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日本企業の動きコミュの121.iPadで「ものづくり革命」 工場を変えるタブレット

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 タブレット端末や音声入出力システムを活用し、工場の現場作業を支援する取り組みが広がってきた(図1)。これは、作業手順やチェックリストを紙に印刷していたこれまでのやり方を、単純にIT(情報技術)システムに置き換えたものではない。ITシステムの導入と同時に、図面や作業手順書を参照したりチェックリストに記入したりする作業者の手間を大幅に低減する。工場の現場に起きている「革命」をリポートする。

 現場の作業者がものづくりに関する情報を参照したり、記入したりする媒体としては、紙の書類が長い間使われてきた。

■紙の参照や記入は大きな手間

 しかし、最近の製品は、構造や部品構成が複雑になった上に、少量多品種の製品を短いリードタイムで生産しなければならない。これまでの紙の書類を使った管理法では、情報を最新の状態に維持したり、現場で必要な情報を素早く見つけ出したりすることが難しく、限界を迎えつつあると指摘されていた(図2)。

 そこで、現場で扱う情報を電子データ化することで、こうした問題を根本的に解決しようという取り組みが始まった。作業手順書などを電子データ化してパソコンのディスプレイに表示したり、手書きのチェックシートの代わりにパソコンでチェックしたりする方法だ。

 ただし、情報を電子データ化するだけでは、幾つかの課題が残る。主に電子データの現場での取り扱い性に関するものだ。一般に電子データを見るには、パソコンなどの端末が必要だが、これでは紙のメリットである可搬性や入力のしやすさを享受できない。そこで「使いやすい仕組みにして、作業者に、『端末を使いたい』と思ってもらうことが大切」(ツバメックス 金型部開発係主任の荒井善之氏)となる。

 近年、電子データを扱う端末や、その入出力技術は大きく進化している。その代表格が、米Appleの「iPad」のようなタブレット端末であり、音声によって情報をやりとりする音声入出力システムである。以下では、タブレット端末や音声入出力システムの具体的な活用事例を見てみよう。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1201A_S2A111C1000000/

■「パソコンでは移動が面倒」との不満が噴出

 金型メーカーのツバメックス(新潟市)は、金型の生産性を向上する取り組みの一環として、設計や生産に関するあらゆる情報を参照できるポータルシステムを構築している。3次元モデルやCAD(コンピューターによる設計)で作成した「3面図」などの設計情報、金型部品をどのような工程で加工するかといった作業指示、納期や進捗状況に関する情報などを、現場の作業者がその場で見られる。

 3次元モデルをベースに情報を整理することで、紙の図面では伝えきれなかった詳細な情報も確認できる。設計情報である3次元CADデータは、軽量3次元データである「XVL」に自動変換してさまざまな属性を付加する。生産管理システムとも連携しているので、部品情報や入荷/出荷情報、加工の進捗状況なども把握できる。しかもポータルシステムからビューアーを起動すれば、これらの情報をいつでも簡単に見ることが可能だ。

 同社ではポータルシステムを活用するため、現場には作業者(加工機)ごとにパソコンを設置した(図3)。加工の作業を始める前にパソコンを使って自分の作業内容を確認し、必要に応じて部品の情報を参照する。従来は不明点があると設計部門に問い合わせる必要があったが、ポータルシステムを使い始めてから問い合わせの回数が激減した。

 加えて、進捗状況の見える化も進んだ。作業者が、作業の開始や終了といった状況を入力する機能を用意したため、自分の前工程の状況を確認することができる。全社的な進捗・工程管理をほぼリアルタイムでできるようになった。

 しかし一方で、「パソコンの設置場所まで移動するのは面倒。端末を持ち歩きたい」という不満も上がった。現場では大多数(120人中95人)がポータルシステムを活用するようになったが、約2割の作業員で活用が進まなかった。そこで目をつけたのがタブレット端末の「iPad」である。

■修正指示もタブレット端末で手入力

 iPadを現場に持っていくと、「これなら使えそうだと、作業者の食いつきが良かった」(ツバメックスの荒井氏)。2012年7月に早速、数台のiPadを購入し、1台を工場内に持ち込んだ(図4)。

