

「さっさと早く行けぇえええ!!」

なんか凄く怒鳴られてしまいました。

とぼとぼとぼとぼ…

レオンに送り出されアパートを脱出したマチルダ(ナタリーポートマン)みたいに

とぼとぼとぼとぼ…

あーるーはれたぁひーるさがりーの子牛みたいに

とぼとぼ…子牛は荷馬車に乗ってたのですね…とぼとぼとぼとぼ…

廃アパートが見えてきました

木立の向こう…

街路樹の張り出した枝葉によって夜空が消され

周囲には濃い闇が満ち

アスファルトの上を落ち葉がわずかに巻きこる風でカサカサと音を立て

転がっていきます。

アパートの敷地を囲む緑の金網フェンス…

建物がはっきりと見えてきました。

緊張と恐怖が一気に高まります

コンクリート製の門柱が立つ間を抜けると

足許は砕石が敷かれたものに変わりました。

私の一歩一歩に砂利が崩れ

物悲しい音をたてます。

B君が何も出なかったと言ってたし…

私、雰囲気に飲まれてるだけなんだ…

怖い時は…そうだ!歌えばいいって言ってたのに

歌詞が分からなければ別の歌をうたえばいいだけじゃん!!

経年劣化が著しい

打ち捨てられた骸骨みたいな色をしたアパートの壁を

見ながら

口から出た歌は…


「あいきゃんすとっぷ♪ざ、ろんりねぇ〜す♪

 こぉらえきれぇ〜ず かぁなしぃみがぁ〜とぉおまぁらなぁ〜い♪」


なぜかやっぱり杏里の『悲しみがとまらない』でした。

悲しい歌なのに曲は明るいしノリが良いんですよね♪


「あいきゃんすとっぷ♪ざ、ろんりねぇ〜す♪

どぉしてなぁ〜の かぁなしみがぁ〜とぉおまぁらなぁ〜い♪」


それが手伝って私、一階部分を無視して

階段を上って二階へ行っちゃいましたよ。

自殺した部屋って二階なんですよ


「あなたに彼女 会わせたこぉとを♪

 わたし今でも 悔やんで〜いる♪」


その自殺された方の部屋のドアノブに手をかけた時

べきっ!!

何かが折れ砕けるような音が耳朶を震わせました。

続いて金属的なキンキンという弾ける感じの音…


「ふたりはシンパスィイ 感じ〜てた♪

 昼下がりのカフェテラッス〜♪」


歌いながら周囲を確認…

建物倒壊…するような様子は見られないけど…


「あの日電話がぁ〜ふいに鳴ったのぉ〜♪」


鍵の掛かっていないドアを開けて中に入ります


「あ〜のひ〜ととぉ別れ〜てとぉ

 彼女からぁ〜♪」


また…凄まじい破壊音!壁にダンプが突っ込んだみたいな…

でも、でも何も起きてないんですよ

音だけ!そしてまた空気中で

叩くような金属音やガラスが割れるパキパキという音がします

ドアの脇にあるシステムバスから

その先にありますキッチン兼リビングからも…

「こ、これってラップ音!?」

部屋に入ってから急激に気温が低下したような…

まだ、あのパキパキ、キンキンという音が鳴ってます。

ラップ音なんて…今まで行った心霊スポットでは鳴らなかったのに…

だんだんと怖い想像が…

でも、せっかく

ここまで来たのだから

部屋の奥まで行ってこないと


「あいきゃんすとっぷ♪ざ、ろんりねぇ〜ぇす♪

 どぉしてなぁ〜の♪ かぁなしぃみぃがぁとぉ〜まぁらなぁ〜い♪」


怖さを紛らわす為にも

歌うの再開!

懐中電灯を照らしてキッチンを確認…


「誤解だよぉって あなたは笑う

 だけどキッスは 嘘のにぃおい〜♪」


何か生ごみみたいな匂いが鼻を衝きます。

そして、寒さで鳥肌が立つほど…

吐く息が白いです!!

ここ…何にもなく…ないよ!


