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怖い話で眠れなくする!!コミュの赤緑シリーズ 対峙(後)

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神尾さんの部屋の前。
俺「ここだよ」
俺はチャイムを鳴らす。

ピンポーン
……

俺「あら?」

ピンポーン
……

応答なし。

俺「出ないな」
舞「…」
もう一度と、とチャイムを押そうとしたとき、姉がドアノブを掴む。
舞「開いているわ」
俺「え…」
そのままドアを開く姉。
俺「あら、本当だ」

2/12
俺「無用心だなぁ。姉貴が来るからって開けておいたのかな」
舞「出て行った人が閉めなかったから、開いているだけよ」
俺「ほぇ?」
それでも中にいる人が閉めるんじゃ?と思ったが、まぁどうでもいいか。

玄関を見ると、見覚えのある靴が置いてある。古乃羽のものだ。
部屋の中は静かだけど、居るのかな?
俺「こんばんはー」
声を掛ける…が、返事はない。それはそうだ。チャイムを鳴らしても無反応だったし、誰も居ないのか…

…って!?
俺はここにきて、やっと嫌な予感というものを感じる。何と言う鈍感さだ…!
なぜ古乃羽から返事が来ないのか?
なぜドアが開けたままになっているのか?
靴はあるのに、こちらが呼びかけても何の返答もないのは?
そして姉の言った「何かあったら」って…何があるんだ?
俺「古乃羽…!」

俺は慌てて神尾さんの部屋に駆け込む。
見覚えのある神尾さんの部屋。

そこに2人が倒れている。まさか、死――

いや…バカな!

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俺「古乃羽!」
すぐに古乃羽の元に行く。
一体何があった?メールは何だ?玄関が開いているのは?
古乃羽を介抱しながら、軽くパニックになる。

すると姉がやってきて古乃羽の元に屈みこみ、熱を測るように額に手を当てた。
俺「何が?何があったんだ?2人は…」
舞「大丈夫。気を失っているだけ…」
そう言うと姉はゆっくり立ち上がり、今度は神尾さんの元に行く。

俺「だけっ、て…」
古乃羽を抱きかかえながら姉に言う。
舞「美加さんも無事ね」
俺「無事?これで無事?一体――」
舞「2人をベッドに運んであげましょ」
俺「あ…あぁ…」
確かに床に寝転がしておくのも何なので、2人をベッドに運ぶ。

舞「怪我も無いみたいね。よかった…」
ベッドに寝かせた2人の髪や服を整えながら、姉が言う。
俺「あぁ、そうだね…」
舞「…怒っている?」
俺「いや、何が何だか…」
舞「ごめんね。2人の気が付いたら、話すから…」

弱弱しく言う姉。そんな風に言われると、何も言えなくなる。
俺は大人しく、2人の意識が戻るのを待った。

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どこをどうしたのか知らないが、姉が「触った」ためか、2人はすぐに目を覚ました。
気が付いた2人は俺たちが居ることに驚いた様子だったが、そんな2人を姉が落ち着かせ、尋ねる。
舞「2人とも、何があったのか覚えている?」
神尾「古乃羽、覚えてる…?」
古乃羽「…うん。美加は?」
神尾「私も覚えている。佳澄が――」
2人がここで起きたことを話してくれる。

白谷さんのことは俺も知っていた。2人の友人、ってレベルだけど。
その白谷さんに古乃羽が異常なものを感じ、更にそれを察した神尾さんがとっさに姉に電話をした、ということだった。
古乃羽「佳澄、今まで何ともなかったのに…突然、すごく嫌なものが見えたの」
舞「見つからないように隠していたのね。でも…」
姉が棚の方を見て、言う。
舞「あの子がそれを解いてくれたみたいね」
棚の上には、俺も見覚えのあるヌイグルミが置いてあった。

神尾「ラット君…」
ラット君。そうだ、あの少女はそう呼んでいた。
神尾さんがベッドから立ち上がり、ヌイグルミのところに行く。
神尾「守ってくれたんだ。ありがとう…」
手に取り、ギュッと抱きしめてキスをする。一瞬、ラット君が照れたように見えたのは、まぁ気のせいだろう。

