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怖い話で眠れなくする!!コミュの赤緑シリーズ 暗転

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1/12
往来会ができたのは、1985年の事だ。

その年の5月、当時一介の易者であった私に、転機が訪れた。
あるところから偶然手に入れたモノにより、私の運命が大きく変わったのだ。

それを最大限に活かすため、私はこの往来会を立ち上げた。

…あぁ、私ではないか。私たち、だ。

会長ではなく、副会長という座に落ち着いたのは、何よりも自由に動きやすい立場だったからだ。
その甲斐もあり、立ち上げたときの見込みどおり、組織は着々と成長していった。

そのために、私がどれだけの苦労をしてきたことか。
往来会をここまで大きくしたのは、この私だ。
この会の全ては私のものであると言っても過言ではない。

…それゆえに、あの高城沙織という女の存在は、私には許せなかった。

2/12
ある日、会長自らがスカウトしてきたのには、驚かされたものだ。
…が、その相手――高城を見て、なるほどと納得した。
そしてそれくらいの我侭は許してやろうと思い、私は彼女を入会させる事に同意したのだ。

しかし…それが今は、本部長だ。
会のナンバー3。私の1つ下。創立メンバーであり、副会長であるこの私の、1つ下。

…これは、許されることではない。

昇進の話が出たとき、私は猛反対したが、会長は頑として意見を変えなかった。
事実、高城沙織はとても優秀だ。十分なカリスマ性もあり、人を惹きつけるものを持っている。
その点は認めざるを得ないだろう。私も伊達に副会長と言う役職に就いている訳ではない。

ただ一番の問題は…彼女が、私の言う事を聞かないことだった。

私のものであるこの往来会において、それは許されることではない。
決して、あってはならない事だ。
例え、会長の息の掛かった者だとしても。

3/12
…が、しかし。
いつか何か手を打とうと考えていたが、どうやらその必要も無くなった。

先日見えた、死相。

いつどこでと特定はできないが、少なくとも1週間以内には、彼女は死んでくれる筈。
その時が楽しみだ…。

――私はそんな事を思いながら、当の本部長室の扉をノックする。

時刻はとっくに定時を過ぎ、20時近くなっているが、急用ができた為に私はここにやってきた。
返事があり扉を開くと、中には既に藤木も来ている。

高城沙織と藤木徹。

彼らには、これから仕事をしてもらう。
拒否する事は許されない。
我が会にとって、とても大切な仕事だからだ。

4/12
高城「こんばんは」
藤木「こんばんは、副会長」

2人の挨拶を受け、私は椅子に掛ける。
私「いや、すまんね。こんな遅くに呼び出して」
高城がすぐにお茶を出してくれる。

藤木「いえいえ、全然平気ですよ。ねぇ、本部長」
隣に座りながら藤木が言う。
誰もコイツの時間の心配などしていない。

高城「…何か、急な用件が?」
向かいに座った高城が尋ねてくる。
私の「すまない」に対して何も言わないのは、ちょっとした反発心かも知れない。

私「あぁ。私の部下からの報告でね…」
私は高城を見据えて言う。
…意図は伝わるだろう。

私「例の神尾という学生のことだが、今日の午後、彼女に汐崎祐一が接触してきたのだよ」

5/12
一瞬。
ほんの一瞬、ほんの僅かだが、高城が息を呑んだのを確認できた。

…よし。満足できる反応だ。
私は内心ほくそ笑み、言葉を続ける。

私「…どう思うかね?高城君」
ジッと彼女を見つめる。
横に居る藤木も一緒になって彼女を見る。
すると彼女は一時考えた後、こう答えた。

高城「残念ですね」

私「…うむ」
流石、というところかな。
「仕事の話として、スカウトに行ったのでは?」と返してくる事も予想していたが、そんな下手な事は言ってこなかった。
この返事からは、もはや汐崎の事をフォローする気が無いようにも見えるが、果たして…?

私「私も残念に思うよ…。彼は、勝手なことをする人間とは思っていなかった」
ため息混じりに言う。
藤木「あの汐崎部長が、ねぇ…」
藤木も、私に合わせるように呟く。

6/12
高城「全て忘れて、大人しくしていると思ったのですが…。申し訳ありません。私のミスです」
座ったまま、頭を下げる高城。
普段の格好なら、その胸元がかなり魅力的なことになっただろうが、今日は落ち着いた格好をしている。

…相手が、私と藤木だからだろう。
まぁ、私はこの歳だ。それでどうとも思わない。
隣の藤木は、残念がっているだろうが。

私「ミスという程のことでもないさ。問題は、これからどうするかだ」
高城「…はい」
――素直だ。
そう、いつもこうして素直にしていればいいものを…。

藤木「こうなった以上は、アレですかね?自分がやりますよ」
高城「…アレとは、何のことかしら?」
バカな事を口走り、高城に睨まれる藤木。
…コイツは本当に頭の悪い男だ。

7/12
私「汐崎には…しばらく本部に居て貰おうと思う」
高城「本部に?」
私「宿直室があっただろう。何日間か、そこに…ね」
高城「…そうですか」
事実上の監禁…いや、軟禁だが、決して怪しまれることではないだろう。