 現時点では一部未対応な機能があるものの、iPadでは基本的に既存のポータルシステムと同じ内容を表示できるようにした。機能を落とさずに持ち運び可能な端末とすることで、加工機に取り付けた現物(ワーク)の間近で部品情報を確認したり、作業完了後すぐに実績情報を登録したりできるようになった。

 さらに、iPadを使うことで新たな仕組みも構築できた。例えば作業指示書を印刷する際に、同時にQRコードが印刷されるようにしておく。現場でそのQRコードをiPadのカメラで読み込んで、関連する情報を自動的に表示するようにした。関連情報を探す手間を減らすとともに、ポータルシステムの情報を幅広く使ってもらえる効果がある。

 ツバメックスではiPadの活用法として、iPadの画面を使った情報入力の仕組みも検討している。例えば、修正指示書。図面に赤字を入れる作業は、キーボードやマウスで入力するパソコンでは手書きよりも格段に手間がかかるが、iPadのタッチ入力に対応したディスプレイであれば、手書きに近い感覚で情報を入力できる。カメラ機能を使って現物の写真を取り込むのも簡単だ。近く現場に導入する予定という。

■100台のiPadを導入

 大日本スクリーン製造の彦根事業所も、2012年春に100台のiPadを導入した(図5)。作業手順書やチェックシートを電子データ化して、iPadで見られる仕組みを構築している。「造る際の作業そのものは本質的に変わらないが、書類をコピーしたり配布したりする工数を減らせた。加えて、現場で常に正確で最新の情報を参照できるようになった」(大日本スクリーン製造半導体機器カンパニー製造統括部洗浄製造部部長の山口康成氏)。

 同事業所では、さまざまな種類の半導体製造装置(洗浄装置)を製造している。洗浄装置は3万〜5万点の部品点数で構成される上に、顧客ごとに仕様も微妙に異なる。このような多品種少量生産への対応に加え、近年では生産性向上に対する要求も厳しくなってきた。

 さらに、顧客である半導体メーカーの統合が進んだことで受注が集中しやすくなり、生産量の変動も大きくなった。2011年の場合、月別生産台数が最も少ない月と最も多い月では3倍の開きがあったほど。リードタイムに関する要望も差が大きく、約200%の開きがあるという。

■変更に即座に対応

 このような変種変量の生産に素早く対応するために、同社が取り組んでいるのが、「クイック生産」と呼ぶ体制だ。クイック生産の基本となるのが、4M(人、設備、方法、材料)の見える化。この中の方法、つまり造り方の見える化を支援するツールとしてiPadを活用している。

 生産現場では、これまで膨大な数の紙が配布されていた。1つの製番で、図面とチェックシートなどを合わせると1000枚以上にもなる。ホコリやチリの発生を極力抑えた高価な無塵紙を使うのでコスト負担も大きく、何より、変更発生時の対応が難しかった。

 「現場のデータは、日々変わるどころか、朝決まったことが夕方には変わっていることがある」(大日本スクリーン製造の山口氏)。紙を使うと、これら変更箇所が手書きで加えられることもあり、「何が正しいのか分からなくなる」(同氏)。

 そんな事態を避けるために、まず取り組んだのが作業手順書とチェックシートの電子データ化だ。端末としてiPadを選んだ理由の一つが、容易な操作で表示を拡大できること。大きな図面でも見られるし、携帯性に優れるので必要な時に場所を選ばず使える。情報伝達のタイムラグを大幅に減らせると期待を寄せている。

 チェックシートへの入力を電子化したことで、チェック結果の管理も容易になった。従来は手書きで書き込んだチェックシートをスキャンして電子データ化していたが、チェック内容を項目ごとに電子化しているわけではないため活用しにくかった。

 大日本スクリーン製造では作業者の両手をなるべく自由にするため、iPadを首から下げて使えるようなケースを使っている。現場に置いて立てられるスタンドも用意し、どちらかを選べるようにしている。