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俺「それで、電話でおかしいことに気付いて、姉貴はここに来ようって言ったのか」
神尾「気付いてくれて良かった…舞さん、ありがとう」
古乃羽「ありがとう。雨月君も、ありがとうね」
神尾さんと古乃羽がお礼を言う。
そう、気付いてよかった。助かってよかった…

でも――

神尾「舞さんが来るって分かったから、佳澄は逃げて行ったみたいね」
古乃羽「佳澄、舞さんのこと知っていたのかなぁ」
それも疑問だ。
しかし俺が不可解に思ったのはそこだけじゃない。

舞「佳澄さんと少し話をしたのよ」
姉が言う。
古乃羽「あ、じゃあそれで分かった…のかな」
神尾「舞さんには敵わないと思った、ってこと…ね」

それなら余計おかしい。
敵わないと思って、なぜ2人を放っていく?利用しようとしないものか?報復が怖いとか、そういうことか?

考えすぎかも知れないけど、何となく古乃羽と神尾さんの言い方も不自然だ。
おかしいことに気付いていて、触れないように、誤魔化しているように思えてしまう。

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舞「…光一」
俺「うん…?」
黙ってる俺に、姉が声を掛けてくる。

舞「気になることがあったら、言っていいのよ?」
俺「ん…」
古乃羽と神尾さんが何か訴えるような目でこちらを見ている。
腑に落ちない点があるのは確かなようで、なんだか色々と託された感じだ。

俺「じゃあ…。えっと、電話でさ、どんなこと話したの?」
軽いことから聞いてみる。
舞「簡単な挨拶。私のこと、名前は知っていたみたいね。ハッキリと嫌いって言われたな。それと、2人のことで軽く脅されたわ」

脅された。2人がどうなってもいいのか、と脅されたのだろう。
そうだろうな。姉のことを知っていたなら、そうするのも分かる。
それで…?

俺「それでなんで…2人に何もしないで去って行ったのかな」
舞「…」
俺「それと、なんで姉貴は…急がなかったの?」
一番聞きたかったことを聞く。この事態に、なぜあんなにゆっくりと来たのか?
話を聞いてれば、俺はもっと…死ぬほど急いで駆けつけただろう。取り返しのつかないことになる前に。

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急いできた訳じゃないことを、2人は知らない。
だから2人の前で聞くべきじゃないとも考えたけど、敢えて聞いてみた。
姉のことを信じているから。これからもそうありたいと思っているから。2人もきっと同じだろう。

車で急ぐと危ない。事故を起こすかも知れない。そう思ったから?
そんな答えは聞きたくない。
いくら急いでいたって、俺はそんな運転はしない。それに車以外のところでも急げるところはあったはずだ。
あんな…慣れない冗談を言う時間もなかったはずだ。

しばしの沈黙。
姉に対する疑惑…嫌だ。そんなの感じたくない。俺は姉貴を信じたい。

舞「どれだけ急いでも…」
姉が口を開いた。
舞「間に合わないと、すぐに分かったわ。佳澄さんには自信と余裕があった」
そう言いながら姉貴は立ち上がり、窓に向かう。
舞「電話をしながらだって、彼女は行動に出られたと思う。…もし私が動く気配を見せたら、すぐにでもね」
姉はカーテンを少しめくり、外を眺めながら話を続ける。

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俺「だから…諦めた?」
仕方ないのかもしれない。どれだけ急いでも無駄なら、確かにそうかもしれない。
でも、諦めては欲しくなかった。2人に危険が迫っていたんだ。たとえ無駄と分かっていても、諦めて欲しくなかった。

舞「すぐに助けに駆けつけるのは、諦めたわ」
俺「…」
舞「でも、ただ諦めるだけじゃ2人が危ないと思ったから…別の方法を探したわ」

何か言い難いことがあるのか、そこで姉は黙る。
でも何か良い方法があって…それが上手くいってこうなったのなら、それを聞かせて欲しい。この不信感を取り払って欲しい。
俺「別の方法って?」
俺は話を促す。…そしてすぐ後で、俺はそれを後悔する。

舞「佳澄さんって――」
俺たちに背を向けたまま、再び話を始める姉。
舞「ものすごくプライドが高くて、自己中心的で、欲しいものは何をしてでも手に入れるタイプ。そして何よりも私のことが嫌い。話をして、そう分かったわ」
…そんな人だったのか、彼女。
舞「だから、ね…」
少し言い淀むが、続けてこう言った。

舞「そんな大嫌いな私のお下がり…私が使い古して捨てたものは、絶対に拾わないと思ったの」

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俺「え…?」
何故か姉の声が少し震えている…。言っている意味もよく分からない。お下がり?使い古して…捨てたもの?
舞「人を物か人形のように扱う彼女は、すぐに分かってくれたわ」

あ…!
舞「だから彼女にこう言ったのよ。光一と2人は私の――」
…ダメだ!

