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日本企業の動きコミュの148.なぜ君たちは「世界の中心」に来ないのか (孫正義)

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 コンピューター、ソフトウエアの卸売り事業で起業してから32年。数々の修羅場を経験してきたソフトバンク社長の孫正義氏が再び大勝負に打って出た。今年7月には1兆8000億円の巨費を投じて米携帯電話大手のスプリントを買収。「世界一の立派なネットワークを作る」(孫社長)という目標に向かって歩みを速めている。司令塔を置くのはIT(情報技術)産業の世界的な聖地である米シリコンバレー(カリフォルニア州)だ。ここに構えた新たなオフィスで、ソフトバンクの「これから」、そして自身の経営観について語った。

 現在、ここ(シリコンバレー)にいるのは約100人ですが、総務の担当者には初めから隣のビルを含めて2棟を押さえるように指示しました。担当者は「まだ人も(たいして)いないのに、ビル2つですか」と驚いていましたが、すぐに手狭になります。新たな場所を探すのは無駄が多いですからね。ここが(ソフトバンク、スプリント両社の)本拠地になっていくと思っています。

■シリコンバレーを「本社」に

 両社から携帯端末やネットワーク関連、アクセサリーの人材が続々と集まってきます。スプリントのスティーブン・バイ最高技術責任者(CTO)もここにオフィスを移します。技術戦略はシリコンバレーで練ることになるでしょう。僕自身も定期的に通いますし、僕のいるところに幹部が集結し、そこが(実質的な)本社になるのです。

 すでに(9月の)オフィス開設前から4、5回、スプリントの幹部をシリコンバレーに集めて経営会議をやっています。スプリントはカンザス州に本社を置き、立派なキャンパスや役員室もある。

 大勢の社員もいて登記上の本社を変えるつもりはありませんが、僕自身は「あそこには行かないよ」と思っています。実際に足は運んでいません。

■ぬるま湯につかっていては意味がない

 カンザスではスプリントは「大名」です。田舎にいれば心地いい。ただ、カンザスの大名であっても米国の一番ではありません。心地よいぬるま湯にじっとつかっていても意味がないと思うのです。一方、シリコンバレーは世界のITの中心地です。米国最大の成長エンジンがここにあるのです。

 もし、(ソフトバンクやスプリントが)音声の電話の会社だったら、本社はニューヨークでもシカゴでもカンザスでも、どこでも構わない。ただ、我々がやろうとしているのは、モバイルインターネットです。(2006年に)英ボーダフォンの日本法人を買収したその日から、「モバイルネット」と言ってきました。

 当時、日本ではこの話の将来性は通じませんでしたし、いくら話しても記事にしてもらえませんでした。まだiPhone(アイフォーン)もありませんでしたからね。でもiPhoneが出てスマートフォン(スマホ)が普及し、ようやく理解され始めたように感じます。

 そのネットの中心が同じ米国にあるのに、なぜ(スプリントは)わざわざ離れたところ(カンザス)で戦略を議論しているのでしょうか。

http://www.nikkei.com/article/DGXBZO64015920T11C13A2000000/

 物事(の動きやスピード)は距離の2乗に反比例します。情熱も同じです。シリコンバレーにはアップル、フェイスブック、グーグルといったIT企業がみんな本社を構えています。

■優れた起業のプラットフォーム

 ここにいれば世界中から(人や情報が)集まってくるし、「あした、朝飯でも食おうか」とメールを1通送れば、すぐ人に会えます。そこにスプリントも来なければダメだし、日本からも(幹部を)20人くらい連れてくるのです。

 米国には優れた起業のプラットフォーム(基盤)があります。オープンで公正、そして合理的です。僕自身は16歳の時に米国にきて、大学在学中に起業した経験があります。

 日本を出発するとき、空港で泣き崩れるお袋に「大学を卒業したら必ず戻ってくる」と約束しました。だから米国の会社で採用したナンバー2にも「卒業後は(経営を)任せる」と話し、実際にそうしました。

 でも、現在、何の制約もなく起業するとしたらどうでしょうか。日本は自分が生まれ育った国で愛着がありますし、大みそかには紅白歌合戦を見ながら過ごしたい。でも、やはり起業という観点では米国でしょうね。そういった意味では日本には改善すべきポイントが多くあるように思います。

 シリコンバレーについて話をするのであれば、アップルについても触れましょう。

 日本ではiPhoneを(ソフトバンク、NTTドコモ、KDDIの)3社が販売する体制になり、通信会社にとっては差異化の手段でなくなりました。これが2、3年前だったら(ソフトバンクにも)相当の打撃があったと思いますが、今は「プラチナバンド」も開通して格段につながりやすくなっています。健全な競争は必要でしょう。