高城「どれ程の期間のおつもりですか?」
私「そうだな…」
期間は決まっている。
私「1週間、というところだろうな」
それだけあれば良い。それだけあれば…この女は死ぬ。
汐崎を片付けるのは、その後だ。

今大事なのは、汐崎と桐谷隆二が接触する事を防ぐ事。
汐崎に全ての真実が伝わることは、防がなければならない。
往来会の秘密を、外に漏らす訳にはいかないのだ。

もし汐崎が秘密を知ってしまったら、彼の口も塞がれる…

私には既に彼を生かしておく気は無いが、高城はその点を危惧しているだろう。
それ故に、汐崎を軟禁することに反対はしないはずだ。
管理下に置くことで、彼の身の安全が約束されると信じているだろうからな…。

8/12
藤木「それじゃ、明日ここに来たときに話をつけますか」
私「いや…」
それでは遅い。

私「今日、これから彼の家に行って、連れてきてくれるかね」

藤木「これから、ですか」
私「そう。早いほうが良い」
藤木「分かりました。それじゃ、今から行って、力尽くでも連れてきますよ」
自分の土俵に近い話とあって、この男はやる気を出しているようだ。

私「高城君も一緒に行ってくれるかね?その方か彼も来やすいだろう」
当然…というつもりで彼女に言う。
だが、その返事は意外なものだった。

高城「…お断りします」

藤木「は…?」
私「…ほう」
ここに来て、こうも挑戦的な態度を取るとは思わなかった。
何か、考えがあるのだろうか?
一抹の不安がよぎる。

9/12
藤木「本部長、それはマズイですよ…」
私「…なぜかね?」
少々威圧的に質問をする。
余計な事を言うようなら、この女も一緒に――

高城「…力尽くと言う事なら、私は賛同できません」

――あぁ…そういう事か。

私「ハハハ…それは言葉のアヤというものだろう?」
そう言いながら藤木を見る。
藤木「勿論、平和的にいきますよ。当たり前じゃないですか」
ヤレヤレといった感じで応える藤木。

…やはり、コイツは分かっていないな。
高城は、我々が桐谷達夫に対して「力尽く」の行動をした事を承知の上で、言ったのだ。

これは、皮肉以外のなにものでもない。

10/12
まったく、今この状況で、よくも言えたものだ。
信念を曲げない凛とした態度は、評価しよう。
会長が彼女を選んだ理由がよく分かる。

…しかし、だ。
長い物に巻かれることを知らないのでは、駄目だ。
やはり、私にとってこの女は邪魔以外の何者でもない。

私「暴力は一切無しだ。…藤木君、分かったかね?」
そもそもそのつもりなら、藤木だけで行かせる。
藤木「勿論ですよ。いやだなぁ、副会長まで…」
高城「…そういう事でしたら、直ちに向かいます」
私「あぁ、頼むよ」
私がそう言うと、2人が席を立つ。

私「うちの者に車を出させよう。それで行きたまえ」
高城「はい」
藤木「はい…っと、そうだ」
何か思い付いたように、藤木が言う。

私「ん?」
藤木「汐崎の娘は、どうします?」

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私「ふむ…」
藤木「一緒に連れてきましょうかねぇ?」
どことなく嬉しそうに言う藤木。
…何を考えているのやら。

高城「…」
高城が何か言うかと思ったが、彼女は何も言わずに机の上の片付けをしている。
私「必要であれば、連れてきても構わんよ」
藤木「やっぱり、そうですか。ですよねぇ。その方が、汐崎も素直に言うことを聞きそうだし…」

私「…君に任せるよ」
藤木「了解です。任されました」
ニヤケ顔で言う藤木。
高城が軽くため息を付く。
…彼女は、私の意図に気付いているかも知れない。

やがて準備を済ませ、2人が部屋を出て行く。
私も自宅に戻り、連絡を待つ事にした。

――何も問題は無い。
全て、予想の範囲内だ。

12/12
――
…残念だった。

汐崎の家に向かう車の中で、私は思う。
彼がこういった行動を起こすとは、予想外だった。
ああまでして、厳しく命令したのに。
了解して、全て忘れると言ったのに…。

もはや、私がフォローできる問題では無くなってしまったかもしれない。
副会長に目を付けられては、この先は無いだろう。
後はできるだけ穏便に事を進めて、左遷程度で済むようにするくらい…かな。

私「バカね…」
車窓から外を眺めながら、呟く。

私が描いていた夢。
それに対して、この現実。
車に乗せられて、言われるまま仕事に向かう私。
…もう、どうしようもないのかな。

何だか、少し疲れてしまった。
今の私には、組織と戦う理由も、意味も無い。…守るものがある彼とは違って。
ただ流されるままに…嵐が過ぎ去って、また元の落ち着きが戻ってくるのを待とう。
今は、意思を持たない兵隊になろう…。

私は目を瞑ってシートにもたれかかり、汐崎の家に着くのを待った。

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