ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレ有り】『マエストロ!』 [日本公開:2015年1月31日 ]

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
●Introduction
漫画家さそうあきらが手掛けたコミックを基に、不況のあおりで解散したオーケストラの再起を若手コンサートマスターと謎の指揮者を中心につづる感動のドラマ。コンサートマスターに松坂桃李、指揮者に西田敏行がふんし、寄せ集めの演奏者たちが破天荒な指揮者を前に一転、復活のコンサートを目指し奮闘するさまを笑いと涙を交えて描き出す。メガホンを取るのは、『毎日かあさん』などの小林聖太郎。随所に登場するクラシック音楽のトリビアや、松坂と西田がそれぞれ挑む楽器演奏と指揮にも期待。

ストーリー:若手コンサートマスターの香坂(松坂桃李)は、不況の影響によって解散したオーケストラの再結成に携ることに。しかし、練習場に現れたのは再就職先が決まらない演奏家たちで、久々の音合わせもうまくいかず前途多難な雰囲気が漂う。そこへ怪しげな男、天道(西田敏行)が登場。天道による常軌を逸した指揮にもかかわらず、楽団員たちは自信を取り戻していき……。
[日本公開:2015年1月31日 ]

コメント(1)

 「わしら人間は一瞬で死ぬ、音と一緒や。誰かと響き合えたらその一瞬が永遠になるのや」、「水滴の中に宇宙が詰まっているような音を!」
 本作に登場する指揮者天道の名セリフです。音楽が奏でる究極の美に、魂を打ち抜かれたことがある人でないと出てこない言葉だと感動しました。音は、人間の魂と同じように姿価値がなく、その音を聞いた人にしか、存在を証明できません。
 しかし、その奏でる音曲が、まるでミューズの神と一体となるような圧倒的な美を感じさせるとき、その音は多くの人の魂を鷲づかみし、鼓舞する愛の力となるのです。
 そんな音楽の崇高さ、情熱を天道の指揮は体現していました。クラッシック音楽を知らない人でも、彼の指揮ぶりを見ているうちに彼の所作が何を表現したいのかが伝わってくることでしょう。天道によって未知の音楽に触れ、化学反応が起きたように、内側から青い炎がぼっと燃えあがる。そんな初体験の感覚を感じられますよ。
 劇中西田敏行が「運命」はこういう感じで行くぞ!って、目線と全身でバシバシ訴えてくるのです。それはまるで指揮を監修した佐渡渡がそこにいるかのような名指揮者に成りきる演技でした。
 またコンサートマスターの香坂を演じた松坂桃李も素人とはいえない演奏ぶり。吹き替えなしで挑んだ役者根性を多いに讃えたいと思います。本人に言わせれば、1年間もの地獄の特訓に耐えたという、その成果は素晴らしいものでした。


 しかし、原作漫画を2時間の脚本に押し込んだ時点で、脚本が『八日目の?』を担当した奥寺佐渡子であったとしても、突っ込みどころ満載です。
 例えば序盤から、どうやって解散した楽団の元楽団員を招集できたのかしたのか、冷静に振り返ればおかしなことです。
 大阪弁の女の子からいきなり楽団が再結成されるので、練習に集まってねと電話がかかってきても普通は、おまえ誰や!ということになり、そう簡単には集まらないはず。なのに楽団員たちは、この怪電話一本を聞いただけで、廃れた廃工場に集合し、素直に練習を始めてしまうりです。そして練習を終えてから初めて、「そもそも今回の事務局・発起人は誰だよ〜」という話題がではじめます。それってあり得ない話ですよね。
 ボサボサの髪に汚れた作業着を着こんだ得体の知れない人物が突然自分が指揮者であり、今回の再結成を発案した張本人であるというのです。なぜこの楽団に縁もゆかりもない彼が再結成をできるのでしょうか。

 また天道の過去の悪い噂のためにスポンサーが離れて公演が一端は中止になるものの、団員の幹部メンバーのたった2人が別の企業に頼みに行ったらスポンサーが見つかってしまうというのも性急です。あれほど深刻になり、もう公演は無理と思わせておいて、わずか数十秒のシーンでドンデン返しするのは、少々乱暴ではないでしょうか。

 原作ではそのところをもっと丁寧に描いてあるようです。ただそれを説明していくとたぶん2時間で終わらないと思います。原作よりも映画にしていく上で、指揮者の天道徹三郎がいかに謎の変人で、楽団員の前にいきなり現れて無茶振りするのか、手短に誇張する必要があっものと思われます。
 しかし西田の名演技で脚本上のアラがそんなに気にならなくなっているのも事実です。変人ぶりに拒絶していた楽団員たちも、天道の本領が発揮されていくうちに彼の目指す音楽の世界に次第に引き込まれるように、観客も引き込まれてしまうのです。

 それとクラシックコンサートって、敷居の高いイメージがある。デートで映画に行く感覚とはあきらかに違うでしょう。そんな先入観を払いのける必要があって、かなり誇張されてた楽団員同士のプロとは思えないような泥臭い人間関係が描かれたのだと思います。 一つの公演に取り組みなかで、大勢の演奏者の個性がぶつかり会うクラッシックは決してきれいごとだけじゃ指揮者は務まりません。それぞれの楽器演奏者が、ぶつかり合って血眼になって一つの楽曲に没頭する、その人間味が、本作の持ち味なのだと思います。

 そして、なんと言ってもクライマックスの演奏シーンはまるでコンサートホールにいるようで、聞きほれてしまいました。物語に引き込まれていたので、いっしょに達成感も味わえて、感動もひとしおです。この部分の演奏は佐渡渡指揮のベルリン・フィル演奏なのですが、もしフィルムコンサートなら3000円はかかる演奏を映画館の臨場感溢れる音響施設で聴けたのは何ともお得な気分でした。
 『未完成』の最終楽章を聞くとき、こんな美しい旋律と出会えたなら、今死んだとしても悔いはないと思えるほどでした。そのシーンの時、香坂はここで天道の言葉を思い出すのです。「人1人を殺す覚悟で弾け!」といったのは、こういうことだったのですねぇ。 まさに大死一番、道元禅師の境地です。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

映画レビューアーフォーラム 更新情報

映画レビューアーフォーラムのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。