日本企業の動きコミュの97、なぜ？　家電メーカーに相次ぐ歴史的大赤字

■ソニーが、パナソニックが……。次々と出た歴史的な大赤字

　2012年に入り、2011年4〜12月期決算や、2012年3月期決算予想が出る季節になりました。おりしも、日本だけではなくヨーロッパにも大寒波が押し寄せる今年の冬。その寒波は、家電業界にも襲いかかっているようです。

　その中でも最も「厳冬」となっているのが、ソニー、パナソニック、シャープの3社。ソニーは2012年3月期決算予想が2200億円の赤字。パナソニックが7800億円、シャープが2900億円赤字と、過去最大規模の赤字予想でした。

　他家電メーカーも業績は芳しくなく、NECは1000億円の赤字予想とともに、1万人規模の大リストラを発表。家電とは少しずれていますが、任天堂も1981年以来初の連結赤字となる、650億円の赤字予想を発表しました。

　ここまで日本の家電メーカーが苦戦しているのは、なぜなのでしょう？

■日本の製造業を苦しめる数々の要因

　状況が悪化しているのは、日本の製造業にとってマイナスとなる要因がいくつも重なって起こっているためです。

□東日本大震災
　2011年3月に起こった東日本大震災のため、日本国内の多くの工場が操業を一時停止し、なかには操業不能になった工場もあります。これがメーカーにとって生産高を下げ、売上を圧迫しています。

□超円高
　家電業界をさらに困らせているのが、昨年から続く超円高。夏に1ドル=80円を割って70円台に突入した円ドル相場は、その後ずっと70円台に居座っています。政府が円高対策として何回も介入しましたが、円高が止まる気配は一向にありません。さらにユーロも、今年になって1ユーロ=100円を割る場面が出てきました。

　強すぎる円は、海外での日本製品の売れ行きを悪化させ、利益額を減らします。メーカーがこれに対抗するには生産を海外に移すしかないので、最近企業の海外移転の話が多く出ています。そうなると国内雇用が減り、失業で苦しみます。

□タイの洪水
　昨年秋に起こった洪水は、タイに工場を持つ多くの日本企業にとって、非常に痛手となりました。タイはこれまで日本にとって工場を移転する場所として非常に良い場所だと思われていたので、多くの日本企業がタイに投資。今回の洪水はまさに「寝耳に水」です。日本企業の生産はかなりダメージを受けました。

□韓国など、他国メーカーの台頭
　20世紀後半は世界を席巻した日本の家電製品ですが、最近韓国など他国のメーカーに押され気味です。特に韓国のサムスンは非常に勢いがあり、2011年の売上は過去最高にまでなりました。

　韓国メーカーなどに押されている理由の1つに、日本企業がやや「高級品」嗜好な点があります。日本企業は価格が高くても機能が豊富など、やや高級品的な家電を生産しています。しかし、日本人はともかく、世界の多くの消費者にとってそれほど多機能は必要でありません。価格の安い製品を買う傾向にあります。

□欧州の経済危機
　ギリシャから始まった欧州経済危機は、イタリアやスペインなどに拡散し、すでに欧州全体が緊縮財政をとらざるを得ないところまで深刻化しています。欧州の市民の生活は確実に苦しくなっているので、家電など消費財を買うお金もなくなっている人が増えています。なお、家電メーカーだけではなく、他の業界も欧州市場では苦戦しています。

□テレビの地位低下
　「テレビ」というと、一時期は家電の王様のように重要な品目でしたが、インターネットの普及などにより、そのものの地位自体が急低下しています。

　昨年は夏に地デジ移行があり、その前後は対応テレビがすごい勢いで売れていましたが、イベントが終わるとあとはサッパリ。さらに10年前は数十万円した30〜40型薄型テレビが商品のコモディティ化(差別化要因がなくなること)により、今では数万円で買えるほどに価格破壊が起こっています。そのため、売っても利益にならず、「売れば売るほど赤字」といわれています。

2012年02月14日　　提供：All About
http://news.livedoor.com/article/detail/6277669/

　実際にテレビの工場は何軒も閉鎖が発表されており、テレビ事業自体が厳しい時代になっています。

■この状況から抜け出すことはできるか？

□超円高
　これまで何度も日銀が介入をしてきたのですが、一向に円高が止まりません。1ドル=120円まで上げなくても、せめて90円くらいまで円安にならないと製造業は非常に苦しい状態が続きます。介入だけで円高が止まらない以上、別の方法を政府・日銀が考えるしかありません。

　韓国メーカーの台頭も、強すぎる円と弱くなっている韓国ウォンによるところが大きいといわれます。もう少し円が安ければ、状況はかなり改善されるでしょう。

□欧州の経済危機
　欧州経済危機は2012年に入って、収束するどころかますます悪化しています。3月にはギリシャが大量の国債償還日を迎えるので、いよいよデフォルトするのではないかという噂もあります。

　これはもう欧州の問題なので、日本のメーカーや政府がどうこうできる次元の問題ではありません。ともかく、危機が過ぎるまで待つ以外はないでしょう。

■当面はリストラでしのぐか？

　これまで上げた要因を取り除くのは、非常に難しいといえます。家電メーカーとしては、当面は社員のリストラや事業の縮小などでしのぐことになるのではないでしょうか。当然、リストラを避けてこの厳しい状況を乗り越えてほしいのですが……。

http://news.livedoor.com/article/detail/6277669/?p=2