■音声で「ハンズフリー」を実現

 現場で作業者の手を塞がないようにすることは、非常に重要である。3次元モデルや図面といった画像でなければ伝えられない情報がある場合には、作業者が手を使わずにディスプレイを見ることができるようにする工夫が必要になる。一方で、画像なしでも伝達できる情報の場合は、音声による情報伝達が有効である。

 この音声入出力システムを導入したのが、ユニバーサル造船(川崎市)[注1]の津事業所だ。「造船所で扱う物は大きく、作業環境も厳しいので両手をあけられるは大きなメリットとなる」(同社システム開発部津システムチーム経営スタッフの長野元睦氏)。具体的には、管工場における集配材の作業で活用している(図6)。

 管工場では、船の中に組み付ける膨大な数の管材を製造し、組立現場へと配達する。管材を曲げたり切断したりした後で、ある程度のユニットに組み立てて溶接し、協力企業に対し表面処理を委託する。表面処理が終わって戻ってきた管材を、クレーンを使ってブロック(分割した船体=組立単位)ごとに振り分けるのが集配材の作業だ。

 管材に記された管理番号に従って、その管材を収めるべきパレットにクレーンを使って振り分ける。同社では従来、この作業を支援するためにPDA(携帯情報端末)を使っていた。しかし、スマートフォンの台頭などで使用していた機種の販売が終了してしまった。ある程度は買いだめしておいたので数年間は大丈夫だったが、代替方法を検討しておく必要があった。

 その上、PDAの使用には課題もあった。PDAを操作する際に手袋を外す必要があり、クレーンによる移動作業を始める前に再びはめる必要がある。これが作業者にとっては大きな手間だった。屋外作業のため逆光時に見にくい、文字が小さくて読みにくい、雨などに濡れて故障する、といった課題もあった。

■スマートフォンも決め手に欠ける

 PDAの代替としては、もちろんスマートフォンも検討した。しかし、「Android(アンドロイド)搭載スマートフォンとiPhoneのどちらが主流になるかが分からないし、アプリケーションを開発して基本ソフト(OS)のバージョンアップに追従するのも大変」(同氏)と、決め手に欠けていた。

 そんな中、あるセミナーで現場作業を支援する音声システムの存在を知った。同社が導入したのは米Vocollectのシステムで、配送センターなどの物流業界で既に実績もあった。

 早速、現場作業者の意見を聞いてみると「これはよさそうだ。現場で使えるかもしれない」という感触を得た。その後、(1)雨中での作業や騒音といった造船所の過酷な環境に耐えられるのか、(2)その中で十分な音声認識率を確保できるのか、(3)装置を落とした場合、耐久性に問題はないのか――といった業務上の課題をクリアできることを確認し、集配材の作業システムへの採用を決めた。音声システムは導入を決定後、2週間もたたずに使えるようになり、PDAを完全に代替したという。

■作業効率を15%向上

 集配材の作業では、各管にスチールペイントで管理番号が数字で書かれている。作業者はこの数字を読み上げ、音声入出力システムから「どの船の、どのブロックの、どの工程で使う管材か」という配材先の情報を得る(図7)。

 このシステムでは、単に作業内容を作業者に伝えるだけではなく、作業者の音声を認識した双方向の情報伝達ができる。つまり、作業者の音声をトリガーとした操作も可能になる。

 採用している音声認識は「話者特定式」と呼ばれるものだ。作業者の声をあらかじめ登録しておくことで、認識率を高める。実際には、「1人1時間くらい、業務で使う数十のキーワードを話してもらえば登録は完了する」(長野氏)という。

 音声システム活用のメリットは両手がフリーになることだけではない。作業中に画面を見る必要がないので、「立ち止まらない」で済み、「目線が切れない」ことも大きなメリットだ。さらに、声に出すことで作業内容を作業者自身が確認できる。

 これらのメリットにより、安全性や正確性、生産性が向上する。実際、集配材の作業では約15%も作業効率が上がったという。同社は今後、陸揚げした鋼板を使用順に積み上げてその記録をデータベース化する「鋼板展開」という作業でも、音声入出力システムの活用を計画している。

(日経ものづくり 中山力)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1201A_S2A111C1000000/?df=4

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