「抱きしめられて 気付い〜たのぉ♪

 愛がここぉにぃないこと〜を〜♪」


今まで廻った心霊スポットでも最怖の部類に入る…

気配…

なにかが動いた…

背筋がゾッとして

背後の…六畳間…なにか…


「恋は小さなぁ 嵐みたいにぃ♪

 とぉもだぁ〜ちも〜こぉいびともぉ〜

 うばあああってぇ〜♪」


天井が抜けたかと思いました。

大轟音!!

立っていられません!!

思わず頭を手で庇ってその場にうずくまります。

アパートが崩れる!?

轟音が止みません

何かが部屋の中を暴れまわっているみたいに

そこら中から

爆音!?騒音!?破壊音!?


「怖いよ!怖いよ!!

 あいきゃんすとっぷ!ざ、ろんりねー!!

 彼を返して!悲しみがとまらなぁいいい!!」


キッチンの方でも扉が激しく開いたり閉じたりする音

シンクが熱いお湯をかけた時みたいにボンボンと鳴り

ドタドタと誰かが駆け回る足音がします!

「あいきゃんすとっぷ!ざ、ろんりねー!!

 誰かぁ助けて! 悲しみがとまらない!!」


歌っているというよりはもう怒鳴っています

止まらないんです

もう自分が何をやってるのか

私の頭上では何か

重いものが揺れているような

ギシギシ…ギシギシ…って


「あいきゃんすとっぷ!ざ、ろんりねー!!

 こぉらえきれぇず 悲し!!」


誰かが私の手を…

誰かが頭を庇う私の手を触りました!?

「いやだぁ!やめてよぉ!!」

それを振り払おうと私はもがきます

しかし、私の手を…あっちも手です!

ぎゅって!ぎゅって握ってます!!

泣く!気持ち悪い!吐くよ!!

「俺だよ!おーい!

 お・ち・つ・け!!」

「うぁ〜ん!本当のお母さんは手が真っ白だよぉ!!」

「七匹の子ヤギかお前は!?」

そのツッコミ!その声は!?

「C君!?」

驚いて顔を上げると

私の後に探索へ出るはずのCがいました。

「10分経って出発してきたんだ。

 何があった!?

 ここはある霊能者によって除霊済みのスポットだったはずなんだが」

「わかんない!わかんないよ!!

 部屋に入ったらこんなんなってた!!」

C君が来てくれた安堵と怖さで涙が止まりません。

「立てるか!?ここはヤバい!!逃げる一手だ」

「う、うん」

そろそろとC君に手を貸してもらい立ち上がります

腰は抜けてなかったみたい…です

「ゆっくりと部屋の外へ向かえ!

 俺は背後を守りながら行くから頑張れよ!」

「う、うん…」

足許が…床が揺れているみたいで上手く歩けません。

寒さがさらに増しているようで

氷点下とかに届いているんじゃないでしょうか

視界にもなにか黒い塵みたいなものが無数に舞っている

漂っているみたい…

ガチガチに…寒さと恐怖で凍えた手足を無理やり動かし

出入り口を目指します。

「それにしてもなんてぇ怨みだ…

 こいつはもう呪詛と呼んでも大差ないな…」

背後で

戦慄のあまりに言葉を漏らすC君の声が聞こえます。

「これだけ濃いと持ち…」

「なに!?C君!?『も』って何!?」

今、物凄いことをC君言おうとしなかった!?『も』って何!?

「いいから逃げることに専念して!!

 後の事は後で何とかすればいいから逃げて!!」

C君の剣幕に押され

私はドアを開けて室外へ出…

短い廊下を階段に向かって歩きます

まだ地面が揺れてる…

「階段気をつけろ!転ぶなよ!!

 転んで落ちたらお姫様抱っこの刑にするからな!!」

「そ、それだけは…」

私達は転ぶことなく無事に階段を下り

一秒でも早くアパートの敷地から出るべく走りました。

「はやく!はやく来い!!」

「急げ!絶対に後ろは見てくれるなよ!!」

緑の金網フェンスの向こうからA君B君D君が手招きをしてます

後ろを…見るなって!?

気になってしまうじゃないですか!?

「絶対に見るな!!」

私の隣を走るC君が怒鳴りました。

「ひゃぁあああ!!」

何かが追いかけてくるんだ!凄いのが!!

得体の知れないもの

見ることも許されないものに追われるというのは

全力を出し切れないものですね

もっと早く走れるはずって頭で思っているより

遅くしか走れない…

もっと…もっと!

