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『紅茶とあいつ』コミュの『紅茶とあいつ』(第41話)

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11年前

ジングルベールジングルベール鈴が鳴るうー♪


家の中でクリスマスを待ちわびる楽しい歌声が響いていた。


『鈴ちゃんはいいなー…クリスマスの歌の中には鈴って出てくるし、クリスマスツリーにも沢山の鈴が飾られて…クリスマスは鈴ちゃんの日みたい。いいなぁ…』


『鈴クリスマスダイツキー!!!』


『小雪もスキだもん!ぷん…』


『なんだ小雪?お姉ちゃんのくせにすねてるのか?』


『すねてないもん。』


『小雪…鈴ばっかりじゃないんだぞ!クリスマスは小雪の日でもあるんじゃないか?』


『え…どうして?お父さん?』


『クリスマスには白い白い雪も欠かせないだろ。小雪が沢山降ってくれないとサンタさんもそりでプレゼント届けに来てこれないからな。』


『そっかー!!!小雪もクリスマスに大事なんだねー!小雪やっぱり小雪って名前で良かった!!』


『鈴の鈴の!!クリスマスは鈴のー!!!』

『お姉ちゃんのだもーん!』


『鈴の…すず…す…ず…すずのー!!!うわぁぁーん!』


『ジングルベールジングルベール鈴が泣くー…うきゃきゃきゃ♪』

ちなみにこの頃はまだ私のほうが少しだけ強かった。


『うわぁぁん!お母さんお姉ちゃんがー!』


『小雪ー!あなたお姉ちゃんでしょ!泣かさないっ!』


『…………だってだって…鈴ちゃんだって…うわぁぁん!!』



『ハッハッハー!喧嘩か…よしよし♪姉妹はやっぱりこうでなくっちゃな。』


お父さんは喧嘩した私達を見て笑って喜んでいた。


『もうお父さんったらいつもそう…あーもう喧嘩やめないとケーキなげるわよ〜クリスマスくらい泣かないでちょうだい!!』



11年前のクリスマスイブ…


幼くて記憶はもちろん曖昧だけど


私達は家族四人でクリスマスの準備をしていた。


私と鈴ちゃんとお父さんでツリーの飾りつけ、お母さんはケーキを作っていた。



お母さんは今と一緒でさばさばした性格で少し厳しい一面もあるけど子ども思いのお母さん…


お父さんはどんなときでも笑っていて…励ましてくれて、温厚で優しいお父さんだった。


ガシャン…ベチャ


『あらやだ!!!本当にケーキ落っことしちゃったわ。』


『あー!!!ケーキー!!!お母さんどうするのー!?』


『あらぁ…困ったわ…ぐちゃぐちゃ……あ…こらー鈴!床に落ちたクリームなめない!……ごめんなさい…仕方ないわね…お母さんちょっとケーキ屋さん行って新しいの買ってくるわ…』


『せっかくお母さん作ってくれたから小雪落ちたケーキ食べるよ!ね!鈴ちゃん!』


『うん!おいしいよ!』



『鈴!!汚いからなめちゃダメ!口の周りクリームだらけよ。』


『サンタサンタ!!鈴サンタ!』


『ホントだー鈴ちゃんサンタさんだーアハハ♪』



『お…お前の希望通り仲直りしたじゃないか。ははは…せっかくお前が作ってくれたんだ…食べれるとことって食べよう!』


『あなた……ありがとう。でもせっかくのクリスマス…この家で過ごす最後のクリスマスになるから、綺麗なケーキ食べさせたいわ!』


『そうか…なら近くに俺が買いに行ってくるよ。』


『あーなら!まちの、“サムシン・グ・エル”がすっごい美味しいみたいだからそこのがいいわ。』


『近くじゃだめか?場所が分からないから。』


『…うーん…近くのはいまいちなのよね!』


『お母さんとお父さん行っておいでよ!二人でお留守番しとくよ。ね…鈴ちゃん!』


『美味しいよ!』


『もう鈴ちゃんったら!鈴ちゃんなら小雪がちゃんと見とくし大丈夫だよ…火も使わない!』


『そう?まぁ一時間くらいだしね…小雪鈴ちゃん…お利口にできる?』



『できるー!!』


『よし…いいか小雪と鈴!!お父さん達が帰ってきたときはきっと雪も降り始めて玄関に飾った鈴がリンリン鳴る。今日の夜サンタさんをお出迎えするためのパーティーの始まりだ。良い子にして待ってるんだぞ!』