■ジョブズ氏は特別な輝きを放っていた

 アップルそのものについて言えば、誰であってもスティーブ(・ジョブズ前最高経営責任者=CEO)の後を継ぐのは大変だなと思います。スティーブはやはり、特別な輝きを持っていました。今から何百年たっても語り継がれる人物でしょう。人生の長さが限られていた分、その日々に真剣に向き合っていました。やはり天才だと思います。

 スティーブの遺志を継いで(ソフトバンクが)イノベーティブ(=革新的な)な商品を出すかどうかですか? 答えはイエスであり、ノーでもあります。

 我々はハードウエアのメーカーではありません。世界中のハードメーカーが競って作るものを、お客さまの要求に応じて提供する使命があります。ハード専業、基本ソフト(OS)専業の企業の優れた成果物を提供していく立場です。

 我々の本業は通信ネットワークを世界一優れたものにして提供することです。ただ、ネットワークが単なる「パイプ」になってしまうのではつまらない。世界一の立派なネットワークに加えて、ユニークな商品も続々と増やしていきたいと思っています。その組み合わせをどうするかが大きな課題なのです。

http://www.nikkei.com/article/DGXBZO64015920T11C13A2000000/?df=2

コメント(1)

(なぜ君たちは「世界の中心」に来ないのか)(下)孫正義社長語る 生き残るため 僕は怒鳴る

 ソフトバンクが昨年買収した米スプリントの社員にスピーチをする機会がありました。「ひとつのチームになって、頑張っていこうね」――。こう呼びかけたのには理由があります。

かつてハイテク見本市「コムデックス」の運営会社や出版社ジフ・デービスの買収を通じ米国進出した際の教訓です。僕が一人で飛んできて企業を買い、経営は基本的に米国人に任せました。「あまり口出しすべきでない」と思ったのです。

 これでは投資家にすぎず、経営を変えて大きく飛躍させるのは難しい。

 もちろん成果はありました。インターネットの世界を知り、米ヤフーへの投資にもつながったからです。それでも(一連の買収には)深い反省が残りました。ネット時代の地図とコンパスを得たのに、腹のくくりかたが足りなかったのです。

 だから僕は怒鳴ります。遠慮せずに意思を伝える。それをスプリントでもやり始めています。机をたたき、大声を張り上げ、ガツンと言います。幹部らも目を白黒させていると思います。

 同社の経営会議では広告費について興奮して話をしました。広告効果が低いため、今の代理店の契約をすべて打ち切るよう指示しました。ゼロベースで選び直します。

 こんなふうに経営スタイルを変えた契機は、社運を賭けた(ADSLの)「ヤフーBB」導入や、ボーダフォン日本法人の買収でした。

 基本的に僕は「イエス」から入る人間です。会社で「ノー」と言ったことも怒鳴ったこともなかった。ところがボーダフォンは「沈みゆく船」。立ち直らせるために、言うべきことをはっきりと言う形に改めました。

 何千億円も投じて買収した会社の幹部や社員が辞めるリスクは大きい。とはいえ「融和」か「生き残り」かの二者択一しかありません。刺し違える覚悟で後者を選びました。社内は不協和音だらけ。半年で幹部の3分の1が去りましたが、残った幹部とは戦友のような間柄になりました。

 感情的に怒鳴っているわけではなく、多くは仕組みに問題がある場合。解決したらけろっとしています。このスタイルになったのは、16歳から米国に住んでいた経験があるからかもしれません。

 日本企業が米国での買収に失敗する際に共通するのは欧米人へのコンプレックスからか遠慮がちになることです。僕にはそれがない。日本流ではなく「僕流」を押しつけたいと思っています。

 負け癖がつくのもダメです。(スプリントは)万年3位、4位。「ネットワークもよくないし、仕方ない」と……。

 言い訳の言葉は口から一番近い自分の耳に入る。これを繰り返すと頭が自らの言葉に洗脳されます。この悪循環を断つため、「全部変えるぞ」という意気込みです。

 一方で僕自身がスプリントから学んでいることもいっぱいあります。

 通信網や販売店のおもてなしは日本が優れている半面、ウェブを通じたサービスは米国が進んでいます。お互いのいいとこ取りをして、刺激を与え合い、改善していくのが最新のスタイルです。

 以前なら日本の幹部には「英語も苦手だろうし、日本を担当しておいてくれ」と言ったでしょう。今は違います。先日、ある(日本の)幹部が(シリコンバレーで)プレゼンテーションしました。めちゃくちゃな発音の英語でしたが、ちゃんと通じていましたよ。

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