アパートの門柱が!あと少し!!

「気を抜くな!車まで全速で走るぞ!!」

鬼ですかあんた達!?息がもう持ちませんよ!!

「死ぬ気で走れ!追いかけてきてるのは

 ウエディングドレスを着た

 首からロープ垂らしてる女の怨霊だ!!」

門のところから私と併走しているB君が

ナイス!このクソ野郎発言をしました。

「加速したじゃねぇか、もう80mだ!頑張れ!!」

60…


40…


20…


ついた!!

「早く車に乗り込め!!」

ア・バオア・クーから脱出してきて「僕には帰れるところがあるんだ」

なんてアムロみたいに悠長なこと言ってる暇はありませんでした。

本日の運転手A君が

運転席に潜り込んでキーを回し

エンジンに火を入れます。

私は後部座席のドアを開けたB君によって

小包みたいに持たれたかと思うと

やっぱり物扱いで中へ放り込まれました。

「全員乗ったか!?後ろなんか見てる暇なんかない!

 どこかにぶつける可能性有り!

 全員、対ショック態勢!!」

「全員乗った!さらに対ショック完了!!」

「行くぞ!!」

「バッチコイ!!」

A君は最初からアクセル踏みっぱみたいで

恐怖を覚える無茶な加速で発進

廃アパートから離れていきました。

しばらく走っても

A君はスピードを緩める様子はなく…

「やばい…振り切れてない…かも…」

頻繁にルームミラーとドアミラーを確認しながら

呟きました。

「ねぇ!ウエディングドレスの女ってなに!?」

B君とD君に挟まれて後部座席に座る私は

やっと小包状態から脱却して座りなおすことが出来たことで

皆に問いかけました。

「あそこで自殺した女だよ!

 長年付き合って結婚目前だった彼氏に親友を遭わせたところ

 親友と彼氏が出来てしまいトントン拍子に結婚まで進んじまった。

 それで、結婚式当日に彼氏のアパートに行って

 ウエディングドレス着て首吊った…って話だ」

「それ…私、聞いていませんけど?」

「ああ、だってあそこテレビに出るくらい有名な霊能者が

 除霊済みだから安心って言われていたからな

 教える必要もないかと…」

A君…出ないと分かってるところに連れていったのね私を…

「今、ちらりとリアウインドに見えた…な」

「やっぱり…持ち帰り…か」

Hさんに相談だな…と、

A君はため息をつき携帯を取り出しました。

私は一度も会った事ないですけど…

Hさんとは

霊能者や祈祷師という職業を持っている方ではなく

A君の知り合いで老舗呉服屋の若主人…

当主となる者は代々、

修験道を修めることになってまして

Hさんも例に漏れず、

子供の頃から修行を積んでいるんだそうです。

ただ、彼のお爺さんの代からは修験道だけではなく

仙道にも足を踏み入れており

大陸の巫術、仙術に造詣深く、

さらに武術の達人と言う

まさに人間兵器!!

そして、イケメン!(A君談)

もう!ロイ・マスタング大佐そのものですよ!

ていうか私の脳内ではHさんはもろマスタング大佐です。

「あ、夜分に恐れ入ります」

毎度のことながら腰を低くしてペコペコと電話の向こうにいる

Hさんと話すA君です。

でも、今夜はこんな時間だというのに

あっさりと電話に出てくれたなぁHさん…

「あ、はい…分かりました

 変わります」

A君は携帯を耳から離すと、

Hさんと話すように私へ差し出しました。

わ、私が…Hさんと!?

携帯を受け取り耳の横に持っていくと

私がはじめましての挨拶を言うより早く

「お前、一体何をした?」

ですよ!物凄い錆びた声!格好良いです!

絶対美形です!

「ああ、ロイ様…」

「馬鹿かお前は?」

本物よりも鋭い…日本刀並みの切れ味ですよ!

「お前…プロが寝かしつけた奴をどうやったら

 起こせるんだ?

 あの女の怒りは相当のものだ

 何か心当たりは無いのか?