俺は慌てて立ち上がる。と同時に神尾さんが言う。
神尾「古乃羽!ほら…ここと台所、片付けないと」
古乃羽「あ…うん、そうだね。全部出しっぱなしだ」
すぐに答える古乃羽。

俺「姉貴、帰らないと…俺、お袋に何も言ってないから心配してるよ」
そう言って姉の手を取り、玄関に引っ張っていく。
俺「神尾さん、古乃羽、また今度…ごめん!」
古乃羽「うん。気を付けてね」
神尾「はーい。またねー」

外に出て、そのまま車に向かう。
姉は手を引かれるまま、何も言わない。

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姉を乗せてエンジンを掛け、車を出す。
助手席の姉は、ただ俯いている。

なんてことだ。こんな…

舞「私ね…、光一と2人は、私の…」
姉がぽつりと喋りだす。
俺「いいって!分かったから」
舞「…」
姉は口を固く結んで言葉を切った。
そしてその目から一筋だけ、涙が流れていった。

本当に、なんてことだろう。
姉が何をしたのか、よく分かった。

俺、古乃羽、神尾さんの3人を自分の所有物――言葉を借りれば"自分の人形"であると、相手に伝えたのだろう。
そしてそれを捨てた。一切の助ける素振りも見せず、もう要らないものとして捨てたのだろう。そんな物はもう要らない、と。
そうして相手が2人に興味を無くすように…2人の"人形としての価値"を失わせた。
相手はそのプライドの高さから、人が捨てたものは拾わない。ましてや嫌いな人が唾を付けて捨てたお下がりの人形など、決して拾わない。そう考え、それに掛けたのだろう。

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姉の性格から考えると、例え誰であれ、人のことをそんな風に言うなんて考えられない。口が裂けたって言わないはずだ。
白谷佳澄。彼女はそれを言わせた。一体何の目的で、何をしようとしていたのかなんて俺には分からないが、ハッキリと分かることが1つ。

この件で一番傷付いたのは、姉だ。

様子がおかしいと気付いていたのに、最後まで分からなかった。
姉は怖かったのかもしれない。部屋に行って、2人が無事かどうかを確認するのが。
でも逃げる訳にもいかなかったから、俺を一緒に連れて行ったのだろう。

そして…あの場で言わせてしまうところだった。
身を切る思いで言ったであろう言葉を、また言わせてしまうところだった。
自分がしたことを隠せない。悪いと思う事をしてしまったら、それを隠しておけない。姉貴はそんな性格だ。

謝らないと…。でもこういうとき、何て言えばいいのだろう?
気付かなくてごめん?一瞬でも疑ってごめん?
うーん…違うな。ここはやはり思ったことをそのまま…

俺「あのさ…」
舞「…」
俺「ありがとう…」
こういうのは中々照れくさい。

12/12
舞「…」
姉は何も言わない。うーん、困ったぞ…。
一筋とはいえ、姉の涙なんて何年ぶりに見るだろう。こういう時にはどうすれば良いやら、まったく検討がつかない。

俺「えっとさ…」
舞「いいの」
やっと喋った。
舞「みんな、とても大切な人…」
俺「うん…」

舞「…少し寝るから、着いたら起こしてね」
そう言って姉はシートに身体を沈める。
俺「ん。もうすぐ…」
っと。
姉はすぐにスヤスヤと眠りだした。

最近色々なことがあって、姉のことを何だか遠い存在に感じていた。
病気が治ってから、急に人が変わってしまったように思っていた。

でも違った。寝顔を見れば分かる。
真面目すぎて、傷付きやすいところがある。軽い冗談でも言うのは苦手。
お袋にワガママは言わないけど、俺には言う。照れくさいことがあると、話を逸らす…場合によっては寝ると言って本当にすぐに寝る。
昔から何も変わっていないじゃないか――。

俺はゆっくりと車を走らせ、遠回りで帰ることにした。

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