『はーーい!!』


クシャクシャ


お父さんは私たちの頭をなでてにっこり優しく微笑んだ。



この微笑みが私達が見る最後のお父さんの微笑みなんて知るよしもなかった。


********************

ブ〜ン


お父さんとお母さんはケーキを買い終え、車をはしらせていた。



『あー!本当ばかばか!クリスマス当日にケーキなんて無謀だったわ…どこも売り切れてるわよね…全く考えつかなかった…たいへん!!もう二時間以上たってるわ。二人待ちわびてるわよね。』


『まぁまぁ…結局ケーキは買えたんだし良かったじゃないか!お前が作ってくれた白いケーキに、買ったチョコケーキ…あいつら喜ぶぞー!!』


『本当…喜ぶ顔を見たいと思うとついはりきっちゃって…近くにしとけば良かったのに…ごめんねあなた!』



『人を喜ばせるために頑張るところ…好きだよ。』



『え?何いきなり…///』


『たまには言わないとな…子供ができるとなかなか言えなくなる。お前は?』


『…も…もちろん…好……きよ…』



『言わなくても知ってるよーん。』


『…なによもう////』


『ははは…
お前と小雪と鈴がそばにいる限り俺は幸せなんだ…そばにいるってのは一緒にいるっていうより、心がそばにあるってことな…だからお前が言葉に言わなくても、心がそばにある限り分かってるから…大切な人と心がそばにあって通じ合う…俺にとってこんな幸せなことはないんだ。』



『うん…あなたのそういうとこ…』


『好きだもんなお前…』


『もう!!!言うな!』


『お前は照れくさい言葉言うの苦手だから言ってやってんの。』



『ふんだ……エヘヘ…ほら…子供たち待ってるわ…いそご!!!』


確かな幸せが


間違いなくここにあった。



お父さんとお母さんは愛し合って


私と鈴ちゃんに沢山の愛をそそいでくれて


私と鈴ちゃんもまたお父さんお母さんが大好きで…


はっきりした形はなくても


この気持ちこそが



私達の幸せ…



同じ屋根の下で一緒に過ごすという形以上に


心と心が通じあうこの気持ちこそが……




…だけど


大切な人を失うことは


この気持ちが確かなものでも


その気持ちを見失って、壊してしまう程に



私たちにとっては



かけがえのない形だったんだ。


*******************

『お父さんとお母さん帰ってこないねー鈴ちゃん。』



二人で窓から外を眺めていた。


『お姉ちゃん!消えたよ…お星様……』


雲が冬の空に輝く星を隠す。


『歌お!鈴ちゃん!』

『うん!』


ジングルベールジングルベール鈴が鳴る〜♪
ランランラーン♪ラランランランサームシングーエールーースー♪〜〜〜〜〜

長い長い時間をただ歌い続けた。


予感なんて何も感じていなかった。


だってまだたったの5歳と4歳だったから。


『お姉ちゃん!!まだかなぁ。』


『ぅん…きっともうすぐだよ!!!さぁ…もう一回!』


ジングルベールジングルベール…………

歌をさえぎるように冷たい風が窓から吹き込む。




キキーン


ドーーン




知らされるまで何も知らない。




雪降らないね…


鈴鳴らないね…


お父さん…



私達はそうつぶやいて、ただずっとずっと帰りを待っていたんだ。


…つづく

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