 いつもと違うことは何かしていないか?」

感情が一切ない口調で用件のみ…

何か…彼女を怒らせる…

何か…って

何かした

ひとりでアパートに入ったくらい…

ああ、ええと

「杏里の『悲しみがとまらない』を歌ったくらいだけですけど?」

「………………」

あれ?Hさんが黙り込んじゃいました。

「もしもし?」

「罰として1週間憑けてろ

 来週、対策打ってやるから」

ぷつん……

「あ…」

Hさん電話切っちゃいました。

「Hさん…なんだって?」

「…1週間付けてろだって」

全員、愕然となりました。

「ど、どどどどういう!?」

運転席のA君に携帯を返して、背もたれに深く寄りかかります。

だって初Hさんですもん!

会話しちゃった♪疲れたけど…

人が余韻に浸っているのに…

「罰として1週間付けてろだって

 なにを付けてればいいんだろうね?」

質実剛健とか文武両道とか四字熟語が似合うような声でしたよ

冷たいけど冷酷じゃない…

「あれに決まっているだろう?

 車の外でヒラヒラしてる奴」

「え!?」

ナビシートのC君が親指で窓の外を指します。

後部座席に座る面々がそちらを凝視…

「……………」


「……………」


「……………」


いました。

こんな深夜に、すぐ窓の向こうに

ウエディングドレスに身を包んだ

非常識なのが

私達の乗ってる車と平行して浮遊しているじゃないですか!?

「つかぬ事をお聞きしますが…」

真顔でB君が尋ねてきました。

「あの部屋でどんな事をしてくれちゃった訳!?」

どんなって…

「杏里の『悲しみがとまらない』を歌っただけですけど…」

さっきもHさんが黙り込んじゃったんだよね…

車内に嫌な沈黙が降りました。

なに?この機が熟すのを待っているような…間は…

「お前!

 何でまた死んだ理由に!

 直撃するような歌をうたってくれるんだよ!?」×4

これが、シンクロ率400%オーバーの総ツッコミ…

「私!?私のせいなの!?」

「当たり前だろうが!霊能者が祓ったとか噂があってから

 ずっと鳴りを潜めていたのを起こしやがって!!」

「霊を起こすなんてジャ●アンだって出来ない芸当だよ」

「ジャ、ジャ●アン!?」

ああ!寄ってたかって私を…

そして私をジャ●アンですって!?

むかつく!お、おまいらだって…おまいらだって!!

「自分達だってどんな幽霊が出るのか教えなかったくせに!

 先にここで亡くなった方の事を教えてくれてれば

 あんな歌うたわなかったよ!自分達だって同罪だよ!!」

「だって有名な霊能者が除霊したって…」

「いや!出る出ない別として

 心霊スポットで歌うなんざ非常識にも程がある!!」

「へぇ!?じゃあ、死者に捧げる鎮魂歌ってなんなんですかぁ!?」

外のひらひらそっちのけで

私達、口喧嘩をはじめてしまいました。

私 VS.A,B,C,D ですよ!

なんかズルくないですか!?

それでも負けるもんかと県境を越えるまでずっと戦っていました。

「今後…お前は一生!二度と!『杏里』は歌うな!!」

それが今回の落としどころみたいです

別に『悲しみがとまらない』は持ち歌じゃないから…

「いいですよぉだ!

 今度は『テネシーワルツ』歌っちゃうもんね♪」

「同じだバァカ!!」×4

結局、ウエディングドレスの彼女…

私がお目当てだったらしく

なんででしょ?

しつこく、私の家まで憑いてきて

五日ほど滞在していきました。

毎晩毎晩、寝ている私を金縛りにして

ベッドの横にウエディングドレス姿で見下ろしてくださいました。

とても凄い形相で…

私も負けるものかと

失恋ソングを山ほど集めてきて夜中ずっとかけっぱなし

耳栓して寝る毎日でした。

五日目の夜…

彼女はいつもと違って

私を金縛りには遭わせず

ベッドの横で嗚咽を漏らし

しばらく泣いたあと

すぅっと闇に溶け込むよう

消えていきました。

それから

土曜の夜以降…

彼女は二度と出てきません。




私の自宅で起きた

彼女との戦いの一部始終を聞いた

A君達から

『鬼』とか『対幽霊音響人型決戦兵器』…

そして、

『ジャ●アン』…

『ジャ●アン』という!!

不本意なあだ名で呼ばれるようになりました。

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